2022年3月28日掲載
ワンポイント:リカーディは「地中海農業・森林システム研究所」・研究員で、「2016年3月のScientia Horticulturae」論文を出版した。ところが、著者在順に問題があり、無断で4人も共著者にしていた。さらに、ねつ造・改ざん・間違いもあって、2016年11月(38歳?)、論文は撤回された。事件の詳細は不明。リカーディは研究職を廃業した模様。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
マリア・リカーディ(Maria Riccardi、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-1419-6895、写真出典)は、イタリアのイタリア国立研究評議会/地中海農業・森林システム研究所(CNR – ISAFoM:Institute for Agricultural and Forestry Systems in the Mediterranean)・研究員で、専門は作物学だった。
「イタリア国立研究評議会/地中海農業・森林システム研究所(National Research Council of Italy-Institute for Agricultural and Forest Systems in the Mediterranean)」は名称が長いので、ここでは、「地中海農業・森林システム研究所」と略すこともある。
「2016年3月のScientia Horticulturae」論文を第一著者で出版した。
ところが、共著者4人を無断で共著者にし、ねつ造・改ざん・間違いもあって、2016年11月(38歳?)、論文は撤回された。
事件の詳細は不明な。
リカーディは研究職を廃業した模様。
イタリア国立研究評議会/地中海農業・森林システム研究所(CNR – ISAFoM:Institute for Agricultural and Forestry Systems in the Mediterranean)。写真出典
- 国:イタリア
- 成長国:イタリア
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:ナポリ大学?
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1978年1月1日生まれとする。2005年に地中海農業・森林システム研究所の職務を開始した時を博士号取得直後の27歳とした
- 現在の年齢:46 歳?
- 分野:作物学
- 不正論文発表:2016年(38歳?)
- 発覚年:2016年(38歳?)
- 発覚時地位:地中海農業・森林システム研究所の研究員
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明だが、共著者の1人と思われる
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①「地中海農業・森林システム研究所」・所長
- 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 研究所の事件への透明性:発表なし(✖)
- 不正:無断で共著者にした著者在順。ねつ造・改ざん
- 不正論文数:1報
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:解雇(辞職)?
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:①:https://orcid.org/0000-0003-1419-6895、②:Riccardi Maria
- 生年月日:不明。仮に1978年1月1日生まれとする。2005年に地中海農業・森林システム研究所の職務を開始した時を博士号取得直後の27歳とした
- xxxx年(xx歳):ナポリ大学(Università degli Studi di Napoli Federico II Dipartimento di Agraria: Portici, Campania, IT)で学士号または研究博士号(PhD)を取得:科学・食品工学
- 2005年(27歳?):イタリア国立研究評議会/地中海農業・森林システム研究所(CNR – ISAFoM:Institute for Agricultural and Forestry Systems in the Mediterranean)・研究員
- 2016年(38歳?):直ぐ問題視される「2016年3月のScientia Horticulturae」論文を出版
- 2016年(38歳?):上記論文が撤回
- 2016年(38歳?):解雇(辞職)?
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★独断専行
マリア・リカーディ(Maria Riccardi)は2016年に以下の「2016年3月のScientia Horticulturae」論文を出版した(学術誌表紙出典)。
- Drought stress response in long-storage tomatoes: Physiological and biochemical traits
M.Riccardi, C.Pulvento, C.Patanè, R.Albrizio, G.Barbieri
Scientia Horticulturae, Volume 200, 8 March 2016, Pages 25-35
2016年11月1日(38歳?)、論文は撤回された。 → 撤回公告
撤回理由は、他の共著者4人は自分たちが共著者になっていることを知らなかった。つまり、リカーディは共著者に相談せずに論文を投稿したのだ。
さらに、「地中海農業・森林システム研究所」・所長による調査の結果、この論文の記述に間違いも見つかった。
データは実際の条件を反映していなかった。結論は、2つのトマト在来種の実験には当てはまらない。統計分析は無効で結論は信頼できない。つまり、論文には、ねつ造・改ざん・間違いもあったのだ。
「地中海農業・森林システム研究所」はこのネカト事件で、リカーディを解雇(辞職?)したと思われる。
リカーディはこの事件を契機に研究者を廃業したと思われる。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したように、共著者4人を無断で共著者にした。
詳細は不明だが、ねつ造・改ざん・間違いがあった。つまり、データは実際の条件を反映していなかった。結論は、2つのトマト在来種の実験には当てはまらない。統計分析は無効で結論は信頼できない。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2022年3月27日現在、パブメド(PubMed)で、マリア・リカーディ(Maria Riccardi)の論文を「Maria Riccardi[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2010~2022年の12年間の12論文がヒットした。
所属の「地中海農業・森林システム研究所」を加えた、「Maria Riccardi[Author] AND ISAFoM[Affiliation]」で検索したら、0論文がヒットした。
2022年3月27日現在、12論文を「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
2022年3月27日現在、オ-キッド(ORCID)では2008~2015年(30~37歳?)の17論文の出版を記載している。
★撤回監視データベース
2022年3月27日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでマリア・リカーディ(Maria Riccardi)を「Riccardi」で検索すると、6論文がヒットしたが、本記事で問題にした「M Riccardi」は1論文が撤回されていた。
「2016年3月のScientia Horticulturae」論文が2016年11月1日に撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年3月27日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マリア・リカーディ(Maria Riccardi)の論文のコメントを「”Maria Riccardi”」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》不明
マリア・リカーディ(Maria Riccardi)事件では、リカーディが共著者に相談せずに論文出版した理由が書かれていない。
ただ、白楽は現役時代、隣の研究室の院生が教授に無断で論文を投稿し、その教授が嘆いていたことを思い出す。要するに、院生は論文投稿する手順を知らなかった。それで、「自分が主体的に行なった研究を自分が論文にまとめて投稿してどこが悪い」、となったわけだ。
リカーディが同じ状況だったかどうかわからない。
白楽の経験を書いたが、多分、同じで状況ではないと思う。
というのは、オ-キッド(ORCID)を見ると、リカーディは、博士号を取得している。2008~2015年(30~37歳?)に17論文を出版している。
博士号を取得し17論文を出版している研究者が、論文出版のイロハを習得していなかったとは考えにくい。
となると、リカーディが共著者に相談せずに論文出版した状況がわからない。
結果として、リカーディはこの事件で解雇され(辞職かもしれないが)、研究者を廃業したと思われる。
このような小さなネカト事件は、実は、世界中でたくさん起こっていると思う。
ネカト「行為」の防止に役立つので、小さなネカト事件であっても、もっと、問題点を洗い出し、詳細に報道して欲しい。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2016年11月18日のダルミート・チャウラ(Dalmeet Singh Chawla)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Tomato study didn’t get co-author okays, includes unreliable data – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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