2017年7月14日掲載。
ワンポイント:盗博サイトのヴロニプラーク・ウィキの64番目。若い女性で、国はドイツではなくアイルランドである。2009年(28歳?)にアイルランドのメイヌース大学で理学の博士号を取得した。2014年2月(33歳?)に盗博がバレたが、メイヌース大学は、博士号をはく奪しないと結論した。盗用ページ率は27.4%、盗用文字率は約13%だった。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
6-1.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
ーーーーーーー
●1.【概略】
ジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)は、若い女性で、2009年(28歳?)にアイルランドのアイルランド・ナショナル大学メイヌース校(National University of Ireland Maynooth、あるいは、メイヌース大学、Maynooth University)で理学(神経科学)の博士号を取得した。
2014年2月9日(33歳?)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が盗博を告発した。64番目の事件である。 → 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
2014年(33歳?)、メイヌース大学はジェニファー・ムーアに授与した博士号をはく奪しないと結論した。
2017年7月13日現在(36歳?)、ジェニファー・ムーアの滞在国や所属は不明である。研究職に就いていないと思われる。
アイルランド・ナショナル大学メイヌース校(National University of Ireland Maynooth)・生物学科・生物学実習。写真出典
- 不正:盗博(盗用博士論文)
- 国:アイルランド
- 成長国:
- 研究博士号(PhD)取得年月日:2009年10月日(28歳?)
- 研究博士号(PhD)取得大学:アイルランド・ナショナル大学メイヌース校(National University of Ireland Maynooth)
- 分野:理学(神経科学)
- 博士論文タイトル:Reconsolidation: Behavioural and Electrophysiological Sequelae of Context and Stress in Human Episodic Memory
(日本語訳):再構成:ヒトのエピソード記憶における文脈とストレスの行動的および電気生理学的後遺症 - 博士論文指導教授: Dr. Richard Roche.
- 公開: Maynooth, 5 Feb 2010 → Download NUI Maynooth ePrints Archive
- 盗博発覚年月日:2014年2月9日(33歳?)
- 盗用ページ率:27.4%
- 盗用文字率:約13%
- 研究博士号(PhD)はく奪状況:はく奪なし
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1981年1月1日生まれとする(あてずっぽう)。
- 現在の年齢:43 歳?
- 発覚時地位:
- ステップ1(発覚):第一次追及者はヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のデボラ・ヴィーバー=ヴルフ・教授(Debora Weber-Wulff)(推定)
- ステップ2(メディア):ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①メイヌース大学・調査委員会
- 結末:博士号はく奪なし。研究職を廃業した?
●2.【経歴と経過】
経歴はほとんど不明
- 生年月日:不明。仮に1981年1月1日生まれとする(あてずっぽう)。
- xxxx年x月xx日(xx歳):xx大学卒業
- 2007年(26歳):アイルランドのメイヌース大学(Maynooth University)・博士論文完成。理学(神経科学)
- 2009年10月日(28歳?):アイルランドのメイヌース大学(Maynooth University)で研究博士号(PhD)取得
- 2014年2月9日(33歳?):盗博が発覚
- 2014年(33歳?):メイヌース大学が調査し、博士号はく奪なしと結論
●5.【不正発覚の経緯と内容】
ジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)は、アイルランドのアイルランド・ナショナル大学メイヌース校(National University of Ireland Maynooth、メイヌース大学、Maynooth University)で大学院に入学した。
専攻は理学(神経科学)で、指導教授はリチャード・ロシェ・上級講師(Richard Roche、Senior Lecturer 、写真出典)だった。
2007年(26歳?)、博士論文を完成し、博士論文をベースにした総説を、ロシェ講師と共著で「2007年のRev Neurosci. 」に出版した。
2014年2月9日(33歳?)、博士号の取得5年後、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が、盗博を告発した。
2014年(33歳?)、メイヌース大学は調査し、ジェニファー・ムーアに授与した博士号をはく奪しないと結論した。
具体的には、メイヌース大学・調査委員会は「引用を適切に行わなかったことは重要な欠点だが、論文内容は、他の研究者を誤導しないし、研究データに虚偽はない。問題となる文献引用を訂正し、訂正博士論文を提出することで、博士号をはく奪しない」とした。
2014年5月、メイヌース大学はこの盗用事件を受けて、メイヌース大学の盗用規定を作った(それまで、まともな規定がなかった?)。
→ https://www.maynoothuniversity.ie/sites/default/files/assets/document/Policy%20on%20Plagiarism%20May%202014.pdf
ジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)は、「2007年のRev Neurosci. 」総説以外に論文出版はない。博士号を所持していても、研究者として研究しているフシはない。
●6.【盗用解析】
ジェニファー・ムーア(Jennifer Moore)の博士論文のタイトルは 「Reconsolidation: Behavioural and Electrophysiological Sequelae of Context and Stress in Human Episodic Memory
(日本語訳):再構成:ヒトのエピソード記憶における文脈とストレスの行動的および電気生理学的後遺症」である。
博士論文の盗用分析図は以下の5色のバーコードである。博士論文の分析対象は358ページ、盗用ページ率は27.4%、盗用文字率は約13%だった
なお、元の盗用分析図では、バーコードがページ毎の盗用分析にリンクしている。→ http://de.vroniplag.wikia.com/wiki/Jm
★イラスト表示
以下はページ毎に色分けしたイラスト表示である。
盗用の色分けは、灰色= 逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、赤色 = 加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、黄色 =流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 青色 = 翻訳盗用、である。
★各ページの盗用分析
ジェニファー・ムーア(Jennifer Moore)の博士論文の各ページ毎に盗用分析がされている。盗用があるページは青色で、盗用がないページは赤色である。青色をクリックすると、各ページが開く。
【5ページ目】
1例として、5ページ目(つまり、005)をクリックすると、盗用比較図が出てくる。以下はその1部分を示した。
左側がジェニファー・ムーアの博士論文で右が被盗用論文である。着色部分の文章が同一である。
イラストで赤色( 加工盗用)の盗用が顕著な部分を上にあげた。文献の記載はなく、見事に逐語盗用である。明白な盗用だ。
●6-1.【論文数と撤回論文とパブピア】
2017年7月13日現在、パブメド(PubMed)で、ジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)の論文を「Jennifer L. Moore[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003 – 2016年の14年間の 25論文がヒットした。
「Moore JL[Author] 」で検索すると、382論文がヒットした。
これらの論文のほとんどは本記事のジェニファー・ムーアの論文に該当しない印象をうけた。それで以下の分析を加えた。
本記事のジェニファー・ムーアの所属はアイルランド・ナショナル大学メイヌース校(National University of Ireland Maynooth、メイヌース大学、Maynooth University)である。
所属大学で論文を絞った。
「Moore JL[Author] AND Maynooth University[Affiliation] 」で検索したら、0論文がヒットした。
「Moore JL[Author] AND National University of Ireland[Affiliation] 」で検索すると、1論文がヒットした。以下の撤回論文である。。
- Reconsolidation revisited: a review and commentary on the phenomenon.
Moore JL, Roche RA.
Rev Neurosci. 2007;18(5):365-82. Review.
Retraction in: Roche RA, Moore J. Rev Neurosci. 2015;26(1):119.
PMID:19544623
ジェニファー・ムーアは、原著論文の出版はない。出版は上記の撤回した総説が1報しかない。博士論文をベースにロシェ講師と共著の「2007年のRev Neurosci. 」総説を出版した。
博士論文が2014年2月に盗用と指摘された。それで、「2007年のRev Neurosci. 」総説も調べられ、盗用が見つかり、2015年に撤回した。その他に出版論文はない。
★パブピア(PubPeer)
ジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)の論文を「パブピア(PubPeer)」で調べていない。
●7.【白楽の感想】
《1》詳細不明
ジェニファー・ムーアは顔写真も見つからず、経歴も事件も不明点が多すぎる。
メイヌース大学は、ジェニファー・ムーアの盗用が明白なのに、研究データに虚偽はないという理由で、訂正博士論文を提出させ、博士号をはく奪しなかった。
これは、とてもマズイ。「盗んでも元に戻せば窃盗にならない?」論理と同じで、これではネカトを奨励しているようなものだ。こんなバカな理屈は世間で通用してもらいたくない(日本の政界で通用している現状を憂う)。
博士論文の盗用に対し、メイヌース大学の学内で大甘な判定をしたが、学外に出た「2007年のRev Neurosci. 」総説は、そうは問屋が卸さない。盗用で2015年に撤回されている。
つまり、出版した総説が盗用で撤回されたのだから、総説の元となった博士論文も撤回が筋である。つまり、博士号はく奪が筋である。
この事件は、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。
アイルランドでのネカト事件は少ない。アイルランドのネカト対処文化の貧困さがこの事件で印象づけられてしまう
ーーーーーーーーーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓
ーーーーーーー
●8.【主要情報源】
① ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のジェニファー・ムーア(Jennifer L. Moore)サイト:Jm | VroniPlag Wiki | Fandom powered by Wikia
② 2015年2月4日。キャット・ファーガソン(Cat Ferguson)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“Unacceptable level of text parallels” loses neuroscientist a paper, but not her PhD – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント