2021年8月17日掲載
ワンポイント:スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の院生・パッセラの「2019年11月のAngewandte Chemie」論文がデータねつ造・改ざんで、2020年8月(26歳?)、撤回された。ボスのアントニオ・メツェッティ教授(Antonio Mezzetti)がネカトを見つけたと思われる。事件の内容はほとんど不明。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
アレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-1995-0666、写真出典)は、2016年にイタリアのピサ大学(Università di Pisa)を卒業し、スイスのスイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の院生になった。専門は無機化学だった。
ボスは、著名なアントニオ・メツェッティ教授(Antonio Mezzetti)である。
2020年8月(26歳?)、パッセラの「2019年11月のAngewandte Chemie」論文がデータねつ造・改ざん撤回された。
ボスのメツェッティ教授がデータねつ造・改ざんを見つけたと思われる。
2021年8月17日現在、論文撤回から約1年が経過した。
スイス連邦工科大学チューリヒ校はネカト調査をしていると思うが、何も発表しない。
パッセラは退学になり、研究者を廃業したと思われる。
事件の内容はほとんど不明である。
スイス連邦工科大学チューリヒ校中央棟(Main building of ETH Zurich) 。写真
スイス連邦工科大学チューリヒ校ヘンガーベルク・キャンパス(ETH Honggerberg Campus)の全景。写真出典
- 国:スイス
- 成長国:イタリア
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1994年1月1日生まれとする。2016年に大学院に入学した時を22歳とした
- 現在の年齢:30歳?
- 分野:無機化学
- 不正論文発表:2019年(25歳?)
- 発覚年:2020年(26歳?)
- 発覚時地位:スイス連邦工科大学チューリヒ校・院生
- ステップ1(発覚):第一次追及者は指導教授のアントニオ・メツェッティ(Antonio Mezzetti)で、学術誌に撤回を要請。大学にも通報したと思う
- ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①スイス連邦工科大学チューリヒ校が調査しているかどうか不明
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査しているかどうか不明
- 大学の透明性:発表なし(✖)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:1報撤回
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:退学処分(推定)
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:Alessandro Passera (0000-0003-1995-0666) – ORCID | Connecting Research and Researchers
- 生年月日:不明。仮に1994年1月1日生まれとする。2016年に大学院に入学した時を22歳とした
- 2016年(22歳?):イタリアのピサ大学(Università di Pisa)で学士号取得:化学。「2017年10月のTetrahedron: Asymmetry 」論文の所属より推定
- 2016年11月1日(22歳?):スイスのスイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)・大学院入学:化学
- 2019年11月(25歳?):問題の「2019年11月のAngewandte Chemie」論文出版
- 2020年(26歳?)?:不正が発覚
- 2020年(26歳?)?:同大学・退学(推定)
- 2020年(26歳?)?:スイスのフリブール大学(Université de Fribourg)・研究員(推定)。「2020年3月のOrganic Letters」論文の所属より推定
- 2020年8月(26歳?):「2019年11月のAngewandte Chemie」論文撤回
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★経緯
2020年8月17日、ネカト発覚の経緯は不明だが、アントニオ・メツェッティ教授(Antonio Mezzetti、写真出典)の「2019年のAngewandte Chemie」論文が撤回された。
→ 2020年8月17日の撤回告知:Retraction: Wiley Online Library
- The Manganese(I)-Catalyzed Asymmetric Transfer Hydrogenation of Ketones: Disclosing the Macrocylic Privilege.
Passera A, Mezzetti A.
Angew Chem Int Ed Engl. 2020 Jan 2;59(1):187-191. doi: 10.1002/anie.201912605. Epub 2019 Nov 29.
撤回告知には、データねつ造・改ざんのため論文を撤回した、連絡著者のメツェッティはデータねつ造・改ざんを知らなかったし、関与していなかった、とある。
著者は2人しかいない。
となると、もう1人の著者であるアレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera)がデータねつ造・改ざんをしたことになる。
「撤回監視(Retraction Watch)」の記事に、メツェッティ教授が撤回の詳細を伝えてくる予定とあった。しかし、「撤回監視(Retraction Watch)」に詳細を伝えてこなかった。
2021年8月17日現在、1年経ったが、伝えてこない。
そして、スイス連邦工科大学チューリヒ校は調査していると思うが、何も発表しない。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
学術誌はネカト箇所を具体的に示していない。
スイス連邦工科大学チューリヒ校は調査しているかどうか不明で、当然ながら、調査結果を発表していない
「パブピア(PubPeer)」にコメントがない。
それで、ねつ造・改ざんの具体的内容は不明である。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★論文数
2021年8月16日現在、アレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera)の論文を「https://orcid.org/0000-0003-1995-0666」で見ると、2018年に1報、2019年に5報、2020年に3報、出版していた。
そして、「2019年のAngewandte Chemie」論文が撤回されていた。
「researchgate」では、 17論文がヒットした。
★撤回監視データベース
2021年8月16日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでアレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera)を「Alessandro Passera」で検索すると、本記事で問題にした「2019年のAngewandte Chemie」論文・ 1論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2021年8月16日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera)の論文のコメントを「Alessandro Passera」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》不明
パッセラ事件では、アレッサンドロ・パッセラ(Alessandro Passera)が「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。
パッセラは約10論文を発表している。「2019年11月のAngewandte Chemie」論文だけがネカトというのは、ヘンである。
スイス連邦工科大学チューリヒ校はネカト調査をしているのだろうか?
印象として、スイス連邦工科大学チューリヒ校はまともにネカト調査をしていない。透明性に欠ける。研究レベルは高いけど、残念な大学という印象だ。
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●9.【主要情報源】
① 2020年8月18日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Top chemistry journal retracts paper for faked data – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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