ロバート・フィデス(Robert A. Fiddes)(米)

2017年7月26日掲載。

ワンポイント:米国の男性医師で、カリフォルニア州にサザン・カリフォルニア研究所を設立し、医薬品の臨床試験を行なったが、1990年代、その検査結果をねつ造・改ざんした。1997年(52歳)に発覚し、食品医薬品局(FDA)が対応した。1997年(52歳)、15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された。医師免許はく奪。損害額の総額(推定)は34億2千万円。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
ーーーーーーー

●1.【概略】

Robert Fiddes, MD – Of Mice and Men , 60 Minutes, April 1, 2001

ロバート・フィデス(Robert A. Fiddes、写真出典)は、米国のカリフォルニア州のウィッティア(Whittier)の家庭医だった。1980年代後半(40歳代中頃)、医療よりも収入が良いという理由で、サザン・カリフォルニア研究所(Southern California Research Institute)を設立し医薬品の臨床試験を開始した。

1997年2月(52歳)、臨床試験の結果をねつ造・改ざんし食品医薬品局(FDA)に提出したことが発覚した。

1997年9月(52歳)、15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された。

2000年3月(55歳)、医師免許はく奪。

2002年11月(57歳)、食品医薬品局(FDA)はフィデスに20年の締め出し処分(debarment)、事務長1人と治験コーディネーター2人に5年間の締め出し処分(debarment)を科した。

米国のカリフォルニア州のウィッティア(Whittier)のグリーンリーフ大通り(Greenleaf Avenue)。この町にフィデスの医院があった。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:カナダ
  • 医師免許(MD)取得:カナダのブリティッシュ・コロンビア大学
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1945年1月1日生まれとする。1997年9月27日の新聞記事に52歳とあった。カナダのバンクーバーで生まれる
  • 現在の年齢:79 歳?
  • 分野:医薬品の臨床試験
  • 最初の不正:1990年頃(45歳?)
  • 発覚年:1997年(52歳?)
  • 発覚時地位:サザン・カリフォルニア研究所(Southern California Research Institute)・所有者、医師
  • ステップ1(発覚):近隣医院のマネージャーであるデネル・デル・ヴァレー(Dennelle Del Valle)が、政府の監査人に伝えた
  • ステップ2(メディア): 「ロサンゼルス・タイムズ」、「New York Time」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①食品医薬品局(FDA)。②裁判所
  • 食品医薬品局(FDA)・調査報告書のウェブ上での公表:あり
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正報告数:200件以上
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は34億2千万円。内訳 → ①医者になるまで5千万円。④200件の医薬品の臨床試験で総額1000万ドル~5000万ドル(10億円~50億円)を受領。中値を取って30億円とした。⑤調査経費(食品医薬品局(FDA))が5千万円。⑥裁判経費が2千万円。⑧巻き込んだ共犯者1人当たりの損害額を1億円とし、3人で3億円
  • 結末:15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金。医師免許はく奪。20年年間の締め出し処分

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1945年1月1日生まれとする。1997年9月27日の新聞記事に52歳とあった。カナダのバンクーバーで生まれる
  • 1970年(25歳):カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)を卒業し、医師免許取得
  • 1970年(25歳):米国のカリフォルニア州のロングビーチで研修医。この時点で結婚していた(妻:レベッカ Rebecca)
  • 1981年(36歳):米国のカリフォルニア州のウィッティア(Whittier)で医院開業。ラヴェリン・カーペンティア(Laverne Carpentier)が医療助手
  • 1980年代後半(40歳代中頃):サザン・カリフォルニア研究所(Southern California Research Institute)を設立
  • 1997年2月(52歳):医薬品の臨床試験の結果を改ざんし食品医薬品局(FDA)に提出したことが発覚した
  • 1997年9月(52歳):15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された
  • 2000年3月(55歳):医師免許はく奪
  • 2002年11月(57歳):食品医薬品局(FDA)はフィデスに20年間の締め出し処分(debarment)を科し

●5.【不正発覚の経緯と内容】

フィデス医師の運営したサザン・カリフォルニア研究所の腐敗は、研究所内のメモ、所内文書、捜査官のメモ、製薬会社と裁判所の記録、個人の日記、関係者の宣誓供述書だけでなく、政府関係者、弁護士、研究所の前従業員、研究所のコンサルタントたちとのインタビューから事態が解明されてきた。

★尊敬される医師

フィデスはカナダで生まれ育ち、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)で医師免許を取得した。

1970年(25歳)、米国のカリフォルニア州のロングビーチの病院で研修医を務めた。この時、既に妻・レベッカ(Rebecca)と結婚していた。

1981年(36歳)、米国のカリフォルニア州のウィッティア(Whittier)で家庭医の個人医院を開業し、ラヴェリン・カーペンティア(Laverne Carpentier)を医療助手として採用した。

以来約10年弱、フィデス医師とカーペンティア医療助手は、地域の人々に愛され、勤勉に医療をした。

「夫のフィデス医師とラヴェリンは、患者に最高の医療をすべく、長時間、熱心に働いていました」。「夫の患者さんたちは、ロブ(フィデス医師)とラヴェリン(カーペンティア医療助手)に、たくさんの感謝の気持ちを込めて、自家製のクッキーから手作りの人形に至るまで、オフィスに持ってきました」と、妻・レベッカは後に述べている。

★不正への道

フィデス医師が個人医院を開業したカリフォルニア州では、医療システムが変化しつつあった。

1980年代、カリフォルニア州に管理型医療(Managed care – Wikipedia)が席巻し始めたのである。

管理型医療(システム)((医療サービスの提供を保険者側がコントロールすることによって,効率的に医療サービスを供給するシステム.被保険者は,基本的に保険者が指定した医師にまず受診することが求められ,必要に応じて専門医療機関に受診することができる.提供される医療は,保険者が指定した医師及び保険者が決定する。(managed care systemの意味 – 英和辞典 Weblio辞書

しかし、フィデス医師は、「患者の病気を診断する必要な検査なのに、保険者側にコントロールされ、医療の手が縛られている」と感じていた。フィデス医師は、「患者は新しいシステムに同じように不満を感じている」とも述べていた。

不満・不安が募り、フィデス博士は、法律の資格を得ようと夜学に通った。

1987年(42歳)、彼はカリフォルニア州の司法試験に合格した。

しかし、その頃から、フィデス医師は仕事内容を大きく変えた。

自分の患者を被験者にして、医師が臨床検査できることになったので、製薬会社の新薬の安全性と有効性を検査する臨床検査に自分の患者を被験者にし始めたのだ。フィデス医師は管理型医療の拘束から逃れるチャンスだと思い、新しい展開に飛びついた。

フィデス医師はカーペンティア医療助手をフルタイムの治験コーディネーターに任命し、カリフォルニア州ウィッティアの自分の病院内にカリフォルニア臨床試験会社(California Clinical Trials)を設立し、医薬品の臨床試験を行ない始めた。

そして、新しい事業を大きくしようと夢見るようになった。

フィデス医師の臨床試験会社は、カリフォルニア臨床試験会社(California Clinical Trials,)、サザン・カリフォルニア研究所(Southern California Research Institute)、ウィッティア研究社(Whittier Research Company)などと呼ばれるが、本記事では、サザン・カリフォルニア研究所(Southern California Research Institute)という名称を使用する。

製薬企業は、1つの医薬品当たり臨床検査代として、5万ドル~25万ドル(500万円~2500万円)をフィデス医師に払ってくれた。

医薬品の臨床試験を行なう方が患者を治療するより多くの収入が得られるので、フィデス医師は、結局、患者を臨床試験のモルモットとすることを主眼にし、治療は二の次にした。

彼の新しい臨床試験ビジネスは急速に成長した。

すぐにビジネス・パターンを作り上げた。

フィデス医師は1階のオフィスで患者に会い、診察をロクにしないで、すぐに、2階の治験コーディネーター室に行くよう指示した。多くの場合、患者は臨床試験に参加することに消極的だった。

それで、フィデス医師は患者に臨床試験に参加するよう強く言った。

スーザン・レスター(Susan Lester)は後にフィデス医師を告発した元治験コーディネーターだが、患者はしばしば「私は臨床試験に参加したくないけど、フィデス医師を怒らせたくないので・・・」、と言ったと述べている。

多くの患者は、治験参加合意書に署名する前に、フィデス医師やカーペンティア治験コーディネーターへの相談を要求したり、ゆっくり考える時間を求めた。

初期の頃、レスターや他の治験コーディネーターは、患者が納得するまで、待った。しかし、フィデス医師やカーペンティアは相談に乗るのを望まず、治験参加合意書を早く作成したがった。

フィデス医師やカーペンティアは、治験コーディネーターのレスターたちに、「患者に治験参加をどうしようかと考えさせるのは大きな間違いだ。患者に選択権があると言ってはいけない。患者に治験参加させればいいだけだ」と指示した。

1990年代初期から、200件以上の医薬品の臨床試験を行なった。1つの医薬品当たり5万ドル~25万ドル(500万円~2500万円)の収入とすれば、総額1000万ドル~5000万ドル(10億円~50億円)以上の収入になったハズだ。

ところが、これらの検査結果は、ほとんど、ねつ造・改ざんされた結果だったのだ。

★不正の内容:トム・パラムの治験例

出典:【主要情報源】④

トム・パラム(Tom Parham、男性)は前立腺に問題があり、フィデス医師の患者の一人だった。

トム・パラムの医療記録には「長期間の徐脈」が記載されていて、心臓病の病歴があることは一目瞭然だった。それで、本来は、前立腺の臨床試験に参加できなかったが、フィデス医師が参加するよう勧めた。

治験コーディネーターのスーザン・レスターは、トム・パラムの心臓病の病歴に気が付き、フィデス医師に「前立腺の臨床試験に不適格です」と伝えた。

しかし、フィデス医師は参加させた。

臨床試験を開始して数日後、トム・パラムは体調が悪くなり、診察室に来た。 レスターは、臨床試験に使用していた医薬品の投与をやめた。

しかし、数日後、トム・パラムの脈拍は非常に低くなり、別の病院で診察する、すぐにペースメーカーが必要だと診断された。

フィデス医師は政府とのトラブルを避けるため、トム・パラムの医療記録から「長期間の徐脈」を削除してしまった(改ざん)。

トム・パラムは、フィデス医師とその仲間が裏でこんな不正をし、自分をモルモットにしてお金を得ていることを知らなかった。

★不正の内容:尿のすり替え例

1996年夏、アラン・ノックス(Alan Knox)はサザン・カリフォルニア研究所の財務責任者に就任した。

ノックスは事務長のエレイン・イーリン・ライ(Elaine Yee-Ling Lai)に、 従業員・キャロル・ローズ(Carol Rose)の請求書を持ってくるように言われた。

ノックスは、ファイリング・キャビネットからキャロル・ローズへの請求書を取り出して読んだ時、彼はビックリした。 $ 25(約2,500円)の請求書には「尿サンプル」と書かれていた。キャロル・ローズが患者のかわりに自分の尿を提供し(ねつ造)、その支払いの証拠だったのだ。

ノックスは、病院で大掛かりな不正が行われている気配を察し、請求書をコピーし自分用に保管した。 彼はライ事務長にオリジナルを渡しながら、「ここでは何が起こっているんですか?」と、ライ事務長と長年勤めている治験コーディネーターのデルフィナ・ヘルナンデス(Delfina Hernandez)に尋ねた。

2人の返事は、最初は、「どうでもいいじゃやない」だった。

しかし、ノックスがさらに追及し続けたので、2人はノックスを見つめて、またお互いの目と目を見合って、「どうやら、真実を伝えなければならない状況のようね」と、研究所で行なっている不正について話はじめた。

研究所のトリックを2人が話すにつれ、ノックスは、そのデータねつ造・改ざんの大きさに驚いた。

一方、キャロル・ローズが尿のすり替えを他所で話すことを、フィデス医師は恐れていた。

1996年8月、ヒルトン・ホテルで、フィデス医師、ライ事務長、デルフィナ・ヘルナンデス(治験コーディネーター)、ラヴェリン・カーペンティア(治験コーディネーター)の4人は、「キャロル・ローズの尿のすり替問題」を相談した。

フィデス医師は、キャロル・ローズの偽のカルテと偽の患者歴を作成し、査察で尋ねられた場合、キャロル・ローズの尿は、彼女の治療の一部として集めたと説明することにした(ねつ造)。

★不正発覚の経緯

1996年6月、近隣医院のマネージャーであるデネル・デル・ヴァレー(Dennelle Del Valle)は、サザン・カリフォルニア研究所の従業員から、研究所で行なわれている犯罪的行為や詐欺的行為の話を聞いて、政府の監査人に伝えた。

デネル・デル・ヴァレーが実際にしたことは、監査人にメモを渡しただけである。

そのメモに電話番号とスーザンという名前だけが書かれていた。

サザン・カリフォルニア研究所の元従業員だったスーザン・レスター(Susan Lester)は、研究所で何が行なわれていたのかを知っていただけでなく、彼女の話を裏付ける記録も持っていた。

1997年2月、食品医薬品局(FDA)が査察に入った。

★不正の調査結果

1997年2月(52歳)、サザン・カリフォルニア研究所の数年にわたる調査が始まった。結論から述べると、この事件は、これまでに摘発された臨床試験会社の不正の中でも最も腐敗した不正の1つだった。

患者の不都合なデータを削除し、架空の患者をリストに加え、不都合な検査サンプルを望むサンプルに交換し、測定機器を操作するなどのねつ造・改ざんを行なっていた。

1つの医薬品に数十人もの架空の患者をねつ造してケースも見つかった。治験患者の血液の代わりに従業員の血液を使用したり、従業員の家族の医療データを治験患者のデータと偽って製薬会社や政府に提出していた。

食品医薬品局(FDA)が査察官の調査に対し、フィデス医師と従業員たちはデータねつ造・改ざんを認めた。

ただ、どのデータが正しく、どのデータがねつ造・改ざんなのか不明なので、サザン・カリフォルニア研究所のすべて治験データは事実上、クズになった。

民間の医療機関で行なわれた医薬品の安全性と有効性の検査の信頼性に大きな疑問符がつく事態となった。

サザン・カリフォルニア研究所の元財務責任者アラン・ノックス(Alan Knox)は、データねつ造・改ざんを知るに及んで、調査開始のわずか数か月後に辞任していた。

ノックスは、「フィデス医師と従業員たちは彼のすべての患者を危険にさらしたが、危険はそれだけでなく、治験データを歪めることで、アメリカの全国民を危険にさらしたのだ」と憤慨した。

フィデス医師の不正は、医薬品の臨床試験のために近年開発された新しいシステムの弱点を突いていた。 つまり、大学病院の教授主導の臨床データはねつ造・改ざんされているという評判が流布され、製薬業界は、もはや、大学病院の教授に治験データを依存しなくなった。製薬業界は、むしろ、数千もの個人病院の医師に医薬品の臨床試験を依頼し、そのデータに頼っていた。個人病院の医師は、患者の病気を治療する本業よりも医薬品の臨床試験をする方がお金を稼げる状況になっていた。

★裁判・処分

1997年8月(52歳)、食品医薬品局(FDA)に虚偽の報告をした罪で有罪の判決が下った。

1997年9月(52歳)、フィデス医師に15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された。

フィデス医師は、ロサンゼルス・メトロポリタン拘置所(Metropolitan Detention Center in Los Angeles、写真同)で服役した。

1999年6月、食品医薬品局(FDA)はフィデス医師を臨床研究に不適格とした。

2000年3月、フィデス医師の医師免許はく奪。

2002年11月、食品医薬品局(FDA)はフィデスに20年間の締め出し処分(debarment)を科した。 → PDF

★フィデス医師以外の有罪者

2002年、食品医薬品局(FDA)はフィデス事件の共犯者として事務長1人と治験コーディネーター2人に5年間の締め出し処分(debarment)を科した。

  • エレイン・イーリン・ライ(Elaine Yee-Ling Lai)。事務長、女性。食品医薬品局(FDA)は5年間の締め出し処分(debarment):FDA Debarment List > FR DATE:11/13/2002
  • ラヴェリン・カーペンティア(Laverne Carpentier)、55歳、女性。治験コーディネーター。食品医薬品局(FDA)は5年間の締め出し処分(debarment):FDA Debarment List > FR DATE:12/02/2002
  • デルフィナ・ヘルナンデス(Delfina Hernandez)、39歳、女性。治験コーディネーター。食品医薬品局(FDA)は5年間の締め出し処分(debarment):FDA Debarment Listに名前が載っていない。

また、1997年時点では、ラヴェリン・カーペンティアとデルフィナ・ヘルナンデスの2人の治験コーディネーターには5年の刑務所刑が求刑された。

しかし、刑期の記事が見つからないので、多分、刑務所刑は免除されたのだと思う。

●6.【論文数と撤回論文】

フィデス事件は、データねつ造・改ざん事件だが、論文データのねつ造・改ざん事件ではない。それで、【論文数と撤回論文】は本質的には重要ではないが、一応、探った。

2017年7月25日現在、パブメド(PubMed)で、ロバート・フィデス(Robert A. Fiddes)の論文を「Robert A. Fiddes [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、0論文がヒットした。

「Fiddes RA [Author]」で検索すると、1995年の1論文がヒットした。

撤回論文はない。

●7.【白楽の感想】

《1》食品医薬品局(FDA)が管轄した事件

生命科学系のデータねつ造・改ざん事件だが、研究公正局の管轄外の事件である。

医薬品の臨床試験の結果のデータねつ造・改ざん事件なので、食品医薬品局(FDA)が対処した。

データねつ造・改ざん事件だが、犯罪とみなされ、裁判の結果、15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された。

《2》防ぐ方法

フィデス事件は、臨床試験の結果のデータねつ造・改ざんで、組織的に行なった。こういうデータねつ造・改ざん行為は、単独犯なら周囲の人が気が付く。しかし、研究所が組織的に行なうと、発覚は難しい。周囲の人は不正を承知で協力しているので、かなり多量の隠蔽が長期間行なわれてしまう。

事態が表面化するのは、キッカケとなる何らかの破たんが必要だ。破たんが生じないと不正は続く。不正が続くと、健康被害、信用失墜、金銭的損害がとても大きくなる。

日本でも、企業が企業ぐるみで、官庁は省庁ぐるみで、政府は首相ぐるみで隠ぺいする不正がかなりある(印象。加計学園問題 – Wikipedia)。権力構造の上部で不正が組織ぐるみで行われると、問題は深刻である。「日本に正義はなく、真実を最も尊いとする思想がない」。

研究ネカトでも、日本のかなりの大学は、相変わらず大学ぐるみ、大学・調査委員会ぐるみでネカト行為を隠ぺいしている。

組織が隠蔽できないシステム、あるいは、隠蔽に大きな処分を科すシステムを構築できていない。

組織ぐるみのデータねつ造・改ざんで、不正が暴かれたケースの大半(全部?)は、組織内部の人の告発が発端である。どんな組織にもまともな人間がいて、善行をするのである。

というわけで、組織ぐるみのデータねつ造・改ざんを防ぐ方法は、内部告発できる環境・条件・システム・文化の育成である。というか、現在、それ以外の方法がない。

従って、内部告発を奨励し、内部告発者を厚遇・保護しましょう。このことは、白楽の発見ではなく、米国の犯罪捜査では常識だ。

しかし、米国でもそうだが、日本では依然と激しく、告発者をハラスメントするコクハラがまん延している。コクハラは社会を悪くする重大な違反行為なので、厳罰に処すべきだ。

ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓

ーーーーーー

●8.【主要情報源】

① 1997年9月27日のデビッド・オルモス(David R. Olmos)記者の「ロサンゼルス・タイムズ」記事:3 to Plead Guilty in Lab Fraud – latimes、(保存版
② 1998年9月16日のデビッド・ローゼンツィーグ(David Rosenzweig)記者の「ロサンゼルス・タイムズ」記事:Doctor Who Falsified Drug Tests Sentenced – latimes、(保存版
③ ◎1999年5月17日のカート・エイケンウォールド(Kurt Eichenwald)記者とジーナ・コラータ(Gina Kolata)の「New York Time」記事:A Doctor’s Drug Trials Turn Into Fraud – The New York Times、(保存版
④ 2001 年3月30日放映のテレビ「60 minitues」:Drug Trial Dangers? – CBS News、(保存版
⑤ 2002年6月11日、食品医薬品局(FDA)の締め出し処分(debarment):FDA Debarment List > FR DATE: 11/06/2002、(保存版
⑥ 2006 年11月10日のポール・ビロウ(Paul Below)のパワーポイント:PPT – Fraud & Misconduct at Investigator Sites PowerPoint presentation | free to download – id: 3b22ca-YjJmN、(保存版
⑦ Federal Register/Vol. 67, No. 215/Wednesday, November 6, 2002:<1>
Federal Register :: Robert A. Fiddes; Debarment Order。<2> Federal Register :: Elaine Yee-Ling Lai; Debarment Order。<3> Federal Register :: Delfina Hernandez; Debarment Order
Fraud And Misconduct |authorSTREAM
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

Subscribe
更新通知を受け取る »
guest
0 コメント
Inline Feedbacks
View all comments