2018年8月10日掲載。
ワンポイント:13年前の2005年3月14日(55歳?)、研究公正局は、ウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine)・教授・医師だったカマーにネカトがあったと発表した。NIHへの2つの研究費申請書でデータねつ造・改ざんをしたのだ。国民の損害額の総額(推定)は10億6500万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
ゲーリー・カマー(Gary M. Kammer、写真出典)は、米国のウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine:)・教授・医師で、専門はリウマチ学だった。
2001年頃(51歳?)、経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)。
2005年3月14日(55歳?)、ウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine)の調査を基に、研究公正局は、ゲーリー・カマー(Gary Kammer)のNIHへの2つの研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した。2005年2月15日から3年間の締め出し処分を科した。
ゲーリー・カマーは研究公正局がネカトと発表する前にウェイク・フォレスト大学医科大学院・教授を辞職した。
2018年8月8日現在(68歳?)、民間病院の医師である。:Lake Health Physician Group Arthritis Associates – Lake Health
ウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:米国
- 医師免許(MD)取得:オハイオ州立大学医科大学院
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1950年1月1日生まれとする。顔写真から推察
- 現在の年齢:74 歳?
- 分野:リウマチ学
- 最初の不正:2001年(51歳?)(推定)
- 発覚年:2001年(51歳?)(推定)
- 発覚時地位:ウェイク・フォレスト大学医科大学院・教授・医師
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は同じ大学の同僚教授(推定)
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ウェイク・フォレスト大学医科大学院・調査委員会。②研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:データねつ造・改ざん
- 不正論文数:論文での不正ではなく研究費申請書での不正
- 時期:研究キャリアの後期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分: NIHから3年間の締め出し処分
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億6500万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。在職年数は不正確だが、20年間とし、損害額は9億円。
- ③外部研究費。実際に受給していてだろうが、判明しないので0円とした。
- ④調査経費。第一次追及の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。小計で1,500万円
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は0報なので損害額は0円。
- ⑦研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑧健康被害:不明なので損害額は0円とした。
●2.【経歴と経過】
ほとんど不明。
- 生年月日:不明。仮に1950年1月1日生まれとする。顔写真から推察
- xxxx年(xx歳):xxxx大学(xxxx University)で学士号取得
- xxxx年(xx歳):オハイオ州立大学医科大学院(Ohio State University College of Medicine)で医師免許(MD)取得
- xxxx年(xx歳):ジョンズ・ホプキンズ大学(Johns Hopkins University)・研修医
- 1982年(32歳?):ケース・ウェスタン・リザーブ大学医科大学院(Case Western Reserve University School of Medicine)から論文発表
- xxxx年(xx歳):ウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine:)・教授
- 2001年頃(51歳?):ネカトが発覚した(推定)
- 2005年2月(55歳?)(推定):ウェイク・フォレスト大学医科大学院を辞職した
- 2005年3月14日(55歳?):研究公正局がネカトでクロと発表。締め出し期間は3年間
- 2018年8月8日現在(68歳?):民間病院の医師:Lake Health Physician Group Arthritis Associates – Lake Health
●4.【日本語の解説】
★2005年07月19日:WIRED NEWS [日本語版:米井香織/高森郁哉]、AP通信:深刻化する、科学研究の捏造・改竄・盗用(上)
(2005年)3月には、ウェイク・フォレスト大学でリウマチ学の教授を務めていた狼瘡(ろうそう)の第一人者ゲリー・カマー博士が、米国立衛生研究所に助成金の申請を行なう際に、2組の家族とその治療状況を捏造していたことが判明した。カマー博士はウェイク・フォレスト大学を退職し、3年間の期限付きで連邦政府の助成金の受給資格を剥奪された。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
ネカト事件の詳細は不明である。ネカト行為を犯した状況、発覚の経緯、ネカトの具体的内容、処分、処分のその後、詳細はどれも不明である。
2001年頃(51歳?)、経緯は不明だが、ネカトが発覚した(推定)。
2002年頃(52歳?)(推定)、ウェイク・フォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine)・調査委員会は、ゲーリー・カマー(Gary Kammer)のネカトを調査し、クロと判定し、研究公正局に伝えた。ゲーリー・カマーはネカトを認めた。
2005年2月(55歳?)(推定)、ゲーリー・カマーはウェイク・フォレスト大学医科大学院を辞職した。
2005年3月14日(55歳?)、研究公正局は、ゲーリー・カマー(Gary Kammer)のNIHへの2つの研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した。2005年2月15日から3年間の締め出し処分を科した。
1つは、国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所(NIAMS)の研究費申請書「2 R01 AR39501-12A1」・「狼瘡エリテマトーデスにおけるTリンパ球機能不全(T Lymphocyte Dysfunction in Lupus Erythematosus)」である。
もう1つは、NIH・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の研究費申請書「1 R01 AI46526-01A2」・「全身性エリテマトーデスの病因におけるプロテインキナーゼA-II(T Lymphocyte Dysfunction in Lupus Erythematosus)」だった。
★ねつ造・改ざんの内容
ゲーリー・カマー(Gary Kammer)のネカトは研究費申請書であって、出版論文ではない。
2005年3月14日の研究公正局の発表によると、研究費申請書「2 R01 AR39501-12A1」・「狼瘡エリテマトーデスにおけるTリンパ球機能不全(T Lymphocyte Dysfunction in Lupus Erythematosus)」の29頁-30頁の図6に示した家族2および家族3をねつ造した。
- 両方の家系図をねつ造した。
- これら存在しない家族のPKA-1およびPKA-II値を13個ねつ造した。
- 上記のねつ造データに合わせた虚偽のテキストを作成した。
ゲーリー・カマーは、また、研究費申請書「1 R01 AI46526-01A2」・「全身性エリテマトーデスの病因におけるプロテインキナーゼA-II(T Lymphocyte Dysfunction in Lupus Erythematosus)」の図20の結果は、実際には1回しか実験をしなかったのに、4回行なったと改ざんした。
つまり両申請書に記載された家系図および家系データは誤りである。
研究費申請書「2 R01 AR39501-12A1」の低いPKA-I値が遺伝性で、全身性エリテマトーデス(SLE)と関連していることを示す家系図およびデータは虚偽である。
ゲーリー・カマーは、「研究室員の誰がこのねつ造・改ざんデータを私に持ってきたのか思い出せない」と述べている。ということは、ネカト者は研究室員であって、カマー自身ではない? それとも、この供述はウソ?
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2018年8月9日現在、パブメド(PubMed)で、ゲーリー・カマー(Gary M. Kammer)の論文を「Gary M. Kammer [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2005年の4年間の11論文と2012年の1論文がヒットした。2012年の1論文は、本記事で問題にしている研究者の論文ではないと思われる。
「Kammer GM[Author]」で検索すると、1970~2005年の36年間の71論文と2012年の1論文がヒットした。2012年の1論文は、本記事で問題にしている研究者の論文ではないと思われる。
2018年8月9日現在、「Kammer GM[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
省略
●7.【白楽の感想】
《1》詳細は不明
この事件の詳細は不明です。
2003年頃の事件は新聞記事になったような大きな事件を除いて詳細は不明である。15年も経過しているので当時の資料は簡単には見つからない。ましてや、インターネットは今ほど発達していなかったので、ネット上の情報はそもそも少なかった。
ネカト防止策は、この事件からは学べない。
《2》研究費申請書
ゲーリー・カマー(Gary Kammer)のネカトは研究費申請書であって、出版論文ではない。
以下の事件も研究費申請書であって、出版論文ではない。ドライヤーはネカト投稿原稿もあるが出版していない。
- 2000年:エヴァン・ドライヤー(Evan B. Dreyer)(米)
- 2001年:デイヴィット・パジェット(David A. Padgett)(米)
- 2001年:モミアオ・シャオン、熊墨淼(Momiao Xiong)(米)
- 2003年:ジャスティン・ラドルフ(Justin D. Radolf)(米)
- 2005年:ゲーリー・カマー(Gary Kammer)(米)
2000-2005年頃は、ネカトは研究費申請書のネカト発覚が普通だったのだろうか?
その場合、出版論文のネカトは指摘されていない。出版論文のネカトを調査していないのか、調査したけど出版論文にネカトはなかったのか、どっちなのだろう。
ネカトが研究費申請書だけだったとは信じがたい。
なお、勿論、2000-2005年の間、出版論文にもネカトがあった研究公正局の事件はある(以下はその一部)。
- 2002年:レヌーカ・プラサッド(M. Renuka Prasad)(米)
- 2002年:タツミ・アリチ、有地建実(Tatsumi Arichi)(米)
- 2003年:クレイグ・ジェルバンド(Craig H. Gelband)(米)
- 2005年:エリック・ポールマン(Eric T. Poehlman)(米)
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●8.【主要情報源】
① 2005年3月14日、研究公正局の報告:NOT-OD-05-037: Findings of Scientific Misconduct
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント