2022年12月10日掲載
ワンポイント:ミズラヒは、依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))・臨床研究者でトロント大学(University of Toronto)・準教授だった。2022年11月14日(48歳?)、米国の研究公正局は、ミズラヒの1件の研究費申請書にデータねつ造・改ざんがあったと発表した。2022年11月3日から1年間の監督期間(Supervision Period)という軽い処分を科した。記事執筆時点では、撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi、ORCID iD:、写真出典)は、事件当時、カナダの依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))・臨床研究者でトロント大学(University of Toronto)・準教授だった。現在はカナダのマギル大学(McGill University)・教授、精神科・副科長である。専門は神経画像診断学(陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography (PET))である。
カナダの研究者だが、米国・NIHに研究費を申請し、その申請書にネカトがあったので、米国の研究公正局がネカト処理対応をした。
ネカト発覚の経緯は不明だが、2018年2月に申請した研究費申請書のデータねつ造・改ざんが指摘されているので、同じ研究室の上司または同僚がみつけ告発したと思われる。発覚時期は、2018年(44歳?)と推定される。
カナダの依存症精神健康センターがネカト調査を終え、クロと判定し、米国の研究公正局に報告した。
2022年11月14日(48歳?)、研究公正局(ORIロゴ出典)は、ミズラヒが1件の研究費申請書のデータをねつ造・改ざんしていたと発表した。
2022年11月3日(48歳?)から1年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。1年間の監督期間(Supervision Period)処分は軽い処分である。
依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))。写真出典
依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))。写真出典
- 国:カナダ
- 成長国:アルゼンチン
- 医師免許(MD)取得:アルゼンチンのブエノスアイレス大学
- 研究博士号(PhD)取得:トロント大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1998年に医師免許を取得した時を24歳とした
- 現在の年齢:50歳?
- 分野:神経画像診断学
- 不正研究費申請書:2018年(44歳?)
- 発覚年:2018年(44歳?)
- 発覚時地位:依存症精神健康センター・臨床研究者でトロント大学・準教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①依存症精神健康センター・調査委員会。②研究公正局
- 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正研究費申請書数: 1件の研究費申請書。2022年12月9日現在、撤回論文はない
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に移籍し研究職を続けた(◒)
- 処分:NIHから1年間の監督期間(Supervision Period)
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:(1)Romina Mizrahi | Department of Psychiatry – McGill University、(2)Romina Mizrahi | LinkedIn
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1998年に医師免許を取得した時を24歳とした
- 1998年(24歳?):アルゼンチンのブエノスアイレス大学(University of Buenos Aires)で医師免許を取得
- 2007年(33歳?):カナダのトロント大学(University of Toronto)で研究博士号(PhD)を取得:分子生物学
- 2007年6月(33歳?):カナダの依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))・臨床研究者、カナダのトロント大学(University of Toronto)・助教授
- 2012年7月(38歳?):カナダのトロント大学(University of Toronto)・準教授
- 2018年(44歳?)(推定):不正研究が発覚
- 2020年12月(46歳?):カナダのマギル大学(McGill University)・教授、精神科・副科長
- 2022年11月14日(48歳?):米国の研究公正局がネカトと発表
- 2022年12月9日(48歳?)現在:マギル大学(McGill University)・教授、精神科・副科長職を維持:Romina Mizrahi | Department of Psychiatry – McGill University
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
治療説明動画:「Physician Spotlight: Dr. Romina Mizrahi – YouTube」(英語)2分48秒。
Ontario Medical Association(チャンネル登録者数 662人)が2013/08/01に公開
【動画2】
「ロミナ・ミズラヒ」と紹介。「ロミナ」は「ロミーナ」の方が近いかもしれない
講演動画:「Molecular Imaging Studies in Youth. – YouTube」(英語)54分10秒。
Douglas Research Centre(チャンネル登録者数 1530人)が2021/03/13に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)
ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)は依存症精神健康センター(Centre for Addiction and Mental Health (CAMH))・臨床研究者でトロント大学(University of Toronto)・準教授だった。
ミズラヒは陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography (PET) 、写真出典)の専門家で、有能だったようだ。
「撤回監視(Retraction Watch)」記事には、ミズラヒは米国・NIHから400万ドル(約4億円)以上の研究費を獲得していたとあった。
調べてみると、2014~2020年の7年間に米国NIHから13件の研究費を獲得していた:Grantome: Search:Romina Mizrahi
★研究公正局
ネカト発覚の経緯は不明であるが、2018年2月に申請した研究費申請書のデータねつ造・改ざんが指摘されているので、同じ研究室の上司または同僚が見つけ、告発したと思われるが、特定できない。発覚時期は、2018年(44歳?)と推定される。
2022年11月14日(48歳?)、研究公正局はミズラヒが1件の研究費申請書のデータをねつ造・改ざんしていたと発表した。
1件の研究費申請書は以下の通り(研究公正局の発表のコピペ)。
• R01 MH118495-01, “Imaging nociceptin receptors in clinical high risk and first episode psychosis,” submitted to NIMH, NIH, on February 2, 2018.
2022年11月3日から1年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。1年間の監督期間(Supervision Period)処分は軽い処分である。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2022年11月14日の研究公正局の発表では、研究費申請書のネカト部分を以下のように記載している。
ミズラヒは、患者グループと健康人ボランティア(HV)グループの間の脳領域における放射性医薬品 [11C]NOP-1Aの結合に関する陽電子放出断層撮影 (PET) データを故意に改ざんした。
具体的には、ミズラヒは、患者グループではNOPの結合が高いという結果を出したかったために、陽電子放出断層撮影 (PET)データで、健康人ボランティアの3人のデータを故意に除き、患者グループでは4人のデータを故意に除いた。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2022年12月9日現在、パブメド(PubMed)で、ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)の論文を「Romina Mizrahi [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2005~2022年の18年間の122論文がヒットした。
2022年12月9日現在、「Retracted Publication」にチェックを入れてパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2022年12月9日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)を「Mizrahi」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年12月9日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)の論文のコメントを「Romina Mizrahi」で検索すると、0論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》ホントに申請書1つだけ?
ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)はトロント大学(University of Toronto)・準教授の時にネカトをした。その後、マギル大学(McGill University)・教授、精神科・副科長に移籍した。
マギル大学への移籍は、ネカト発覚後だが、その場合、通常、ネカト調査を受けていますと、移籍前にマギル大学に伝えない。つまり、マギル大学はネカト調査されていることを知らないでミズラヒを受け入れている。
研究公正局の発表で知り、ババを引いた形になる。
研究公正局の処分は 1年間の監督期間(Supervision Period)という軽い処分なので、マギル大学は解雇しないだろう。
勿論、ネカト調査を受けていることを言わずに移籍してきたことで、ミズラヒを解雇するかもしれない。
イヤ、解雇しない。ミズラヒは研究職を維持できると思われる。
ただ、今回の事件は、ミズラヒが研究成果に都合の良いデータを選んだ改ざん行為である。
ネカトの法則:「ネカトはネカト常習者の研究スタイルなので、他論文でもネカトしている」。
ミズラヒは他の研究費申請書でも出版論文でも、同様な改ざんをしていると、白楽は思う。
ただこの種の改ざんは第三者が論文をチェックしてもわからない。共同研究者や生データを共有している人しかわからない。
生データの調査をしたのだろうか?
していないだろうなあ~。
ロミナ・ミズラヒ(Romina Mizrahi)、https://www.pressreader.com/canada/toronto-star/20130608/283038347095165
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●9.【主要情報源】
① 研究公正局の報告:(1)2022年11月14日:Case Summary: Mizrahi, Romina | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2022年11月17日 の連邦官報:2022-25031.pdf。(3)2022年11月17日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconductt。
② 2022年11月14日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Psychiatrist in Canada faked brain imaging data in grant application, U.S. federal watchdog says – Retraction Watch
③ 2022年11月16日のハンナ・マーフィー(Hannah Murphy)記者の「 Innovate Healthcare 」記事:Researcher in hot water after manipulating PET imaging data for grant application
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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