2016年10月9日掲載。
ワンポイント:2002年に少なくとも8報の論文盗用が発覚し、教授を辞職した
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
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●1.【概略】
ユン・パク(Yung Park、写真未発見)は、韓国・金烏(クムオ)工科大学(Kumoh National Institute of Technology)・教授で、専門は物理学(材料工学)だった。
2002年(32歳?)、ブリティッシュ・カウンシルの奨学金を受け、英国・ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の訪問研究員(無給)になった。その時に、被盗用者の通報により、盗用が発覚した。
本記事のユン・パク(Yung Park)は、韓国先端科学技術院(KAIST)で研究博士号(PhD)を取得した。同姓同名の別人の物理学者がいる。後者は米国で研究博士号(PhD)を取得し、ウィキペディア英語版の記事になっている (https://en.wikipedia.org/wiki/Park_Yung-woo、写真出典同) 。
この事件の日本語解説は1つあった。「朝鮮日報」の文章を本文に引用した。
韓国・金烏(クムオ)工科大学(Kumoh National Institute of Technology)。写真出典
- 国:韓国
- 成長国:韓国
- 研究博士号(PhD)取得:韓国先端科学技術院(KAIST)
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1970年1月1日とする。1997年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
- 現在の年齢:54 歳?
- 分野:材料工学
- 最初の不正論文発表:1995年?(25歳?)
- 発覚年:2002年(32歳?)
- 発覚時地位:ケンブリッジ大学・訪問研究員
- ステップ1(発覚):第一次追及者は姫路工業大学の材料工学者・Bagautdin Bagautdinovで、被盗用者である。学術誌出版局と韓国先端科学技術院(KAIST)へ公益通報
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①韓国先端科学技術院(KAIST)・調査委員会。②学術誌出版局。
- 不正:盗用
- 不正論文数:少なくとも8報だが、他は未調査
- 時期:研究キャリアの初期から
- 結末:辞職
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:不明。仮に1970年1月1日とする。1997年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
- 1995-2002年(25-32歳?):韓国先端科学技術院(KAIST)で研究。物理学
- 1997年(27歳?):韓国先端科学技術院(KAIST)で研究博士号(PhD)を取得。物理学
- 2002年(32歳?):英国・ケンブリッジ大学(University of Cambridge)・訪問研究員(無給だが、ブリティッシュ・カウンシルの奨学金を受給)
- 2002年4月(32歳?):少なくとも8論文の盗用が発覚する
- 2002年4月(32歳?):英国・ケンブリッジ大学を去る
- 2002年4月(32歳?):韓国の金烏(クムオ)工科大学(Kumoh National Institute of Technology)・教授
- 2002年(32歳?):韓国の金烏(クムオ)工科大学・教授を辞職
●4.【日本語の解説】
★2004年1月4日: 朝鮮日報「ネイチャー誌が韓国人博士の論文盗作を報道」
出典 → ネイチャー誌「韓国人が論文盗作」 (保存版)
世界的権威を持つ科学雑誌「ネイチャー」は、新年号(1日付)で韓国科学技術院(KAIST)で博士号を取得し、ケンブリッジ大学の訪問研究員だった韓国人の朴ユン(Yung Park)博士が、1997年と2001年の間、8件以上の学術誌に掲載された論文を盗作していたことが調査の結果明らかになったと報じた。
ネイチャーは雑誌の表紙に「非行に対する安易さ(Complacency about misconduct)」という見出しの社説と「ケンブリッジ物理研究室での論文盗作、ガイドラインの設定が急がれる」という見出しの記事で、このような内容を公開した。
ネイチャーは朴博士が主にロシア語の論文を盗作したと報じた。
例えば、朴博士が2000年12月、学術誌「Europhysics Letters」に掲載した「ずれによって変造した構造を持つ Zr_0.98Sn_0.02TiO_4の単結晶での欠陥密度波動、中性子回折の研究」という題名の論文は、94年にロシアの著名物理学者が「JETPレタース」に掲載した論文を盗作したものだと同誌は説明した。
しかしこのような事実は2002年まで明らかになることなく、朴博士は金烏(クムオ)工科大学の教授にも採用されている。昨年4月になってようやく自分の論文が盗作されたということに気が付いたロシアの科学者が、ケンブリッジ大学にこの事実を知らせた。
これとは別に、通達を受けたKAISTも独自調査を開始し、朴博士がこれ以外の論文からもコピーしていたことが明らかになった。昨年6月、KAISTは電子メールで調査結果を該当の学術誌の編集長に通告した。
朴博士は教授職を辞退した。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
ユン・パク(Yung Park)は、1995-2002年の8年間に80論文を出版した。
2002年(32歳?)、姫路工業大学(2004年に兵庫県立大学と改名)の材料工学者・Bagautdin Bagautdinov(ロシア人?)が自分の論文が、パクに盗用されていることに気が付いて、韓国先端科学技術院(KAIST)と学術誌出版局に連絡した。
韓国先端科学技術院(KAIST)や他の機関が調査すると、パクの盗用論文が他にも見つかった。
2002年4月(32歳?)、盗用が発覚したからなのか、金烏(クムオ)工科大学(Kumoh National Institute of Technology)・教授に就任するためか、ユン・パクは、英国・ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の訪問研究員をやめて、韓国に帰国した。
2002年x月(32歳?)、金烏(クムオ)工科大学もパクの盗用に気が付いた。ユン・パクは、金烏(クムオ)工科大学を辞職した(あるいは、就任を辞退した)。
金烏(クムオ)工科大学も学術出版局も盗用への対処に仕方がわかっておらず、パクの大半の論文は調査されていない。盗用と指摘されたのに、学術誌から撤回されていない論文もある。
●6.【論文数と撤回論文】
2016年10月9日現在、グーグル・スカラー(http://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja)で、ユン・パク(Yung Park)の撤回論文を「(retraction OR retracted) author:”Yung Park”」で検索すると、122撤回論文がヒットした。
122報は多すぎる。うまく検索できていない。
●7.【白楽の感想】
《1》詳細は不明
この事件は韓国の事件で、事件の詳細は不明である。特に、ユン・パク(Yung Park)の人物情報はほとんど得られなかった。
以下、「カーク・スパーバー(Kirk Sperber)(米)」の記事に書いたことと同じです。
どうして盗用をしたのか? 研究機関はどんな改善策を施したのか? 事例分析し、研究ネカトシステムの改善につながる点、学べる点は何か?
全くわかりません。
本ブログでは、比較的、情報が得られる事件を解説しているが、実は、この事件のように、詳細が不明なことが多い。
●8.【主要情報源】
① 同姓同名の別人? ウィキペディア英語版:Park Yung-woo – Wikipedia, the free encyclopedia
② 2004年1月5日のShim Jae-wooの「Korea JoongAng Daily」記事:Korean scientist said to be serial plagiarist-INSIDE Korea JoongAng Daily(保存版)
③ 2004年1月1日、「Nature」記事、doi:10.1038/427001a:Complacency about misconduct : Article : Nature(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。