2017年4月24日掲載。
ワンポイント:盗博サイトのヴロニプラーク・ウィキの65番目。ポルトガル出身の若い女性で、2009年(31歳)にドイツのシャリテ・ベルリン自由大学(Freie Universität & Charité Unitersitätsmedizin, Berlin)で理学(生命科学)の博士号を取得した。2014年2月(36歳)に盗博がバレたが、2017年4月23日現在(39歳)、博士号ははく奪されていない。盗用ページ率は62.7%で、盗用文字率は約26%である。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
6-1.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
アナ・キャラオ(Ana Catarina Ribeiro Carrão、写真出典)は、ポルトガルで育ち、2009年(31歳)にドイツのシャリテ・ベルリン自由大学(Freie Universität & Charité Unitersitätsmedizin, Berlin)で理学(生命科学)の博士号を取得した。
2010年(32歳)に米国のイェール大学医科大学院(Yale University School of Medicine)・ポスドクになり、その後、米国のダートマス医科大学院に移籍した。
2014年2月28日(36歳)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が盗博を告発した。65番目の事件である。 → 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
盗博発覚以降、滞在国や所属は不明である。研究職を廃業したと思われる。
2017年4月23日現在(39歳)、シャリテ・ベルリン自由大学はアナ・キャラオに授与した博士号をはく奪していない。
シャリテ・ベルリン自由大学(Charité – Universitätsmedizin Berlin)。© by Charité – Universitätsmedizin Berlin。写真出典
- 不正:盗博(盗用博士論文)
- 国:ドイツ
- 成長国:ポルトガル
- 研究博士号(PhD)取得年月日:2009年6月4日(31歳)
- 研究博士号(PhD)取得大学:ドイツのシャリテ・ベルリン自由大学(Freie Universität & Charité Unitersitätsmedizin, Berlin)
- 分野:理学(生命科学)
- 博士論文タイトル:A new insight on the direct actions of Granulocyte-Colony Stimulating Factor in the myocardium (日本語訳):心筋の顆粒球コロニー刺激因子の直接作用についての新しい洞察
- 博士論文審査教授: Prof. Dr. Petra Knaus, PD Dr. Ivo Buschmann, William Chilian.
- 公開: Download DNB
- 盗博発覚年月日:2014年2月28日(36歳)
- 盗用ページ率:62.7%
- 盗用文字率:約26%
- 研究博士号(PhD)はく奪状況:2017年4月23日現在(39歳)、はく奪なし
- 男女:女性
- 生年月日:1978年。仮に1978年1月1日生まれとする。
- 現在の年齢:46 歳?
- 発覚時地位:
- ステップ1(発覚):第一次追及者はヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)の人(詳細不明)
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ベルリン自由大学・調査委員会。調査している兆候はない。
- 結末:2017年4月23日現在(39歳)、博士号はく奪なし
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:1978年。仮に1978年1月1日生まれとする。ポルトガルで生まれる。
- xxxx年x月xx日(xx歳):ポルトガルのxx大学卒業
- 2004年1月-2006年1月(26-28歳):ポルトガルのミーニョ大学(University of Minho)・健康生命科学研究所(Health and Life Sciences Institute)・研究助手
- 2006年2月-2009年2月(28-31歳):ドイツのシャリテ・ベルリン自由大学(Charité Medical University, Berlin)・心臓血管研究所(Center of Cardiovascular Research )・院生
- 2007年7月-2008年11月(29-30歳):米国のノースイースタン・オハイオ医科大学院(Northeastern Ohio Universities College of Medicine)・プレドク研究員
- 2009年6月4日(31歳):ドイツのシャリテ・ベルリン自由大学で研究博士号(PhD)取得。理学(生命科学)
- 2010年2月-2011年2月(32-33歳):米国のイェール大学医科大学院(Yale University School of Medicine)・ポスドク
- 2011年3月(33歳):米国のダートマス医科大学院(Dartmouth Medical School)・ポスドク(推定)
- 2014年2月28日(36歳):盗博が発覚
- 2017年4月23日現在(39歳):シャリテ・ベルリン自由大学は博士号をはく奪していない
●5.【不正発覚の経緯と内容】
アナ・キャラオ( Ana C. R. Carrao )は、学部時代をポルトガルの大学で過ごしている(推定)。
その後、ドイツの大学院に入学した。院生時代に、米国に出かけ、最初の論文が2009年に米国から出版されている(第一著者ではない)。
2009年6月4日(31歳)、米国から戻って、半年後。ドイツの大学院(シャリテ・ベルリン自由大学)で博士号(生命科学)を取得した。指導教授はイヴォ・ブッシュマン(Prof. Dr. med. Ivo Buschmann、写真出典)だった。
その後、米国の大学でポスドクとして過ごした。
2014年2月28日(36歳)、博士号の取得5年後、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が、盗博と告発した。
ところが、シャリテ・ベルリン自由大学は盗博の調査をしているフシがない。したがって、2017年4月23日現在(39歳)、博士号ははく奪されていない。
ただ、アナ・キャラオ( Ana C. R. Carrao )は、2013年以降の論文出版がなく、研究者を続けているフシもない。
●6.【盗用解析】
アナ・キャラオ(Ana C. R. Carrão)の博士論文のタイトルは 「A new insight on the direct actions of Granulocyte-Colony Stimulating Factor in the myocardium (日本語訳):心筋の顆粒球コロニー刺激因子の直接作用についての新しい洞察」である。
博士論文の盗用分析図は以下の5色のバーコードである。博士論文は全体で62ページ、分析対象は51ページ、盗用ページ率は62.7%、盗用文字率は約26%だった
なお、元の盗用分析図では、バーコードがページ毎の盗用分析にリンクしている。→ http://de.vroniplag.wikia.com/wiki/Arc
★イラスト表示
以下はページ毎に色分けしたイラスト表示である。
盗用の色分けは、灰色= 逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、赤色 = 加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、黄色 =流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 青色 = 翻訳盗用、である。
★各ページの盗用分析
アナ・キャラオ(Ana C. R. Carrão)の博士論文の各ページ毎に盗用分析がされている。盗用があるページは青色で、盗用がないページは赤色である。青色をクリックすると、各ページが開く。
Haupttext | |||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
012 | 013 | 014 | 015 | 016 | 017 | 018 | 019 | 020 | |||||||||||
021 | 022 | 023 | 024 | 025 | 026 | 027 | 028 | 029 | 030 | 031 | 032 | 033 | 034 | 035 | 036 | 037 | 038 | 039 | 040 |
041 | 042 | 043 | 044 | 045 | 046 | 047 | 048 | 049 | 050 | 051 | 052 | 053 | 054 | 055 | 056 | 057 | 058 | 059 | 060 |
061 | 062 |
【22ページ目】
1例として、22ページ目(つまり、022)をクリックすると、盗用比較図が出てくる。以下はその1部分を示した。
左側がアナ・キャラオの博士論文で右が被盗用論文である。着色部分の文章が同一である。
見事に逐語盗用である。明白な盗用だ。
●6-1.【論文数と撤回論文とパブピア】
2017年4月23日現在、パブメド(PubMed)で、アナ・キャラオ(Ana Catarina Ribeiro Carrão)の論文を「Ana Catarina Ribeiro Carrão [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、「2009年のAntioxid Redox Signal. 」論文の 1論文がヒットした。
「2009年のAntioxid Redox Signal. 」論文のアナ・キャラオの所属は米国のノースイースタン・オハイオ医科大学院(Northeastern Ohio Universities College of Medicine)である。
「Carrao AC[Author] 」で検索すると、1987年と2000年の4論文がヒットした。
上記「2009年のAntioxid Redox Signal. 」論文の他に、2009年、2011年、2012年に各1論文を出版していた。2011年、2012年の論文でのアナ・キャラオの所属は米国のダートマス医科大学院(Dartmouth Medical School)である。
2017年4月23日現在、パブメドの論文リストでは撤回論文はなかった。
アナ・キャラオは、2009年に博士論文を書いているが、出版した全4論文のうち、第1著者の論文は1報しかなく、博士論文を2009年に出版したのである。アナ・キャラオがシャリテ・ベルリン自由大学から出版した唯一の論文である。
この論文が博士論文を学術誌に出版したのだが、重複出版の指摘はない(今のところ)。
- Stimulation of coronary collateral growth by granulocyte stimulating factor: role of reactive oxygen species.
Carrão AC, Chilian WM, Yun J, Kolz C, Rocic P, Lehmann K, van den Wijngaard JP, van Horssen P, Spaan JA, Ohanyan V, Pung YF, Buschmann I.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2009 Nov;29(11):1817-22. doi: 10.1161/ATVBAHA.109.186445.
PMID:19542022
★パブピア(PubPeer)
2017年4月23日現在、「パブピア(PubPeer)」ではアナ・キャラオ(Ana Catarina Ribeiro Carrão)の論文にはコメントがない:PubPeer – Results for Carrao AC
●7.【白楽の感想】
《1》詳細不明
アナ・キャラオは学部時代をポルトガルの大学で過ごしていると思われる。その後、ドイツの大学院に入学した。院生時代に、米国に出かけ、最初の論文が出版されている(第一著者ではない)。米国から戻って、半年後、ドイツの大学院で博士号を取得した。
ドイツの大学院も米国の研究室も研究倫理を躾けなかったようだ。
院生時代にフラフラと腰が据わらない印象を受けた。
不明点が多すぎる事件である。
ベルリン自由大学はアナ・キャラオの盗博を調査しているのか・していないのか? していないなら、なぜしないのか?
盗博と指摘されてから3年経過した2017年4月23日現在(39歳)、ベルリン自由大学は博士号をはく奪していない。なぜ?
アナ・キャラオが最後に論文を出版したのは2012年である。それから5年もたった。その間、2014年2月に盗博が発覚した。5年間も論文出版がないということは、もう、研究者を廃業したのだろう。
なお、女性の場合、結婚して姓を変えると、旧姓で検索しても論文がヒットしない。それで、白楽が追跡できないだけかもしれない。
この事件は、2009年に博士号取得と、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。
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●8.【主要情報源】
① ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のアナ・キャラオ(Ana C. R. Carrao)サイト:Ssk | VroniPlag Wiki | Fandom powered by Wikia
② Vienna International PostDoctoral Program:Ribeiro Carrão Ana Catarina « Vienna International PostDoctoral Program (VIPS)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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