2024年12月19日掲載最初 随時更新 【進行中/終了】
ワンポイント:慶應義塾大学・医学部・泌尿器科学教室の大家 基嗣(Mototsugu Oya)・教授の複数の論文に、重複画像(データねつ造)が指摘されております。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.最終評価
2.通報・経緯
3.各段階の評価
4.疑惑者
5.疑惑論文
7.白楽の感想
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●1.【最終評価】
★ステップ
【進行中/終了】
発覚 → 通報(allegation) → 告発判断(assessment) → 予備調査(inquiry) → 本調査(investigation) → 認定(finding) → 行政措置(懲戒処分など)の裁定(adjudication) → 不服申立て(appeal)
★白楽の最終評価とコメント(終了時に記述する)
慶應義塾大学 医学部。写真出典:https://www.youtube.com/watch?v=F2GgR0FHNW4&t=1s
●2.【通報・経緯】
―――以下は白楽と行政機関/大学とのやり取り(新→旧 順)ーーー
ーーー2024年12月19日、白楽の通報ーーー
①文部科学省と② 慶應義塾大学にほぼ同じ文章を伝えた。
慶應義塾大学・医学部・泌尿器科学教室の大家 基嗣(Mototsugu Oya)・教授の複数の論文に、重複画像(データねつ造)が指摘されております。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。
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●【通報先】
通報先は、一般的に、学術誌、所属大学・研究機関、調査機関、メディア(新聞など)、ネカト・ウオッチャー(①撤回監視:リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch、②パブピア:PubPeer、③より良い科学のために:For Better Science、など)、ネカト・ハンターがある。
ネカト疑惑者には直接、問い合わせしない方が良いとされている。
白楽の「5C 日本の研究疑惑:通報」シリーズでは、日本の研究規範を高めるために、「日本の大学・研究機関の対応」の実態を知ることに焦点を合わせているので、所属大学・研究機関とその上位の行政機関(文部科学省など)に通報した。
なお、行政機関(文部科学省など)は、自力でのネカト調査をしないが、当該大学・研究機関に通報を伝えるはずである。
★通報
- 一般的に、疑惑発見者は疑惑者の所属機関と学術誌に通報する。
- 「パブピア(PubPeer)」は自動的に著者にコメントを伝える仕組みになっている。
- 今回は、「パブピア(PubPeer)」案件なので、著者は既に疑惑が指摘されたことを知っているはずである。
★通報窓口①:文部科学省
研究に関する不正の告発受付窓口:https://www.mext.go.jp/b_menu/fusei/index.htm
【告発等の受付窓口】
文部科学省科学技術・学術政策局研究環境課
〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2
直通電話 03-6734-4018
電子メール chosei-k@mext.go.jp
学術政策局/研究環境課の研究公正推進室が対応する。
英語で通報:不可。グーグルで「MEXT research misconduct allegation」を検索しても文部科学省の告発受付は見つからなかった。
★通報窓口②:所属大学
慶應義塾大学
対応:研究コンプライアンス委員会。委員名は非公開
通報窓口(電子メール):https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSejjY1rDlkSTVFp_mrQhiN7-Wtrm4v7v2V-qW7u0x0DgT3L1A/viewform
英語で通報:不可。慶應義塾大学の英語サイトで「research misconduct」を検索してもヒットしなかった。
●3.【各段階の評価】
★通報①:文部科学省:評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
- 通報方法はわかり易く簡単で優れている。「優」にしたかったが、外国人は英語で通報する。英語でも通報できるようにしてほしい。
★通報①:慶應義塾大学:評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
- 通報方法はわかり易く簡単で優れている。「優」にしたかったが、外国人は英語で通報する。英語でも通報できるようにしてほしい。
★告発判断(assessment):評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
★予備調査:評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
★本調査:評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
★認定(finding):評価(優/良/可/不可/なし)と改善点
●4.【疑惑者】
★疑惑:重複画像(データねつ造)
★研究者の経歴・所属・地位など
大家 基嗣(Mototsugu Oya、経歴等:イ ロ ハ、写真出典)
慶應義塾大学・医学部 泌尿器科学教室 (信濃町)
教授
●5.【疑惑論文】
★疑惑の具体例
2024年12月11日、撤回論文が1報、それを含め、「パブピア(PubPeer)」で8論文にコメントがあった。
撤回論文の1報を含め、疑惑論文は8論文ある。以下、2報の疑惑論文の、疑惑の一部を示した。さらに、1報の撤回論文の撤回理由を示した。
【論文1】
「2020年のCancer Sci.」論文
- Role of the MUC1-C oncoprotein in the acquisition of cisplatin resistance by urothelial carcinoma.Cancer Sci. 2020 Oct;111(10):3639-3652. doi: 10.1111/cas.14574. Epub 2020 Aug 11.
研究は文部科学省の2件の科研費 (#10649875)の研究費を使用している。研究代表者は論文の第一著者である茂田 啓介(SHIGETA KEISUKE)、慶應義塾大学・医学部(信濃町)・助教、その後、同・訪問研究員。
ーーーーーーー論文1:重複画像①ーーーーー
2024年11月、Actinopolyspora biskrensisが、図2Eと図3Bの青色枠の2 つの画像は、試料が異なるのに同じバンドを示しているように見える、とコメントした。出典:https://pubpeer.com/publications/CED0876F6A51A34A39FB53178B9D6D
ーーーーーーー論文1:重複画像②ーーーーー
2024年11月、Actinopolyspora biskrensisが、図4Aと図4Dの赤色枠の2 つの画像は、条件が異なる実験なのに同じバンドを示しているように見える、とコメントした。出典:同上
ーーーーーーー論文1:重複画像③ーーーーー
2024年11月、Actinopolyspora biskrensisが、橙色枠で示した図 S1Dの2 つの画像は、条件が異なる実験なのに同じバンドを示しているように見える、とコメントした。出典:同上
ーーーーーーー論文1:重複画像④ーーーーー
2024年11月、Actinopolyspora biskrensisが、図 S1bと図 S3aのピンク色枠の2 つの画像は、条件が異なる実験なのに同じバンドを示しているように見える、とコメントした。出典:同上
2024年12月18日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。
実験は異なるのに別の実験で得られた画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造疑惑である。
【論文2】
「2014年のMol Cancer Ther」論文
- Cis-dichlorodiammineplatinum upregulates angiotensin II type 1 receptors through reactive oxygen species generation and enhances VEGF production in bladder cancer.Mol Cancer Ther. 2010 Nov;9(11):2982-92. doi: 10.1158/1535-7163.MCT-10-0535. Epub 2010 Oct 26.
2014年4月、Unregistered Submission が、図1Bの UMUC-3 と KU-19-19の beta-actinの画像の重複使用を指摘した。 2024年6月、Spauligodon anolisがその箇所を以下の図で示した。出典:https://pubpeer.com/publications/67C81094EA8972AE772A7DB872D9BF
2024年12月18日現在、著者らは、最初の指摘から10年8か月経過したのに、そして、2024年6月にも同じ問題が指摘されたのに、何も返事をしていない。
実験は異なるのに別の実験で得られた画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造疑惑である。
【論文3】
「2022年のCancer Chemother Pharmacol.」論文
- Effectiveness and safety of sorafenib for renal cell, hepatocellular and thyroid carcinoma: pooled analysis in patients with renal impairment.
Oya M, Kaneko S, Imai T, Tsujino T, Sunaya T, Okayama Y.
Cancer Chemother Pharmacol. 2022 Jun;89(6):761-772. doi: 10.1007/s00280-022-04428-0. Epub 2022 Apr 20.
バイエル薬品社の助成を受けた研究成果で、文科省や厚労省の助成は記載されていない。
誰がどこで論文の問題点を指摘したのか、著者らが自発的に気が付いたのか不明だが、2023年9月16日、論文は撤回された。 → 撤回公告
撤回公告によると、撤回理由は、生データの処理方法に欠陥(flaw)があり、データ分析が不完全だった。著者らがデータを再分析したところ、最初に導き出された結論がもはや支持できない、とある。
この撤回理由だけでは、データは間違いだったのか、ねつ造・改ざんだったのか、判断できない。
また、どのデータにどんな問題があったのかもわからない。
研究不正疑惑が生じるので、調査して欲しい。
●7.【白楽の感想】
《1》自律的?
研究不正疑惑者として大家 基嗣を挙げたが、実際のネカト行為者は共著者の誰かかもしれない。
もちろん、論文の著者は全員、実際のネカト行為者でなくとも、その論文に不正が見つかれば、不正者としての責任がある。中でも、研究室主宰者や連絡著者の責任は大きい。
本件は、10年前の2014年4月に既に「パブピア(PubPeer)」で重複画像が指摘されている。
パブピアで は8報の論文にコメントがある。
パブピアは自動的に著者にコメントを伝える仕組みになっている。
だから、著者はコメントを知らないはずがない。
しかし、著者は誰も一度も対応していない。
どうなっているのだろう?
共著者や泌尿器科学教室・室員は黙認しているのだろうか?
それに、いつも思うだけれど、大学・研究機関は、自分の組織内の研究不正が既にウェブ上で指摘されているのに、誰かから告発されるまで受身で待っている。自律的に調査しようしないのはどうしてだろう?
「パブピア(PubPeer)」で指摘されたネカト告発を自分の大学・研究所に通知してもらうサービス(PubPeer Institution Dashboard)を利用している日本の大学・研究機関はどれほどあるのだろう? そもそも、このサービスを知っているのだろうか?
日本の大学・研究機関は受け身すぎる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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