アルノデイ・バン(Arunoday Bhan)(米)

2024年11月15日掲載 

ワンポイント:2024年9月10日(36歳?)、研究公正局は、ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ボストン小児病院(Boston Children’s Hospital)・ポスドク、その後、シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)・研究員だったアルノデイ・バンの1報の発表論文、2件の研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した。4年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。記事執筆時点では、撤回論文は1報。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

アルノデイ・バン(Arunoday Bhan、Arunoday K. Bhan、ORCID iD:、写真出典)は、ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ボストン小児病院(Boston Children’s Hospital)・ポスドク、その後、シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)・研究員だった。専門はがんの生化学である。

シティオブホープ医学研究所の上司または同僚がネカトを見つけ告発したと思われるが、推定の域をでない。

発覚時期は、2021年11月(33歳?)頃と推定される。

シティオブホープ医学研究所とハーバード大学医科大学院がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に伝えた。

その後、シティオブホープ医学研究所・研究員を辞職した(させられた)。

2024年9月10日(36歳?)、研究公正局(ORIロゴ出典)は、シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)・研究員だったアルノデイ・バンの1報の発表論文、2件の研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した。

4年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。

シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド(?)
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得::テキサス大学アーリントン校
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1988年1月1日生まれとする。2015年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 現在の年齢:36 歳?
  • 分野:がんの生化学
  • 不正論文発表:2021年(33歳?)
  • ネカト行為時の地位:ハーバード大学医科大学院・ポスドク、シティオブホープ医学研究所・研究員
  • 発覚年:2021年(33歳?)
  • 発覚時地位:シティオブホープ医学研究所・研究員
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ハーバード大学医科大学院とシティオブホープ医学研究所・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:研究公正局は1報の発表論文、2件の研究費申請書にねつ造・改ざんがあったと発表した
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:NIHから4年間の監督期間(Supervision Period)
  • 対処問題:
  • 特徴:アルノデイ・バンのウェブ情報がほとんど削除されている
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

アルノデイ・バン(Arunoday Bhan)のウェブ情報はほとんど削除されている。それで、不明点が多い。

  • 生年月日:不明。仮に1988年1月1日生まれとする。2015年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • xxxx年(xx歳):インド(?)のxx大学で学士号を取得(推定)
  • 2010年9月~2015年12月(22~27歳?):テキサス大学アーリントン校(University of Texas at Arlington)で研究博士号(PhD)を取得:生化学。指導教員はスブランス・マンダル教授(Subhrangsu Mandal)
  • 2016年(28歳?)頃:ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ボストン小児病院(Boston Children’s Hospital)・ポスドク
  • 20xx年(xx歳):シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)・研究員。ボスはラフル・ジャンディアル準教授(Rahul Jandial)
  • 2021年11月(33歳?)頃(?):不正が発覚(時期は推定)
  • 202x年(xx歳):シティオブホープ医学研究所とハーバード大学医科大学院がネカト調査を終え、クロと判定した
  • 202x年(xx歳):シティオブホープ医学研究所・研究員を辞職した(させられた)
  • 2024年9月10日(36歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究人生

アルノデイ・バン(Arunoday Bhan)の経歴は不明点が多い。

インドで生まれ育ったと思うが、大学までの履歴は不明である。

2015年(27歳?)、米国のテキサス大学アーリントン校(University of Texas at Arlington)で、スブランス・マンダル教授(Subhrangsu Mandal)の指導下で研究博士号(PhD)を取得した。

2016年(28歳?)頃、ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)傘下のボストン小児病院(Boston Children’s Hospital)・ポスドクになった。

その後、シティオブホープ医学研究所(City of Hope Medical Center)のラフル・ジャンディアル準教授(Rahul Jandial、写真出典)の研究室員になった。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、「2021年10月のSci Rep」論文と2021年の研究費申請書にネカトが見つかっているので、発覚時期は、2021年11月(33歳?)頃と推定される。

推定だが、上司のラフル・ジャンディアル準教授がネカトを見つけたと思う。

202x年(xx歳)、アルノデイ・バンはシティオブホープ医学研究所・研究員を辞職した(させられた)

★獲得研究費

アルノデイ・バン(Arunoday Bhan)は、研究代表者として研究費を獲得していない。 → RePORT ⟩ Arunoday Bhan  

★研究公正局

2024年9月10日(36歳?)、研究公正局はアルノデイ・バンが2件の研究費申請書でデータをねつ造・改ざんしていたと発表した。

4年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。

2件の研究費申請書は以下の通り(研究公正局の発表を貼り付けた)。2021年の申請書。

  1. R03 CA270990-01, “Human induced pluripotent stem cell derived platelets and platelet derived extracellular vesicles mediated delivery of chemotherapeutics for breast to brain metastasis treatment,” submitted to NCI, NIH, on June 15, 2021 (hereafter referred to as R03 CA270990-01).
  2. R21 CA272364-01, “Off-the-shelf engineered human induced pluripotent stem cell derived platelets mediated delivery of HER2 inhibitors for HER2+ Breast to brain metastasis tumors immunotherapy,” submitted to NCI, NIH, on September 29, 2021 (hereafter referred to as R21 CA272364-01).R01 EY020539-01A1 submitted to NEI, NIH (unfunded)

1報の発表論文は以下の通り(研究公正局の発表を貼り付けた)。「2021年10月のSci Rep」論文。

  • Human induced pluripotent stem cell-derived platelets loaded with lapatinib effectively target HER2+ breast cancer metastasis to the brain.Sci Rep. 2021 Oct 15;11(1):16866. doi: 10.1038/s41598-021-96351-2 (hereafter referred to as Sci Rep. 2021). Retraction in: Sci Rep. 2024 Mar 12;14(1):5972. doi: 10.1038/s41598-024-56291-z.

【ねつ造・改ざんの具体例】

ねつ造・改ざんの具体例を以下に示す。

内部者しかわかりそうもないネカトなので、共同研究者、あるいは画像の被盗用者、がネカトを見つけたと思われる。

★「2021年10月のSci Rep」論文

「2021年10月のSci Rep」論文の書誌情報を以下に示す。2024年3月12日、撤回された。

研究公正局の指摘箇所を以下に示す。

―――図2Dの電子顕微鏡画像

右上は、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株由来のラパチニブ負荷血小板(Lapatinib-loaded platelet)とラベルしているが、実際には非薬物負荷血小板である。また、画像撮影者を引用していない。(図の出典は原著)。

―――補足図 SIBの蛍光顕微鏡像

hiPSC 系統 DF-19-9-7T の培養物から採取したとラベルされているが、実際にはhiPSC 系統 1157.2 の派生物からのもの。(図の出典は原著)。

―――補足図 SICの像

hiPSCラインDF-19-9-7Tの核型画像とラベルされているが、実際にはhiPSC株1156のもの。(図の出典は原著)。

―――補足図 SIEの電子顕微鏡像

成熟6日目の巨核球とラベルされているが、実際にはhiPSC株1156から誘導された不死化巨核球細胞株 (ドキシサイクリン離脱分化誘導の4日後)。(図の出典は原著)。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

2024年11月14日現在、パブメド(PubMed)で、アルノデイ・バン(Arunoday Bhan、Arunoday K. Bhan)の論文を「Arunoday Bhan [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2012~2024年の13年間の28論文がヒットした。

28論文のうち18論文が、スブランス・マンダル教授(Subhrangsu Mandal)と共著である。 → Arunoday Bhan [Author] AND Subhrangsu Mandal [Author] – Search Results – PubMed

2024年11月14日現在、「Retracted Publication」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「2021年10月のSci Rep」論文・1論文が2024年3月12日に撤回されていた。

★撤回監視データベース

2024年11月14日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでアルノデイ・バン(Arunoday Bhan、Arunoday K. Bhan)を「Arunoday Bhan」で検索すると、本記事で問題にした「2021年10月のSci Rep」論文・1論文が2024年3月12日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2024年11月14日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アルノデイ・バン(Arunoday Bhan、Arunoday K. Bhan)の論文のコメントを「Arunoday Bhan」で検索すると、2論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》発覚しにくい 

アルノデイ・バン(Arunoday Bhan)のネカト事件のネカトは、電子顕微鏡などの画像のねつ造である。

別の画像を持ってきて自分の実験結果としている。この行為は盗用でもある。

画像そのものを加工していない。ラベルを変えているだけである。

この場合、不正だと見破るのは、第三者にはかなり難しい。それで、「パブピア(PubPeer)」で指摘されなかったのだろう。

研究公正局は「2021年10月のSci Rep」論文の1報だけをネカト論文と結論しているが、アルノデイ・バンがこの論文だけネカトをする理由がない。多分、ほとんどの論文で類似のネカトをしていたと思うが、どうだろう?

  • ネカトの法則:「ネカトはネカト常習者の研究スタイルなので、他論文でもネカトしている」
  • ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

ただ、この手のネカトを証明するのは、時間がかかるし、難易度は高い。

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2024年9月10日:Case Summary: Bhan, Arunoday K. | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2024年9月17日の連邦官報:2024-20995.pdf。(3)2024年9月17日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2024年9月18日:NOT-OD-24-173: Findings of Research Misconduct
② 研究公正局の現在の処分者リスト:PHS Administrative Action Report
③ 2024年9月10日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former Harvard cancer researcher plagiarized data, federal watchdog says – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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