2021年10月13日掲載
ワンポイント:名古屋大学や長崎大学の盗用事件で、当該大学のネカト調査が異常である。そして、大学に自浄力がない。文部科学省や日本医療研究開発機構(AMED)に伝えても、しっかり対処する様子がない。それなら、政治家を動かし、文部科学省や日本医療研究開発機構(AMED)を通して、大学を行政指導してもらおう。という裏の意図もあって、日本の国会でどの議員が「研究不正」を追求しているか、直近の約10年間、調べてみた。ところが、たくさんの頓珍漢な質問・答弁に出くわした。白楽目線(上から目線)で「ヘン」なところを指摘した。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.はじめに
2.抽出・加筆・削除
3.2021年(令和3年)
4.2020年(令和2年)~2016年(平成28年)
5.2015年(平成27年)~2011年(平成23年)
7.白楽の感想
10.コメント
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●1.【はじめに】
以下敬称略(但し、質問・答弁中の敬称はそのまま)。
白楽ブログは外国のネカト事件を解説している。日本のネカト事件の解説は他の人にお任せしたい。これが基本である。
ただ、「わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった」(出典:黒木登志夫の著書『研究不正』289頁目)。
日本の研究公正の「過去」は暗かったのだ。
そして、名古屋大学や長崎大学の盗用事件に遭遇し、名古屋大学、長崎大学、文部科学省、日本医療研究開発機構(AMED)、日本の研究倫理学者に連絡し、日本の実態を知ると、「現在」も愕然とするほど暗い。
根本的には、大学に自浄作用がなく、国と研究倫理学者は無作為で積極的に改革する意思がない。
学術も経済も文化もインフラも、すべてが衰退する時代に入った現在の日本だが、自分のテリトリーである日本の研究公正では、「未来」を明るくしたい。
「未来」を明るくできる1つの方法は、法律を制定・改正したり、研究倫理に資金配分する権限を持つ政治家である。
それで、日本の国会で「研究不正」がどのように質問・答弁されているかを調べてみた。質問・答弁する人は、議員・官僚・参考人である。
名古屋大学や長崎大学の盗用事件で、当該大学のネカト調査が異常である。そして、大学に自浄力がない。大学がヘンなことをしているので、政治家を動かし、文部科学省や日本医療研究開発機構(AMED)を通して、大学を行政指導してもらう意図もあった。
どの政治家に研究倫理問題を託すといいのか?
国会で誰が「研究不正」を追求しているのか?
調べてみると、驚いたことに、たくさんの頓珍漢な質問・答弁に出くわした。
今回、これらの頓珍漢な質問・答弁を取り上げて、偉そうに、白楽目線というか、上から目線で、「ヘン」なところを指摘した。
最後まで読めば、日本の研究公正の「未来」は明るい・・・かどうか? さてと。
●2.【抽出・加筆・削除】
使用したデータベースは主にココ → (1)国会会議録検索システム、(2)国会会議録検索システム シンプル表示
国会での質問・答弁の中で、「ヘン」と思う部分を抽出している。つまり、ここで取り上げている国会での質問・答弁は、全体像を反映していない。まともな質問・答弁ももちろんある。全部が「ヘン」と、誤解しないで欲しい。
以下の操作をしている。
- 質問・答弁を逐語流用した場合は、背景色をつけ、インテンドした
- 質問・答弁を白楽が要約した部分もある
- 質問・答弁の最初の部分の引用元を示した。そこから元文章にたどり着ける
- 質問・答弁を加筆・削除した。但し、文脈を無視した加筆・削除はしていないつもり
- 西暦を適度に加えた
- 議員の所属・身分は質問・答弁の時のもの
- 下線は白楽が引いた
●3.【2021年(令和3年)】
なし
●4.【2020年(令和2年)~2016年(平成28年)】
★参議院議員 古川 俊治(ふるかわ としはる) – 自由民主党
第198回国会 参議院 決算委員会 第4号 平成31年4月15日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119814103X00420190415/29
○古川俊治君
最後にもう一つ、移りますが、STAP細胞事件というのがありましたけれども、それを契機に文部科学省は平成二十六年(2014年)八月に研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインというのを定めまして、大学等の研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わること等により対応を強化すると、こういうことにしてまいりました。
しかし、その後もこの不正行為、研究活動の、研究行為の対応を強化しているということにしたんですけれども、二十九年(2017年)八月には東京大学分子細胞生物学研究所、三十一年(2019年)には京都大学のiPS研究所等におきまして研究不正が発覚したということなんですね。これ、研究不正といっても、研究不正にはデータの捏造とかのデータをいじっちゃうやつとお金の処理というものがあるんですけど、これはデータの捏造の方なんですね。
この背景には、研究費獲得競争や若手研究者の不安定な雇用などがあるというふうに指摘されているんですけれども、この若手研究者の状況について、どのように把握してどのような対策を取っているのか、柴山大臣、お願いします。
○国務大臣(柴山昌彦君)
研究不正が起きる背景については、委員御指摘のように、急速に競争が激しくなっているということに加えて、研究分野の細分化ですとかあるいは専門性が深まっている、研究活動体制が複雑化、多様化しているということで、科学コミュニティーの自浄作用、チェック作用が働きにくくなっているということもあるんじゃないかなと思います。
白楽目線(上から目線):
ネカトの原因を「(研究者間の)競争が激しくなっている」せいにするのは、都市伝説である。単純に考えて、ネカト者が「どうしてネカトしたんだ」と責められた時、他人のせいにする言い訳の言葉である。本気にしてはいけない。
カネを盗んだ窃盗犯が「どうして盗んだんだ」と責められた時、「遊ぶ金が欲しくて」と答えるようなものだ。この場合、窃盗しそうな人に「遊ぶ金」をあげることで、問題を解決しようと、誰も思わない。主要な原因ではないからだ。
この都市伝説を誰が広めたのか不明だが、文部科学省の官僚が国務大臣(柴山昌彦君)の答弁を作っているので、文部科学省が、この、根拠のない「競争が激しくなっている」都市伝説が好きだということだ。
「競争が激しくなっている」のが研究不正の主要な原因という理解は、研究不正のまともな論文を読めば、間違っているのはほぼ明白です。
→ 7-44 出版プレッシャーでネカトするわけじゃない | 白楽の研究者倫理
もちろん、プレッシャーは全く影響がないと言ってはいない。少しは作用している。主要な原因ではないということだ。
でも、100歩譲って、この理由を受け入れたとしよう。そうなると、研究不正を解消するには「競争を減らす、あるいは、なくす」ことになる。コレって、前述したけど、窃盗しそうな人に「遊ぶ金」をあげて問題を解決するという、異常は解決法になる。
さらに「競争が激しくなっている」説を一歩奥に進めると、実際は、文部科学省自身が、「選択と集中」施策を実施していて、競争を煽り激化している。つまり、論理としては、文部科学省自身が、研究不正の原因を作っていることになる。この矛盾に気がつかないのかな? おかしくないですか?
→ 2018年7月26日、毎日新聞の「社説」:社説:日本の科学研究力 「選択と集中」が招く低迷 – 毎日新聞
国務大臣(柴山昌彦君)は、「研究活動体制が複雑化、多様化しているということで、科学コミュニティーの自浄作用、チェック作用が働きにくくなっている」と答弁している。ここもヘンである。
「複雑化、多様化」と「自浄作用、チェック作用」は話がゼンゼン別でしょう。「複雑化、多様化」が原因で「自浄作用、チェック作用が働きにくくなる」なんてヘンな論理だ。
例えば、社会が「複雑化、多様化」したら、社会に「自浄作用、チェック作用」がなくなるんですか? そんなことはないでしょう。
どうして、こんな次元の異なる2つをつなげて因果関係にしてしまうのか不思議です。
100歩譲って、国務大臣(柴山昌彦君)の答弁の流れに沿って以下進めてみよう。
その場合、「研究活動体制が複雑化、多様化している」のを元に戻すのは、時代に逆行するので、元に戻せない。現実には、ますます、「複雑化、多様化」する。だから、改善する対象はココではない。
「科学コミュニティーの自浄作用、チェック作用が働きにくくなっている」のが研究不正の直接の原因だと推測しているのだから、研究不正を減らすポイントは、ココを改善することになる。
国務大臣(柴山昌彦君)には、どういう改善策が有効かを提示してもらいたかった。
しかし、何かといえば、文部科学省は他に責任転嫁する。ここでは「科学コミュニティー」に責任転嫁している。
研究不正は「科学コミュニティー」で防げないのは、常識レベルの歴史的事実です。今まで、これだけ研究不正が起こってきたのは「科学コミュニティーの自浄作用」に任せてきたからでしょう。
だから、まず、「科学コミュニティーの自浄作用」で防げないと、しっかり、理解すべきです。
次行きます。
「チェック作用が働きにくくなっている」という理解ですね。
それなら、「チェック作用」を働かせる。
と言っても、現在、「チェック作用」はほとんど働かない。そもそもチェックする担当者が文部科学省や日本学術会議を含め公的組織にいないのだから、当然、「チェック作用」は働かない。
現在は個人がボランティアで細々と活動しているだけだ。
だから必要なのは、「チェック」できるしっかりした組織・仕組みを導入し、専門的な人材を導入することだ。
具体的には、ネカトハンターやネカトウオッチャーを常駐させて、活動できる組織を作るとか、育成するとか、優遇するとか、強い権限を付与するとかが施策でしょう。
さらに、大学のネカト予備調査報告書とネカト本調査報告書のウェブ上への公表を義務化する。米国の研究公正局のようにネカト者を実名で公表するなどで「チェック作用」を高める。
このように、「チェック作用」を高める仕組みを新たに導入することで、研究不正を減らすことができる。
他にも方法はあるけど、基本、さっさと改善に取り組む姿勢がないのも問題ですね。
○古川俊治君
この研究不正の問題は、実を言うとライフサイエンスばかりなんですよ。おっしゃるように、簡単に捏造ができちゃうという世界なんですね。それで、ほかじゃめったに、資金のことではほかの工学の世界は起こりますけれども、ライフサイエンスでは起こるんですね。
白楽目線(上から目線):
研究不正は「ライフサイエンスばかりなんですよ」って、いい加減なことを言わないで欲しい。
「簡単に捏造ができちゃうという世界なんですね。それで、ほかじゃめったに、」って、さらに、いい加減なこと・・・。
分野としてライフサイエンスにデータねつ造事件が多いのは事実だが、「ばかり」ではない。他でもたくさん起こっている。
こういう発言は、研究不正はライフサイエンス分野だけの問題という心証を与え、研究不正問題の実態の理解、そして、その後の改善策を捻じ曲げてしまう。
ネカトの「事件」数はネカトの「行為」数とは大きく異なり、メディアで報道されるのはネカト「行為」のごく一部がネカト「事件」化した時だけである。ネカト「らしき行為」の0.08%しかネカト「事件」になっていない(5C 日本のネカト施策のあるべき姿:撤回論文数 | 白楽の研究者倫理)。
文系全体にもデータねつ造・改ざん行為はかなりあると思うが、社会学、経済学などでは摘発しにくいので、事件が少ない。一方、心理学は摘発しやすいので、事件が多い。
学問全分野の問題として改善策を立案すべきなんです。
○古川俊治君
実を言うと、アメリカなんかでも研究不正というのはざらにあります。特にライフサイエンスの分野です。ネイチャーやサイエンスに載る論文のかなりの部分は相当危ないというふうに言われています
白楽目線(上から目線):
「ネイチャーやサイエンスに載る論文のかなりの部分は相当危ないというふうに言われています」って、どこで誰が言っているのだろう?
「かなりの部分」は「7~8割」あるいは「数割」「半分以上」という意味ですよね。
ネイチャーは2001~2020年の20年間に50,634報の論文を出版している。分析:(“Nature”[Journal]) AND ((“2001/01/01″[Date – Publication] : “2020/12/31″[Date – Publication])) – Search Results – PubMed
その内、訂正、懸念表明、撤回された論文は「撤回監視データベース(Retraction Watch Database)」によると 193報である。分析:Retraction Watch Database(2001~2020年の20年間を打ち込む)
「相当危ない」割合は、50,634報中の193報で、0.38%である。
0.38%を「かなりの部分」と表現するのは、「かなり」マズイと思う。つまり、事実の誤認だ。そうでなければ、状況をミスリードする意図を「かなり」感じる。
国会の「研究不正」議論は正確な情報に基づいて議論して欲しい。
★衆議院議員 高橋 千鶴子(たかはし ちづこ) – 日本共産党
第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第4号 平成31年3月19日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119804260X00420190319/202
2018年12月、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に不正があったことが発覚し、世間は大騒ぎしていた。この不正絡みでの質問・答弁である。
○高橋(千)委員
三行目から読みますけれども、「学術の世界で、このようなデータの不正やねつ造、盗作などがあれば、間違いなく学界から追放されることは、研究不正に対する最近の事案からも明らかである。それほどに、重大な事案であり、」というふうに指摘をしている。大変厳しい指摘だと思っております。
白楽目線(上から目線):
「データの不正やねつ造、盗作などがあれば、間違いなく学界から追放される」は間違ってます。
「学術の世界」「学界から追放」と述べているが、「学術の世界」「学界」という組織はない。それで、「学会」に置き換えてみた。
「学会」が科せる最も大きな処分は「除名」である。
「学界から追放」を「学会から除名」としよう。この場合、学会員が「データの不正やねつ造、盗作など」をしても、実際には、「学会」から除名されることはほとんどない。
あれだけ大騒動になった小保方晴子も、学会から除名されたとは聞いていない。
つまり、「データの不正やねつ造、盗作など」で、「間違いなく学界から追放される」、ということはない。
なお、実質的な処分は「学会」というより、所属大学(所属研究所)が科す。
日本の所属大学(所属研究所)の処分は、大雑把ではあるが、データを取ると、2021年10月8日現在、ネカト・クログレイ者693人のうち、解雇は60人で停職(出勤停止)は72人である。 → 出典:【日本の研究者のネカト・クログレイ事件一覧】:日本のネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件一覧 | 白楽の研究者倫理
つまり、白楽のラフな調査データではあるが、日本で「データの不正やねつ造、盗作など」した場合、解雇は約1割、停職(出勤停止)も約1割である。無処分はかなり多い。
つまり、「間違いなく」「追放される」というレベルとは程遠い。
停職(出勤停止)はほぼ全員、復職する。解雇されても、復職する人、移籍し研究活動を再開する人もそれなりにいる。
例えば、ウイルス学者の森直樹はデータねつ造・改ざんで31報の論文が撤回され、琉球大学を解雇されたが、裁判で復職し、現在も琉球大学・教授である。 → 森直樹 (微生物学者) – Wikipedia
国会は、間違った理解で研究不正の議論・立案をしないで欲しい。
★参議院議員 川田龍平(かわだ りゅうへい) 立憲民主
第198回国会 参議院 予算委員会 第11号 平成31年3月18日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815261X01120190318/275
○川田龍平君
まず、先ほどの石橋議員が質問した毎月勤労統計問題について一点お伺いします。
昨年の障害者雇用率の水増し問題、また裁量労働制のデータ改ざんなど、また、それから、この毎月勤労統計問題などを受けて、総務省が一昨年に続きこの基幹統計一斉点検をした結果、調査すべきものをしていなかった、調査方法を勝手に変えた、挙げ句の果てにはこの調査の仕方まで、そのものまで間違っていたという、もうこれぼろぼろですよ。国の統計というのは、全ての国家予算、その配分を決定する基になる最も重要なデータの一つです。
一番大事なのは、各省庁が、これ十年前から気が付いていたにもかかわらず、見て見ぬふりをして先送りをしたことで問題を悪化させたことです。事なかれ主義で危険を隠蔽し、多くの被害を出した薬害エイズのときと全く同じです。
総理、この構造、今の政権で終わらせられないということでこれよろしいですね。終わらせられるなら、これ具体的な再発防止策をお答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
毎月勤労統計で長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかったことや、この事案を受けて緊急に行った基幹統計の点検で手順の誤り等の問題が発覚したことについては、重く受け止めています。今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証調査を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であります。
○川田龍平君
その検証調査自体がぼろを出していると。本当にこの再発防止策、全くこれ検討されていないと言っていいと思います。今までそれやってきて、解決どころか悪化しています。もう少し具体的な解決策をお願いします。
○川田龍平君
総理、これ一つ目の質問に関連して伺いますが、これは、私が国会議員をしている理由は、二十四年前の薬害エイズ裁判での実名公表をきっかけに、二度と同じ苦しみを味わわせないようこの国を変えるためです。あのとき、政府は自分たち原告に対し謝罪し、その後、根本大臣が政務次官時代には薬害根絶の誓いの碑というものまで建てられました。なのに、あれから二十四年間、全く構造が変わっていません。
総理、もう一度伺わせてください。
二千人が被害に遭い、七百十四人が殺されたあの薬害エイズ事件を引き起こした真の原因とは何だったのか、覚えていますでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
あのときには、まさに厚労省の中において事実関係が隠蔽されていたわけでございます。これは、まさにその反省の上に立ってこの薬事行政等を、また厚生行政等を立て直すという誓いの下に進めてきたわけでございまして、今回の出来事も、私たちも深刻に受け止めつつ、そしてまた長年にわたってそれを見抜けなかったということについても反省しながら再発防止に全力を傾けていきたいと、このように考えております。
○川田龍平君
全く信用ならないですよ。総理、薬害エイズを起こした最大の原因、今おっしゃったように、政府による情報隠蔽、そして不作為の罪なんですよ。そして、その構造は今も全く変わっていない。この情報隠蔽の構造は雇用統計の改ざん問題にとどまりません。もっと国民の命に関わる分野にまで及んでいます。
白楽目線(上から目線):
川田龍平は、素晴らしい。まともである。
★参考人 北村行伸 – 統計委員会委員長代理
第198回国会 参議院 予算委員会 第11号 平成31年3月18日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119815261X01120190318/330
○参考人(北村行伸君)
学界では研究不正があった場合には第三者がチェックするような仕組みがあるわけですけれども、同様の仕組みを役所の統計にも導入したらどうかということを考えました。
白楽目線(上から目線):
北村行伸はトンデモない人だ。
「学界では研究不正があった場合には第三者がチェックするような仕組みがある」と述べているけど、ありません。どこにあるんですか?
事実誤認がはなはだしい。このような人を参考人に呼ぶと審議がおかしくなる。
★衆議院議員 平野博文(ひらの ひろふみ) – 立憲民主党
第196回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号 平成30年4月12日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119603910X00320180412/107
2018年1月、京都大学のiPS細胞研究所の助教が「2017年3月のStem Cell Reports」論文でねつ造・改ざんしていた。 → 2018年1月22日の「読売新聞」記事:iPS研の特定拠点助教、論文にねつ造や改ざん
この事件に絡んで、国会で質問・答弁が行なわれた。
○平野委員
我が国に最近、研究不正、こういう発覚がたくさん散見するように思います。研究所の現場の実態というのはどういうふうになっているか、今後の我が国の科学技術研究開発のためにどんな手当てが必要なのか、こういう視点で議論をしていきたいと思っています。
○松山国務大臣
私ども内閣府としても、改めて、この研究不正行為が科学技術に対する信頼失墜につながらないように、重大な問題であるということを認識した上で、大学、研究機関等に、研究不正防止に向けた適切な対応がなされるように、引き続き関係省庁としっかり連携をとって取り組んでまいる所存でございます。
○平野委員
大臣、僕、最初に言っておきますけれども、私は、このiPS研の体制や管理に問題があったとは思っていないんですよ。我が国の研究風土等々における仕組みの中にこういう問題が起こり得る要因があるんだろうと私は思います。
不正を起こした研究者については一義的にはその人の責任ではあるんだけれども、そういうふうな、起こる要因になっている環境が何なのかということをやはり突き詰めていくことが私は一番大事なんだろう、こういうふうに思っています。
不正に手を染めるというのは正当化されない、これも事実であります。しかし、研究機関がどのような課題を抱えて、不正となってあらわれてくるのか、このことをやはり真剣に考えていかなきゃいけない
白楽目線(上から目線):
平野博文はなかなか鋭い。研究不正の全体像をつかんでいる。
「我が国の研究風土等々における仕組み」に問題があると指摘している。
平野博文は、「研究不正というのは、何をもって不正というんですか」と質問し、丹羽副大臣が「捏造、改ざん、盗用」などを不正だと答えている。
平野博文は、それは、結果として、つまり外形的な行為であって、本質じゃないでしょうと指摘している。
「発表しなければ不正と言わないんですか、それでは。発表しなければ不正と言わないんですか」と質問し、「研究プロセスの過程での不正」も考慮すべきと暗示している。
平野博文は研究不正を深く理解している印象を受けた。
○平野委員
時間がないので、いっぱい大臣から聞きたいなと思ったんですが、要は、総合的に言うと、なぜ研究不正の起こる背景が出てくるのかなということが僕は大事だと思いますね。
その一つを指摘しておきたいと思うんですが、私、山中教授のところに行きました。私自身、文科大臣のときに行きました。現場を見てまいりました。意見も山中教授から受けたんですが、今でも覚えていますけれども、それは、研究に対する継続性とモチベーションの上においての問題として、やはり研究者自身が有期雇用にされているという、それで、丹羽副大臣がおっしゃったように、税金を投入しているんだということで、有期雇用、税金を投入している、成果を早く求められる、こういうところでの悪循環がいろいろな事象を起こしているんじゃないか、こういうふうに思うんですね。
したがって、私はやはり、研究者自身、先ほどポスドクの話も出てまいりました、要は、優秀な技術屋あるいは研究者をどういうふうに評価をし、どういうふうな次元でもってその研究者のモチベーションを下げずに研究をしてもらうかという環境をどうつくっていくかということが非常に大事なんですね。
白楽目線(上から目線):
平野博文はなかなか鋭い、と褒めてきたけど、ここでガックリしてしまう。
山中教授は研究公正の素人です。その人の意見をうのみにしてはいけません。
平野博文は、研究不正の起こる原因を「有期雇用」のせいにして、「有期雇用、税金を投入している、成果を早く求められる」循環がマズイと指摘している。これは、オオハズレと言わないまでも、中ハズレです。
京都大学のiPS細胞研究所では助教がネカト事件を起こしたけど、そもそも、助教は以下に示すように日本のネカト・クログレイ事件の12%を占めるだけで、主要なネカト職位ではない。 → 5C 日本のネカト施策のあるべき姿:撤回論文数 | 白楽の研究者倫理
ネカト行為の改善のキッカケに京都大学のiPS細胞研究所事件を取り上げるのはよくても、助教を対象にネカト対策をたててはマズイ。教授・准教授で52%なので、ターゲットは教授・准教授です。
それに、「有期雇用」がネカトの主要な原因だなんて、あり得ない解釈をしている。それなら、教授・准教授の52%をどう説明するの。
かつて、大学教員は「無期雇用」だったけど、その時にネカトはなかったかい?
山中教授は自分の研究所の失態を他に転嫁したい心理があり、その心理と合わせて、「有期雇用」のために煩わしい作業や不満が日頃からあったので、「有期雇用」をやり玉に挙げただけでしょう。
研究不正の解決に「有期雇用」を本気で問題視する意図も覚悟も山中教授にはないと思うけど。
★参議院議員 川田龍平(かわだ りゅうへい) 立憲民主
第193回国会 参議院 厚生労働委員会 第9号 平成29年4月6日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/119314260X00920170406/74
○川田龍平君
これは、公的資金を受けていない研究を含め人を対象とした研究全般について、論文不正を含めて、厳しく罰則等、統合指針の見直しも含めて改めて検討していくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。厚労省と文科省、お願いします。
これに対して、厚労省と文科省が答弁している。「厳しく罰則等」検討しなさいと質問しているのに、それに答えない。同じような内容なので厚労省は省略して、以下は。文科省の答弁。
○政府参考人(真先正人君)
先生御指摘の民間からの資金を含めてということでございますが、文科省といたしましては、個々の研究機関に対する指導監督する立場、あるいは研究振興を適切に行う、推進するという立場から、個々の事案に対して適切に対応してまいりたいと思ってございます。
○川田龍平君
先ほど足立議員からも質問がありましたけれども、先日の、日本の科学研究は失速しているというイギリスのネーチャー誌の分析、この報道、この予算の増額も必要ですが、世界からきちんと評価をされるためにも、論文不正に対する毅然とした取組にやっぱり期待いたします。
白楽目線(上から目線):
川田龍平はなかなか正統的である。
●5.【2015年(平成27年)~2011年(平成23年)】
★衆議院議員 島津幸広(しまづ ゆきひろ) 日本共産党
第189回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第4号 平成27年6月4日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118903910X00420150604/49
○島津委員
今回の事件で、政府が研究不正を監視する機関をつくればいい、こういう意見もありますけれども、私はそれは正しくないと思うんです。研究とは、あくまでも政府などから独立して、自分の関心と好奇心、使命感でやるべきです。政府がそこに介入してきたら、政府批判の研究ができなくなってしまいます。不正が発生したときには、自分たちで不正を防ぐ体制をつくる必要があります。そうしないと、政府がどんどん口を出してきて、そのうち政府に逆らう研究がなくなってしまう、こんな危険があるわけです。
白楽目線(上から目線):
どうしてこう頓珍漢なんだろう。
日本国憲法 第二十三条「学問の自由は、これを保障する。」とある。
研究「不正」を監視するのと、研究「内容」を監視するのとは、ゼンゼン、話が別です。
そして、研究不正を監視する機関は、現在の日本にはない。
個人がボランティアでネカトハンターやネカトウオッチャーとして機能しているだけです。だから、公的機関を設ける、あるいは公的機関の一部にそのような部署を設けなければ、個人がイヤになったら、監視する人はいなくなる。
日本の現在の研究「不正」への対処はとても手薄・貧弱です。日本のネカトハンターは世界変動展望著者1人しかおらず、ネカトウオッチャーは数人しかいない。 → 1‐5‐1 ネカトハンターとネカトウオッチャー | 白楽の研究者倫理
島津幸広は「不正が発生したときには、自分たちで不正を防ぐ体制をつくる必要があります」と述べて、学術界に研究不正への対策を丸投げしている。
日本は、長いこと学術界に丸投げしてきたために、研究不正への対処が破綻してきた。それで、「わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった」(出典:黒木登志夫の著書『研究不正』289頁目)。
だから、従来とは異なる対策を新たに立てなければならないというのに、相変わらず学術界に研究不正への対策を丸投げする。
そのくせ、研究不正問題に対処するのに必要な予算も法整備もしない。だから、学術界は、研究不正を防ぐ体制を作れない。
防ぐ体制を作れないままにしておいたから、現在の日本は研究不正大国という現実がある。
米国の研究公正局がどれだけ米国の研究不正を防いだかわからないが、最低、このような組織を日本に設立すべきでしょう。できれば、警察がネカト捜査するといいんですが。 → 1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! | 白楽の研究者倫理
★衆議院議員 小川 淳也(おがわ じゅんや) – 立憲民主党・無所属
第189回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号 平成27年5月19日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118903910X00320150519/40
2017年1月、インターネットで分子生物学会関連の49名の87論文に不適切な写真の使い回しが指摘された。文部科学省はこの告発に対してどう対処したかの質疑応答である。
衆議院議員・山本ともひろ大臣政務官が、
64本の論文、17機関、研究者33名分については、不正の事実は確認されなかった。
現時点で、23本の論文、10機関、研究者16名分が調査中。
と答えた。
○山本大臣政務官
我々は、こういう不正研究に対してのガイドラインというものを設けておりまして、委員御指摘の予備調査というものはおおむね三十日以内で行っていただきたい、その予備調査が終わった段階で疑われる場合は委員会をきちっと設置していただく、これも三十日以内にしてほしい、その後きちっと本調査をしていただいて、それもおおむね百五十日以内にしてほしいというようなガイドラインを示しているところでございます。それを単純に全部足しますと、おおよそ七カ月ということになります。
一月に指摘があって、四カ月ほどたっておりますが、そういうガイドラインの基準からいきますと、あと三カ月程度なのかなとは思っております。
白楽目線(上から目線):
オイオイ、誤魔化さないで欲しい。
「全部足して、7か月で対処すればよい」なんて、ガイドラインには書いてない。
予備調査を30日以内と明記しているのだから、予備調査を30日以内に終えるよう、文部科学省は行政指導すべきでしょう。
どのような法的権限で、どうして、ルールを勝手に捻じ曲げるの?
○山本大臣政務官
何でもかんでもとにかく早く結果さえ出てくればいいというものではなく、きちっと再実験をして、本当に疑わしいものを、疑惑を晴らす。本当に不正があれば、それは、先ほど申し上げたとおり、競争的資金の規制をかける等罰則規定を設けておりますので、そこはきちっと厳正に対応をいたしたいと思っております。
白楽目線(上から目線):
オイオイ、「とにかく早く結果を出せ」など、誰も言っていない。
予備調査を30日以内と明記しているので、30日以内に予備調査を終えろと言っているだけです。
そこを厳正に対処しない言い訳に、なんで、競争的資金の制約では厳正に対処するというのか?
足して2で割るような事項ではなく、別々の事項でしょう。
○小川委員
確認ですが、では、三十日以内の予備調査に関しては、全機関から、予備調査の結果はこういうことだという報告はあったんですね。
○山本大臣政務官 お答えいたします。
まだ、六機関、研究者十一名、論文十八本分が予備調査中であるという報告をいただいております。
白楽目線(上から目線):
6機関が30日以内に予備調査を終了していない。
それも、30日以内どころか、4か月、つまり、4倍の期間も過ぎてるのに終了していない。異常な怠慢です。
これでは、規則(ガイドライン)が規則になっていない。
文部科学省は強く行政指導すべきでしょう。オカシイよ文部科学省。
★衆議院議員 真島省三 – 日本共産党
第189回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号 平成27年5月19日
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/118903910X00320150519/104
○真島委員
捏造、改ざん、盗用と認定された研究活動における不正行為の件数及び科学研究費補助金の不正使用を行った研究機関数、返還命令額、応募資格停止人数について、過去十年の合計だけで結構ですので、教えてください。
○村田政府参考人 お答え申し上げます。
平成十八年(2006年)十月以降、研究活動における不正行為について、文部科学省の受付窓口への告発があり、その後、捏造、改ざん、盗用の不正行為が認定された件数は十一件でございます。
なお、文部科学省への告発にかかわらず、平成二十六年度中に捏造、改ざん、盗用の不正行為が認定され、文部科学省で報告を受けた件数は十二件でございます。
また、あわせてお尋ねのございました科学研究費補助金につきましては、平成十七年度以降、これまでに不正使用を行った延べ九十機関について、七億二千二百六十七万円の返還命令を行うとともに、五百十九名に対して応募資格停止の措置をとっているところでございます。
白楽目線(上から目線):
日本は研究不正行為数のまともな数値を持っていない。
つまり、日本にはまともなデータがない。まともなデータがないのに議論しても意味がないだけでなく、間違った方向に進む危険性がある。だから、まず、まともなデータを得る施策をすべきです。
村田政府参考人は、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官の村田善則である。
村田政府参考人は、事実を述べているだけで間違ったことは言っていない。
だが、文部科学省が認定した件数、告発を受けた件数は、日本のネカト行為のほんの一部でしかない。その数値を根拠にネカト行為の動向を論じるのは、危険な気がする。
過去10年間(2005~2015年)に「不正使用を行った延べ九十機関について、七億二千二百六十七万円の返還命令を行うとともに、五百十九名に対して応募資格停止の措置をとっている」と、村田政府参考人は、答弁している。
つまり、平均すると毎年約50人が研究費不正者(含・ネカト件数は10年で11件なので、年平均は1件、?人)で、その返還額は毎年約7,226万円となる。研究費不正者はすごく多い。
白楽は、研究費不正者の事件を調べていないが、こんなに多いことに驚いた。そして、この数値は過去10年間ということなので、国が有効な対策を立てなかったことにも驚いた。
○真島委員
さらに、同報告書では、見ただけで疑念が湧く図表や明らかに怪しいデータがあるのに、共同研究者が疑念を追及する実験を行わなかったことを挙げて、特許や研究費獲得や著名雑誌への論文掲載に夢中になって、研究の中身への注意がおろそかになった可能性も指摘をしております。
政府が進めてきた過度に競争的な政策、つまり、競争的資金の重点配分や任期制など、競争的環境が強まったもとで成果至上主義が助長されて顕著になっている、こういう指摘を私はしっかり受けとめるべきだと思います。
特に、バイオ研究の分野では、政府が進める成長戦略の柱、科学技術政策の重点領域として巨額の資金投入が行われてきました。それとともに、成果が厳しく追求をされ、研究費獲得を目指して過度な競争が起きていると言われております。
現場でどうなっているかというのをお聞きしますと、何としても業績を上げなければいけないというすさまじいプレッシャーがある、少しでもインパクトのある論文を一本でも多く一流雑誌に出したいとしのぎを削っている、教授クラスの人でも、今成果を上げなければ研究費がとれないという恐怖を感じてやっているというんですね。
白楽目線(上から目線):
ネカトの原因を「過度な競争」「プレッシャー」のせいにする都市伝説がまた出てきました。
この都市伝説を誰が広めたのか不明だが、研究不正のまともな論文を読めば、ほぼ間違っているのは明白です。少なくとも主要な原因ではない。
→ 7-44 出版プレッシャーでネカトするわけじゃない | 白楽の研究者倫理
学術界だけでなく、どの世界にも「過度な競争」「プレッシャー」がある。
そして、どの世界でも不正を働いた人の弁解は、「自分は悪くない。社会が悪い」です。研究者の場合、「自分は悪くない。「過度な競争」「プレッシャー」が悪い」です。
「過度な競争」「プレッシャー」が主要な原因なら、同じ「過度な競争」「プレッシャー」下にある研究者の大多数がネカトをすることになる。実際は「過度な競争」「プレッシャー」下にあっても研究者の大多数はネカトをしない。
チョッと、ネカトの原因は何かを勉強してから質問してよね。
●7.【白楽の感想】
《1》玉石混交
国会の「研究不正」関連に関する質問・答弁は、以前から気になっていた。
気になっていたというのは、「こんな理解や議論ではマズイ」という気持ちだった。
2021年、名古屋大学や長崎大学の盗用事件で、当該大学のネカト調査が異常である。そして、大学に自浄力がない。大学がヘンなことをしていると強く思うようになった。
文部科学省や日本医療研究開発機構(AMED)に伝えても、しっかり対処する様子がない。
それなら、政治家を動かし、日本の研究公正の「未来」を明るくしようと考えた。それで、日本の国会で誰が「研究不正」を追求しているか、調べてみようと、最近10年間の国会での質問・答弁を読んでみた。
けど、ヤッパリ、議員・官僚・参考人が「こんな理解や議論をしていて、日本は本当にマズイな」と思った。
質問・答弁で「優れている」例を少ししか示さなかったけど、白楽目線で見ると、実際に「優れている」例は少ししかなかった。
国会でこのような質問・答弁をしていては、日本の研究公正の「未來」は「暗い」。日本は衰退期に入っているので、日本の研究公正は、ますます悪化するだろう。
「ど~う すりゃいいの~」・・・。
《2》玉
質問・答弁で「優れている」例は少なかったが、「優れている」と思った議員はいる。今のところ、以下の2人だ。
白楽は、以前からの知り合いの議員たちではなく、この2人に、研究不正問題を進言してみよう、と思った。
1.参議院議員の川田龍平(かわだ りゅうへい)
川田 龍平(かわだ りゅうへい、1976年1月12日 – )は、日本の政治家。立憲民主党所属の参議院議員(3期)、参議院行政監視委員長。岩手医科大学客員教授。東京都出身。
結いの党選挙対策委員長、維新の党国会議員団総務会長、党規委員長を務めた。東京HIV訴訟(薬害エイズ事件)原告、川田龍平と人権アクティビストの会代表。龍平学校-PEEK主宰。(川田龍平 – Wikipedia)
川田龍平・参議院議員に意見を伝えるサイトは → 「ココ」
2.衆議院議員の平野博文(ひらの ひろふみ)
[211101追記]:2021年10月31日の第49回衆議院総選挙で落選。衆議院議員ではないので、取り消し線加筆。
平野 博文(ひらの ひろふみ、1949年3月19日 – )は、日本の政治家。立憲民主党所属の衆議院議員(7期)、立憲民主党代表代行(筆頭・党務総括)、選挙対策委員長。同大阪府連合特別代表。
内閣官房長官(第77代)、文部科学大臣(第16代)、衆議院安全保障委員長・国土交通委員長・懲罰委員長、民主党国会対策委員長(第17代)、民進党副代表、同国会対策委員長(第4代)、旧国民民主党総務会長(初代)、同幹事長(第2代)、雄志会会長(初代)等を歴任した。(平野博文 – Wikipedia)
平野博文・衆議院議員に意見を伝えるサイトは → 「ココ」
《3》どこを動かす?
研究不正問題を議員に進言して、議員を動かせるだろうか?
今回調べてみて、再確認したが、議員が国会で「研究不正」の質問する場合、既にメディアが騒いでいる事件ばかりだった。
白楽が進言しようと思うのは、大学の異常なネカト調査を是正することだが、まだメディアは騒いでいない。そして、この問題の奥は深く、全面的に闇が立ち込めている。
文部科学省は、以下に示すように、ネカト調査をするのは当該大学だと決めている。
「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日)」では、第3節4-1「調査を行う機関」において、研究機関の所属する研究者に係る特定不正行為の告発があった場合は、原則として、当該機関が告発された事案の調査を行うとなっております。(文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室)
当該大学がネカト調査するスタイルは米国スタイルなのだが、この方式が回るのには、大学のネカト調査をチェックする第三者機関があるというのが前提だ。
米国には大学のネカト調査をチェック・指導・監査する研究公正局や監査総監室(Office of Inspector General)などの政府機関がある。さらに、米国の研究界・メディア界にもチェック機能がある。車の両輪としてこれらの仕組みが稼働しているから、当該大学がネカト調査する仕組みがかろうじて成り立っているのである。
それでも、これらのチェック機能は弱く、大学のいい加減なネカト調査が横行しがちである。警察がネカト調査すべきという主張を何度も見る。 → 1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! | 白楽の研究者倫理
日本には、大学のネカト調査をチェック・指導・監査する政府機関も研究界・メディア界もない。もちろん、警察も介入しない。
だから、大学のネカト調査委員会は自大学に都合の良い結論を出す。その調査報告書を非公開にすることを含めさまざまなステップで、大学は隠ぺい工作をし、ある意味、やりたい放題である。
ネカト調査の責任者がいい加減なことをしても、非難されることはほとんどなく、ましてや懲戒処分されたことは一度もなかった。
前述したように、大学のネカト調査をチェック・指導・監査する仕組みがないので、批判・非難されず、大学のネカト調査は長いこと腐敗していたし、現在もしている。
ネカトに詳しいネカトウオッチャーたちは随分前から当該大学がネカト調査することの問題点を指摘し、第三者機関を設立し、ネカト調査させるべきだと主張している。 → 1‐5‐1 ネカトハンターとネカトウオッチャー | 白楽の研究者倫理
ただ、ネカト調査そのものが専門的な事件なので、大学のネカト調査委員会が腐敗していると指摘しても、大衆やメディアはピンとこない。
白楽は研究倫理の専門家なので、調査の不正が明白にわかるが、大衆やメディアにはピンとこない。大衆にもわかるような証拠を提示しないと、イヤ、提示しても、メディアは記事にしない。
日本のメディアは、もともと、大政翼賛会的な報道が主体なので、記者が自力で調査し記事にすることは少ない。
それで、メディアはネカト調査が不正だと騒がない。相手が大学なので、よほどの不正の証拠をつかまないと記事にしない。
メディアが騒がないと、議員は国会で「研究不正」の質問をしない。
それでも、川田龍平・参議院議員や平野博文・衆議院議員に、「研究不正」の問題点を伝え、国会で取り上げてもらたい。そして、いずれ、法改正や資金配分まで持っていきたい。
で、どこの風を吹くと、桶屋が儲かるまでいくのか、
「ど~う すりゃいいの~」・・・。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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「過度な競争意識や研究資金の不足が不正を招く」と言う考えに対して
以下の様な記事がありますので、この場を借りて紹介いたします。
「論文不正などの研究不正を撲滅する3つの解決策、STAP細胞の教訓」https://kaikei.mynsworld.com/stap/
公的な研究機関に所属していない私の身分からは「なるほど」と思わされる
記事ですが、研究者から見るとどの様に感じるのかも気になります。
ぜひ、白楽先生の感想もうかがってみたいです。
フォスターさんありがとう。コメントにお答えします。
提示していただいた記事では、研究不正は最近のことで、昔はなかったという認識です。これは間違いです。ネカト行為とネカト事件は100年以上前の昔からありました。人間はズルする生き物で、「試験にカンニング、研究にネカト」は、ヘンな言い方ですが、表裏一体です。
定量的データはないので白楽の推定になるけど、研究者当たりのネカト行為数は、昔の方が、多分、ズッと多かった。
ただ、日本では、20年くらい前から、メディアがネカト事件を記事やニュースとして取りあげるようになった。その影響で、文科省がネカトに対応するようになった。だから、研究不正は最近20年間に急増していると勘違いしている日本人がソコソコいる。
その人たちは、研究不正の原因を最近20年間の日本の学術界の変化に原因を探す。
もちろん、研究者・研究活動は研究費・院生(ポスドク)数・研究職数・雇用形態・給料(収入)・社会的ステータスなどに大きな影響を受ける。つまり、最近20年間の日本の変化と日本の学術界の変化に大きな影響を受けている。
そして、基本的に、研究不正を最近の学術体制の諸問題に絡めて論じる方が、世間受けする。記事が売れる・読まれる。それで、かなりのメディアがその線で研究不正を論じる。
提示していただいた記事も、研究不正問題をダシにして学術体制の問題点をツマミ食いした内容です。研究不正を本気で解決しようとする構想とは思えません。
それで、白楽は、日本のこの手の記事を信用していません。まともに論じる気はありません。
とはいえ、白楽は、通常は、よほどのことがない限り、そのような記事でも批判しない方針です。理由は、一般社会にネカト問題についての関心をもってもらいたいからです。「かっぽう着姿のかわいい女性研究者」の事件でも、無関心よりはマシだというスタンスです。今回は要望があったので批判的に書いたけど・・・。
同じように、「5C 国会の「研究不正」発言」で、国会の質問・答弁を「上から目線」で「ヘン」を指摘したけど、議員・参考人・文部科学省はめげないで欲しいと思っています。この程度で「めげない」と思いますけど。
白楽先生
コメントにお返事頂き、ありがとうございます。
「ネカト行為とネカト事件は100年以上前の昔からありました。」は仰る通りで
江戸時代の国学者、椿井政隆の事例もあります。
現代の研究者によって古文書の嘘が発覚したと言われておりますが
これが本当ならば、江戸時代(それ以前からも)ネカトは存在していることになります。
他にも、メンデルやガリレオの研究成果にもデータをいじった疑いが指摘されております。
20年くらい前からマスメディアが研究不正を取り上げるようになったのは
「旧石器時代捏造(ゴッドハンド)事件」が契機だと私は思います。
(当時その教科書で日本史を勉強しており、後に後輩の教科書からは記述が無くなったことをよく覚えております。)
研究不正が義務教育に悪影響を及ぼした象徴的な事例なのかもしれません。
紹介させて頂きました記事について、私は
「資金や雇用等、ここ20年来の研究環境の悪化が不正を招く」という
研究者・マスコミサイドの言い分に対する著者の方の反論なのかな?
という視点で読みました。
私も「研究環境の悪化が~」という研究者の言い訳に対しては
「ウソつけ」としか思えません。市民を侮辱しているからです。
「資金が潤沢な大企業なら不正をしない。反して零細企業は不正をする」
と言っている様なものです。
何はともあれ、議員・参考人・文科省には頑張ってほしいと私も思いますけど
最低限、論文に用いた研究データの保存については法整備が欲しいな、と思う次第です。
研究不正問題に関心がある議員をフォローアップする学術団体があればよいのですが・・・