「セクハラ」:地理学:イアン・ショー(Ian Shaw)(英)

2022年4月3日掲載 

ワンポイント:ショーはグラスゴー大学・地理学科(University of Glasgow)の講師(男性)で、2018~2020年(38~40歳?)、6人の学部生・博士院生・若手講師の女性に性的発言をするセクハラ行為を繰り返した。2020年(40歳?)、グラスゴー大学にセクハラが告発されたが、大学はシロと判定した。その年の9月(40歳?)、守秘義務契約に守られ、ショーは英国のリーズ大学(University of Leeds)・準教授に栄転した。リーズ大学はショーのセクハラを知り、その後、ショーを解雇(?)した。国民の損害額(推定)は6億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

イアン・ショー(Ian Shaw、https://orcid.org/0000-0002-4289-1740、写真出典)は、グラスゴー大学・地理学科(School of Geographical & Earth Sciences, University of Glasgow)の講師だった。専門は地理学である。

2018~2020年(38~40歳?)、6人の学部生・博士院生・若手講師の女性に性的発言をするセクハラ行為を繰り返した。

2020年(40歳?)、グラスゴー大学に性不正が告発されたが、グラスゴー大学は被害者の申立てに十分対応せず、ショー講師を守り、ショー講師のセクハラを無罪とした。

2020年9月(40歳?)、ショー講師は英国のリーズ大学(University of Leeds)・準教授に栄転した。

守秘義務契約に守られ、リーズ大学はショー講師への性不正告発を知らなかったと思われる。

ただ、2022年3月30日(42歳?)現在、リーズ大学・政治国際学科の教員にリストされていないので、リーズ大学は性不正告発を知り、ショー準教授を解雇したようだ。 → People | School of Politics and International Studies | University of Leeds

グラスゴー大学・地理学科(School of Geographical and Earth Sciences, The University of Glasgow,)。写真出典

  • 国:英国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:米国のアリゾナ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。2011年11月にグラスゴー大学・講師に就任した時を31歳とした
  • 現在の年齢:44歳?
  • 分野:地理学
  • 性不正行為:2018~2020年(38~40歳?)の2年間
  • 最初に訴えられた:2020年(40歳?)
  • 社会に公表年:2021年(41歳?)
  • 社会に公表時地位:リーズ大学・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者の女性6人でグラスゴー大学に公益通報
  • ステップ2(メディア):「Al Jazeera」、とその追従メディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①グラスゴー大学・調査委員会
  • 大学の透明性:調査報告書のウェブ公表なし(含・調査時点で削除されている)(△)
  • 不正:セクハラ
  • 被害者数:6人の学部生・博士院生・若手講師の女性
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)が、その後、解雇・免職・研究職をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は6億円(大雑把)。被害者1人1億円とした

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。2011年11月にグラスゴー大学・講師に就任した時を31歳とした
  • xxxx年(xx歳):xx大学(xx)で学士号取得
  • xxxx年(xx歳):米国のアリゾナ大学(University of Arizona)で研究博士号(PhD)を取得
  • 2011年11月~2020年8月(31~40歳?):英国のグラスゴー大学・地理学科(School of Geographical and Earth Sciences, University of Glasgow)・講師、その後、上級講師
  • 2018~2020年(38~40歳?):6人の学部生・博士院生・若手講師の女性に性不正をしていた
  • 2020年(40歳?):グラスゴー大学に性不正が告発された
  • 2020年9月(40歳?):英国のリーズ大学(University of Leeds)・政治国際学科(School of Politics and International Studies)・準教授に栄転
  • 2021年10月26日(41歳?):メディアが性不正を詳細に報道
  • 202x年(xx歳):リーズ大学を辞職(解雇)?
  • 2022年3月30日(42歳?)現在:リーズ大学(University of Leeds)・政治国際学科(School of Politics and International Studies)の教員リストにない。People | School of Politics and International Studies | University of Leeds

●3.【動画】

【動画1】
セクハラ事件の動画ではない。博士論文の書き方の宣伝動画:「Tips for Writing Your Dissertation – SAGE Research Methods」(英語)00分30秒。
以下をクリック
Tips for Writing Your Dissertation – SAGE Research Methods

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★イアン・ショー(Ian Shaw)の人生

イアン・ショー(Ian Shaw、写真出典)は、グラスゴー大学・地理学科(School of Geographical & Earth Sciences, University of Glasgow)の講師だった。

イアン・ショーの妻の話が出てくるので、性不正事件を起こした時、イアン・ショーは結婚していた。子供の情報は見つからなかった。

★イアン・ショー(Ian Shaw)のセクハラ事件概略

2019年12月~2020年1月、6人の学部生・博士院生・若手講師の女性が、グラスゴー大学・地理学の上級講師イアン・ショー(Ian Shaw)に、2018年から2020年の間、性不正行為をされていたと、大学に告発した。

ショー講師の性不正行為の手口は、女性を学問的な話で釣り、次に感情的は話題に移行し、そして最終的には女性たちを性的に操作するグルーミング手法で、性的発言をするセクハラ行為である。 → 2021年7月12日記事:性暴力の前に巧みにつけ込む 忍び寄る「グルーミング」:朝日新聞デジタル

最初のステップとして、ショー講師は、プライバシーを確保するために、オフィスのドアを閉め、時には施錠し、気候変動活動や女性の権利などの共通の学問的議論を行なった。

2段目のステップとして、学問的な会話から、ショー講師の夫婦間の問題、メンタルヘルスに関する問題、そして、性的発言へと逸脱した。

ショー講師はまた、女性たちに彼女らの経済的、個人的、感情的な懸念についてショー講師に打ち明けるように促し、感情的な親密さと仲間という依存の感覚を生み出した。

2020年7月(40歳?)(または8月)、グラスゴー大学は通常、性不正の申立てを受け付けたら20日間で結論を出すところ、7か月かかった。7か月の調査を終え、ショー講師のセクハラ疑惑は証拠不十分で無罪とした。

★守秘義務契約

ショー講師は、告発のすべてを否定している。

2020年9月(40歳?)、性不正の告発がされていたにもかかわらず、英国のリーズ大学(University of Leeds)・政治国際学科(School of Politics and International Studies)・準教授に栄転した。

守秘義務契約に守られ、リーズ大学はショー講師への性不正告発を知らなかったと思われる。

ただ、2022年3月30日(42歳?)現在、リーズ大学・政治国際学科の教員リストにない。People | School of Politics and International Studies | University of Leeds

リーズ大学はショー準教授への性不正告発を知り、ショー準教授を解雇したようだ。

なお、守秘義務契約をたてに、グラスゴー大学は新聞記者に、「個々の事件についてコメントできないが、性不正行為のすべての申立てを真剣に受け止めている」と述べている。

【セクハラの具体例】

ココの出典は主に → 2021年10月29日の「Gryphon」記事:Leeds academic accused of “grooming” and “sexual harassment” in new Al-Jazeera podcast – The Gryphon

被害者の声を以下の2編のポドキャストで聞くことができる。

  1. Degrees of Abuse: Part 3: ‘It became emotional and then it became sexual’ – Al Jazeera Investigates | Spotify でポッドキャスト
  2. Degrees of Abuse: Part 4: ‘I was absolutely destroyed’ • Al Jazeera Investigates

① テイラー(Tayler)(当時19歳)

当時の学部2年生のテイラー(Tayler)は、ショー講師のオフィスで何度も泣いたことを思い出し、ショー講師が「いつもティッシュの箱を持っていた」と説明しました。

しかし、ショー講師の思いやりのある態度でテイラーはショー講師の感情も行動も支配されていた。

② 博士院生のハンナ(Hannah)

ショー講師のオフィスでの個人的ミーティングは女性をグルーミングする方法で、ハンナは、自分が性的対象にされていたが、キャリアを続けるには、私がそれを受け入れなければならないと感じていた。2015年に大学・学科のクリスマスパーティーで、ショー講師「精液の匂いを説明せよ」と言われた。

③ 学部生のコートニー(Courtney)
ショー講師の女性学生の扱いが気味が悪いと不快に感じていた。「私たちはショー講師を信頼していません」。女性の友達に「ショー講師に気をつけて」と言っていた。

④ 元学生で学外の気候活動家のローレン(Lauren)(当時19歳)

大学を卒業した後、環境問題という共通の関心についてショー講師から連絡を受けた。彼女は、ショー講師がもはや彼の妻に性的魅力を感じていないので、ポリアモリーしないかと誘われた。つまり、ローレンは「ショー講師がセックスしたいかどうか私に尋ねていると受け取りました。私はゼンゼンしたいと思いませんでした」と語った。

[白楽注:ポリアモリー(polyamory)とは、関係者全員の合意を得たうえで、複数の人と恋愛関係を結ぶ恋愛スタイルを指します(出典:2020年4月29日の「Rickey」著の「ポリアモリーとは?)」記事]。

⑤ 別の大学で博士号を取得したエスター(Esther)

学会でショー講師に会い、その後、ショー講師の指導を受けにグラスゴー大学に移籍した。

ショー講師は、大学の方針に反して、研究費申請で彼女を支援することを申し、学術的関係以上の関係に進展した(肉体関係?)。ショー講師から、服を着た股間の画像と、不適切なテキストメッセージを受け取った。

ショーは、エスターの眼が魅力的だと褒めながら、「昨夜、僕の頭の中にあなたがいて、あなたの夢を見ていました」と意味ありげに語った。

⑥ グラスゴー大学の地理学の元・講師だったエマ・ローリー(Emma Laurie)

本記事では、6人の被害者の写真を示さないが、写真がないと被害女性がアジア系やアフリカ系なのか判別できない。被害女性の中で最高年齢と思われるエマ・ローリーの写真だけ掲載した(出典)。

ショー講師は、研究者としての学術的コミュニケーションの境界を越え、彼自身についての詳細な個人情報をエマに明かした。エマがショー講師と距離を置こうとしたら、ショー講師はエマを研究チームから外された。

エマがショー講師のセクハラ被害を大学に告発すると、ショー講師は、逆に、エマに対して反対の告発をした。グラスゴー大学は、ショー講師がエマを研究チームから外したことは遺憾だが、セクハラでは有罪としなかった。逆に、グラスゴー大学はエマがショー講師に嫌がらせをしたと結論付けた。

エマはこの件がトラウマになり、「私は完全に破壊されました。グラスゴー大学・調査委員は私が提出したセクハラの証拠を読んでいないように思えた」と涙ながら、記者に語った。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

省略

●7.【白楽の感想】

《1》被害者を守る仕組みが弱すぎ

イアン・ショー(Ian Shaw)事件で、イアン・ショーは2018年から2020年の間に、6人の学部生・博士院生・若手講師の女性に性不正行為をしていた。

性不正行為は、記事で見る限り、言葉によるセクハラで、軽微な印象を受けた。しかし、6人の学部生・博士院生・若手講師は研究キャリアを断念しているようだ。ということは、被害者に大きな傷を与えたシッカリした性不正行為だったと思われる。

ただ、守秘義務契約のため、大学も被害者も実態をメディアに話せないようだ。

一方、加害者のイアン・ショーは2020年9月(40歳?)、性不正の告発がされていたにもかかわらず、英国のリーズ大学(University of Leeds)・準教授に栄転している。

性不正事件では、被害者は被害の後遺症が続くが、加害者は無傷のママ、栄転・昇進していく。

ただ、リーズ大学は性不正告発を知り、ショー準教授を解雇したようだ。

オカシイ状況が続いているが、正義も少し、実行されている。

リーズ大学(University of Leeds)のイアン・ショー(Ian Shaw)。2021年9月9日記事:Harvest festival at inner city youth farm | University of Leeds
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●8.【主要情報源】

① ◎2021年10月26日のデボラ・デイヴィスとアルジャジーラ調査ユニット(Deborah Davies and Al Jazeera Investigative Unit)の「Al Jazeera」記事:Glasgow University accused of failing to recognise misconduct | News | Al Jazeera
② 2021年10月26日のアティナ・ボーナーとエミリー・メンガー=デイビス(Athina Bohner and Emily Menger-Davies)記者の「Glasgow Guardian」記事:Former Glasgow University geography lecturer accused of sexual harassment – The Glasgow Guardian
③ 〇2021年10月29日の「Gryphon」記事:Leeds academic accused of “grooming” and “sexual harassment” in new Al-Jazeera podcast – The Gryphon

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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