2026年1月1日掲載
2025年に世界中(含・日本)で起こった「学術詐欺」(研究不正だけでなく、学術・研究で人を騙す行為)の関連事件から、特に重要な事件を(選者が)選んでランキングした。学術詐欺だけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。
日本のメディアの事件報道数も加えた。
- 分野を記載していないのは生命科学。
- カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
- いくつかの事件は近日中に本ブログの記事にする。
- 本記事は、更新日を示さずに上書きする。
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★1.日本のメディアの「論文不正 研究不正」記事数:2025年12月31日、白楽調べ
方法:
検索語「論文不正 研究不正」(英語は「”Research misconduct”」)でヒットした記事数。なお、2014年はSTAP細胞事件という大騒動があった年なので、参考に加えた。
検索サイト
毎日新聞:https://mainichi.jp/search
読売新聞:https://www.yomiuri.co.jp/web-search
朝日新聞:https://sitesearch.asahi.com/sitesearch
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/search
参考:
・文部科学省が認定した研究不正数(年度単位で集計しているのを年と表記した。*2025年の件数は年度途中なので少ない):https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fusei/1360484.htm
・New York Times(米):https://www.nytimes.com/search
結論:
- 毎日新聞が最も多く「論文不正 研究不正」記事を掲載した。
- 朝日新聞と日本経済新聞の記事数はとても少なく、文部科学省が認定した研究不正数よりも少ない
- 読売新聞は、文部科学省が認定した研究不正数とほぼ同数である。
- 毎日新聞は、ここ4年間、記事数が約10記事ずつ減少している。他紙は記事数が少ないので増減傾向を特定できない。
- 米国の「New York Times」に比べると、毎日は多く、読売新聞は同等、朝日新聞と日本経済新聞はとても少ない。
- 週刊ポスト(NEWSポストセブン)は2023年に3件掲載した(データ表に不表記)。
解釈・考察:
- もっと記事が多いと白楽は思っていたので、検索方法が不適切だった可能性がある。参考にした2014年は、STAP細胞事件が起こった年で日本のメディアは大騒ぎした。それでも「論文不正 研究不正」で検索すると、表に示したように、日本経済新聞以外は(とても)少ない。
- ここ4年間、毎日新聞は「論文不正 研究不正」を積極的に報道してきた。
- 朝日新聞と日本経済新聞の記事数は文部科学省が認定した研究不正数より少ないので、文部科学省が認定した全部の研究不正事件を報道しなかったと思われる。
- 毎日新聞以外の新聞は「論文不正 研究不正」を積極的に報道する姿勢があるとは思えない。
- 日本の国民・学生・研究者が「論文不正 研究不正」に関心を示さない理由の1つは、大手メディアの報道が少ないためだろう。
- 「米国の「New York Times」と日本の大手メディアと比較したが、比較対象として「New York Times」を選んだのが適切かどうか不明である。
推奨:
- 日本の大手メディアは、「論文不正 研究不正」記事をもっと報道してください。
- 毎日新聞は「論文不正 研究不正」報道に積極的なので、その点を特色として売りにしてください。さらに、積極的に他紙と差別化を図る。例えば、①「論文不正 研究不正」関連の特集サイトを設ける。②毎年「20xx年の日本の研究不正トップ5件」を記事にする。
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★2.「撤回監視(Retraction Watch)」:2025年12月30日
撤回監視(Retraction Watch)は2025年のランキングを発表しなかった。
多く読まれた記事や重要だと思う記事を取り上げたので、白楽もそれを以下に示す。
基本的に撤回監視(Retraction Watch)記事の特徴としては、米国での事件が多い。また、研究者の個々の事件よりも、学術誌や学術出版業界などシステムの問題点を指摘する記事が多い。
白楽は8件の事件の内、ランキング発表前に 3件しか解説していなかった(〇印)。打率3.75。〇印なしは研究者の事件ではないので、今後解説しない予定。
【多く読まれた記事】
- 著者在順違反で論文出版数を水増ししている大学 → 2025年1月10日記事:The 14 universities with publication metrics researchers say are too good to be true – Retraction Watch
- 引用不正でインパクトファクターが下落した20学術誌 → 2025年6月18日記事:Citation issues cost these 20 journals their impact factors this year – Retraction Watch
- フェイク文献満載のシュプリンガー・ネイチャー社の本 → 2025年6月30日記事:Springer Nature book on machine learning is full of made-up citations – Retraction Watch
- エルゼビア社の数十論文がフェイク企業と疑わしい著者変更で撤回 → 2025年5月14日記事:Dozens of Elsevier papers retracted over fake companies and suspicious authorship changes – Retraction Watch
【重要な記事】
- イラクとサウジアラビアの大学は、自大学出版の論文を引用することを学生の卒業要件とした → ①2025年10月17日記事:Exclusive: Iraqi university forcing students to cite its journals to graduate – Retraction Watch、②2025年11月24日記事:Exclusive: ‘Highly problematic’ policy has Saudi university pressuring faculty to cite its research – Retraction Watch
- 〇米国の研究公正局の問題 とクロ認定→ ①2025年12月18日記事:ORI has released just two misconduct findings this year – Retraction Watch、②リピン・ジャン(Liping Zhang)(米) | 白楽の研究者倫理、③ライアン・エバノフ(Ryan Evanoff)(米) | 白楽の研究者倫理
- 〇虚偽請求法に基づいて和解した研究不正事件 → ①7-167 ネカト告発で2千万円ゲット(米国) | 白楽の研究者倫理、②7-185 英国人ネカトハンターのショルト・デイヴィッドが米国の研究不正を告発し4億円獲得 | 白楽の研究者倫理
- 〇研究不正の認定に異議を唱えて元所属機関を提訴したソニア・メロ(Sonia Melo)の事件 → ①2025年8月28日記事:Exclusive: Cancer researcher sues MD Anderson over misconduct finding – Retraction Watch、②ソニア・メロ(Sonia Melo)(ポルトガル) | 白楽の研究者倫理
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★3.「より良い科学のために(For Better Science)」で2025年に最も読まれた上位10記事:2025年12月26日
出典:Most-read in 2025, Schneider Shorts 26.12.2025 – Happy New Year! – For Better Science
ランクした人は「より良い科学のために(For Better Science)」ブログ執筆者でネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)(ドイツ)。フリーランス。細胞生物学者、ジャーナリスト。2007年に研究博士号(PhD):細胞生物学。写真出典。
「より良い科学のために(For Better Science)」ブログが取り上げる記事の特徴は、欧州での事件が多い。また、当局(大学・研究所)が研究不正を調査する前に研究者の研究不正を指摘する記事が多い。
白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に2件しか解説していなかった(〇印)。打率2割。「1」は昨年もランク入りしていた。
〇印なしは、ランキング発表後に数件解説する予定。
- 〇ムハンマド・ビラル(Muhammad Bilal)(ポーランド) | 白楽の研究者倫理 2025年9月5日掲載
- クリストフ・ティーマーマン(Christoph Thiemermann)(英):多く読まれた理由不明
- アドリアーノ・アグッツィ(Adriano Aguzzi)(スイス)
- ケネス・アンダーソン(Kenneth Anderson)(米)とショルト・デイヴィッド(Sholto David)(英) → 関連記事を一部書いた。7-185 英国人ネカトハンターのショルト・デイヴィッドが米国の研究不正を告発し4億円獲得 | 白楽の研究者倫理 2025年12月30日掲載
- ロシアのネカトハンターであるアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov )の2022年11月の記事:The Highly Cited Researchers of Clarivate – For Better Science
- パオロ・マデッドゥ(Paolo Madeddu)と元妻のコスタンツェ・エマヌエリ(Costanze Emanueli )(英):多く読まれた理由不明
- 「論文工場」:クリスチャン・ゾンネ(Christian Sonne) (デンマーク)
- 「論文工場」:エデル・リマ(Eder Lima)(スウェーデン)
- 〇化学:ヨランダ・スパダベッキア(Jolanda Spadavecchia)(フランス) | 白楽の研究者倫理 2024年8月15日掲載
- ヒュー・ブレイディ(Hugh Brady)(英):多く読まれた理由不明
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★4.RealClearScience誌の「2025年の最大ガラクタ科学」:2025年12月11日
出典:The Biggest Junk Science of 2025 | RealClearScience、保存版
ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy – Big Think
9件の最大ガラクタ科学。白楽は9件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。
研究不正というより、世間の関心を引くエセ科学である。
トランプ大統領とケネディ・ジュニア健康福祉大臣が科学研究に口出しした結果、デタラメ度はかなり高くなり、そういう点では面白いというか、怖い。
今年は、適当に選んで(9件のうち4件)紹介する。写真出典は同記事。
ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy, Jr. )
第1位: フロリダ州は学童へのワクチン接種義務を禁止する
ロン・デサンティス知事とジョセフ・ラダポ公衆衛生局長の指揮で、フロリダ州当局は9月、身体の自主性と個人の権利を理由に、フロリダ州の学校に通う児童に対する州レベルのワクチン接種義務をすべて廃止する意向を発表した。
完全な実施には立法措置が必要なので、この措置はまだ発効していない。
第3位: トランプ大統領は、アセトアミノフェンが自閉症を引き起こす可能性があるため、妊婦は服用しないよう指示した(米)
「妊娠中はアセトアミノフェン(タイレノール)を服用しないでください。そして、出産後も赤ちゃんに与えないでください」とトランプ大統領が述べた。
遺伝的要因などの交絡因子を考慮に入れた優れた研究では、アセトアミノフェン(タイレノール)の使用と自閉症との間に関連性はない。 → 2025年9月23日記事:RFK Jr.’s claim that Tylenol causes autism has no backing
アセトアミノフェンは現在、妊娠中の女性が安全に使用できると考えられている唯一の鎮痛剤、だそうだ。
第6位:疾病対策予防センター(CDC)クチンが自閉症を引き起こす可能性があると発表(米)
ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy, Jr. )が健康福祉省(HHS)の大臣を過去10か月務めた。その効果が表れた1つ。
第7位:大きな影響力があった気候変動の論文は粗雑な統計を使用していた(米)
アイリン・ウッドワードとエド・バラード(Aylin Woodward and Ed Ballard)が昨年、ネイチャー誌に掲載した論文は、人類が大気中に二酸化炭素を排出し続けた場合、今世紀末までに世界の経済生産高は62%減少すると予測した。
しかし、今年8月、そのデータの根拠が薄弱であることが発覚した。
ウズベキスタンのデータが結果を歪めていて、ウズベキスタンのデータを除外した場合、2100年の被害予測は62%ではなく23%に低下した。
元の論文は撤回された。
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★5.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2025年の上位10大科学話」:2025年12月5日
出典:The AusSMC’s Top 10 Science Stories 2025
記者はジョセフ・ミルトン(Joseph Milton)。ミルトンは英国のセント・アンドルーズ大学(University of St Andrews)で進化生物学と環境生物学の博士号を2008年に取得し、2010年、科学ジャーナリズムの修士号を取得した。2012 年 7 月にオーストラリア科学メディアセンターの上級メディア担当官に就任した。→ Staff – AusSMC、経歴と顔写真出典
上位10位とあるが、ランキングではない。
白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。
真面目な科学、面白い科学、注目を浴びた科学、の話題だけで、ネカト・クログレイ絡みは1件もなかった。とはいえ、オーストラリアの科学の話題が把握できて面白い。
1.トランプ政権は科学に対して戦争を始めた
2.気候変動の不安が高い中に希望の光があった
1月には、グレート・バリア・リーフ(GBR)の白化現象が「壊滅的」なレベルに達していた。
4月には、 2023年以降、世界中のサンゴ礁の80%以上が白化レベルの高温に直面しているとの警告が出た。
3.絶滅した動物が再生される
米国のコロッサル・バイオサイエンス社が、絶滅した氷河期のダイアウルフを再生した。
2月、オーストラリアでは、クイーンズランド大学の研究者が体外受精を用いてカンガルーの胚を初めて作製した。この技術は、オーストラリアで絶滅したタスマニアタイガーなど有袋類の復活につながる可能性がある。
7月、コロッサル社がニュージーランドの研究者と共同で、かつてニュージーランドに生息し絶滅した大きな鳥・モア(Moa、写真出典)の復活を目指すと発表した。
4.オーストラリアのモナッシュ大学病院は、胚移植を2回失敗した
モナッシュ大学の体外受精の胚移植で今年2回の失敗があった。
1回目、2月、ブリスベン在住の女性が間違った胚を移植されていたことが発覚した。
2回目、 6月、クレイトンの研究所で2度目の取り違えを確認した。
5.オーストラリアのほぼ全域に有機フッ素化合物(PFAS)が見つかった
5月、12歳以上のオーストラリア人の85%以上に、禁止された化合物を含む少なくとも3種類の有機フッ素化合物(PFAS)が検出可能なレベルで検出された。
その後、シドニーの水道水、メルボルンの街近くに棲むオポッサムの肝臓、などからも検出された。
つまり、有機フッ素化合物(PFAS)は、水、人、野生生物に広範囲に存在していることがわかった。
「6.」以下は、白楽が省略した。
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★6.ニューヒューマニスト(Scimex):「2025年のトップ15ストーリー 」:2025年12月18日
出典:Our top 15 stories of 2025 | New Humanist
15件の話題の中で12番目が研究不正に関する話題だった。
12.ネカトハンターの台頭
元記事は2025年10月30日のユーアン・ローソン記者(Euan Lawson)の記事:Rise of the science sleuths | New Humanist
今日の学術界は、偽造論文、利益追求、信頼性の低い研究に悩まされている。その中で、真実を明らかにし、科学を守るために活動しているネカトハンターがいる。
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★7.AIに聞いてみた
10 Biggest Science Fraud of 2025
数回聞いたが、そのたびに異なる答えが出てきた。
以下はある時の答え(英語のままでゴメン)。
- UBC Researcher Fabricates Data: An investigation found that a University of British Columbia (UBC) researcher fabricated data in work that offered “false hope” to spinal patients. The public was not immediately informed, leading to a collaboration between CBC News and the Investigative Journalism Foundation to expose the story in October 2025.
- Dana-Farber Cancer Institute Settlement: A data sleuth was awarded $2.63 million in a settlement after the U.S. government penalized the Dana-Farber Cancer Institute for misrepresenting data in grant applications to the National Institutes of Health (NIH).
- Growing Concern over “Paper Mills”: Multiple reports in 2025 from sources like The New York Times, Science, and The Conversation have highlighted the alarming rise of “paper mills”—criminal organizations that produce and sell fake scientific papers. The use of generative AI has amplified this problem, making it easier to create seemingly legitimate but fraudulent research, which threatens the integrity of scientific literature, particularly in medicine.
- Justice Department Drops Case: In October 2025, the Justice Department unexpectedly dropped its criminal fraud case against an Alzheimer’s scientist, L.C. Wang, though the Securities and Exchange Commission had previously fined the related company, Cassava Sciences, $40 million for misleading claims about its clinical trials.
- Discussion of Past Scandals: News outlets in 2025 have continued to revisit major, long-standing fraud cases to illustrate systemic issues, such as the massive Duke University cancer research scandal that occurred around 15 years prior, emphasizing the “devastating legacy of lies” that fraudulent research leaves behind.
ーーー以下、解説ナシーーー
★科学10大ニュース(日本語)
- 2025年12月21日:第86回 2025年の科学10大ニュースとライフサイエンス – 理事長の部屋|公益財団法人ライフサイエンス振興財団・・・理事長は林 幸秀
研究不正事件はリストされていない
★2025年になぜか人気がなくなった10の科学的真実 – Big Think:2025年12月9日
出典: 10 scientific truths that somehow became unpopular in 2025 – Big Think
★2025年に最も物議を醸した 8 つの科学物語:2025年1月10日
出典:動画「The 8 Most Controversial Science Stories of 2025 | Black Hole Debate, Climate Change & More – YouTube」
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。