2023年3月28日掲載
白楽の意図:米国の研究公正局(Office of Research Integrity)は、「2022年9月の官報」で国民に意見を求め、研究不正規則の改訂に動き出した。キンケイドは「2022年10月のRetraction Watch」論文でこれを説明し、デフィーノは意見が31件集まったことと、内2件の公開意見を「2022年11月のReport on Research Compliance」論文で示した。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.日本語の予備解説
2.研究公正局の「2022年9月の官報」
3.キンケイドの「2022年10月のRetraction Watch」論文
4.デフィーノの「2022年11月のReport on Research Compliance」論文
9.白楽の感想
10.コメント
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【注意】
学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。
「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。
記事では、「論文」のポイントのみを紹介し、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説を加えるなど、色々と加工している。
研究者レベルの人が本記事に興味を持ち、研究論文で引用するなら、元論文を読んで元論文を引用した方が良いと思います。ただ、白楽が加えた部分を引用するなら、本記事を引用するしかないですね。
●1.【日本語の予備解説】
★2014年9月xx日:小林 信一(国立国会図書館 調査及び立法考査局 専門調査員 文教科学技術調査室主任):我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか(上)―研究不正規律の反省的検証―
④ 米国の連邦レベルの研究不正のルールは 1980 年代から議論が始まり、1986 年以降連邦政府機関で研究不正規律が制定されるようになった。その後、見直しも行われたが、とくに 2000 年以降は連邦機関の研究不正規律が大幅に見直され、今日に至っている。この間に、研究不正の定義や研究不正の認定の要件等が次第に明確化し、定着してきた。
⑤ とくに、2005 年制定の公衆衛生庁の研究不正規律は、研究不正の認定における証明責任や証拠の証明力、実験ノート等の研究記録の不存在・不提示の意味と扱い、告発の期限などの各種概念や考え方を明確に示し、米国の連邦レベルの研究不正規律の中でも最も詳細で体系的なものとなっている。
続きは、原典をお読みください。
★2007年9月3日:厚生科学課:米国NIHの規定(42 CFR. Part 50. Subpart F)のポイント
研究不正規則の根幹ではないけど・・・。
1 は、給与又はサービス対価( Significant Financial Interest 例えば、コンサルタント料、又は謝礼 、株主持分(例 ) えば、株式、株式買入れ選択権、又は他の所有権利益 及び知的所有権 例えば 特許 )、 ( 、、 、 ) 著作権 及び当該権利からのロイヤリティを含むが、それらに限定されない、何等かの金銭的価値を意味するが、所属機関からの給与 ロイヤリティ又はその他の報酬 、、 、 公的な又は非営利的な機関のセミナー講演、委員会等からの収入は含まない。
続きは、原典をお読みください。
●2.【研究公正局の「2022年9月の官報」】
★書誌情報と著者情報
- 論文名:Request for Information and Comments on the 2005 Public Health Service Policies on Research Misconduct
日本語訳:2005年の公衆衛生庁の研究不正規律に関する情報とコメントの要請 - 著者:Department of Health and Human Services, Office of the Secretary
- 掲載誌・巻・ページ:Life Sci Soc Policy. 2020 Dec; 16: 6.
- 発行年月日:2022年9月1日
- 指定引用方法:
- DOI:
- ウェブ:https://www.federalregister.gov/documents/2022/09/01/2022-18884/request-for-information-and-comments-on-the-2005-public-health-service-policies-on-research
- PDF:https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2022-09-01/pdf/2022-18884.pdf
●【論文内容】
本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。
ーーー論文の本文は以下から開始
★意見公募
2022年8月29日、研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))は、2005年に制定した研究不正規則の改訂のために、「2022年9月の官報」で意見要請(Request for Information(RFI))をした。
回答期限は2022年10月31日の午後5時だった。
日本から意見を述べようと思う人はいないだろうが、仮にいたとしても、この記事を書いた時点で既に締め切っている。
研究公正局(ORI)は、健康福祉省(Department of Health and Human Services(HHS))・公衆衛生庁(Public Health Service (PHS))の研究公正活動を監督および運営している。ただし、食品医薬品局 (FDA)は管轄外である。 → 1‐5‐3 米国・研究公正局(ORI、Office of Research Integrity) | 白楽の研究者倫理
研究公正局(ORI)の使命は、公衆衛生庁が支援するすべての生物医学/行動研究の研究公正を維持することで、国民の生命・健康を守り、かつ、公的資金を節約することである。
近い将来、研究公正局(ORI)は、2005年制定の連邦規則42巻93条(42 C.F.R. Part 93)「公衆衛生庁の研究不正規則(Public Health Service Policies on Research Misconduct)」の改正作業を始める。それで、国民から意見収集を行なう。
★連邦規則42巻50条と連邦規則42巻93条
連邦規則42巻50条(42 CFR parts 50)と連邦規則42巻93条(42 CFR part 93)は、研究不正に関する公衆衛生庁(Public Health Service (PHS))の規則の根幹で、公衆衛生庁から研究資金を受け取る大学・研究所は、この規則を遵守する必要がある。
2005年の規則は、連邦規則(Code of Federal Regulations)「42 CFR parts 50」 と「42 CFR parts 93」で、後者が主軸である。
連邦規則42巻50条(42 CFR parts 50)は「Policies of General Applicability」で連邦規則の一般論である。 → eCFR :: 42 CFR Part 50
以下、目次の「Subpart B – Sterilization of Persons in Federally Assisted Family Planning Projects」の目次だけを示すが、「Subpart」は「F」まである。
連邦規則42巻93条(42 C.F.R. Part 93)は「公衆衛生庁の研究不正規則(Public Health Service Policies on Research Misconduct)」で、研究不正規則の主軸である。 → eCFR :: 42 CFR Part 93
こちらも以下、目次の一部だけを示す。
●3.【キンケイドの「2022年10月のRetraction Watch」論文】
★書誌情報と著者情報
- 論文名:US federal research watchdog wants your input
日本語訳:米国連邦政府の研究監視機関はあなたの意見を求めています - 著者:Ellie Kincaid
- 掲載誌・巻・ページ:. Retraction Watch
- 発行年月日:2022年10月24日
- 指定引用方法:
- ウェブ:https://retractionwatch.com/2022/10/24/us-federal-research-watchdog-wants-your-input/
●【論文内容】
本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。
ーーー論文の本文は以下から開始
★改訂の提案を受け付ける
研究不正行為を監視する米国の政府機関である研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))は、規則改訂を計画し、何を改訂すべきかの意見を国民から集め始めた(パブリックコメント?)。
研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))は、2005年に制定した連邦規則42巻93条(42 CFR part 93)「公衆衛生庁の研究不正規則(Public Health Service Policies on Research Misconduct)」の改訂のために、改訂の提案を受け付ける電子メール受信箱を用意した。
連邦規則42巻93条は、「研究不正行為はねつ造・改ざん・盗用である」と定義し、米国・公衆衛生庁(Public Health Service)が資金提供した研究で研究不正行為が行なわれた場合、政府と研究機関がどのように対処すべきかを示している。
現行の規則は、1989年の規則を2005年に改訂した規則である。
意見を準備する際、次の質問が役立つだろう(以下の質問の順序は、重要性、優先順位、先行順位とは無関係である)。
(1) 連邦規則42巻93条を改訂する場合、どのセクションを変更または追加する必要がありますか? なぜですか? セクションをどのように変更または拡張することを希望しますか?
(2) 現在の連邦規則42巻93条のどのセクションを維持する必要がありますか? なぜですか?
(3) 連邦規則42巻93条を改訂する場合、どのセクションを削除することを考慮すべきですか? なぜですか?
研究公正局は、意見をブレインストーミングの過程と見なしている。
●4.【デフィーノの「2022年11月のReport on Research Compliance」論文】
★書誌情報と著者情報
- 論文名:Groups Seek Substantive Revisions to HHS Misconduct Regs
日本語訳:グループは健康福祉省の不正行為規制の実質的な改訂を求める - 著者:Theresa Defino
- 掲載誌・巻・ページ:. Report on Research Compliance Volume 19, Number 12
- 発行年月日:2022年11月28日
- 指定引用方法:
- DOI:
- ウェブ:https://www.jdsupra.com/legalnews/report-on-research-compliance-volume-19-2745472/
- 著者
- 論文名:Groups Seek Substantive Revisions to HHS Misconduct Regs
- 著者:テレサ・デフィーノ(Theresa Defino)
- 紹介:https://www.linkedin.com/in/theresadefino/
- 写真:https://www.linkedin.com/in/theresadefino/
- ORCID iD:
- 履歴:https://www.linkedin.com/in/theresadefino/
- 国:米国
- 生年月日:米国。現在の年齢:61 歳?
- 学歴:米国のフロリダ大学(University of Florida)で学士号(ジャーナリズム学)1985年?
- 分野:医療ジャーナリズム
- 論文出版時の所属・地位:2006年12月以降、医療コンプライアンス協会の記者・編集者(Writer/Editor at Health Care Compliance Association (HCCA))
●【論文内容】
本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。
ーーー論文の本文は以下から開始
★意見書は計31件
2023年11月1日、研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))は、意見書提出を10月31日に締め切った。意見書は計31件もあった。 → Request for Information (RFI) on the 2005 Public Health Service Policies on Research Misconduct – Comment Period has Closed | ORI – The Office of Research Integrity、保存版
意見書は、短い電子メールから複数ページの書類まで、内容と長さはさまざまで、個人、大学・研究所、組織から提出された。
今後、研究公正局は規則改訂作業の一環として、意見書を匿名化し公開する。閲覧方法については、その時点で研究公正局のウェブサイトで知らせる。
以下に示すように、ARIO/COGRとAAMCは当該組織が自発的に意見書を公開した。
★ARIO/COGR
- ARIO:「研究公正官協会(Association for Research Integrity Officers)」。2023年3月26に研究公正局長に就任したシーラ・ギャリティ(Sheila Garrity)が、研究公正官協会・副会長を務めている(いた)。
- COGR:「政府関係評議会(Council on Governmental Relations)」。主要な研究大学を代表する組織
研究機関を代表する2つの組織ARIOとCOGRは合同意見書を提出し、自発的に意見書を公開した。
以下は合同意見書(2022年10月30日提出)の冒頭部分(出典:同)。全文(12ページ)は → http://bit.ly/3OkeGaV、保存版
ARIO/COGRの意見書の要点(要点ではなく、単に一部かも)。
- 研究公正局(ORI)は、現在、関連する規定を拡大解釈して、告発や証拠が示唆する範囲を超えて大幅に調査の範囲を拡大している。予備調査/本調査(inquiries/investigations)の対象範囲を狭めることを要望する。
現在、範囲が広すぎるので、めったに引用されない出版物、資金提供されていない研究提案、未発表の研究活動、作成から何年も経った研究記録の調査のために、大学は膨大な時間・資源を費やしている。
さらに、被疑者および/または主要な証人が大学を去り、所在を特定できない、あるいは、情報提供の要求に応じない場合でも、大学に予備調査/本調査を要求している。
大学の時間・資源は限られている。これら実効性の乏しい調査作業は、ネカト予防・教育活動、新しい・より影響の大きな疑念研究の調査など、の大学の取り組みを阻害している。 - 大学のネカト調査は以下の点を考慮し、調査しない、あるいは、調査を終了できるようにする
1. 連邦政府の研究助成:疑念研究は、政府機関から研究助成、①されたのか、②されなかったのか
2. 影響の範囲:疑念研究は、①当該研究室に限定的か、②出版・公表されたか、③高く引用された出版物だったか
3. 国民の生命・健康:疑念研究は、国民の生命・健康を、①脅かしたか、②脅かさなかったか
4. 学術知的体系:疑念研究は、① 学術知的体系(研究記録)に悪影響を与えるか、②修正すれば学術知的体系(研究記録)に悪影響を与えないか
- 時効の設定。ネカト調査では、研究記録(含・生データ)、信頼できる証言、その他の証拠を入手して正確に評価する必要がある。合理的な調査が難しい昔のネカトに対して時効を設定する。
- 改訂版では、研究公正局(ORI)は、「意図的に(intentionally)」、「故意に(knowingly)」、「無謀に(recklessly)」を定義すべきである。
- 予備調査(inquiry)終了の60日の期限、本調査(investigation)終了の120日の期限、の両期限を撤廃する。
★米国医科大学協会 (AAMC)
米国医科大学協会(AAMC)も、意見書を提出した。
以下は意見書(2022年10月31日提出)の冒頭部分(出典:同)。全文(4ページ)は → https://www.aamc.org/media/63231/download?attachment、保存版
米国医科大学協会(AAMC)の意見書の要点(要点ではなく、単に一部かも)。
- 研究不正行為の現在の定義を、研究の提案、実施、審査、研究結果の報告での「ねつ造、改ざん、盗用」に限定して維持することを支持する。
セクシャルハラスメント、いじめ、差別、偏見(これらに限定されないが)など、他の多くの不適切または非倫理的な行動によって、研究者、訓練生、研究スタッフが悪影響を受けると認識しているが、研究不正行為の定義にこれらの行為を含めないことを望む。
これらの対処・処罰のための適切な改革と改訂を望むが、研究公正局が対処すべき問題には含めない。 - 現在の規則中の文言の変更を望む。不正行為がどのように行われたかの基準として、研究不正の要件から「無謀な(reckless)」という言葉を削除する。
大学は「無謀な(reckless)」の定義を統一的に使えていない。多くの場合、「無謀な(reckless)」と「怠慢な(negligent)」を同一視している。「無謀な(reckless)」があるために、学内のネカト調査委員会は、意図的な不正行為の責任を「怠慢な(negligent)」監督者の責任にすべきかどうかを議論している状況である。 - 告発評価(allegation assessment)、予備調査(inquiry)、本調査(investigation)という、ネカト調査の開始から終了までの3段階を、大学がより柔軟に対応できるよう徹底的に見直す。
●9.【白楽の感想】
《1》保身と国民目線
意見書は31件で、研究公正局が今後随時公表する。
現時点で公表された意見書は、ARIO/COGRの意見書と米国医科大学協会(AAMC)の意見書で、提出した組織が自発的に公表した意見書である。
ARIO/COGRの意見書に、白楽はどれもおおむね賛成である。例えば、時効だが、以前から時効の設定は必要だと思っていた。
一方、米国医科大学協会(AAMC)の意見書に、白楽は幾分「ガッカリ」した。
保身の立場から改革しようという意図が見え隠れし、本気でネカトを防止しようという意識が低いと感じた。
研究不正を「ねつ造、改ざん、盗用」に限定するように要望しているが、これは、時代遅れも甚だしい。査読偽装、論文工場、など新しい不正行為がドンドン出現している。ChatGPTなどの人工知能での文章作成などへの対応も必要だ。
組織の意見は組織構成員の利益を守る意見なので、むべなるかなだが、これでは米国の学術、ひいては世界の学術は、暗い。
今後開示される他の29件の意見書に期待したい。
《2》不満・問題
研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))に対してだけではないが、ネカト対処・対策への不満や問題点はいろいろ指摘されている。いくつかを以下に示す(網羅的ではない)。
- ネカト疑惑者の所属する大学・研究所がネカト調査をするのは間違っている。利益相反なので、大学・研究所は隠蔽するし、予備調査・本調査をなるべくしない、調査してもシロと結論するなど、調査が歪む。当該大学・研究所とは独立した捜査権を持つ第三者機関が捜査(調査)すべきである
- 大学・研究所も研究公正局もネカト調査が遅すぎる
- 大学・研究所は予備調査報告書を非公表だが、公表すべき。不正な予備調査が横行している
- 大学・研究所も研究公正局もネカト者への処分が軽い。研究者も指摘するが研究者以外から処分の甘さが指摘されることが多い。社会一般の犯罪者の処分と比べ、研究者は特別に軽く処分されているという不満である。
なお、処分の程度に関しては、ARIO/COGRの意見書が2番目に指摘しているのに賛成だ。白楽も一律ではなく、ネカト行為の悪影響の度合いを考慮した方がいいと思っている。また、1回目の行為から「強い処分」ではなく、「注意・軽い処分・強い処分」の3回・3段階で進めた方がいいと思う - 「大学・研究所のネカト対応怠慢・不作為」、「大学・研究所のネカト調査不正」が多い。大学・研究所の当事者を摘発し処分する。その法制化、監視方法(組織)を導入する
- 研究公正局に刑事訴追権がない。持たせる
- 研究公正局は盗用も摘発すべし。ねつ造・改ざんだけで処理能力を超えていて盗用まで手が回らないのだとおもうけど
- 「ねつ造・改ざん・盗用」以外のクログレイのいくつかを研究不正と認定すべき
- ネカト告発者を法的に保護する。ネカトハンター活動やウェブなどでのネカト者批判を法的に保護する
- ネカトハンター育成とネカトハンター活動に報酬を支払うシステムを構築する
- 現在、ネカトハンター活動はボランティアである。かつてネカトハンター活動をしていた多くの人が、その活動を止めている。つまり、ネカトハンター活動が報われない。それなのに、ネカトハンター活動という不安定な仕組みの上に世界中の研究者のネカト発覚が依存している。この現状は異常である。定常的にネカトハンター活動行なう公的組織を設置する
- 既に書いたが、時効を導入する
《3》日本の規則改訂
白楽が指摘しなくてもわかっていると思うが、日本の研究不正規則には異常な点が多い(以下2例、これ以外にもたくさんある)。
18.ヘンですよ文部科学省:発表・未発表を問わずネカトは研究不正です
17.ヘンですよ文部科学省:修士論文、博士論文のネカトは研究不正です
この際、米国・研究公正局の改訂と合わせて、日本の文部科学省は2014年に改訂した研究不正規則の再改訂をすべきである。 → 2014年:研究活動における不正行為への対応等:文部科学省
文部科学官僚は米国の情報を得て、改訂を計画していると思うが、今から準備すれば、2024年改訂(10年後の改訂でキリがいい)になるでしょう。
ただ、残念なのは、「研究不正」の知識・思想・経験に優れた日本の学者が育っていないことだ。従って、誰を集めても委員(文部科学省の集める御用委員)の質はさほど期待できない。有名大学教授という肩書中心で、官僚お任せ委員会になってしまうだろう。
仕方ないけど・・・。
それを承知の上だが、小手先ではなく、アリバイ作り改訂ではなく、「研究不正大国」になった文化と仕組みを本気で変える意志で改訂して欲しい。
《4》パブリックコメントと実際の制度設計者
研究公正局(Office of Research Integrity(ORI))が規則改訂で広く国民から意見を要請している。
この方法で、うまくいくのだろうか?
研究公正局(ORI)はどういう意図・役割で意見募集を実施しているのか、白楽は、ハッキリはわからないが、「改訂します」という宣伝と、「不満」対策のガス抜きだろう。
実質的には、「研究不正」の知識・思想・経験に優れた学者・実務者が集まり、かなり真剣に討議し、改訂の制度設計をしていくのが本質的な作業だと、白楽は思う。
《5》日本の役人と政府委員
日本の研究不正規則の改訂に文部科学省から正式な要請があれば、現役時代の白楽なら、熱心に対応したかもしれないが、断る可能性もかなりあった。今は集中力・体力がない老人なので、断るというか、そもそも要請されない。
現役時代に「研究費問題」の政府委員を務めた時、求められたのは真正の御用委員だったという苦い経験がある。
そうとは知らずに、委員会で熱心に調査・発言し、委員長から「控えるように!」と注意された。途端にやる気をなくした。
似たような政府委員会は多いらしい。
昨日(2023年3月27日)の毎日新聞の記事「日本の残留農薬の規制は欧州連合(EU)に比べてはるかに甘い」が興味深い。 → 2023年3月27日記事:由々しき日本の残留農薬=山田孝男 | 毎日新聞(下線は白楽)から抜粋
農水省ホームページに残留農薬基準値の国際比較表が載っている。ネオニコ系農薬の一つ、アセタミプリドの基準値を日・EUで単純に比較すれば、ブドウで日本はEUの10倍、茶葉で600倍になる。
木村-黒田は、国が農薬を再評価する際、農薬メーカーがつくる報告書と文献リストに依存している――と指摘。
木村-黒田のあいさつを聞いていた聴衆の中に奥原正明元農水事務次官(67)がいた。安倍政権の農協改革の中心人物である。次官時代の18年、農薬取締法を改正し、最新の科学的知見で農薬を再評価できるようにした。当然、木村―黒田の証言に驚いた。
日本の政府委員会は、全部ではないと思うが、国民軽視・業界尊重で、委員は「御用」体質である。誰のための残留農薬規制なのか? 国民のためではないのか?
昔、筑波大学・講師だった時、科学技術庁の役人に、放射線取扱の書類の英語化に関して、直接、提案したことがある。この時、科学技術庁の役人にすごい剣幕で「講師の分際で科学技術庁に提案してくるな!」と怒鳴られた。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少する。科学技術は衰退し、国・社会を動かす人間の質が劣化してしまった。回帰するには、科学技術と教育を基幹にし、堅実・健全で成熟した人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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