「談合出版」:クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne) (デンマーク)

2026年3月31日(火)掲載

ゾンネはオーフス大学・教授・獣医師で北極圏のホッキョクグマの絶滅は環境汚染が原因だと主張し、そこそこ著名な研究者になった。2017年まで毎年10報余りの論文を発表していたが、2020~2023年の4年間は毎年約60報を出版した。アレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)とレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は、ゾンネの論文内容はデタラメが多く、2018~2024年(46~51歳)の7年間に、ゾンネは論文工場製の論文を100~200報、談合出版(共謀出版)したのではないかと追及した。なお、シュナイダーがオースフ大学に通報したが、オースフ大学は調査していない。それで、ゾンネは処分されていない。この事件は、2025年 学術詐欺 世界ランキングの「3」の「より良い科学のために」記事のうち、2025年に最も読まれた上位「7」番目だった。なお、その記事はマガジノフとシュナイダーが共著の2024年2月の記事である。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne、R.Christian Sonne、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0001-5723-5263、写真出典)は、デンマークのオーフス大学(University of Aarhus)・教授・獣医師で、専門は野生生物学である。

  • 国:デンマーク
  • 成長国:デンマーク
  • 獣医師免許(DVM)取得:コペンハーゲン大学
  • 研究博士号(PhD)取得:コペンハーゲン大学
  • 獣医理学博士号(DscVetMed)取得:コペンハーゲン大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1972年5月4日
  • 現在の年齢:53歳
  • 分野:野生生物学
  • 不正疑惑論文発表:2012年(40歳)の1報、2015年(43歳)の1報、2019年(47歳)の1報、と2020~2025年の126報(48~53歳)
  • 不正疑惑行為時の地位:オーフス大学・上級研究員、同・教授
  • 発覚年:2023年(51歳)
  • 発覚時地位:オーフス大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)で、「パブピア(PubPeer)」で指摘した。レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)はオーフス大学に告発した
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「より良い科学のために」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シュナイダーが告発したのにオーフス大学は調査しなかった
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:論文工場、談合出版
  • 不正論文数:2論文撤回。100~200論文の談合出版(共謀出版)。「パブピア(PubPeer)」で126論文にコメント
  • 時期:研究キャリアの中期・後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 対処問題:大学怠慢、学術誌怠慢
  • 特徴:談合出版の野放図な放置
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

オーフス大学(University of Aarhus)キャンパスと町。写真出典

●2.【経歴と経過】

主な出典: Christian Sonne; CV

  • 1972年5月4日:デンマークのコペンハーゲンで生まれる:Christian Sonne – Altinget: forskning
  • 1999年3月1日(26歳):コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)で獣医師免許(DVM)取得
  • 2004年9月17日(32歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得
  • 2006~2014年(34~42歳):オーフス大学(University of Aarhus)・上級研究員
  • 2014年10月14日(42歳):コペンハーゲン大学で獣医理学博士号(DscVetMed)を取得
  • 2014年~現(42~53歳):オーフス大学(University of Aarhus)・教授
  • 2018~2024年(46~51歳):この7年間に100~200本の論文工場製の論文を談合出版(共謀出版)
  • 2023年5月(51歳):アレクサンダー・マガジノフが「パブピア(PubPeer)」で異常論文を最初(多分)に指摘
  • 2024年2月7日(51歳):アレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)とレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)記者の「より良い科学のために」記事で研究不正を公表
  • 2026年3月30日(53歳)現在:従来職を維持

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
「クリスチャン・ゾンネ」と紹介。
インタビュー動画:「Journey of Prof. Christian Sonne | Seasoned Scholars | Season 2 | Full Video – YouTube」(英語)2時間14分15秒。
Seasoned Scholars(チャンネル登録者数 562人) が2022/01/08に公開

【動画2】
インタビュー動画:「Chris Sonne • Radius+ Interview Series – YouTube」(英語27分40秒。
Radius+(チャンネル登録者数 484人) が2020/01/13に公開

●4.【日本語の解説】

★2年前(2024年?):plsobeytrafficlights:「PCB汚染はホッキョクグマのペニスが折れる原因になる。」

出典 → ココ、(保存版) 

デンマーク、オーフス大学のChristian Sonne氏と共同研究者たちは、体内にオルガノハロゲンと呼ばれる汚染物質が高いレベルで含まれるホッキョクグマは、精巣が小さく、陰茎骨も小さいことを以前に示していました。

続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★はじめに

今回の白楽ブログ記事は、2025年 学術詐欺 世界ランキングの「3」の「より良い科学のために」記事のうち、2025年に最も読まれた上位「7」番目だったので取り上げた。

その記事は、2024年2月7日のアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)とレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)記者の「より良い科学のために」の記事である。 → Hier kommt Herr Sonne – For Better Science

主役はデンマークのオーフス大学(University of Aarhus)・教授・獣医師のクリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne、写真出典)だが、記事は関連した複数人の疑惑者を記載している。

ゾンネは、野生生物の調査で北極圏の環境汚染を研究テーマにしたそこそこ著名な研究者である。

不正疑惑はネカト疑惑ではない。

2023年5月(51歳)、アレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)がゾンネの論文の異常さを指摘した。

そして、マガジノフとレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が、ゾンネの論文工場と談合出版(共謀出版)を追及した。

談合出版(共謀出版)は、学術誌(特集号だけの場合が多い)の編集長(編集委員)、査読者、投稿者がグルになって、投稿した論文を出版する学術詐欺である。編集長(編集委員)、査読者、投稿者がグルなので、実質上、どんなデタラメ論文でも出版できる。論文工場製の原稿を出版する定番のシステムである。

パブメドでゾンネの論文数を調べると、下図に示すように、2027年まで13報/年だったのが、2018年23報、2019年40報、2020年60報と急激に論文数が増え、2020~2023年の4年間は毎年約60報を出版した。2025年は12報と元に戻った(出典)。

上図でわかるように、2018~2024年(46~51歳)の7年間に100~200本(300本?)の論文工場製の論文を談合出版(共謀出版)したと思われる。

その間のゾンネ論文の中身を精査すると、ゾンネは出版詐欺者たちと共著の多国籍論文を多数出版していた。しかも、ゾンネの本来の専門分野とは異なる分野の論文も出版していた。国際的な談合出版グループの一味だったと思われる。

論文工場は調査が難しく証拠をつかみにくい。また、談合出版(共謀出版)は、公的機関が研究不正だとハッキリ定義していない行為である。

2023年12月15日(51歳)、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が、オーフス大学にゾンネの不正疑惑を伝えた。しかし、オーフス大学はまともに調査せず、不正はないと主張した。

2024年2月7日(51歳)の「より良い科学のために」記事で、マガジノフとシュナイダーは、ゾンネの論文工場と談合出版(共謀出版)の疑惑を公表した。

ゾンネは2020~2023年の4年間に毎年約60報を出版していたのに、上記の記事公表の後、ゾンネの論文数は2024年に前年の約半分である33報に急減し、2025年は12報しか出版していない。

ゾンネは論文工場と談合出版(共謀出版)と指摘されたの契機に、2024年に談合出版グループを抜けたと思われる。

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の不正疑惑を以下、解説する。

★ホッキョクグマの絶滅

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の「2015年のEnvironmental Research」論文の書誌情報を以下に示す。2026年3月30日現在、撤回されていない。

ホッキョクグマの絶滅の1つの原因は、有害な有機化合物であるPCB(ポリ塩化ビフェニル)の汚染で、PCBがペニスの骨(陰茎骨)を折れやすくするため、受胎せず子グマが誕生しない、という論文である。

2015年4月、匿名者が「パブピア(PubPeer)」で論文の内容を以下のように批判した。ゾンネは批判に何も答えていない。 → https://pubpeer.com/publications/0D94882F67CE3A46D9242ED648CD33#

  • 陰茎骨密度とPCB濃度の回帰分析の結果に有意差がない。
  • 陰茎骨の骨折が問題とする説を裏付ける証拠がない。
    「一例として陰茎骨が挙げられる。陰茎骨は、寒冷な北極環境での繁殖を成功させるために高い強度を必要とする」。考察の後半では、「このような骨折は報告されていない」と述べている。
  • 統計処理がおかしい。有意差がでない。

批判者は、結論として、ゾンネの論文は研究不正ではなく、間違いが多くズサンで、結論を支持できない、と批判した。

ホッキョクグマの絶滅には、PCBより、狩猟と気候変動の方が寄与度は大きいと指摘した。

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)、出典:https://www.linkedin.com/in/christian-sonne-167316a/?originalSubdomain=dk

★化学工学の論文

2021年、クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)は専門外と思われる化学工学の論文を出版している。

「2021年のChemical Engineering Journal」論文の書誌情報を以下に示す。2026年3月30日現在、撤回されていない。

最後著者(=連絡著者)のパク・ヨンクォン教授(Young-Kwon Park、写真出典)は韓国のソウル大学(University of Seoul)に所属している。

「2021年のChemical Engineering Journal」論文の著者は9人いるが、9人の著者の所属国は韓国、デンマーク、ドイツ、マレーシアの4か国である。つまり、多国籍論文である。

ゾンネは9人の著者の内の4番目の著者で連絡著者ではない。4番目は、論文数を稼ぐ、付け足しのような位置である。

話が脇道にそれるが、最後著者(=連絡著者)のパク・ヨンクォン教授(Young-Kwon Park)は、「パブピア(PubPeer)」で 48論文にコメントがあり、この人も濃厚な研究不正者である。

話を戻す。

「2021年のChemical Engineering Journal」論文は、農業廃棄物である米のもみ殻を熱触媒変換し芳香族化合物を生産する研究で、分解メタンの存在下で生産性の向上をはかるという論文である。

―――問題点の1―――

2023年5月(51歳)、マガジノフが以下の問題点を指摘した。出典:https://pubpeer.com/publications/EB97456BA2398E9C424BE23D69C090#

結果の表4は、以下に見るように、青枠の「Gas」の数値は25.67、28.95、・・と24より多いのに、本文では約24(つまり、~24wt%)と書いてあり、数値と合わない。また、「Char」の数値は全部33.53と異常だった。

2023年12月15日(51歳)、指摘された表4を以下のように訂正した。

しかし、訂正した表4も異常であるとマガジノフは以下のように指摘した。

赤下線の「Gas」の数値は25.39、24.85、24,89・・と26より少ないのに、本文では(~26wt%)と書いてあり、数値が合わないと。

すると、パク・ヨンクォン教授(Young-Kwon Park)は「最後の数値が「25.56」なので四捨五入して「~26wt%)」としました。文句アッカ?」と答えた。

すかさずマガジノフが、では、「Char」の最後の数値は「33.27」なのに、四捨五入して、どうして本文で「~34wt%)」なのですかと突っ込んだ。

パク・ヨンクォン教授はこれには無言・無視である。

―――問題点の2―――

この「2021年のChemical Engineering Journal」論文には次元の異なる別の問題もあった。

2023年12月(51歳)、Lasiodiplodia iranensisが論文の著者たちのそれまでの動向から、この論文も談合出版(共謀出版)ではないかと指摘した。

談合出版(共謀出版)は、編集長(編集委員)・査読者・著者が仲間で、実質上の査読なしで論文を出版する行為である。多くの場合、論文工場で作った論文の著者枠(著者在順)を売り、買った人の名前を著者にするが、そのデタラメな論文を出版するためには、査読の関門を通さなければならない。それで、編集長(編集委員)・査読者・著者がグルの談合出版チームを作るのである。

談合出版(共謀出版)の指摘は、パク・ヨンクォン教授(Young-Kwon Park)以外にも以下の怪しい研究者が共著者になっていたからである。

この論文でヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe)とパウ・ロケ・ショー(Pau Loke Show)は著者になっているだが、別の論文では、ヨルグ・リンクレーベはパウ・ロケ・ショーの複数の論文の編集委員になっている。

  • ヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe、写真右 Von Martin Ciupka 、CC BY-SA 4.0, 出典):ドイツのヴッパータール大学(University of Wuppertal)・教授(土壌・環境科学)で、321論文に「パブピア(PubPeer)」コメントがある。
  • パウ・ロケ・ショー(Pau Loke Show、写真左出典):マレーシア出身でアラブ首長国連邦のカリファ大学(Khalifa University)・教授(化学石油工学)になった高被引用者である。325論文に「パブピア(PubPeer)」コメントがある。
  • スー・シウン・ラム(Su Shiung Lam):マレーシア・トレンガヌ大学(Universiti Malaysia Terengganu)の環境技術の教授(後述)

2023年12月(51歳)のLasiodiplodia iranensisのまとめによると、ゾンネの談合出版(共謀出版)チームのメンバーは以下のようだ。
https://pubpeer.com/publications/EFF692DAA3F359BE63ECA2EB46E6A3#1

  • ヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe) 
  • パウ・ロケ・ショー(Pau Loke Show)
  • ムハンマド・ムバシル(Muhammad Mubashir )
  • アワイス・ボカリ(Awais Bokhari )
  • ハッサン・カリミ・マレ(Hassan Karimi-Maleh) ・・・後で少し触れる
  • クアン・シオン(またはクアン・シオン・クー)(Kuan Shiong (or Kuan Shiong Khoo)) 

★スー・シウン・ラム(Su Shiung Lam)の論文

2023年(51歳)、クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の専門は野生生物学だが、専門外と思われるコロナウィルスの論文を出版した。

「2023年のUrban Governance」論文の書誌情報を以下に示す。2026年3月30日現在、撤回されていない。

ゾンネは連絡著者である。

全著者の所属国はマレーシア、インド、アラブ首長国連邦、中国、シンガポール、韓国、デンマークの7か国で、多国籍論文である。

第一著者のスー・シウン・ラム(Su Shiung Lam、写真出典)はマレーシア・トレンガヌ大学(Universiti Malaysia Terengganu)の環境技術の教授で、スー・シウン・ラムの143論文に「パブピア(PubPeer)」コメントがある。 → Su Shiung Lam (0000-0002-5318-1760) – ORCID

論文の表題は「・・・新型コロナウイルス感染症の検出方法」だが、表題と論文内容が合致していない。

2024年1月(51歳)、論文内容に間違いがあると、Venturia chlorosporaが指摘した。https://pubpeer.com/publications/571DED53DE51B4D813B20FC09C23BF

「昆虫産業は当初、陸生動物の重要な食料源として発展しましたが、現在では人間の食用としても人気が高まっています(Gałęcki & Sokół, 2019)」と記述しているが、これは虚偽である。Gałęcki & Sokół(2019)は「人間による昆虫の消費はほとんど、あるいは全くない」と全く逆のことを述べている。

他にも奇妙な記述があると指摘した。

2024年1月(51歳)、そして、Desmococcus antarcticaは、この論文の著者たちの談合出版(共謀出版)を指摘した(詳細を省く)。https://pubpeer.com/publications/571DED53DE51B4D813B20FC09C23BF#2

★その他の論文

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の専門は野生生物学だが、上述してきたように専門外である無関係の分野の論文も出版している。

他にもある。加えておく(詳細は省く)。

――その1――

中国の鉱山労働者の髪の毛に含まれる重金属の「2023年2月のJ.Environ Int.」論文。

談合出版仲間のスー・シウン・ラム(Su Shiung Lam)、ヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe)が著者に入っている。

――その2――

アマゾンの森林伐採の「2020年11月のScience of The Total Environment」論文。ゾンネは連絡著者である。

この論文にも、談合出版仲間のスー・シウン・ラム(Su Shiung Lam)、ヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe)が著者に入っている。

――その3――

ナント、研究倫理に関する論文も出版していた。ゾンネは自分の研究倫理違反は置いといて、捕食学術誌の問題点を指摘した「2020年のThe Science of The Total Environment」論文である。しかも、ゾンネは連絡著者で第一著者である。

この論文にも、談合出版仲間のスー・シウン・ラム(Su Shiung Lam)、ヨルグ・リンクレーベ(Jörg Rinklebe)が著者に入っている。

★ゾンネの反応

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)は「パブピア(PubPeer)」で問題点が指摘されたことに対し、指摘を馬鹿にしたような反応をしている。

――2023年12月――

出典:https://pubpeer.com/publications/D55E619560D9D6F2E2E61AA944473F#3

意訳:こんなナンセンスなことで、私の時間を無駄にするな。そんなことより、地球をもっと明るい未来へと変えろ。

――2024年1月――

出典:https://pubpeer.com/publications/EB97456BA2398E9C424BE23D69C090#8

アレクサンダー様!

ご質問ありがとうございます。PubPeerを専門的に使っている科学者を知りませんので、ここでの返信は期待しないでください。連絡の正しい方法は、連絡著者にメールを送ることです。その後、連絡著者に余裕があれば、適切な返信が得られます。私には、「cs@ecos.au.dk」宛でご連絡ください。お手伝いさせていただきます。良い週末をお過ごしください!

クリスチャンより

★オーフス大学の対応

2023年12月15日(51歳)、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)はクリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の研究不正をオーフス大学に通報した。

3日後の2023年12月18日日(51歳)、次の返答を受け取った。

ブライアン・ベック・ニールセン学長(Brian Bech Nielsen)を代表し、お問い合わせいただきありがとうございます。お問い合わせはオーフス大学の研究実践委員会で処理中です。

なお、オーフス大学の研究不正対処の手順は公表されている。 → Procedure for handling cases of suspected research misconduct or questionable research practices

2024年1月2日(51歳)、翌月の正月早々、シュナイダーはオーフス大学の法律顧問であるハンネ・ライ・ヨハンセン(Hanne Rye Johansen、写真出典)から次のメッセージを受け取った。

告発に対応するために、関連するすべての論文と文書のコピー(できればPDF形式)をお送りください。リンクだけでは不十分です。

論文には、論文内の関連するモデル、表、文章を明確にマークおよび強調表示し、研究不正行為またはクログレイ行為と告発された正確な文献と証拠を含める必要があります。

異なる論文/文書を比較する場合、正確な文書間の相互を参照する必要があります。

これを行なう最も簡単な方法は、PDF版の論文の余白にコメントを挿入することです。

オーフス大学における研究不正行為またはクログレイ行為の疑惑の処理手順の詳細については、こちらをご覧ください。

最後に、携帯電話番号を含む連絡先の詳細をご提供いただきますようお願いいたします。必要に応じて、安全なメールでご連絡させていただくために必要です。

3件の案件に関する情報はそれぞれ別々のメールでお送りください。それぞれのメールの件名は必ず明記してください。

上記の情報を遅くとも2024年1月23日(水曜日)までにお送りください。

[白楽の感想:日本は顕著だけど、所属研究者の研究不正を(親切に)教えても、所属機関の担当者はかなり高圧的な対応をする(ことが多い)]

シュナイダーは返信し、告発文をオーフス大学のフォーマットに書き直す無駄をするつもりも、携帯電話番号を含む個人情報を公開するつもりも「ありませ~ん」と伝えた。

2015年1月15日(51歳)、シュナイダーはオーフスのヨハンセン法律顧問から「却下」と題した勝ち誇ったような以下のメールを受け取った。

デンマーク議会は「研究不正行為に関する法律(The New Danish Research Misconduct etc. Act)」を可決しました。この法律は2017年7月1日に施行されました。この法律は、研究不正行為やクログレイ行為に対処する際に遵守すべき手順を定めています。

法律に基づき、告発には、告発した研究不正行為の容疑と、その根拠を記載する必要があります。告発者は、連絡先情報を含む必要な情報を提供する責任を負います。

告発にそれらの情報が含まれていない場合、研究機関は告発文書の委員会への送付を拒否することになります。

2023年12月15日、16日、20日付けの告発は、必要な情報が提供されていないため却下しました。

なんという傲慢さ。

★その他の事

2024年2月8日、談合出版仲間のスー・シウン・ラム(Su Shiung Lam)は、詐欺行為のため、エルゼビア社の学術誌の編集委員から除名されたと、Hebrickが指摘した。

どの学術誌の編集委員かは書いていないが、エルゼビア社もバカではない。イヤイヤ、バカだったけど、バカな「まま」ではない。

2024年2月8日、談合出版仲間のハッサン・カリミ・マレ(Hassan Karimi-Maleh)は、詐欺行為のため、エルゼビア社の学術誌「Ecotoxicology and Environmental Safety 」の編集委員から除名されたと、O.B.が指摘した。

【不正疑惑の具体例】

上記したので省略する。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

2026年3月30日現在、パブメド(PubMed)で、クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の論文を「Christian Sonne[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2004~2026年の23年間の415論文がヒットした。

下図に示すように、2027年まで13報/年だったのが、2018年23報、2019年40報、2020年60報と急激に論文数が増え、2020~2023年の4年間は毎年約60報を出版した。2024年に前年の約半分である33報出版し、2025年は12報と2017年以前と同じレベルに戻った。

2026年3月30日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文・「2024年1月のEnviron Res」論文が撤回されていた。
.
★撤回監視データベース

2026年3月30日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでクリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)を「Christian Sonne」で検索すると、2論文が撤回されていた。

2022年1月に出版した論文が2025年11月12日に撤回され、2023年12月に出版した論文が2025年9月23日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2026年3月30日現在、「パブピア(PubPeer)」で、クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の論文のコメントを「authors:”Christian Sonne”」で検索すると126論文にコメントがあった。また、「”Christian Sonne”」で検索すると153論文にコメントがあった。

126論文の内訳は2012年の1報、2015年の1報、2019年の1報、と2020~2025年の123報だった。

●7.【白楽の感想】

《1》談合出版(共謀出版) 

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の学術詐欺は談合出版(共謀出版)である。

談合出版(共謀出版)とはどのような不正なのか、もう一度、説明を再掲しよう。

学術誌(特集号だけの場合が多い)の編集長(編集委員)、査読者、投稿者がグルになって、投稿した論文を出版する学術詐欺である。編集長(編集委員)、査読者、投稿者がグルなので、実質上、どんな原稿も出版できる。論文工場製の原稿を出版する定番のシステムである。

談合出版(共謀出版)は、新しく登場した不正行為で学術界での認識はとても低い。研究不正だという明確な定義は世界的にまだされていない。被害者の被害感情が小さく、被害意識が低いことも大きいと思う。

談合出版(共謀出版)は、論文工場が製造した論文を売って出版する商業活動がうまく稼働するためのキーポイントである。 → SCiNiTO – Inside Paper Mills: The Industrial Production of Scientific Fraud

論文工場不正では、世界中で膨大な研究費(原資は税金)が浪費されている。

日本も汚染されているが、日本の大学と学術界は無関心である。

高知大学のエム・サントッシュ名誉教授(M Santosh)のグループが談合出版をしていると指摘しても、高知大学を含め、どこも動かない。 → 岩石学:エム・サントッシュ(M Santosh)(高知大学) | 白楽の研究者倫理

《2》研究不正を防ぐ方法

クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne)の研究不正を防ぐには、どうすればよかったか?

また、今後、同じような研究不正を起こさせないためにはどうすべきか?

以下の「―研究不正を防ぐポイント(ブログ共通)―」の中から2~3件、選べば、「②大学院での(学術)規範教育の徹底」。でも、ゾンネは悪いと知っていて、教授になってから不正をしているのだから「③研究不正の厳罰化」、「⑤指摘を受けて、止めたのだから、ネカト監視・告発の促進」が大きいと思う。

――研究不正を防ぐポイント(ブログ共通)――

生物(含・人間)の原理は「種と畑」または「遺伝と環境」である。
研究不正の行動原理を「個人と環境(含・システム)」としよう。

つまり、「個人」の性向・体質が基本だが、ズルや不正をしてでも得しようという人生観(人生成功観)が根本にあって、それが、特定の「環境(含・システム)」に置かれると研究不正をする。

「個人」と「環境(含・システム)」の寄与度は、どちらが大きいかというと、大多数の研究者は同じ「システム」でも研究不正をしないので、「個人」の寄与度が大きいと思う。

「個人」と書いたが、不正を実行する「個人」はもちろんだが、研究室のボス(教授など)、学術誌編集長、大学の調査委員、大学長、担当大臣、担当政治家などの「個人」も、研究不正への寄与では重要である。ただ、これらは、不正実行者の「個人」を取り巻く人間たちなので「環境」として扱う。

「環境(含・システム)」は、規則(法律、政府のガイドライン、大学・学術誌・研究室の規則、不正調査の仕組み、不正者処罰・発表、透明性)、構造(出版か死か、雇用制度、研究費獲得、栄誉・名声・受賞制度)、研究環境(毒研究室)、文化(評価基準・メトリックス、不正許容、匿名・隠蔽体質、告発報復、メディア報道)などである。

「環境(含・システム)」要素をいくつも並べたが、院生・ポスドク・初期研究者にとって大きな「環境」は、研究室のボス(教授など)や先輩である。研究室のボス(教授など)や先輩が研究不正をそそのかす言動をすれば、それに合わせて研究不正をする傾向は高い。

同様に、中堅の研究員や上級者(教授など)は、研究規範に違反してでも、研究費獲得・昇進・メンツ・見栄を満たそうとする意識が強いと、軽い気持ち・魔が差す・自己に甘い性格も加味され、研究不正をする。

研究不正を防ぐ基本は「ネカト許さない文化」の構築であるが、「個人」と「環境(含・システム)」を分けて考えよう。

「個人」対策は、①家庭での道徳教育と小中高までの厳格な倫理観の育成。②大学の学部・院、特に研究室での学術規範しつけの徹底。

「環境(含・システム)」対策は、上記全項目への対応なので、たくさんあって書ききれない。少し書くと、③研究不正を軽視する有力賞受賞研究者・学会ボス・有名研究者を特別視せず厳格に処罰する。また、研究不正に甘いボス(教授など)や先輩をハッキリ処罰する。つまり、厳罰化(理由は上記)。④一般社会・メディアが研究不正にもっと厳しくするシステム・文化の構築。⑤ネカト監視・告発を促進するシステムの構築(告発者保護)。⑥ネカト告発者への報償制度導入。などがある。

根本的解決の1つは、⑦大学がネカト調査をするのではなく、麻薬取締部などのような捜査権を持つ政府機関がネカト調査すべきだと思う。現状、これがないので、大学は研究不正を隠蔽する・調査しない・調査してもクロをシロと捻じ曲げる・関係者を脅迫する。また、大学・学長や研究所・理事長の研究不正は調査が泥沼化する。⑧他に、研究倫理学者の育成、規範意識の低い人を昇進させないシステム作り、法改正して研究不正を刑事罰化など、すべきことはたくさんある。

――ここまでブログ共通――

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●9.【主要情報源】

① グロキペディア英語版(ウィキペディアではありません):Christian Sonne
② 2024年2月7日のアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)とレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)記者の「より良い科学のために」記事:Hier kommt Herr Sonne – For Better Science