2025年11月4日(火)掲載
アルバニア生まれ育ち(推定)のコンゴリは、2003年(33歳?)、日本の東北大学で研究博士号(工学)を取得した。その後、カナダを拠点にフローゲン・スター・アウトリーチ(FLOGEN Star Outreach)と命名した非営利団体を母体に約20年、不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)であるSIPS会議を16回開催している。SIPS会議でFLOGEN賞を授与された日本人(含・日本所属)は、阿部康二(岡山大学)、木村 豪(塩野義製薬)、杉山 庸一郎(佐賀大学)、犬房春彦(岐阜大学)など、19人もいる。捕食会議はまともなビジネスとは思えないが、被害者・加害者(結託者)がいるのに、日本ではほとんど注意喚起されていない。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】
本件はネカト事件ではない。不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)である。不誠実会議は、「研究者と共犯、あるいは研究者を食い物にするビジネス」で腐敗学術の1つである。
2週間後の2025年11月17-20日、フィリピンのセブ島のデュシ タニ マクタン セブ リゾート (Dusit Thani Mactan Cebu Resort、写真出典)で「科学技術による持続可能性サミット2025(Sustainability Through Science and Technology Summit 2025 」の国際会議が開催される。

主催者は、アルバニアで生まれ育ち、カナダ在住(?)のフロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli、ORCID iD:?、写真出典)である。
コンゴリは、日本の東北大学で博士号(工学)を取得し、カナダのフローゲン・テクノロジー社(FLOGEN Technologies Inc.)の社長、非営利団体・フローゲン・スター・アウトリーチ(FLOGEN Star Outreach)の会長になった。専門は金属工学だった。
本件は、日本の学術界は外国人に超甘いので、外国人にいいように利用された(されている)例の1つである。あるいは、真逆の見方として、外国人が日本の大学に留学し、卒業後、世界的に優れた仕事をする著名人の1人である。
どっちなんでしょう。白楽は前者だと思って記事にした。
コンゴリが主催する「SIPS-持続可能な産業処理サミット」(以下、SIPS会議と略すこともある)は、不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)だと思われる。不誠実会議は、「研究者と共犯、あるいは研究者を食い物にするビジネス」で腐敗学術の1つである。
日本の公的機関は今のところ不誠実会議を取り締まっていない。しかし、「ダマされた」と思う研究者はいる。
学術集会への参加費・出張費は公費(研究費)で払われるが、不誠実会議では実質的な研究討議はない。不誠実会議と承知で参加する研究者は、公費で、①観光を楽しむ、②低質な論文出版、③低質なフローゲン賞の受賞、という無駄をする。
非営利団体・フローゲン・スター・アウトリーチ(FLOGEN Star Outreach)のカナダ・ケベックの所在地(1255 Laird Blvd., Ste.388-1, Mont-Royal, Quebec, Canada H3P 2T1)。この建物の1室に本拠があるようだ。グーグルマップで白楽が作成。写真出典
●2.【経歴と経過】
フロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli)
- 生年月日:不明。仮に1970年1月1日生まれとする。1996年にモントリオール大学で修士号を取得した時を26歳とした
 - 生まれ育ち:アルバニア:Kategoria:Inxhinierë shqiptarë – Wikipedia
 - 19xx年(xx歳):カナダのモントリオール大学(University of Montreal)で学士号取得:金属工学
 - 1996年5月(26歳?):同大学で修士号取得:金属工学:https://tohoku.repo.nii.ac.jp/record/95646/files/T2H152081.pdf
 - 1996年~現(26~55歳?):フローゲン・テクノロジー社(FLOGEN Technologies Inc.)の社長
 - 2003年12月10日(33歳?):日本の東北大学で研究博士号(工学)(乙)を取得。主査:板垣 乙未生(いたがき きみお)
 - 2003年(33歳?):「持続可能な産業処理サミット(Sustainable Industrial Processing Summits:SIPS)」開催。以後、ほぼ毎年開催
 - 2007年~現(37~55歳?):非営利団体・フローゲン・スター・アウトリーチ(FLOGEN Star Outreach)の会長
 - 2019年11月26日(49歳?):ブラジルのリオデジャネイロ名誉市民:フロリアン・コンゴリ博士 (Dr Florian Kongoli)–リオデジャネイロの名誉市民
 - 2024年2月18日(54歳?):妻のミゲン・ディブラ(Migen Dibra)が逝去:Migen Dibra (Obituary)
 - 2025年11月(55歳?):
 
●3.【動画】
【動画1】
動画:「フロリアン・コンゴリ博士, 真新しいカリオカの鳥瞰図 / Dr Florian Kongoli -A bird’s eye view of the brand-new Carioca – YouTube」(日本語)12分36秒。
FLOGEN Stars Outreach(チャンネル登録者数 634人) が2020/12/03に公開
●4.【日本語の解説】
★2018年11月16日掲載
有名な不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)を主催し続けているアシュトシュ・ティワリ(Ashutosh Tiwari)は、日本学術振興会の外国人特別研究員として、日本の物質・材料研究機構にも勤務していた。
「捕食」:材料工学:アシュトシュ・ティワリ(Ashutosh Tiwari)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理
★2020年12月xx日:著者不記載(FLOGEN):「FLOGEN PRESS RELEASES」
フロリアン・コンゴリ博士 (DR FLORIAN KONGOLI)–リオデジャネイロの名誉市民 265
(日本の)東北大学で博士号を得た卒業生のコンゴリ博士(Dr. Kongoli)は、この(名誉市民の)称号を授与された世界で唯一の科学者となりました。
TOKYO , JAPAN, December 7, 2020 /FLOGEN/ — ブラジルのリオデジャネイロ市議会は、持続可能な開発の枠組みの中で科学技術に多大な貢献をしたことで、フロリアンコンゴリ博士にリオデジャネイロの名誉市民の正式な称号を与えました。 タイトルは、満場一致で可決された特別法令によって与えられました。
FLOGEN STARS OUTREACH の会長兼 FLOGEN Technologies Inc のCEOである Florian Kongoli 博士は、このタイトルを獲得した世界で唯一の科学者です。
続きは、原典をお読みください。
●5.【疑惑の内容】
★フロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli)と東北大学
フロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli)はカナダのモントリオール大学(University of Montreal)で1996年5月に修士号(金属工学)を取得し、数年後(多分、2000年)に東北大学の大学院に入学した(推定)。
東北大学の恩師は矢澤 彬(YAZAWA Akira)だが、「KAKEN | 矢澤 彬 (30006019)」によると、コンゴリ入学の12年前の1988年に、矢澤 彬は東北大学・教授を退職している。白楽は、このギャップを理解できていない。
事実として、コンゴリは、2000~2006年の7年間に矢澤 彬と28報の共著論文を出版している。
2000年の1例
- Florian Kongoli ; Akira Yazawa; Phase relations of “ferrous calcium silicate slag” with special reference to copper smelting and sintering of iron ore.
James M. Toguri Symposium on the Fundamentals of Metallurgical Processing, Ottawa, Canada, 2000 
2006年の1例
- Florian Kongoli ; Akira Yazawa; Ian McBow ; Phase Relations of Ferrous Calcium Sicilate Slag and its Possible Application in the Industrial Practice (Keynote Lecture). Sohn International Symposium on Advanced Processing of Metals and Materials August 27-31, 2006
 
矢澤 彬は、2010年に逝去した。 → 矢澤彬先生のご逝去を悼む。
2003年12月10日、矢澤 彬の後任教授である板垣 乙未生(いたがき きみお)が主査で、コンゴリは、東北大学で博士号(工学)(乙)を取得した。 → (1)Evaluation of liquidus in FeOx-SiO2 and FeOx-CaO base slags and fluxes in metallurgical processes | CiNii Research、(2)https://tohoku.repo.nii.ac.jp/record/95646/files/T2H152081.pdf
博士論文のタイトルは「Evaluation of Liquidus in FeOx-SiO2 and FeOx-CaO Base Slags and Fluxes in Metallurgical Processes(FeOx-SiO2およびFeOx-CaO基の製錬スラグ、フラックスの液相面評価)」だった。
コンゴリは、「SIPS-持続可能な産業処理サミット」(以下、SIPS会議と略すこともある)を最初に開催した2003年の時、会議のタイトルを恩師の矢澤 彬にちなんで「Yazawa International Symposium」としている。恩を忘れない人間なのだろう。
★「SIPS-持続可能な産業処理サミット」
フロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli)はSIPS会議を毎年、有名観光地で開催している(以下最近5年間の開催地)。 → FLOGEN Star Outreach
2025年 フィリピンのセブ島(11月17~20日に開催予定)
2024年 ギリシャのクレタ島
2023年 パナマのプラヤ ボニータ
2022年 タイのプーケット
2021年 タイのプーケット
SIPS会議は非営利団体・フローゲン・スター・アウトリーチ(FLOGEN Star Outreach)の活動の一部であるが、コンゴリ会長は、活動の主旨を次のように述べている。
科学者、技術者、エンジニアがいなければ、短期的にも長期的にも持続可能な未来はあり得ない。彼らなしには世界は機能しない。しかし、彼らは社会に十分に認識されていない。持続可能な未来のために、科学者、技術者、エンジニアが社会の「スター」として認められるよう活動する。(FLOGEN Star Outreach)
SIPS会議の会場らしい。出典:FLOGEN Star Outreach
それで、コンゴリは、「14回のサミット、 1100回以上のセッション、 6000本以上の論文、 48人のノーベル賞受賞者、 110冊以上の書籍、 275本以上のビデオ」活動をした。そして、SIPS会議で多くの人にFLOGEN賞を授与した。
SIPS-持続可能な産業処理サミット( https://www.flogen.org/sips2021 ) は、科学に焦点を当てた、産業/エンジニアリング指向の学際的な会議です。 毎年さまざまな国で開催され、学界、産業界、政府、起業家精神の世界を代表する80か国から平均500件のプレゼンテーションがあります。 サミットは、科学技術を通じて持続可能性を達成することに専念しており、定期的に多数のノーベル賞受賞者を招聘しています。(出典:フロリアン・コンゴリ博士 (Dr Florian Kongoli)–リオデジャネイロの名誉市民)
上記には、SIPS会議で毎年平均500件の研究発表がされ、今まで6、000本以上の論文を発表とあるが、主催者側発表なので、鵜呑みにしないほうがいいだろう。
SIPS会議が示しているGoogle Scholarで2025年10月28日に白楽が検索したら、ヒットした論文数は4,060論文だった。上記「6、000本以上の論文」は盛った数値だろう。 → “Sustainable Industrial Processing Summit” – Google Scholar
★不誠実会議(いわゆる捕食会議)
前項で述べている趣旨と活動なら、SIPS会議は素晴らしい会議と思えるが、SIPS会議の実質は不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)だと思われる。
ここで、「不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)」を軽く説明しておこう。
特徴(と言っても、他の会議も似たような面はあるが)
- 世界の名所・観光地で国際会議を開催する。
 - 参加費は幾分高額。会議直前に追加金(ジャンク料金)の支払いを要求されることもある
 - 講演者やプレゼンターは通常、旅費や宿泊費を自分で支払う必要がある。 → まともな会議も同じである
 - 研究発表は多岐にわたり過ぎて、全く無関係な場合が多い
 - 会議参加者の論文(低質でも)を学術誌に発表する。 → だから会議参加者は出版論文が増える
 - 著名な講演者が講演する。SIPS会議はノーベル賞受賞者が講演する。 → 客寄せ・おとり・疑似餌とも言われている
 - 開催目的は主催者の金儲け(ビジネス) → もちろん、公式には学術への貢献を謳っている
 
実際
- ①分野が多岐にわたる研究発表で、②しかも、質の悪い研究発表、③さらには、プログラムに記載された研究発表が半分くらいキャンセルされるので、実質的な研究の議論や情報交換にならない
 - 不誠実会議(いわゆる捕食会議)と知らない参加者は、大きく失望する → 捕食されたと思うだろう
 - 多くの参加者は不誠実会議(いわゆる捕食会議)と知って参加する。公的な出張とし、公費(旅費、会議参加費など)を使って、海外でバカンスを楽しむ。と同時に、論文出版され、賞を授与され、写真やビデオで記録してくれるので、自分が所属する大学・研究所に有益な国際会議だったという証拠を示せる。
 
上記「実際」の「1、3」を、ジーナ・コラータ記者(Gina Kolata)がニューヨークタイムズ紙の記事で説明している(以下)。
2017年6月、私(ジーナ・コラータ)は、ニューヨークで開催された世界理工学アカデミー(World Academy of Science、Engineering and Technology、ワセット社)が主催した会議の1つに参加してみた。
捕食業者のウェブサイトでは、この会議は大きくて贅沢であると宣伝していた。しかし、私(ジーナ・コラータ)が訪ねたとき、会場は1つで、ホテルの6階の改装中の窓なしの小さな部屋だけだった。 一握りの人が椅子に座って、発表を聞いていた。しかし、プログラムに掲載されていたほとんどの人は出席していなかった。(出典:7-24.捕食業者と研究者はグル | 白楽の研究者倫理)
★SIPS会議のいかがわしさ
学術集会のいかがわしさを伝えるのは難しい。
状況証拠らしき事柄をあげるので、「合わせて一本」という判定になる。
コンゴリのビジネスモデルは、まず、ノーベル賞受賞者に目をつける。倫理観が乏しい、または、活躍から遠のいている受賞者を見つける。
豪華な会場で開催する学術集会で講演して欲しいとノーベル賞受賞者に丁寧に説明し、口説き落とす。ノーベル賞受賞者名の賞まで用意する。
次章の【日本人の受賞者】で説明するが、日本人が受賞したノーベル賞受賞者名の賞を3つをあげておこう。
- 1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞した英国の生化学者・分子生物学者リチャード・ロバーツ(Richard Roberts)
 - 1998年のノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の内科医フェリド・ムラド(Ferid Murad)
 - 2004年にノーベル化学賞を受賞したイスラエルの生化学者アーロン・チカノーバー( Aaron Ciechanover)
 
それなりの供応をすると、ノーベル賞受賞者も人間なので、ホイホイと引き受けるようだ。
白楽ブログで取り上げた研究倫理に問題があるノーベル賞受賞者も協力している(以下)。
- グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)
 - 化学:フレイザー・ストッダート(Fraser Stoddart)(米)
 
SIPS会議は、ノーベル賞受賞者の講演をダシに、研究者と一部のビジネスマンを誘い込み、高額な参加費を支払わせる。
参加した研究者には、投稿論文が査読論文として学術誌に掲載されると約束する。さらに、論文は高価なCD-ROMに収録されるが、おそらく誰も買わないだろう。
★SIPS会議のいかがわしさ:コンゴリの私物化
SIPS会議は他にもいかがわしい面がある。
コンゴリはSIPS会議を私物化している。
SIPS会議はもともとコンゴリの私物とも言えるので、「私物化」と非難するのは的外れかもしれないが、SIPS会議は個人が開催するパーティのような形式ではなく、学会が開催する年会・学術集会の形式である。
「私物化」の例としてFLOGEN賞がある。
FLOGEN賞の選考委員や選考過程はわからない。選考委員はおらず、コンゴリが独断で決めているのではないか、と思われる。
妻のミゲン・ディブラ(Migen Dibra)は2024年2月18日に逝去した:Migen Dibra (Obituary)
その8か月後の2024年10月20‐24日開催のSIPS会議で、亡妻ディブラにオーティス国際司法調停賞(Otis International Judicial and Mediation Award)を授与している(以下出典)。
さらに、息子のデイビス・ジョセフ(Davis Joseph)にセメンザ国際細胞工学医学賞(Semenza International Cell Engineering in Medicine Award)を同年(2024年)に授与している(以下出典)。

息子デイビス・ジョセフは、2023年にカナダのコンコルディア大学で学士号を取得し、マギル大学(McGill University)に入学した。2024年当時、大学院の1年生か2年生である。
ところが、デイビス・ジョセフは、2025年に既に論文を2報出版している。
1報は、「2025年4月のInt J Mol Sci.」論文で、単著である。
- The Unified Theory of Neurodegeneration Pathogenesis Based on Axon Deamidation.
Joseph D.
Int J Mol Sci. 2025 Apr 27;26(9):4143. doi: 10.3390/ijms26094143. 
この論文は、3人の日本人が編集者で、3人ともFLOGEN賞受賞者(うち2人は後述)、つまり、コンゴリの仲間である。

もう1報は、「2025年5月のAntioxidants (Basel).」論文で、次章に述べる日本人のFLOGEN賞受賞者(以下下線)4人+2人と共著の論文である。著者の最初の3人は佐賀大学に所属しているので、「+2人」は佐賀大学の受賞者であるSugiyama Yの指示で共著を認めたのだろう。
- The Potential Role of Oxidative Stress in Modulating Airway Defensive Reflexes.
Sato Y, Sugiyama Y, Ishida T, Inufusa H, You F, Joseph D, Hirano S.
Antioxidants (Basel). 2025 May 9;14(5):568. doi: 10.3390/antiox14050568. 
●【日本人のFLOGEN賞受賞者】
- 2011~2024年開催の「SIPS-持続可能な産業処理サミット」で、19人の日本人(含・日本所属)がFLOGEN賞を受賞していた。
 - これら19人は、学術上の業績で単純に顕彰されたのだと期待したいが、内実は、わからない。授賞を積極的に働きかけた人がいるのか、受賞に伴い金銭を払ったのかどうか、わからない。
 - 授賞式への参加に公的な経費(旅費、会議参加費など)を使用しているのかどうか、わからない。
 
2025年の受賞者はまだわからないが、過去、どのような人が受賞したのか、2022~2024年の3年間の日本人(含・日本所属)受賞者12人のうち6人を以下に示した。いくつかの写真出典:Hall of Fame – FLOGEN Star Outreach
なお、2024年の「SIPS 2024」は、2024年10月22日、ギリシャ・クレタ島のリゾートホテルであるアウト・オブ・ザ・ブルー・リゾート(Out of the Blue Resort)で開催された。以下は、日本人らしき参加者のテーブル(出典:写真の下の動画)。

―――2024年の受賞者―――
★2024年:阿部 康二(Koji Abe)
阿部 康二(1956年生まれ)は2021年3月、岡山大学・脳神経内科を退職した。2025年現在、大西脳神経外科病院に医師として勤務している。
2024年10月22日、ギリシャ・クレタ島のアウト・オブ・ザ・ブルー・リゾート(Out of the Blue Resort)で開催の「SIPS 2024」で、「FLOGEN 2024ムラド国際生活改善賞(酸化ストレス分野)」を受賞した。→ Koji Abe, Winner of the Murad International Life Improvement Award
なお、ムラド国際生活改善賞は1998年のノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の内科医フェリド・ムラド(Ferid Murad)にちなんで命名された。
阿部 康二は授賞式に欠席していて、犬房春彦が代理で受け取った。
なお、阿部 康二は、2019年、英国のエディンバラで開催の「第23回国際神経学・神経生理学会議」・「第24回国際神経外科・神経科学会議」の合同会議で講演している。 → Keynote | Neurology & Neurophy | 3038
この会議は、カンファレンス・シリーズ社(Conference Series LLC)が主催した不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)なのである。 → 2024年6月7日記事:Inside a “Fake” Conference: A Journey Into Predatory Science | Technology Networks
阿部 康二は、不誠実会議(いわゆる捕食会議)の常連なのか、たまたま2回講演しただけなのか、白楽は調べていません。
さらに書くと、阿部 康二は、2報の撤回論文がある。 → Retraction Watch Database
1つの撤回論文は院生の于海波(Yu Haibo)がネカト犯とされた。 → 2025年7月8日:研究活動の不正行為に関する調査結果報告について|岡山大学
もう1つの撤回論文は「2012年5月のBrain Res.」論文なのだが、重複画像が理由で2013年4月に撤回された。岡山大学はネカト調査をしていないようだ。 → 撤回公告
★2024年:木村 豪 (Go Kimura)
木村 豪(Go Kimura)は、塩野義製薬・製剤研究開発研究所・シニアディレクターで、チカノーバー国際生物学賞を受賞。 → Go Kimura, Winner of the Ciechanover International Biology Award
なお、チカノーバー国際生物学賞は、2004年にノーベル化学賞を受賞したイスラエルの生化学者アーロン・チカノーバー( Aaron Ciechanover)にちなんで命名された。
★2024年:杉山 庸一郎 (Yoichiro Sugiyama)
杉山 庸一郎 (Yoichiro Sugiyama)は佐賀大学・医学部・教授で、ロバーツ国際医学賞を受賞。 → Yoichiro Sugiyama, Winner of the Roberts International Medicine Award
なお、ロバーツ国際医学賞は、1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞した英国の生化学者・分子生物学者リチャード・ロバーツ(Richard Roberts)にちなんで命名された。
―――2023年の受賞者―――
★2023年:小澤 俊彦(Toshihiko Ozawa)
小澤 俊彦(Toshihiko Ozawa)(78歳)は放射線医学総合研究所・元理事で、日本薬科大学・客員教授で、ムラド国際生活改善賞を受賞。  →  Toshihiko Ozawa, Winner of the Murad International Life Improvement Award
なお、ムラド国際生活改善賞は1998年のノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の内科医フェリド・ムラド(Ferid Murad)にちなんで命名された。
★2023年:楊 馥華(Fuhua Yang)
楊馥華、Fukka You (Fuhua Yang) は、岐阜大学・抗酸化研究部門・特任助教で、ロバーツ国際医学賞を受賞。 → Fuhua Yang, Winner of the Roberts International Medicine Award
なお、ロバーツ国際医学賞は、1993年にノーベル生理学・医学賞を受賞した英国の生化学者・分子生物学者リチャード・ロバーツ(Richard Roberts)にちなんで命名された。
楊馥華は次項で述べる犬房春彦の部下なので犬房春彦の肝いりで受賞したと思われる。
―――2022年の受賞者―――
2022年に7人の日本人が受賞した(以下)。1人(犬房春彦)を除き、説明と写真を省略した。
Dr. Koji Fukui
Dr. Shinichi Hori
Dr. Haruhiko Inufusa
Dr. Osamu Kimura
Dr. Uichiro Mizutani
Dr. Naomi Okada
Dr. Toshikazu Yoshikawa
★2022年:犬房春彦(Haruhiko Inufusa)
犬房春彦(Haruhiko Inufusa)は、岐阜大学・高等研究院・ 教授で、ムラド国際生活改善賞を受賞した。  →  FLOGEN Star Outreach
なお、ムラド国際生活改善賞は1998年のノーベル生理学・医学賞を受賞した米国の内科医フェリド・ムラド(Ferid Murad)にちなんで命名された。
犬房春彦(Haruhiko Inufusa)は、2018年にもFLOGEN賞を受賞している。 → FLOGEN Star Outreach
コンゴリに非常に協力的というか、コンゴリが大変気にいったようだ。
2週間後の2025年11月17-20日にフィリピンのセブ島で開催のSIPS会議では、犬房国際シンポジウムと銘打ったシンポジウムが企画されている。

犬房春彦(Haruhiko Inufusa)をもっと知りたい方 → 犬房春彦 – Wikipedia
●7.【白楽の感想】
《1》学術誌と会議
世界も日本も、不誠実学術誌(いわゆる捕食学術誌、predatory journals)を強く問題視し、院生・研究者にも注意喚起している。
しかし、不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)に関しては、ほとんど言及がない。
どうしてなんだろう?
学術誌は図書館業務だけど、会議は図書館業務ではない。それで、図書館員は何も言わない?
《2》学術集会
学術集会で金儲けしてはいけないか?
そんなことはない。
日本国内で1万人が参加する学術集会を4日間開催すれば、宿泊費、食費などで数億~数十億円のお金が動く。誘致合戦もある。また、運営にもそれなりのお金がかかる。運営を請け負う業者もいる。 → 学術集会請負業者一覧
金儲けが目的ではないまともな学術集会でも、発表内容が低質な学術集会はたくさんある。
つまり、不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)とまともな学術集会の線引きはとても難しい。
本記事では、無理やり線引きした。
《3》その他の不誠実会議(いわゆる捕食会議)
不誠実会議(いわゆる捕食会議、predatory conferences)のリスト(信頼できるリスト)は見つからなかった(シッカリ調べていないので、あるかも)。
それで、不誠実会議(いわゆる捕食会議)かどうかを、研究者は自分で判断することになる。 → Think Check Attend –
以下はたまたま目にしたケース。
- カンファレンス・シリーズ社(Conference Series LLC)が主催する会議
カンファレンス・シリーズ社の会議は「★2024年:阿部 康二(Koji Abe)」の項で少し触れた。 → 2024年6月7日記事:Inside a “Fake” Conference: A Journey Into Predatory Science | Technology Networks
 

例えば、日本でも、2025年11月19~20日に東京で「ハーブと伝統的植物性医学(Herbal and Traditional Plant Medicine)」の国際会議が開催される。


カンファレンス・シリーズ社はかなり手広く商売している。日本で開催している会議も多数ある。
関連する学術誌の編集長に日本人もいる。例えば、東北大学・医学系の菅原 明(スガワラ アキラ)が サイトに載っていた。
- ユニバーサル科学教育研究ネットワーク(Universal Scientific Education and Research Network :USERN)
Official USERN Congress Website2025年11月8日~10日、ブラジルのサンパウロで「第10回国際USERN会議および賞授与フェスティバル」を開催する。USERN会議での日本人受賞者はいないようだ。日本人参加者はいるだろう、多分。
 

- 2025年10月24日、Xに書いたサイエンスクエスト会議(ScienceQuest)とOmoteta+氏のコメント
サイエンスクエスト会議(ScienceQuest)はインドに本拠がある → Global Conference Smart Systems
 
似たような会議が同日に同じホテルで開催?https://t.co/zWjztLxPmN
November 17-19, 2025 Tokyo Prince Hotel, Tokyo, Japanhttps://t.co/z0da1Dgl40
November 17-19, 2025 Tokyo Prince Hotel, Tokyo, Japanhttps://t.co/STuIMYFDcj
November 17-19, 2025 Tokyo Prince Hotel, Tokyo, Japan https://t.co/551mrJW2Sm— Omoteta+ (@omoteta) October 24, 2025
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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●9.【主要情報源】
① ウィキペディア・アルバニア語版:Florian Kongolli – Wikipedia
② フロリアン・コンゴリ(Florian Kongoli)の紹介サイト:(1)Florian Kongoli | IntechOpen。(2) Kongoli Bio_short-June 2020-web.docx。(3) Florian Kongoli CV January 2025-FK2.docx
③ 2020年5月7日のペピン・ファン・エルプ記者(Pepijn van Erp)の記事:FLOGEN SIPS conferences, where Nobelists meet fringe scientists and frauds – Pepijn van Erp
④ 2024年11月22日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)の「より良い科学のために」記事:Schneider Shorts 22.11.2024 – Harassed and threatened by pseudoscientists – For Better Science
⑤ 2025年10月14日のアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)の「より良い科学のために」記事:USERN-friendly Nobelists – For Better Science