2022年11月23日掲載
ワンポイント:3日後の26日は台湾の統一地方選である。高虹安(こう こうあん)は、野党・台湾民衆党(第3党)の5人の立法委員(国会議員)の1人である。2022年8月29日(38歳)、高虹安は新竹市市長への出馬を宣言した。すると、22日後の9月20日(38歳)、2018年に米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)に提出した博士論文が自己盗用だと匿名者から告発された。匿名者は1年前から何度もシンシナティ大学に告発していた。シンシナティ大学から自己盗用はネカトではないとのメールを受け取っていた高虹安は、その旨を記者会見で伝えた。ただ、その後、著作権法違反で提訴されている。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
【追記】
・2022年11月26日記事:新竹市、野党の女性候補が初当選確実=38歳で最年少市長に/台湾(中央社フォーカス台湾) – Yahoo!ニュース
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
アン・カオ(Ann Kao、Ann Kao Hung-an、ガオ・ホンガン、*高虹安、*こう こうあん、https://orcid.org/0000-0002-8426-8105、写真出典)は、野党・台湾民衆党(第3党)の5人の立法委員(国会議員)である。
登場人物が台湾人なので、以下、本記事では、通常使う名・姓のカタカナではなく、高虹安(こう こうあん)など日本人になじみやすい姓・名の漢字版を使用する。
2022年8月29日(38歳)、高虹安は新竹市市長への出馬を宣言した。
2022年9月20日(38歳)、2018年に米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)に提出した博士論文が自己盗用だと匿名者から告発された。
ただ、匿名者は1年前から何度もシンシナティ大学に告発していた。
2022年9月21日(38歳)、シンシナティ大学の規則では自己盗用はネカトではないとのメールを受け取っていた高虹安は、自己盗用はネカトではないと記者会見をした。
ただ、その後、著作権法違反で提訴されている。
この事件は、高虹安が新竹市市長への出馬を表明した後で表面化した。ネカト事件を政争の具にしている。
米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)。写真出典
- 国:台湾
- 成長国:台湾
- 研究博士号(PhD)取得:米国のシンシナティ大学
- 男女:女性
- 生年月日:1984年1月25日
- 現在の年齢:40歳
- 分野:機械工学
- 不正疑惑論文発表:2018年(34歳)
- 発覚年:2022年(38歳)
- 発覚時地位:立法委員(国会議員)
- ステップ1(発覚):第一次追及者は匿名
- ステップ2(メディア):「镜周刊」、「Taipei Times」など多数の台湾メディア
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シンシナティ大学。自己盗用はネカトではないのでネカト調査をしていない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。自己盗用はネカトではないのでネカト調査をしていない
- 大学の透明性:自己盗用はネカトではないのでネカト調査をしていない。該当せず(ー)
- 不正:自己盗用
- 不正疑惑論文数:1つ。博士論文
- 盗用ページ率:?%
- 盗用文字率:?%
- 時期:キャリアの中期
- 職:事件後に発覚時の地位を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 1984年1月25日:台湾で生まれる
- 2006年(22歳):国立台湾師範大学(National Taiwan Normal University)・情報教育学科で学士号取得
- 2008年(24歳):国立台湾大学(National Taiwan University)・情報工学で修士号取得
- 2008年(24歳):資訊工業策進會(Institute for Information Industry)・勤務
- 2012~2018年(28~34歳):米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)で研究博士号(PhD)取得:機械工学
- 2020年1月11日(35歳):立法委員(国会議員)に当選
- 2022年8月29日(38歳):新竹市市長への出馬を宣言
- 2022年9月20日(38歳):「镜周刊(週刊ミラー)」が盗博と指摘
- 2022年9月21日(38歳):自己盗用はネカトではないとシンシナティ大学の判断を提示
- 2022年11月22日(38歳):立法委員(国会議員)職を維持
●3.【動画】
【動画1】
ニュース動画:「另外兩位作者寫的內容比高虹安的還重要!旅美教授陳時奮揭高虹安期刊論文”第一作者”真相 打臉根本沒有所謂”學術引述”沒侵權問題…|許貴雅主持|【新台灣加油 精彩】 – YouTube」(中国語)7分33秒。
新台灣加油(チャンネル登録者数 31.8万人)が2022/09/24に公開
米国在住の「Weng Darui」というペンネームのシ―フェン・チェン名誉教授(Chen Shifen、カナダのアイビー・ビジネススクールIvey Business School )が動画に登場する。
【動画2】
ニュース動画:「Ko Supports Kao and Denies Misusing Words|20220923 PTS English News公視英語新聞 – YouTube」(中国語)0分54秒。
公視新聞網(チャンネル登録者数 22.7万人)が2022/09/23に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★立法委員(国会議員)
2008年(24歳)、高虹安(こう こうあん)は、国立台湾大学(National Taiwan University)で修士号取得した。
情報産業戦略協会の中央地区産業サービス事務所で働いた後、2012年、米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)・博士課程に留学した。指導教授は台湾出身のジェイ・リー(Jay Lee、写真出典)だった。
2018年(34歳)、高虹安(こう こうあん)は、米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)で研究博士号(PhD)を取得し、台湾に帰国した。
国立台湾大学病院の医師で教授だった柯文哲(か ぶんてつ、1959年8月6日生まれ、写真出典)が、2019年、台湾民衆党を設立した。
2014年の市長選挙で台北市の市長に当選し、2019年には2020年の立法委員選挙を見据えて設立した中道政党台湾民衆党(戦前の台湾民衆党とは異なる)の党首にも就任した[1]。(柯文哲 – Wikipedia)
2020年1月11日の立法委員(国会議員)選挙で、台北市長・柯文哲の台湾民衆党は5議席を獲得し台湾の第3党になった。その選挙で、高虹安(こう こうあん)は35歳で立法委員(国会議員)に当選した。
2022年8月29日(38歳)、高虹安(こう こうあん)は新竹市市長への出馬を宣言した。
★発覚
2022年9月20日(38歳)、「镜周刊(週刊ミラー)」が米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)に提出した「2018年の博士論文」は盗用だと指摘した。 → 2022年9月20日記事:【獨家】【高虹安論文抄襲】撇抄襲卻凌晨偷偷上網加工! 高虹安心虛鐵證曝光
- 「2018年の博士論文」
Quality Prediction Modeling for Multistage Manufacturing using Classification and Association Rule Mining Techniques
被盗用論文は自分の「2017年9月のMATEC Web of Conferences」の学会要旨である。
- Quality prediction modeling for multistage manufacturing based on classification and association rule mining
MATEC Web of Conferences 123, 00029 (2017)
Hung-An Kao, Yan-Shou Hsieh Cheng-Hui Chen and Jay Lee
博士論文の16,519語の内の4,161語、つまり 25%が、2つの学会要旨・論文のテキストと同じで、いくつかの写真とグラフも同じだと指摘した。
★対応
2022年9月21日(38歳)、盗博と指摘された翌日、高虹安(こう こうあん、写真出典)は、記者会見を開いて盗用ではないと反論した。
実は、告発1か月前の2022年8月20日、シンシナティ大学は高虹安(こう こうあん)の博士論文に自己盗用があるのでネカト調査をするように、と匿名者からの申立てを受けていた。
2022年8月22日、シンシナティ大学の研究公正担当準副学長のジェーン・シュトラッサー(Jane Strasser、写真出典)は匿名者からの申立てと、「自己盗用は研究不正行為とは見なされない」という電子メールを高虹安(こう こうあん)に送っていた。
なお、シュトラッサー準副学長は、匿名者からの申立ては「1年以上にわたって繰り返し、しつこく行なわれてきました」と述べている。
高虹安(こう こうあん)は、「シンシナティ大学・大学院の規則では、自己盗用は研究不正行為に該当しない。また、2018 年に博士論文を提出したとき、シンシナティ大学は盗用検出ソフト「SafeAssign」でチェックしたがその時、他の情報源と一致したのはわずか6%だった」と述べている。
高虹安(こう こうあん)は、「盗博との告発を止めないなら、法的手段を取る」と、匿名者に反撃した。
この事件に関連して、米国在住の「Weng Darui」というペンネームのシ―フェン・チェン名誉教授(Shifen Chen、カナダのアイビー・ビジネススクール Ivey Business School )は、彼のブログで「オリジナル論文」を投稿し、高虹安(こう こうあん)は盗用しただけでなく、盗用を隠蔽しようとしたと指摘している。
★著作権法
この節、白楽は十分把握できていないが、書いておく。
2022年10月5日、高虹安(こう こうあん)の文書が、情報政策審議会の著作権のある部分に対して、著作権法に違反しているという指摘がされた。
2022年10月19日、高虹安(こう こうあん)は上記の指摘に対して何も説明しなかった。それで、情報政策委員会の卓正宏は訴訟を起こす予定だと述べた。
2022年10月25日、情報政策協会は高虹安(こう こうあん)が著作権法に違反していると正式に提訴した。
2022年11月22日(38歳)現在、裁判の結果は不明である。
●【盗用の具体例】
高虹安(こう こうあん)が2018年に米国のシンシナティ大学(University of Cincinnati)に提出し博士号を取得した博士論文が自己盗用だった。
盗用比較図が示されていないので、省略した。盗用文字率は不明である。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
研究者ではないし、自己盗用だし、博士論文なので、省略。
●7.【白楽の感想】
この《1》はココと同じ → 農業経済学:ジジョン・チェン(Chi-chung Chen、陈吉仲、陳吉仲)(台湾)
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《1》政治家の盗修・盗博・盗用
政治家の盗修・盗博は欧州ではかなり多い。しかし、アジアでは珍しい。日本では、今のところほぼない。
台湾での事情を把握していないが、2022年11月26日は台湾の統一地方選である。ネカト事件がこの選挙にどのような影響を与えるのか?
なお、選挙の数か月前から、台湾の政治家の盗用が次々と指摘されている。
- 盗修:経営学:ジジェン・リン(Chih-chien Lin、林智堅)(台湾)
- 盗修:政治学:ピル・ツァイ(Pi-ru Tsai、蔡壁如)(台湾)
- 農業経済学:ジジョン・チェン(Chi-chung Chen、陈吉仲、陳吉仲)(台湾)
- 盗博:機械工学:アン・カオ(Ann Kao、高虹安)(台湾)
- 張善政(チョウ・チェンセイ、Simon Chang) → ①:Chen Shifen (Ong Darui) slams Zhang Shanzheng for “serious integrity problems” – Achyde、②2022年8月31日記事:Simon Chang denies plagiarism allegations – Taipei Times
- Tsai Shih-ying (蔡適應) → 2022年9月3日記事: Keelung mayoral candidate denies plagiarism charges – Taipei Times
- Chen Ming-tong (陳明通) → 2022年8月16日記事: NSB chief will not teach at NTU in new semester amid plagiarism row – Focus Taiwan
政治家の盗用指摘は、選挙で有利になろうと相手の政治家を攻撃し評判を落とすのが主眼で、ネカト防止策などの議論は二の次である。
このような政争の道具にされるとネカト防止策は歪んでくる。国民へのアピールが主眼なので、研究公正のあり方などお構いなく、なりふり構わず、非難している。マズイですね。
ネカト対策・処理が歪むのではないかと危惧している。
ネカトを政争の具にしてはならない。
なお、2022年11月26日は台湾の統一地方選である。
記者会見で潔白を訴える高虹安(こう こうあん)。写真出典
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】
① ウィキペディア日本語版:高虹安 – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Ann Kao – Wikipedia
③ ウィキペディア中国語版:高虹安 – 维基百科,自由的百科全书
④ 2022年9月20日の「周怡孜」記者の「镜周刊」記事:【獨家】【高虹安論文抄襲】撇抄襲卻凌晨偷偷上網加工! 高虹安心虛鐵證曝光
⑤ 2022年9月21日のLee I-chia記者の「Taipei Times」記事:Ann Kao of the TPP rejects accusations of thesis plagiarism – Taipei Times
⑥ 2022年9月29日のJason Pan記者の「Taipei Times」記事:‘Mirror Media’ countersues TPP’s Hsinchu candidate – Taipei Times
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