「アカハラ」「レイプ」:英文学:バレット・ワッテン(Barrett Watten)(米)

2020年3月22日掲載 

ワンポイント:男性教授が女性院生などをイジメた典型的なアカハラだが、被害女性は、大学が対応してくれないので、ツイッターで告発し、大学が後手に回ったケース。ワッテンはウェイン州立大学(Wayne State University)・教授である。1994-2019 年(45-70歳)の25年間(推定)、大学同僚、大学事務員、院生にアカハラ(敵対的は態度、言葉による虐待、女性院生を操ること、脅迫)し、女性院生をレイプした。2019年(70歳)、女性院生のモリー・スパルター(Molli Spalter)がツイッターで告発し、2019年11月(71歳)、大学はワッテンを教育禁止処分に科し、研究室を英文学科棟から引っ越しさせた。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

バレット・ワッテン(Barrett Watten、写真出典)は、学部時代に生化学を学んだが、詩作に興味を持ち、その後の人生で文学を修めた。1995年(46歳)、英文学で研究博士号(PhD)を取得した。その前年、ウェイン州立大学(Wayne State University)・教員になり、事件を起こした時は、教授だった。専門は英文学・近代主義文学である。

日本語に翻訳された著書はないが、10数冊の著書がある。 → Amazon.com: Barrett Watten。例えば、『The Constructivist Moment: From Material Text to Cultural Poetics (English Edition)』(2010年出版、464 ページ、ISBN:0819566101、表紙出典上記サイト)を出版した。

ワッテンは、1994-2019 年(45-70歳)の25年間(推定)、大学同僚、大学事務員、学生にアカハラ(敵対的は態度、言葉による虐待、女性学生を操ること、脅迫)し、女性院生をレイプしていた。

2019年4月(70歳)、女性院生のモリー・スパルター(Molli Spalter)がワッテンのアカハラ行為をツイッターで告発した。その社交メディア(twitter)に、現・元・学生および教職員が、数年に及ぶワッテンのアカハラ行為を指摘した。

2019年11月(71歳)、ウェイン州立大学はワッテンを教育禁止処分に科し、研究室を英文学科棟から引っ越しさせた。

2020年3月21日(71歳)現在、ワッテンはウェイン州立大学・教授に在職している。 → Barrett Watten (ad6155) – Wayne State University、(保存版

ワッテン事件は刑事事件になっていない。

ウェイン州立大学(Wayne State University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:カリフォルニア大学バークレー校
  • 男女:男性
  • 生年月日:1948年10月3日
  • 現在の年齢:75 歳
  • 分野:英文学・近代主義文学
  • アカハラ行為:1994-2019 年(45-70歳)の25年間(推定)
  • 最初に訴えられた:不明
  • 社会に公表年:2019年(70歳)
  • 社会に公表時地位:ウェイン州立大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は院生のモリー・スパルター(Molli Spalter)で、ツイッターで告発
  • ステップ2(メディア):「Chronicle of Higher Education」、「Barrett Watten Records」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ウェイン州立大学・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学・処分のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:大学以外が詳細をウェブ公表(⦿)
  • 不正:大学同僚、大学事務員、院生にアカハラ(敵対的は態度、言葉による虐待、女性院生を操ること、脅迫)、それに女性院生をレイプ
  • 被害者数:多数(推定)の大学同僚、大学事務員、院生
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に発覚時の地位を続けた(〇)
  • 処分:教育禁止処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Barrett Watten – English – College of Liberal Arts and Sciences

  • 生年月日:1948年10月3日、カリフォルニア州ロングビーチで生まれた
  • xxxx年(xx歳):米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)入学:生化学選考
  • 1969年(20歳):カリフォルニア大学バークレー校 (University of California, Berkeley)で学士号取得:生化学
  • 1972年(23歳):アイオワ大学(University of Iowa)で修士号取得:芸術学
  • 1995年(46歳):カリフォルニア大学バークレー校 (University of California, Berkeley)で研究博士号(PhD)取得:英文学。博士論文「Horizon Shift: Progress and Negativity in American Modernism」
  • 1994年(45歳):ウェイン州立大学(Wayne State University)・教員。後、教授
  • 1994年(45歳)(推定):同大学でアカハラを始めた
  • xxxx年(xx歳):アカハラを告発されたが大学は対処しなかった
  • 2019年2月(70歳):院生のモリー・スパルター(Molli Spalter)がアカハラを大学に告発した
  • 2019年4月(70歳):大学の対処に不満で、モリー・スパルター(Molli Spalter)はアカハラをツイッターにアップした
  • 2019年11月(71歳):大学はワッテンを教育禁止処分に科した
  • 2020年3月21日(71歳)現在:ワッテンはウェイン州立大学・教授に在職している。 → Barrett Watten (ad6155) – Wayne State University、(保存版

●3.【動画】

【動画1】
事件の動画ではない。講演動画:「2017.3.15バレット・ワッテンとアビゲイル・ラング、エタ・ユニオン財団、パリ(2017.3.15 Barrett Watten et Abigail Lang, Fondation des Etats-Unis, Paris)- YouTube」(フランス語+英語)23分37秒。
doublechange readingsが2018/01/16 に公開

●5.【アカハラ発覚の経緯と内容】

★バレット・ワッテン(Barrett Watten)の人生

バレット・ワッテン(Barrett Watten、1999年の写真出典)は、1969年に20歳で、カリフォルニア大学バークレー校 (University of California, Berkeley)で生化学の学士号を取得している。天才的に優秀な高校・大学生だったに違いない。

ところが、生化学の大学院に進まず、文学と詩作に興味を持ち、その方向に進んだ。ユニークな人生の選択をしている。

1980年(31歳)頃(推定)、3歳年下の詩人・カーラ・ハリーマン(Carla Harryman 、1952年1月11日生まれ、写真出典)と結婚した。カーラ・ハリーマンは現在、イースタンミシガン大学(Eastern Michigan University)・英文学・教授である。

1984年(35歳)、息子のアサ(Asa)が生まれた。

1995年(46歳)に英文学で研究博士号(PhD)を取得した。その前年、ウェイン州立大学(Wayne State University)・教員になり、事件を起こした時は、教授だった。

ワッテンは家庭を持ち、夫人は文学で優れ、大学教授である。結婚し、子供も生まれたという点では、家族がいない寂しさ・ストレスはなかったと思われる。

★被害者:モリー・スパルター(Molli Spalter)

被害者は1人ではないが、代表的な人はモリー・スパルター(Molli Spalter、写真出典)である。

モリー・スパルター(Molli Spalter)は、既婚の女性院生で、夫は同じでウェイン州立大学の院生のアイザック・ピンケル(Isaac Pinkell)である。

★アカハラ:約20年

バレット・ワッテン(Barrett Watten)は大柄の男性で、見た目が威圧的である。性格的に気が短く、すぐカッとなる瞬間湯沸かし器だった。指導下の院生だけでなく、顔を紅潮させて、大学同僚、大学事務員に対しても敵対的言動(アカハラ)をした。

アカハラはいつから始まったと決めにくいが、約20年続いていた。つまり、1994年(45歳)にウェイン州立大学(Wayne State University)の教員に採用されて間もなく、アカハラを始めたと思われる。本記事では、1994-2019 年(45-70歳)の25年間(推定)、大学同僚、大学事務員、院生にアカハラ(敵対的は態度、言葉による虐待、女性院生を操ること、脅迫)していた、とする。

約20年ということは、大学内でワッテンのアカハラ行為を知らない人はいない状況で、“公開秘密”になっていた。つまり、ウェイン州立大学・当局はワッテンのアカハラ行為を知りつつ、放置(結果として、黙認、無作為)していた。

2019年2月(70歳)、モリー・スパルター(Molli Spalter)がワッテンのアカハラ行為(性差別)を大学に告発した。

しかし、ウェイン州立大学はまともに対処しなかった。

★ツイッターでアカハラ公示

2019年4月24日(70歳)、スパルターの夫でウェイン州立大学の院生のアイザック・ピンケル(Isaac Pinkell、写真出典は同ツイッター)が社交メディア(twitter)にワッテンのアカハラ行為(性差別)を載せた。

その社交メディア(twitter)に、現・元・学生および教職員が、数年に及ぶワッテンのアカハラ行為を指摘した。アカハラ行為は、敵対的は態度、言葉による虐待、女性学生を操ること、脅迫、だった。

例えば、2日後の2019年4月26日、男性であるドニー・サッキー助教授(Donnie J. Sackey、写真出典)は、ウェイン州立大学に赴任した1年目に3人の恐ろしい教授にあったが、ワッテンはその一人だったと、社交メディア(twitter)に書いた。なお、告発したサッキー助教授は、その後間もなくテキサス大学に移籍した。

また、5日後の2019年4月29日、女性院生のホリー・ヴィレコフスキー(Holly Wielechowski )が、彼女の経験を書いた。 → An account from Holly Wielechowski, current Wayne State PhD student – Barrett Watten Records

2019年4月28日、これらの活動に驚いたワッテンは、スパルターの告発を学則違反だと大学に訴えた。

2019年5月14日(70歳)、しかし、ウェイン州立大学は、スパルターは学則に違反していないと結論した(以下の手紙出典:https://twitter.com/molli_spalter/status/1128334044809375744?s=20

ウェイン州立大学は、外部の専門家である弁護士・ジョセフ・A・ゴールデン(Joseph A. Golden)を雇い、問題の調査を依頼した。

2019年11月12日(71歳)、調査の結果、結局、ウェイン州立大学は、ワッテンを有罪とした。

以下の点が問題だったと指摘した。

1. 院生に対し敵対的でセクハラだった。大学のセクハラ規則違反
2. 指導下の別の院生に対し不適切なメールを送付した
3. 別の院生に対し敵対的だった
4. さらに院生に対し、同意があったとはいえ、性交関係をもった

つまり、アカハラだけでなく、女性院生をレイプしていた。なお、本ブログでは、「同意があっても」、教授と院生の上下関係での性交は、まともな「同意」は成立しないので、「レイプ」としている。

そして、ハートウェル学部長はワッテンを教育禁止処分に科し、研究室を英文学科棟から引っ越しさせた。

2020年3月21日(71歳)現在、ワッテンはウェイン州立大学・教授に在職している。 → Barrett Watten (ad6155) – Wayne State University、(保存版

2019年11月12日の手紙を以下に示す(出典)。手紙には、教養学部(College of Liberal Arts and Sciences)のステファニー・ハートウェル学部長(Stephanie Hartwell、写真出典)の署名がある。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★論文数

バレット・ワッテン(Barrett Watten)の大学ウェブサイトに著書・論文などの出版リストがある。 → Barrett Watten – English – College of Liberal Arts and Sciences

著書3冊を示す。

  1. Progress/Under Erasure ( Los Angeles : Green Integer, 2004). New edition of two book-length poems
  2. Bad History (Berkeley, Calif.: Atelos Press, 1998; 2nd printing 2002). Experimental prose poem
  3. Frame: 1971–1990 (Los Angeles: Sun & Moon Press, 1997). Collected poems

★撤回論文データベース

2020年3月21日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでバレット・ワッテン(Barrett Watten)を「Barrett Watten」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年3月21日現在、「パブピア(PubPeer)」では、バレット・ワッテン(Barrett Watten)の論文のコメントを「Barrett Watten」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》報償

https://clasprofiles.wayne.edu/profile/ad6155

バレット・ワッテン(Barrett Watten)のアカハラ事件は、1994-2019 年(45-70歳)の25年間(推定)にアカハラしていて、学内ではみんな知っている状態だった。

そのアカハラを告発し、大学がもみ消せないほど騒ぎを大きくし、最終的解決に至らせたのが女性院生のモリー・スパルター(Molli Spalter)である。

ウェイン州立大学(Wayne State University)はスパルターを報償すべきである。

《2》解雇

2020年3月21日(71歳)現在、ワッテンはウェイン州立大学・教授に在職しているが、解雇すべきでしょう。 → Barrett Watten (ad6155) – Wayne State University、(保存版

ウェイン州立大学はアカハラ教授を保護してはいけない。

《3》システムの欠陥

ウェイン州立大学(Wayne State University)は25年間(推定)も、放置(結果として、黙認、無作為)していたのだ。

ココがシステム上の1つの欠陥だ。大学は院生や教員の申し立てがないと、アカハラ教員を排除しない、というか、排除できない。自発的に摘発し学内掃除をすればいいと思うのだが、しない・できない。白楽は大学が自発的に摘発したケースをごく少数しか知らない。

なんかマズくない。

大学は所属する院生・教員・職員に問題があれば、自浄すべきでしょう。

《4》社交メディア

ウェイン州立大学がまともに対処しないので、アカハラ被害者のモリー・スパルター(Molli Spalter)がツイッターで訴えた。

すると、他の被害者も自分もアカハラ被害を受けたとツイッターに書いた。

ツイッターやFacebookなどの社交メディアがアカハラ告発に大きな力を持ってきた。

そして、ワッテン事件の詳細な情報を集めたブログサイト「Barrett Watten Records(バレット・ワッテン記録)」も作成された。その記事の閲覧は無料である。

一方、産業メディア(新聞・雑誌など)は「Chronicle of Higher Education」誌が2回記事にしたが、閲覧有料である。ただ、1回目の記事は社交メディアが無料で読める工夫をした。

こうなると、無料の社交メディアの方が社会への影響力が大きい。

時代が変わりました。

https://www.chronicle.com/article/I-Was-Sick-to-My/246413

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●8.【主要情報源】

①  ウィキペディア英語版:Barrett Watten – Wikipedia
② 2019年6月3日の「Barrett Watten Records」記事:A Statement of Solidarity from the Wayne State Graduate Employees Organizing Committee – Barrett Watten Records
③ 2019年5月30日のテリー・グエン(Terry Nguyen)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:‘I Was Sick to My Stomach’: A Scholar’s Bullying Reputation Goes Under the Microscope – The Chronicle of Higher Education → 有料記事の無料版:‘I Was Sick to My Stomach’ A Scholar’s Bullying Reputation Goes Under the Microscope at Wayne State.pdf – Google ドライブ
④ 有料記事なので、白楽未読:2019年11月12日のミーガン・ザネイス(Megan Zahneis)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:This Professor Was Accused of Bullying Grad Students. Now He’s Being Banned From Teaching. – The Chronicle of Higher Education
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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