2020年10月9日掲載
ワンポイント:タイトルの2人は同一人物。撤回論文ランキングの世界第29位(リストで30番目、23撤回論文)に登場したので記事にした。シルバはペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)・教員で、ビロリアは、コロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)・教員である。2020年7月21日(40歳?)、被盗用者が出版社「IOP Publishing」に盗用を告発した。シルバ(ビロリア)は23報の論文が盗用で撤回されることを了承し、2020年9月15日(40歳?)、出版社「IOP Publishing」は23論文を撤回した(10日後に23報ではなく22報と訂正)。ペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学はネカト調査中(多分)。撤回理由は、スペイン語の論文を英語に翻訳した翻訳盗用だった。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ジーザス・シルバ(Jesus Silva、写真出典)はペルーのペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)・教員、また、コロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)・教員、で職位は不明である。専門は化学工学。
ジーザス・シルバ(Jesus Silva)(ペルー)とアメレック・ビロリア(Amelec Viloria)が同一人物である。本記事では、ジーザス・シルバ(Jesus Silva)という名前で進める。
2020年7月21日(40歳?)、被盗用者が出版社「IOP Publishing」にシルバ(ビロリア)の盗用を告発した。盗用は、スペイン語の論文を英語に翻訳した翻訳盗用だった。
2020年9月15日(40歳?)、シルバ(ビロリア)は23報の論文が盗用で撤回されることを了承し、出版社「IOP Publishing」は23論文を撤回した。
なお、2020年9月25日、出版社は撤回論文数は23報ではなく22報と訂正した。 → 23 becomes 22: Publisher retracts retraction, apologizes for the error – Retraction Watch
ペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学はネカト調査中(多分)。
2020年10月8日現在、シルバ(ビロリア)は、撤回論文ランキングの世界第29位(リストで30番目、23撤回論文)にランクされている。つまり、シルバは多数論文撤回者である。
→ 2020年10月8日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2020年10月8日保存版) → 2020年9月19日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch
ペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)。写真出典
- 国:ペルーとコロンビア
- 成長国:不明
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:ベネズエラの国立アントニオ・ホセ・デ・スクレ実験工科大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とした。写真の印象から
- 現在の年齢:44 歳?
- 分野:化学工学
- 最初の不正論文発表:2019年(39歳?)
- 不正論文発表:2019-2020年(39-40歳?)の2年間
- 発覚年:2020年(40歳?)
- 発覚時地位:ペルーのペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)・教員、また、コロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)・教員
- ステップ1(発覚):第一次追及者は氏名不詳の被盗用者
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査中
- 大学の透明性:調査中(ー)
- 不正:盗用
- 不正論文数:22撤回論文
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明。参考:① INFOcalSER: Investigación en Calidad del Servicio, Información y Productividad.: Dr.Amelec Viloria
- 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とした。写真の印象から
- xxxx年(xx歳):xx大学で学士号取得
- xxxx年(xx歳):ベネズエラの国立アントニオ・ホセ・デ・スクレ実験工科大学(Universidad Nacional Experimental Politécnica Antonio José de Sucre (UNEXPO))で研究博士号(PhD)取得:化学工学
- 20xx年(xx歳):ペルーのペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)・教員、また、コロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)・教員
- 2020年7月21日(40歳?):盗用が発覚
- 2020年9月15日(40歳?):盗用で23論文が撤回された
- 2020年10月8日(40歳?)現在:ペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学・教員に在職
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★発覚の経緯
2020年7月21日、出版社「IOP Publishing」のマーケティング・コミュニケーション責任者のレイチェル・ハーパー(Rachael Harper、写真出典)は、被盗用者(氏名非公表)からシルバに盗用されたという通報を受けた。これが発覚の発端である。
ハーパーは、直ちにシルバの論文を調査し、さらに多くの論文に盗用を見つけ、23報の論文を撤回した。また、出版前にネカトと気がつき掲載準備中の35論文の出版を中止した。
なお、2020年9月25日、出版社は撤回論文数は23報ではなく22報と訂正した。 → 23 becomes 22: Publisher retracts retraction, apologizes for the error – Retraction Watch
シルバの盗用はすべて、翻訳盗用で、スペイン語で公開された論文を英語に翻訳した論文だった。英語翻訳後の論文に複数の新しい文献を追加するという改変も行なっていた。但し、その追加文献の多くは、著者自身の論文だった。
シルバは23報の論文が盗用で撤回されることを了承した。
所属するコロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)はネカト調査委員会を設置してシルバのネカト調査を開始した。なお、本記事執筆時点では、ネカト調査をまだ終了していない(と思われる)。
★多数論文撤回者
2020年10月8日現在、ジーザス・シルバ(Jesus Silva)は、撤回論文ランキングの世界第29位(リストで30番目、23撤回論文)にランクされている。 → 2020年10月8日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2020年10月8日保存版) → 2020年9月19日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch
シルバは多数論文撤回者である。
★同一人物
ジーザス・シルバ(Jesus Silva)はペルーのペルアナ・デ・シエンシアス・アプリカダス大学(Universidad Peruana de Ciencias Aplicadas)・教員である。
一方、アメレック・ビロリア(Amelec Viloria)は、コロンビアのコースト大学(Universidad de la Costa)・教員である。
同一人物が異なる国の2つの大学の教員ということ自体は珍しくない。しかし、名前も変えて、いわば、別人のように所属するケースは珍しい。
正式な氏名(例えば、日本の戸籍名)は同じで、論文名だけ別にしたのか?
「撤回監視(Retraction Watch)」は、ジーザス・シルバ(Jesus Silva)(ペルー)とアメレック・ビロリア(Amelec Viloria)(コロンビア)が同一人物だとしている。
どうして同一人物だとわかったのか?
白楽はその理由がわからない。
白楽はアメレック・ビロリア(Amelec Viloria)の顔写真を何とか見つけたが、ジーザス・シルバ(Jesus Silva)の顔写真はわからなかった。シルバは検索でヒットしたが、本記事で問題にしているシルバという確信が持てなかった。それで、白楽は顔写真から同一人物と同定できていない。
★撤回論文
盗用が見つかった出版社「IOP Publishing」の学術誌は「Materials Science and Engineering」と「Journal of Physics: Conference Series」の2誌だった。
「IOP Publishing」のサイトでジーザス・シルバ(Jesus Silva)を「Jesus Silva」で検索すると、100論文がヒットした。 → Jesus Silva – Search – IOPscience
「Jesus Silva AND retracted」で撤回論文を検索すると、2020年の「J. Phys.: Conf. Ser」と「IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng.」の15報がヒットした。 → Jesus Silva AND retracted – Search – IOPscience
アメレック・ビロリア(Amelec Viloria)を「Amelec Viloria」で検索すると、16論文がヒットした。 → Amelec Viloria – Search – IOPscience
「Amelec Viloria AND retracted」で撤回論文を検索すると、2020年の「J. Phys.: Conf. Ser」と「IOP Conf. Ser.: Mater. Sci. Eng.」の8報がヒットした。 → Amelec Viloria AND retracted – Search – IOPscience
でも、2020年9月25日、出版社は撤回論文数は23報ではなく22報と訂正した。 → 「撤回監視(Retraction Watch)」記事: 23 becomes 22: Publisher retracts retraction, apologizes for the error – Retraction Watch
→ 出版社のお詫び公告:Publisher’s Note on: Energy potential of vinasse derived from rum manufacturing (IOP Conf. Series: Materials Science and Engineering 872 012032) – IOPscience
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
総論文数は調べていない。
★撤回論文データベース
2020年10月8日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでジーザス・シルバ(Jesus Silva)を「Jesus Silva」で検索すると、15論文がヒットし、15論文が撤回されていた。
2019-2020年の15論文が2020年9月15日に撤回されていた。
アメレック・ビロリア(Amelec Viloria)を「Amelec Viloria」で検索すると、9論文がヒットし、9論文が撤回されていた。
2019-2020年の8論文が2020年9月15日に、1論文が2020年9月25日に、撤回されていた。
合計すると、2019-2020年の24論文が2020年9月15~25日に撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2020年10月8日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ジーザス・シルバ(Jesus Silva)の論文のコメントを「”Jesus Silva”」で検索すると0論文にコメントがあった。
アメレック・ビロリア(Amelec Viloria)の論文のコメントを「Amelec Viloria」で検索すると1論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》翻訳盗用
翻訳盗用の摘発は珍しい。
翻訳盗用は盗用検出ソフトで検出できない。
被盗用者以外が盗用を見つけるのは難しい。しかも、被盗用者は別の言語の論文をほぼチェックしない。
今回、シルバ(ビロリア)の盗用は23論文(22~24論文)とされたが、「IOP Publishing」のサイトでジーザス・シルバ(Jesus Silva)を「Jesus Silva」で検索すると、100論文がヒットした。 → Jesus Silva – Search – IOPscience
シルバ(ビロリア)の盗用は、23報(22~24報)にとどまらず、実際はもっとあるに違いない。
そして、重大な問題は、シルバ(ビロリア)の論文以外に、学術論文には多量の翻訳盗用がある、と思えることだ。
現状では、学術論文における翻訳盗用は検出不能である。何らかの対処が必要だ。
どうする?
まず、現状を知り、蔓延度を調べることから始める?
イヤイヤ、面倒だから、英語で発表した論文しか評価しないとする? 他言語(含・現地語)の論文は評価する学術的論文として扱わない?
《2》翻訳盗用の検出困難さ
学術論文に限らず、世の中にはかなり多量の翻訳盗用があると思われる。
例えば、日本語の論文をスペイン語に翻訳盗用したら、どうだろう? 気がつくだろうか? イタリア語では? ロシア語では? ・・・タイ語では?
「だから、学術論文を含め、世の中にはかなり多量の翻訳盗用があると思われる。」をグーグルで自動翻訳してみた。
- スペイン語:
Por tanto, parece que existe una cantidad considerable de robos de traducciones en el mundo, incluidos trabajos académicos. - イタリア語:
Pertanto, sembra che ci sia una quantità considerevole di furti di traduzione nel mondo, compresi i documenti accademici. - ロシア語:
Таким образом, похоже, что в мире существует значительное количество краж переводов, в том числе научных. - タイ語:
ดังนั้นจึงมีดูเหมือนว่าจะค่อนข้างมาก plagiaries แปลในโลกรวมทั้งเอกสารวิชาการ
同一文章だと、わかります?
白楽はゼンゼンわかりません。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 2020年9月17日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Publisher retracts nearly two dozen articles, blocks nearly three dozen more, from alias-employing author who plagiarized – Retraction Watch
② 2020年9月23日の「微信(WeChat) 」記事:将西班牙语论文翻译成英文投稿被识破,该作者直接被撤23篇文章 – 知乎
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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