製薬企業:糖尿病薬・メディアトール(Mediator):セルヴィエ社(Servier)(仏)

2017年8月1日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。糖尿病の治療薬・メディアトール(ベンフルオレクス)の危険性を知りながら、「やせ薬」として1976年~2009年の30年の長期に渡って販売し、500~2000人を死亡させた製薬企業。被害者はフランス人が主だった。損害額の総額(推定)は1兆3000億円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

世界規模の大きな製薬企業であるフランスのセルヴィエ社(セルビエ社、Servier、Servier Laboratories、仏語:Laboratoires Servier)が起こした薬害事件である。

糖尿病の治療薬「メディアトール(Mediator)」(メディアトー、ベンフルオレクス(Benfluorex))の危険性を知りながら、「やせ薬」として30年の長期に渡って販売し、500~2000人をを死亡させた。

フランス最大の医薬品スキャンダルである。

危険性を知りながら販売という点で、本ブログでは、データねつ造・改ざん事例として扱った。ただし、危険性を誰がいつ見つけたのか、そしてそれを誰が隠したのか、ハッキリしない。臨床試験データのねつ造・改ざんではない(多分)。なお、裁判所は、欠陥医薬品を市場で販売していた怠慢さを罪にした。

薬害の被害者はフランス人が主だったので、事件はフランスで大々的に報道された。米国でも主要メディアが報道したが、日本の主要メディアは報道していない。

フランスのセルヴィエ社(仏語:Laboratoires Servier)のロゴ。

フランスのセルヴィエ社(仏語:Laboratoires Servier)。写真クレジット:MEHDI FEDOUACH / AFP。写真出典

  • 国:フランスに本社がある世界企業で、事件の被害者はフランス人が主だった。日本にも日本セルヴィエ社がある
  • 集団名:セルヴィエ社(セルビエ社)
  • 集団名(英語):Servier、Servier Laboratories
  • 集団名(仏語):Laboratoires Servier
  • 集団の規模:活動拠点148か国。グループ従業員約21,200人(内、研究開発約3,000人)。年間売上高39億ユーロ(約4680億円)。出典
  • 事件人数:登場するのはジャック・セルヴィエ・会長の1人だけ
  • 分野:製薬
  • 不正年:1996-2009年
  • 発覚年:2007年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はイレーヌ・フラッション(Irène Frachon)で、フランスの医薬品監督当局(Agence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé :AFSSAPS)に告発し、論文に書き、書籍を出版した。
  • ステップ2(メディア): 「フィガロ紙」をはじめフランスの多数のメディア。「ニューヨーク・タイムズ」など米国のメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①フランスの医薬品監督当局(Agence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé :AFSSAPS)の調査。②裁判所。
  • 調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 不正:欠陥医薬品を市場で販売していた怠慢。本記事ではこれを改ざんとみなした。
  • 不正論文数:0報。論文データのねつ造・改ざんではない
  • 被害(者):500~2000人死亡。他に、約2,100人が死亡という報道もある
  • 損害額:総額(推定)は1兆3000億円。内訳 → ①メディアトールを服用して亡くなった人を500~2000人の中間の1250人とし、人生破滅代を1人10億円(当てづっぽう)=1兆2500億円。500万人の服用者の内の健康被害者が2%の10万人とし、損害賠償を1人平均50万円として約500億円(当てづっぽう)。②フランスの医薬品監督体系の信用失墜と対策に10億円(当てづっぽう)。③裁判経費を1億円。④調査経費(AFSSAPS)が5千万円。
  • 結末:セルヴィエ社・責任者の刑務所刑なし。損害賠償約450万円は決定したが、他は不明。総額約3千億円の罰金

●2.【日本語の解説】

日本語の解説は6件以上あり、それらを「修正」引用する。それで、事件の全体が詳細に理解できる。写真は白楽が加えた。

★2017年6月25日アクセス:ウィキペディア日本語版「ベンフルオレクス」

出典 → ココ、(保存版

ベンフルオレクス(Benfluorex)は、フェンフルラミンと関連する食欲減退薬及び脂質降下薬である。フランスの製薬会社であるセルヴィエ社が特許を保有し製造する。2つの臨床試験で、2型糖尿病の患者で血糖のコントロールやインスリン抵抗性を改善することが示されている。しかし、セルヴィエ社は、これが物質の医学的な特性と合わないことを知りながら販売したと疑われている。

2009年12月18日、欧州医薬品庁は、特に心臓弁膜症のリスクが便益を上回ることから、欧州連合内でベンフルオレクスを含有する全ての薬品を撤退させることを勧告した。

フランスでは、セルヴィエ社はこの薬剤を経口血糖降下薬の補助薬としてMediatorの商標名で販売した。1976年から2009年まで市場で流通し、500-2000人の死の原因となったと考えられている。スペイン、ポルトガル、キプロスでも用いられた。

★2011年1月27日:飛田正夫「「スキャンダル薬」メディアトー(Mediator) 安全は医者と政治家の権威回復で保障されるのか?」

出典 → ココ、(保存版

メディアトーの危険性はこのころ既に新聞やテレビでも騒がれて次第に大きな話題になっていた。外国では糖尿病の治療薬として使用が禁止されていたがフランスでは危険が何件も報告されていたが薬品は販売され続けていた。製薬会社は死人は数人だと主張して譲らないが、同じ物質がやせる薬に使用されていてこれまでに死亡者は1000人を超えるとも言われている。

★2011年9月29日:Ovni「セルヴィエ会長が取り調べ受ける」

出典 → ココ、(保存版

セルヴィエ社の糖尿病薬「メディアトール」服用によって500〜2000人が死亡したとされる事件で、9月21日、ジャック・セルヴィエ同社会長(89)(Jacques Servier、写真出典)が過失致死傷害罪で取り調べを受けた。会長は400万ユーロの保釈金の支払いを科され司法監視下に置かれる。セルヴィエグループ5社も予審対象に。同薬は、同社が副作用やリスクを隠して医薬品認可を取り付けたと疑われている。パリジャン紙によると、セルヴィエ会長は虚偽の申請はしていないと容疑を拒否した。

★2012年5月14日:飛田正夫「毒を薬だと偽る詐欺 メディアトーのセルヴィエ仏製薬会社を訴えナンテール裁判所で公判」

出典 → ココ、(保存版

13日ナンテール大審院裁判所で、350人が訴え長らく待たれたメディアトーによる薬害事件の公判がはじまった。この薬の使用で死亡した数は女性を中心に500人から2000人になるといわれている。メディアトーの薬を製造するジャック・セルヴィエ社長が初めて裁判所に顔を出した。国営メディアをその高齢(90歳)を強調して憐憫をさそっている。

しかしメディアトー問題を初めて指摘したブルターニュのイレーヌ・フラッション(FRACHON)さんは裁判所が煙幕を張ってきたのであって、危険な毒を薬だといって偽り、誤魔化し詐欺を働いてきたのだと14日昼のフランス国営放送テレビA2で発言した。

同社の糖尿病治療の薬であるメディアトーは仏健康保険による支払いの待遇をうけてきた。食欲を減退させることから痩せるための薬としても使われた。危険性が指摘されながらも30年の長期に渡って使用されてきた。

多くの犠牲を被った人々は口々に、「メディアトーが危険な薬であることを製薬会社は知っていた」と訴えている。

このスキャンダルな事件がメディア化されてからも生産がストップされてない。セルヴィエ社は仏第2の製薬会社で成長は著しいものがあり不景気の中でも解雇がない。

★2013年5月30日:Ovni「メディアトール事件の裁判スタート」

出典 → ココ、(保存版

製薬セルヴィエ社が糖尿病薬メディアトールの効用を偽って販売したとされる事件の裁判がナンテール軽罪裁判所で5月21日に始まった。ジャック・セルヴィエ会長(91)ら同社幹部5人を被告とする裁判は6月14日まで続く。

メディアトールは糖尿病薬として1976年から販売されたが食欲減退薬として普及。その後、心臓・肺疾患を誘発することがわかり2009年に販売中止になったが、この薬が原因で1300~1800人が死亡したとされる。

この裁判は昨年5月にいったん開始されたが、パリ検察局で捜査中の同事件が裁判に付されるのは違憲の疑いがあると被告側が訴えたため、破棄院の判断を仰ぐために延期されていた。今回の裁判は同薬の効用の虚偽申告に絞ったものだが、パリ検察局は過失致死傷害や医薬品安全局の認可責任も含めた捜査を進めている。

★2015年10月23日:KSM News & Research「メディアトール薬害事件:ナンテール地裁、セルビエ社に損害賠償の支払いを命令」

出典 → ココ、(保存版

メディアトール薬害事件に絡んで、ナンテール地裁民事部は22日、製造・販売元のセルビエ社の落ち度を認めて、原告の被害者2人への損害賠償の支払いに応じるよう命じる判決を下した。この事件で、裁判所が損害賠償支払いを命じたのはこれが初めて。原告らは、賠償額が小さい(原告うち一人は、90万ユーロの請求に対して3万ユーロの賠償金額を設定された)ことを理由に、判決を不服として控訴する方針を明らかにした。

メディアトールは高脂血症の治療薬として開発されたが、後に肥満症の治療薬として転用された。仏国内で500万人に投与されたが、心臓弁疾患と肺動脈性肺高血圧症を誘発するリスクがあることが判明、2009年に販売許可が取り消された。将来的に2100人程度が同薬投与が原因となり死亡すると予想されている。

ナンテール地裁は今回の裁判で、処方がなされた時点(2003年と2006年)で、薬効成分ベンフルオレックスのリスクをセルビエ社が知らなかったはずがなく、患者や医療関係者に警告する義務を怠ったのは明らかだと認め、損害賠償の支払いを命じた。

セルビエ社は、判決に従って賠償金の支払いに応じる姿勢を示しつつ、2009年の販売許可取り消しまで、重大なリスクの判明はなかったとする自らの主張を再確認し、これを訴えるため控訴する可能性を示唆した。この事件では、セルビア社などを被告人とする2件の刑事訴訟も始まっているが、公判の日程などはまだ決まっていない

●3.【事件の経過と内容】

★医薬品:メディアトール(Mediator)(メディアトー、ベンフルオレクス(Benfluorex))

メディアトール(Mediator)の構造式。By Fvasconcellos 01:44, 13 August 2007 (UTC) – 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2554884

化合物名はベンフルオレクス(Benfluorex)で、メディアトール(Mediator)はセルヴィエ社の商品名である。セルヴィエ社が特許を持ち、製造していた。

★ジャック・セルヴィエ(1922年2月9日 – 2014年4月16日)

http://www.servier.pl/content/historia

1954年、パリ大学・医学部を卒業し医師免許を持つ32歳のジャック・セルヴィエ(Jacques Servier、1922年2月9日生まれ)は、数人の社員とともに、製薬会社のセルヴィエ社(Laboratoires Servier)を創設した。

1976年、セルヴィエ社は高脂血症および肥満糖尿病の医薬品としてメディアトール(Mediator)をフランスで販売開始した。

1976年、レジオンドヌール勲章の5段階の最下位『シュヴァリエ』(Chevalier, 騎士、勲爵士)を授与された。

フランス教育功労章(パルム・アカデミック)(Ordre des Palmes Académiques)の、1980年に「Knight」、1996 年に「Officer」の称号が授与された。

2008年12月31日、サルコジ大統領(当時)からレジオンドヌール勲章の最高位・『グランクロワ』(Grand-Croix, 大十字)を授与された(写真の左がサルコジ大統領、右がジャック・セルヴィエ。出典)。

ジャック・セルヴィエは1980年代、サルコジ大統領が若い時、サルコジ法律事務所の初期の顧客の1人だった。その頃からの腐れ縁だと指摘されている。

このように、ジャック・セルヴィエはフランス政府との結びつきは強い。

60年かけてフランスで2番目の製薬会社に育て、2013年には従業員17,000人、58億ドル(約5800億円)を売り上げる会社にまで成長させた。

2014年、ジャック・セルヴィエは、世界の金持ちの174番目、フランスの金持ちの12番目にリストされ、総資産は76億ドル(約7600億円)になった。
→ Jacques Servier

★第一次追及者:イレーヌ・フラッション(Irène Frachon)

1976年から2009年まで33年間、メディアトール(Mediator)は肥満体形の糖尿病者の治療薬としてフランスで使用されていた。同時に、「やせ薬」としても使用されていた。

フランスのブルターニュ・オキシダンタル大学(Université de Bretagne Occidentale)のイレーヌ・フラッション医師(Irène Frachon、1963年生まれ、写真出典)は、メディアトールを処方した自分の女性患者に重度の異常が見られたことから、メディアトールの副作用のデータを集め始めた。

2007年、イレーヌ・フラッション医師は、集めた副作用のデータを解析した結果、メディアトールを心臓弁膜症と肺高血圧症の患者に投与すると、重い健康被害が生じる結論に至った。メディアトールの危険性をデータで示し、具体的に指摘した。

危険性を論文でも指摘した。

【動画】
インタビュー:「イレーヌ・フラッションが犯罪的研究所の医療産業団地を非難(Mediator: Irene Frachon denonce “le complexe medico-industriel” des “laboratoires delinquants”) 」(フランス語)2分5秒
BFMTV が2016/03/11 に公開

2009年、セルヴィエ社は、メディアトール(Mediator)の販売を停止し、市場から製品を回収し始めた。この時点では、フランス政府の医薬品官庁はメディアトール(Mediator)に対して「重大な警告」を発していなかった。

2010年、イレーヌ・フラッションは著書『メディアトール150 mg : 何人死んだ?(仏語:Mediator 150 mg : Sous-titre censurÃ)』(英語:Mediator 150 mg: How Many Dead?)を出版した。著書の表紙写真はアマゾン

2016年、この著書をベースに、「150 Milligrams」というタイトルのフランス映画が作製・放映された。

【動画】
映画の予告編:「150ミリグラム(150 Milligrams / La Fille de Brest (2016) – Trailer (English Subs) ) 」(フランス語)1分45秒
UniFrance が2017/01/25 に公開
 映画全部を無料閲覧できそうなサイトがあるが、登録が必要である。怪しげなので白楽は登録(閲覧)していない。 → ココ

★対岸の火事

年代を追って、もう一度、事件をつかんでいこう。

1976年、セルヴィエ社は高脂血症および肥満糖尿病の医薬品としてメディアトール(Mediator)をフランスで販売開始した。

1976年から2009年まで33年間、フランスでは、数百万人がメディアトール(Mediator)を服用した。

1996年、米国でワイス社(Wyeth)がメディアトール(Mediator)と化学的・薬理的に類似した医薬品フェンフルラミン/フェンテルミン(Fenfluramine/phentermine)をやせ薬として市販していたが、心臓病患者の死亡を受け、フェンフルラミン/フェンテルミン(Fenfluramine/phentermine)の販売を禁止した。

これを受けフランスは、フェンフルラミン/フェンテルミン(Fenfluramine/phentermine)の使用を制限したが、類似医薬品のメディアトール(Mediator)の使用を制限しなかった。

なお、フェンフルラミン/フェンテルミン(Fenfluramine/phentermine)の事件は、フェンフェン事件(fen-phen scandal)と呼ばれているので、以下、そう呼ぶ。

フェンフェン事件は米国では、巨大な集団訴訟になり、患者に計200億ドル(約2兆円)の損害賠償が支払われた。フランスでもフェンフェン事件の訴訟が行なわれたが、損害賠償額は200万ユーロ(約2億4千万円)以下だったので、大きな事件にならなかった。

1997年、米国はメディアトール(Mediator)をフェンフルオアミン(fenfluoramine)と同じ医薬品と見なし、販売を禁止した。

一方、フランスは、フェンフェン(fen-phen)の販売を禁止し、市場から回収したが、類似医薬品のメディアトール(Mediator)の販売を禁止しなかった。

フランスの医薬品監督当局であるAgence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé (AFSSAPS)は、1997年4月にメディアトール(Mediator)の認可を取り消すが2か月後に決定を撤回した。

つまり、フランスは、米国でのフェンフェン事件とその後のメディアトール(Mediator)の販売禁止からメディアトール(Mediator)の危険性を学び、販売を中止すべきだったのだが、学ばなかった。

★健康被害

2007年、フランスで、イレーヌ・フラッション医師がメディアトール(Mediator)の健康被害を訴え始めた。

2009年頃、フランスで、メディアトール(Mediator)の薬害で死亡する人が報告され始めた。

2009年11月、セルヴィエ社は、メディアトール(Mediator)の販売をコッソリ停止し、市場からコッソリ、製品を回収し始めた。

イレーヌ・フラッション医師は、セルヴィエ社とフランスの医薬品監督当局がメディアトール(Mediator)の危険性を患者に何も警告しないと非難した。

車のブレーキに異常が見つかれば車を制作した自動車会社は製造工程での欠陥を修正する。と同時に、既に購入した顧客に対して注意を喚起し、無償で修理に応じるリコールを受け付ける。ところが、セルヴィエ社とフランスの医薬品監督当局は、メディアトール(Mediator)を既に使用した顧客に対して何も注意を喚起していない」、とイレーヌ・フラッション医師は非難した。

2009年12月18日、欧州医薬品庁(European Medicines Agency (EMEA))は、ようやく動き出した。治療効果での利益よりも心臓弁に対する危険性が高いという理由で、欧州内からすべてのメディアトール(Mediator)を回収するよう通達した。

フランス政府・保健当局は、心臓弁損傷や肺高血圧の人がメディアトール(Mediator)を服用し、2,000人が死亡、数千人が入院したと推定している。

政治家とメディアは、セルヴィエ社がメディアトールの危険性を知っていながら数十年も隠していたと非難した。1990年代後半、既に米国で、メディアトールと類似のやせ薬・フェンフェン(fen-phen)が危険視され販売禁止となっていたのである。

セルヴィエ社は「自分たちは危険性のを隠蔽していない。心エコー検査の最近の進歩のおかげで、メディアトールの危険性が見つかってきたのだ」と主張した。

フランスでは、政府はメディアトールを糖尿病薬として認可していたが、医師はやせ薬として処方した方が売れるので、やせ薬として処方していた。

検察官は、セルヴィエ社を消費者詐欺と殺人罪で捜査し、セルヴィエ社がフランスの医療制度を欺いていると非難した。

フランスの医薬品監督当局はAgence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé (AFSSAPS)だが、米国の食品医薬品局(FDA)と比べると、対処が「甘かった」と指摘され、長官は、2011年に辞職した。

というのは、AFSSAPSでは、長い間、医薬品の認可委員であるにもかかわらず、同時に製薬会社のコンサルタントや従業員であることが認められていた。

認可委員は利益相反がないと宣言することが期待されていたが、違反しても罰則がなかった。当時、セルヴィエ社を含め、さまざまな企業のコンサルタントや従業員が、AFSSAPSの医薬品認可委員になっていた。

厚生大臣のグザヴィエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)は、この腐敗した医薬品監督官庁の改革を進めることにした。

2012年5月1日、AFSSAPS を廃止し、フランス医薬品安全庁(Agence Nationale de Sécurité du Médicament et des Produits de Santé:ANSM)が新たに発足した。

★裁判と補償

2012年12月、72歳の患者Aは90万ユーロ(約1億800万円)、67歳の患者Bは12万5千ユーロ(約1500万円)の損害賠償を求めて、ナンテール地方裁判所にセルヴィエ社を訴えた。過失致死傷罪で裁判が始まった。

2015年10月23日、しかし、ナンテール地方裁判所は、患者A に2万7,350ユーロ(約328万円)と患者B に1万ユーロ(約120万円)の賠償金しか認めなかった。請求額のほんの一部だ。

しかし、この裁判で患者側の弁護士を務めたチャールズ・ジョセフ=オーディン(Charles Joseph-Oudin)は勝利宣言をした。裁判所が初めてセルヴィエ社の責任を認めたからだ。

その後、セルヴィエ社は、「全体として、患者の健康被害の補償として7千万ユーロ(約84億円)を用意し、既に1千400万ユーロ(約16億8000万円)を患者に支払った」、と述べている。

なお、白楽は1千400万ユーロ(約16億8000万円)の補償金は何人に対していつ、どのような理由で支払われたかの具体的なデータを持っていない。

2017年7月31日現在、被害者の救済や訴訟が継続中である。また、イレーヌ・フラッション医師は被害者の救済活動を続けている。
→ 2017年6月26日の「LINFO.re」記事、写真同:Irène Frachon : “J’ai de bonnes nouvelles pour les victimes du Médiator” – LINFO.re、(保存版

★2014年:ジャック・セルヴィエ・会長死去

2014年4月16日、裁判の決着がついていない時点だが、ジャック・セルヴィエ・会長は亡くなった。享年92歳。
→ Servier Research Group announces the death of President-Founder Dr. Jacques Servier | Servier

●4.【白楽の感想】

《1》問題点?

メディアトール事件は、服用した人の内、500~2000人(2,100人?)が死亡し、フランス最大の医薬品スキャンダルになった重大事件である。

セルヴィエ社は危険データを隠蔽し、長年市場で販売していたと非難された。危険データを隠蔽していたという点で、本ブログでは、データねつ造・改ざん事例として扱った。

しかし、その危険データがどういうものかハッキリしない。臨床試験データのねつ造・改ざんは指摘されていないし、誰がいつ危険性を見つけたのか、そしてそのデータを誰が隠したのか、ハッキリしない。

なお、フランスの医薬品監督当局(Agence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé (AFSSAPS))の医薬品認可委員に長年、製薬企業のコンサルタントや従業員が就任していた(このお粗末さに、ひどくガッカリ)。この、フランス医薬品監督当局の制度設計の杜撰さが、問題の背景にある。

そのために、調査がいい加減になったようだ。

《2》勲章と資産

ジャック・セルヴィエは政府要人と親しく、フランス国家から重要な勲章をもらっている。フランス国民に貢献したからである。

多数のフランス人の死亡と健康被害をもたらしたのだから、今度は、フランス国民に害を与えた。だから、授与した勲章をはく奪しましょう。

イレーヌ・フラッション医師(写真出典)こそ、勲章にふさわしい。

ジャック・セルヴィエは、世界の金持ちの174番目、フランスの金持ちの12番目で、総資産は76億ドル(約7600億円)になった。

この約7600億円の資産は、死亡した500~200人、そして、その他大勢(500万人)の健康被害者を犠牲にして築いた財産である。

2014年にジャック・セルヴィエは亡くなった。亡くなったので、全財産を没収しましょう。没収したお金は、薬害死亡者と健康被害者に回し、また、薬害防止の研究や制度改革に使いましょう。そういう法律を作ったらどうでしょう。

《3》日本のメディア

メディアトール事件は、フランスで大々的に報道された。米国でも主要メディアが報道したが、日本の主要メディアは報道していない。

外国のネカト事件を記事にしていると、外国で大事件なのに、日本の主要メディアが報道しないという事に何度も遭遇する。生命科学の専門誌も解説しない。日本の情報の貧困さに、日本は大丈夫だろうかとしばしば心配になる。

日本の主要メディアは報道してくださいね。

世界報道自由度ランキング(2017年4月26日の朝日新聞)英語サイト「2017 World Press Freedom Index」)は毎年下がって、2017年には、45位の台湾、48位のボツナワ、63位の韓国より悪い72位の日本なんですが、頑張って下さいね。

生命科学の専門誌も解説して下さいね。

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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Laboratoires Servier – Wikipedia
② ウィキペディア日本語版:ベンフルオレクス – Wikipedia
③ 2011年3月12日のアッシャー・ムラード(Asher Mullard)の「Lancet」論文:Mediator scandal rocks French medical community – The Lancet Volume 377, No. 9769, p890–892, 12 March 2011、doi:10.1016/s0140-6736(11)60334-6
④ 2011年12月11日のスコット・セイヤー(Scott Sayare)記者の「New York Times」記事:Scandal Widens Over French Weight-Loss Drug Mediator – The New York Times、(保存版
⑤ 2014年4月18日のデビッド・ジョリー(David Jolly)記者の「New York Times」記事: Jacques Servier, 92, Dies; Accused of Hiding the Risks of Drugs – The New York Times、(保存版
⑥  2015年10月23日のナタリー・アロンソ(Nathalie Alonso)記者の「Yahoo」記事:French court finds pharma firm Servier negligent in deadly drug scandal、(保存版
⑦ フィガロ紙のメディアトール記事(フランス語):Mediator : dernières actualités et vidéos sur Le Figaro.fr(保存済)
⑧ 論文:Mediator scandal rocks French medical community.
Mullard A.
Lancet. 2011 Mar 12;377(9769):890-2. No abstract available. PMID:21409784
⑨ 2011年1月11日のヒュー・スコフィールド(Hugh Schofield)記者の「BBC News」記事:France braced for diabetic drug scandal report – BBC News、(保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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