中森幹人 (Mikihito Nakamori)、加藤紘隆(Hirotaka Kato)、山上裕機(Hiroki Yamaue)たち(和歌山県立医科大学)

2025年3月3日掲載最初 随時更新 【進行中/終了】

和歌山県立医科大学附属病院に所属していた研究者たちの「2021年6月のOncol Lett.」論文は データ再現性がない(+他の理由)、「2022年3月のBMC Pediatr.」論文は二重出版(自己盗用)、という理由で撤回された。研究不正だと思われるので告発します。既に着手されている(いた)かもしれませんが、適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.最終評価
2.通報・経緯
3.各段階の評価
4.疑惑者
5.疑惑論文
7.白楽の感想
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  • 記述は敬称略。
  • 白楽ブログの「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」の意図は、日本の研究者の研究不正(含・疑惑)を具体的に示し、該当する研究機関の調査・対処の実態を公表・情報共有することです。そのことで、日本の研究不正調査・対処の問題点を日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、日本の研究倫理体制をより良い方向に改善することです。
    情報共有し改善策を考えるため、メールおよび文書は基本的に公表します。

●1.【最終評価】

★ステップ

進行中/終了】
発覚 → 告発(allegation) → 告発対応 → 告発判断(assessment) → 予備調査(inquiry) → 本調査(investigation) → 認定(finding) → 行政措置(懲戒処分など)の裁定(adjudication) → 不服申立て(appeal)

★白楽の最終評価とコメント終了時に記述する

 

和歌山県立医科大学附属病院。元写真出典:kouko0515投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

●2.【通報・経緯】

★通報

今回は、「論文撤回」案件で、著者の申し出で、論文が撤回されたので、著者たちは疑惑があったことを知っている。

―――以下は白楽のやり取り(新→旧 順)ーーー

ーー通報当日:2025年3月3日(月)、08:00、白楽の静岡県立大学への通報ーーー

和歌山県立医科大学附属病院に所属していた研究者たちの「2021年6月のOncol Lett.」論文は データ再現性がない(+他の理由)、「2022年3月のBMC Pediatr.」論文は二重出版(自己盗用)、という理由で撤回された。研究不正だと思われるので告発します。既に着手されている(いた)かもしれませんが、適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。

なお、日本の研究不正調査・対処の問題点を日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、日本の研究倫理体制をより良い方向に改善したいと考えています。それで、いただいたメールと文書は基本的に公表しますのでご了解ください。

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通報先

和歌山県立医科大学・事務局・研究推進課
rfusei@wakayama-med.ac.jp

★一般論

  • 通報(告発)先は、一般的に、①学術誌、②大学・研究所、③調査機関(日本にはない)、④メディア(新聞など)、⑤ネカト・ウオッチャー(「撤回監視:Retraction Watch」、「パブピア:PubPeer」、「より良い科学のために:For Better Science」、など)、⑥ネカト・ハンターがある
  • ネカト疑惑者には直接、問い合わせしない方が良いとされている

★通報窓口のあらまし:和歌山県立医科大学

ーーー日本語版ーーー

研究活動における不正防止への対応|和歌山県立医科大学
https://www.wakayama-med.ac.jp/kenkyu-sankangaku/kenkyujyoho/fuseiboshi/index.html

和歌山県立医科大学・事務局・研究推進課
電話:073-441-0801
E-mail:rfusei@wakayama-med.ac.jp
FAX:073-441-0713

ーーー英語版ーーー
英語で通報:できない。
和歌山県立医科大学の英語サイトで「research misconduct allegation」「research misconduct」を検索しても通報窓口は見つからなかった。 → research misconduct allegationresearch misconduct

●3.【各段階の評価】

★通報:和歌山県立医科大学:評価(優//不可/悪質/なし)とコメント

  1. 日本語版の通報方法はわかり易く簡単で優れている。
    しかし、英語版がない(または、見つからなかった)。外国人は英語で通報する。英語で通報できるようにしてほしい。

通報対応:評価(優//不可/悪質/なし)とコメント

 

●4.【疑惑者】

★疑惑データねつ造・改ざん、二重出版(自己盗用)

★研究者の経歴・所属・地位など

2報の論文(論文1と論文2)に研究不正疑惑がある。
代表として連絡著者と最後著者を示した。

ーーー1人目ーーー

  • 論文1の連絡著者
  • 研究者:中森幹人 (Mikihito Nakamori)(ナカモリ ミキヒト)
  • 部署:和歌山県立医科大学・外科学第2講座
  • 職位:助手 → 准教授
  • 経歴:researchmapKAKEN
  • 写真出典

現在:国立病院機構(大阪南医療センター臨床研究部), その他部局等, 部長

ーーー2人目ーーー

  • 論文2の連絡著者
  • 研究者:加藤紘隆(Hirotaka Kato)(カトウ ヒロタカ)
  • 部署:和歌山県立医科大学・外科学第2講座
  • 職位:?
  • 写真出典

2021年4月:済生会和歌山病院に移籍
2022年度の日本肝胆膵外科学会・理事長賞を受賞(和歌山県立医科大学の所属)

ーーー3人目ーーー

  • 論文1と論文2の最後著者
  • 研究者:山上裕機(Hiroki Yamaue)(ヤマウエ ヒロキ)
  • 部署:和歌山県立医科大学・外科学第2講座
  • 職位:教授
  • 経歴:researchmap
  • 写真出典

2022年:和歌山県立医科大学・名誉教授
2024年4月:昭和大学・膵がん治療センター長・特任教授。

●5.【疑惑論文】

★疑惑の具体例

論文1:中森幹人と山上裕機たちの1報の共著論文が撤回された。

論文2:加藤紘隆と山上裕機たちの1報の共著論文が撤回された。

以下、2報の撤回論文の研究不正疑惑個所などを示した。

============【論文1】============

「2021年6月のOncol Lett.」論文

連絡著者は中森幹人、最後著者は山上裕機である。
所属は2人とも和歌山県立医科大学附属病院・外科学第2講座である。

研究助成金(論文から引用):This work was supported by Japan Society for the Promotion of Science (JSPS) KAKENHI (Grant-in-Aid for Scientific Research) (grant nos. 23591946, 26461992 and 17k10604), and in part by grants from Practical Research for Innovative Cancer Control, Japan Agency for Medical Research and Development (AMED) (grant nos. 19ck0106416h0002 and 17ck0106144h0003)

研究助成金の解説:本研究は国から助成を受けた(日本学術振興会:検索サイト、AMED:検索サイト

  • 日本学術振興会・科研費:23591946  配分額は 5,200千円 
  • 日本学術振興会・科研費:26461992       4,680千円
  • 日本学術振興会・科研費:17K10604       4,550千円
     → 日本学術振興会・科研費の小計:1,443万円
  • AMED:19ck0106416h0002      配分額は不明
  • AMED:17ck0106144h0003          不明

 ーーー論文1:データねつ造・改ざんーーー

論文1は、著者たちが申し出て、2021年9月22日に撤回された。撤回公告によると撤回理由は3点ある。

  1. 論文投稿時に東京大学と和歌山県立医科大学の試料移転契約(MTA)違反があった。
  2. すべての共著者(特に3人の共著者HF、YI、およびTT)からの最終的な合意を得ない論文原稿を投稿した。
  3. 図4B(以下の画像、出典は原著)の結果を再現できないため、データの研究公正に疑念がある。

撤回理由の3番目は、データねつ造・改ざんという研究不正の可能性がある。

2025年3月3日現在、和歌山県立医科大学はこの研究不正疑惑の調査に関して何も発表していない。研究不正調査をした結果、研究不正ではないと結論したのかどうか不明である。

国(日本学術振興会)から計1,443万円の助成金を使用した研究論文が撤回されている。助成金を返還すべきかもしれないし、研究不正疑惑を調査していないなら、調査して欲しい。

============【論文2】============

「2022年3月のBMC Pediatr.」論文

連絡著者は加藤紘隆で、山上裕機は最後著者である。
所属は2人とも和歌山県立医科大学附属病院・外科学第2講座である。

研究助成金(論文から引用):Not applicable.
研究助成金の解説:特定の支援を受けていない。

学術誌は論文2の原稿を2021年11月8日に受け取っている。つまり、著者たちは論文1が2021年9月22日に撤回された1か月半後に投稿した。

 ーーー論文2:二重出版(自己盗用)ーーー

論文2は、撤回公告によると、同じグループの以下の著者群の論文の二重出版(自己盗用)のため、著者たちが申し出て、2022年12月29日に撤回された。

  • 胎児期に急速に増大し出生早期にoncologic emergencyを呈した先天性間葉芽腎腫の1例
    加藤 紘隆, 三谷 泰之, 合田 太郎, 和田 卓三, 辻本 弘, 津野 嘉伸, 神波 信次, 上田 祐子, 窪田 昭男, 山上 裕機
    日本小児外科学会雑誌 2020 年 56 巻 3 号 p. 319-323
    https://doi.org/10.11164/jjsps.56.3_319.

2025年3月3日現在、和歌山県立医科大学はこの二重出版(自己盗用)をした著者らの研究不正を発表していない。研究不正調査をしたのかどうか不明である。従って、誰が実行者なのか、どうして不正をしたのか、不正者にどのような処分を科したのか不明である。

●7.【白楽の感想】

《1》不正行為をした事実は取り消せない

論文1の「2021年6月のOncol Lett.」論文は、研究不正かどうか明確ではないが、データねつ造・改ざんの可能性は高い。さらに、別の理由もあり、著者たちが論文撤回を申し出た。

論文1は、国(日本学術振興会)からの計1,443万円の助成金を使用した。その研究論文が撤回されている。助成金を返還すべきかもしれない。

論文2の「2022年3月のBMC Pediatr.」論文は、二重出版(自己盗用)である。誰が指摘したのか不明だが、著者たちが論文撤回を申し出た。

論文1も論文2も、著者たちが申し出て、論文を撤回し、学術記録をきれいにし、2次被害を防いだことことは善行である。

しかし、研究不正した論文を、その後、撤回しても、研究不正行為をした事実は取り消せない。

2021年9月22日に論文1を撤回、そして、その同じ講座(含・同じ著者)の論文2が、翌年の2022年12月29日に撤回された。

和歌山県立医科大学が最初の論文撤回時に、研究不正の調査・対処したのかどうか不明である。しかし、調査・対処したとすれば、翌年に同じ講座(含・同じ著者)から論文撤回があったということは、少なくとも対処に問題があったことになる。

論文1が2021年9月22日に撤回された1か月半後に、論文2の原稿を投稿している。

研究不正をしても、「発覚後、論文撤回すればおとがめなし」観がこの講座の慣行になっていた懸念が生じる。

この慣行がこの講座に定着し、さらには、周辺の講座から和歌山県立医科大学内に広まれば、腐敗は拡大する。

研究不正疑惑が生じた時、速やかにその実態を調査し、同じ不祥事が二度と起こらないように対策を立てることは和歌山県立医科大学の責務だと思う。

なお、和歌山県立医科大学では、論文1と論文2の撤回時期の間に、別件だが、脳神経外科の深井順也・准教授の論文が2022年5月5日に撤回された(撤回公告)。

その時、和歌山県立医科大学は、予備調査で、研究不正はなかったとしている。しかし、報告書をみると、予備調査の内容そのものに危うさを感じた。和歌山県立医科大学の研究公正観が低くないことを願う。

参考:

  1. 2021年4月15日|日本小児科学会:二重投稿 ・二重出版 に関する判断基準と取り扱い
  2. 2015年3月6日|日本学術会議:二重投稿の禁止:回答「科学研究における健全性の向上について」

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