2020年7月26日掲載
ワンポイント:カヤンゴはウガンダ出身で、オハイオ大学(Ohio University)・準教授になった。2011-2017 年(39-45歳)の6年間、数人の女性学部生・院生にセクハラ行為を繰り返していた。2019年1月20日(46歳)、セクハラ被害者の女性院生・テス・ハーマン(Tess Herman)がカヤンゴとオハイオ大学を裁判所に訴えたことでセクハラ事件が公知となった。2020年5月(48歳)、オハイオ大学はハーマンに90,000ドル(約900万円)を支払うことで和解した。2020年7月25日現在、カヤンゴは準教授の地位を保持しているが、オハイオ大学はカヤンゴのテニュア剥奪を検討中である。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。
【追記】
・ 年2月4日記事:テニュア剥奪なし:Ohio University journalism professor found to have sexually harassed two women shouldn’t lose tenure, Faculty Senate says | Campus News | athensnews.com
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango、Yusuf Kalyango Jr.、写真出典)は、アフリカのウガンダで生まれ育ち、ウガンダのジャーナリズムで成功を収めた。2001年(29歳)に渡米し、オハイオ大学ジャーナリズム科大学院(E. W. Scripps School of Journalism at Ohio University)・準教授になった。専門はジャーナリズム学(アフリカのジャーナリズム学)である。
日本語に翻訳されていないが、著書は『アフリカのメディアと民主化(African Media and Democratization)』(2011年)など3冊もある(本の表紙出典はアマゾン)。
2019年1月20日(46歳)、セクハラ被害者の女性院生・テス・ハーマン(Tess Herman)がカヤンゴとオハイオ大学を裁判所に訴えたことでセクハラ事件が公知となった。
結局、2011-2017 年(39-45歳)の6年間、数人の女性学部生・院生にセクハラ行為を繰り返していた。
2020年5月(48歳)、オハイオ大学は、院生・ハーマンを性不正から守る事をしなかったことで「身体的および関連する精神的傷害」を与えたハーマンに90,000ドル(約900万円)を支払うことで和解した。
2020年7月25日(48歳)現在、カヤンゴは学生への接触は禁じられているが、オハイオ大学・準教授の地位を保持している(Yusuf Kalyango, Jr. | Ohio University)。
しかし、オハイオ大学はカヤンゴのテニュア剥奪を検討中で、いずれ、カヤンゴを解雇すると思われる。
なお、セクハラ事件を起こした時、カヤンゴには2人の息子がいたので、結婚していたと思われる。
カヤンゴ事件は刑事事件になっていない。
オハイオ大学ジャーナリズム科大学院(E. W. Scripps School of Journalism at Ohio University.)。写真By Ed! at English Wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link
- 国:米国
- 成長国:ウガンダ
- 研究博士号(PhD)取得:ミズーリ大学ジャーナリズム科大学院
- 男女:男性
- 生年月日:ウガンダで1972年4月15日に生まれた
- 現在の年齢:52歳
- 分野:ジャーナリズム学
- セクハラ行為:2011-2017 年(39-45歳)の6年間
- 最初に訴えられた:2019年(46歳)
- 社会に公表年:2019年(46歳)
- 社会に公表時地位:オハイオ大学・準教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者の女性院生・テス・ハーマン(Tess Herman)で、カヤンゴとオハイオ大学を裁判所に訴えたことでセクハラ事件が公知となった
- ステップ2(メディア):地元の「WOUB Public Media」と「Athens News」がしっかり報道し、多数のメディアが報道した
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①オハイオ大学・調査委員会、②裁判所
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学・処分のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:機関以外が詳細をウェブ公表(⦿)
- 不正:セクハラ
- 被害者数:3人以上の女性学部生・院生
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:今後、テニュアはく奪される模様
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典: Dissertation、p197
- 生年月日: 1972年4月15日、ウガンダに生れた
- xxxx年(21歳):ウガンダのxx大学で学士号取得(推定)
- 1993年(21歳):ウガンダの新聞社「The New Vision in Kampala」記者。その後、フリーランス記者、CNN International記者、テレビレポーターなどで大活躍
- 2001年(29歳):米国のマカレスター大学(Macalester College)のフェロー
- 2004年(32歳):米国のミズーリ大学ジャーナリズム科大学院(University of Missouri School of Journalism)で修士号(MS)を取得
- 2005年(33歳):結婚した(推定)
- xxxx年(xx歳):リンカーン大学(Lincoln University)・助教授
- xxxx年(xx歳):ミズーリ大学ジャーナリズム科大学院(University of Missouri School of Journalism)・講師
- 2008年(36歳):同大学院で研究博士号(PhD)を取得
- 2008年(36歳):オハイオ大学ジャーナリズム科大学院(E. W. Scripps School of Journalism at Ohio University)・準教授
- 2011-2012年(38-40歳):リンゼイ・ボイル(Lindsay Boyle)にセクハラ、大学から解雇されず、軽微な処分を受けただけだった
- 2017年(45歳):テス・ハーマン(Tess Herman)にセクハラ
- 2019年1月(46歳):テス・ハーマンが裁判所に訴えた
- 2020年5月(48歳):大学はテス・ハーマンに90,000ドル(約900万円)を支払うことで和解した
- 2020年7月25日(48歳)現在:カヤンゴは学生への接触は禁じられているが、オハイオ大学・準教授職を保持している(Yusuf Kalyango, Jr. | Ohio University)
●3.【動画】
セクハラ事件の動画ではない。
【動画1】
「Kalyango」は「カヤンゴ」と呼ばれている。
カヤンゴの研究紹介動画:「NBCNews – Social Entrepreneurship Bootcamp – YouTube」(英語)2分04秒。
Jusembnamibiaが2015/05/27 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango)の人生
ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango、写真出典)はアフリカのウガンダで生まれ育ち、20代は、ウガンダの新聞・テレビのジャーナリズムで活躍し、ウガンダで成功を収めた。その成功で、2001年(29歳)、米国のマカレスター大学(Macalester College)のフェローに招待された。
その招待が契機となって、米国の大学でジャーナリズム学を習得し、研究博士号(PhD)を取得し、オハイオ大学ジャーナリズム科大学院(E. W. Scripps School of Journalism at Ohio University)・準教授に就任した。
専門は、アフリカのジャーナリズムである。元々優秀で努力家だったのだろう、研究博士号(PhD)を取得した3年後の2011年(39歳)、最初の著書『アフリカのメディアと民主化(African Media and Democratization)』を出版した。その後、2冊の書籍を出版している。
2020年7月25日(48歳)現在、カヤンゴは14歳と8歳の息子がいる。長男出産の1年前の2005年(33歳)には結婚していたと思われる。しかし、不思議なことに妻の情報がない。離婚の情報もないので、セクハラ事件を起こした時、子供がいたし、妻もいたと思われる。
なお、カヤンゴは20代後半までウガンダで育っているので、ウガンダの結婚観・浮気観をかなり受け継いでいると思われる。以下に、ウガンダの結婚観・浮気観を引用する。
②結婚:
<かつて>
話していた人のおじいちゃんは10人妻がいたとか。しかも、イスラム教の場合は妻の人数が4人までで、それぞれ対等に扱わなければならない、という縛りがあるけれど(一人の妻にネックレスを買ったら、他の妻にも同等の品物を与える)、そういった縛りはないとのこと。
<最近>
最近は、経済が厳しいのと(前から厳しい気もするが)、やはり映画等を通じて欧米の影響を受けていることもあり、一人(またはより少数の)の妻を愛する方がカッコいい的な感覚がエリート層を中心に広まっており、変わりつつあるとのこと。
③浮気:
<かつて>
浮気は欧米では一発で離婚原因になることも少なくないと思うが、アフリカではそれは信じられないとのこと。慰謝料?も一回の浮気について600シリング(約25円)の罰則金と決まっており、それ以上に金銭的に夫が負担するケースはあまり多くないとか。
<最近>
欧米の影響で減りつつあるものの、さほどの変化はないらしい。昔は男性からアプローチすることしかなかったが、(金銭的な対価を求めて、または単にそれ以外の理由で)女性から持ち掛けることも増えてきたんだとか。うーん。(出典:2011年7月1日記事:ウガンダ – アフリカ人の貞操観・結婚観など – : Pumpkin Lab)
★ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango)のセクハラ事件概略
2019年1月20日(46歳)、セクハラ被害者の女性院生・テス・ハーマン(Tess Herman)がカヤンゴとオハイオ大学を裁判所に訴えたことでセクハラ事件が公知となった。
→ OU Professor Claims Discrimination, OU Failures In Countersuit – WOUB Public Media
セクハラ事件が公知となり、もう1人、被害者が名のり出た。2011-2012年、当時、学部生だった女性のリンゼイ・ボイル(Lindsay Boyle)(当時22歳?)が、カヤンゴのセクハラ被害にあっていた。ただ、就職などの事情でセクハラ被害を公表しなかった。
結局、2011-2017 年(39-45歳)の6年間、カヤンゴは女性学部生・院生にセクハラ行為を繰り返していたと思われる。その被害者は名のり出た2人以外にも数人いる印象だ。
2020年5月(48歳)、オハイオ大学は、院生ハーマンを性不正から守る事をしなかったことで「身体的および関連する精神的傷害」を与えたハーマンに90,000ドル(約900万円)を支払うことで和解した。
→ 2020年6月9日のベン・ピーターズ(Ben Peters)記者の「Athens News」記事:Settlement reached in OU sexual harassment suit | Campus News | athensnews.com
2020年7月25日(48歳)現在、カヤンゴはオハイオ大学で研究を行なうために雇用されているが(Yusuf Kalyango, Jr. | Ohio University)、学生との接触は禁じられている。オハイオ大学はカヤンゴのテニュア剥奪を検討しているとのことなので、いずれ、解雇か辞職になるだろ。
●【セクハラの具体例】
★テス・ハーマン(Tess Herman)(当時27歳?):2017年:カヤンゴ(45歳)
→ 2019年1月20日の裁判文書: Case: 2:19-cv-00201-MHW-CMV Doc #: 1 Filed: 01/20/19
テス・ハーマン(Tess Herman)はコロラド大学ボルダー校(University of Colorado at Boulder)を2008年に入学し、2012年に人類学・進化生物学の学士号を取得した。入学時に18歳とすると1990年生まれである。 → Tess Herman | LinkedIn
2017年、ハーマンはオハイオ大学・大学院に入学した。専攻は科学ジャーナリズム修士(Master of Science of Journalism)と環境科学修士(Master of Science of Environmental Studies)の2専攻だった。
2017年2月5日(44歳)、ハーマン(27歳?)がカヤンゴに最初に会ったのはカヤンゴの自宅で留学生向けのスーパーボール・パーティ(Super Bowl party)だった。
その翌日から、カヤンゴはハーマンをデートに誘い始めた。つまり、コーヒー、映画、買い物、あちこちのレストランのディナーを何度もしつこく誘った。その間、「君は美しい」などの甘いメールもハーマンに送った。
一方、ハーマンは研究に関係がないメールをしないようにカヤンゴに返事したが、カヤンゴは止めなかった。
カヤンゴは、オハイオ大学の院生研修であるアフリカへの研究旅行に、ハーマンを誘った。アフリカへの研究旅行で、カヤンゴはハーマンが望んでいないロマンチック言動を何度も行なった。また、大学が彼女の宿泊費を払う唯一の方法は、カヤンゴと同じ部屋に宿泊した場合にのみだとハーマンに伝えた。
ハーマンが同室での宿泊を拒否すると、一転して、カヤンゴはハーマンの研修成果を低く評価する報復をした。
ハーマンはカヤンゴのセクハラ行為をアフリカ旅行の責任者でセクハラ担当者のジュディ・ミレセン教授(Judy Millesen、写真出典)に訴えた。
ところが、ミレセン教授はハーマンに我慢するようにさとし、大学にセクハラ告発を報告しなかった。
2019年1月20日(46歳)、他にもあるが、結局、テス・ハーマン(Tess Herman)は、カヤンゴとオハイオ大学を被告にセクハラ被害の損害賠償を要求する裁判を始めた。
以下は2019年1月20日の裁判文書の冒頭部分(出典:同)。全文は21頁 → https://woub.org/wp-content/uploads/2019/01/1-main.pdf
2020年5月(48歳)、オハイオ大学は、院生ハーマンを性不正から守る事をしなかったことで「身体的および関連する精神的傷害」を与えたハーマンに90,000ドル(約900万円)を支払うことで和解した。
→ 2020年6月9日のベン・ピーターズ(Ben Peters)記者の「Athens News」記事:Settlement reached in OU sexual harassment suit | Campus News | athensnews.com
なお、2020年7月25日現在、テス・ハーマン(Tess Herman、写真出典)は、オハイオ大学の「デイヴィス研究グループ Davis Research Group」の院生である:Tess Herman | LinkedIn、(保存版)。
つまり、テス・ハーマンはセクハラを受けたが自分の研究人生をコントロールできたと思われる。
★リンゼイ・ボイル(Lindsay Boyle)(当時20歳?):2011-2012年:カヤンゴ(36歳)
→ 2019年6月5日のコナー・モリス(Conor Morris)記者の「Athens News」記事:OU probe confirms 2nd student’s claims against professor | Campus News | athensnews.com
→ 2019年6月5日のスーザン・テベン(Susan Tebben)記者の「WOUB Public Media」記事:Woman Hid OU Professor Sexual Harassment Out Of Fear For Job, Career Prospects – WOUB Public Media
→ 2019年5月30日、オハイオ大学・法務部の公民権調査官(Civil Rights Investigator)であるアントニオ・アナヤ法務博士(専門職)(Antonio Anaya、Tony Anaya、写真出典)のリンゼイ・ボイル(Lindsay Boyle)事件のメモ。
以下は2019年5月30日の文書の冒頭部分(出典:同)。全文は19頁 → https://woub.org/wp-content/uploads/2019/05/MOF-YK_LB.pdf
リンゼイ・ボイル(Lindsay Boyle、写真出典)は、オハイオ大学・学部生だった2011- 2012年にカヤンゴのセクハラ被害を受けた。カヤンゴから提示された仕事とその報酬をもらいながら、カヤンゴの研究室で研究をし、2013年に卒業し、ジャーナリストになった。
2011年12月(38歳)、ボイル(20歳?)はカヤンゴのザンビアでの海外研究に参加した時、ホテルの壁に身体を押し付けられキスされ、ペッティングされた。ホテルの部屋で2人きりでダンスさせられた。多くの目撃者は、カヤンゴはボイルを特別に可愛がっていたと証言している。
カヤンゴはこれらの申し立てに異議を唱えている。ボイルとのやりとりは研究上のことであり、彼女が「同性愛者」と知っているので、性的な事はしていないと否定した。
ボイルは同性愛者なのだが、カヤンゴにセクハラされていた時は同性愛者だとカミングアウトしていなかった。なお、ボイルはオハイオ大学の学部生の間、新聞社「Athens News」のフリーランス記者として働いていたので、新聞社「Athens News」の記者はボイルのことを良く知っていて、ボイルの発言が正しいと述べている。
カヤンゴはボイルをチリのサンティアゴの研究旅行を誘った時、大学が彼女の宿泊費を払う唯一の方法は、ボイルがカヤンゴと一緒の部屋に宿泊した場合にのみだと伝えた。このことは、ボイルが保存していた電子メールに記録されている。なお、ボイルは旅行に参加しなかった。
また、2012年4月(38歳)、カヤンゴはワシントンDCでの研究会でボイルに無断で2人のスイートルームを予約していた。カヤンゴはボイルの寝室に入り、ベッドに座って、身を乗り出して彼女に腕をかけ身体を触ってきた。ボイルは、カヤンゴに出ていくよう叫び、カヤンゴは寝室をでていった。
これに対し、カヤンゴはボイルと一緒にワシントンDC に行ったことはないと主張した。しかし、ホテルのスイートルームを含め、カヤンゴがボイルと一緒にワシントンDCにいたことを示すいくつもの証拠がでてきた。
セクハラ被害を受けていたが、しかし、ボイルは、大学を卒業しジャーナリストンとしての職を得たいという希望が強かった。それで、2011年当時、ボイルはセクハラ被害を発言しなかった。カヤンゴから提示された仕事をしなければ、アフリカ研修も参加できなかった。卒業後、アフリカ研修の経験を買われて就職できた、と述べている。
上記のように、2011年当時、ボイルはセクハラ被害を発言しなかったが、その後、米国内に#MeToo運動がおこり、オハイオ大学のセクハラ調査に参加することを決めたそうだ。
「1人の学生がセクハラの犠牲になったが、なんとか生存できている。セクハラ教授は自分の行為の結果に直面すべきだ」とボイルは述べている。
★匿名(当時?歳):xxxx年:カヤンゴ(?歳)
2019年3月22日の以下の記事に、3人目の女性被害者が匿名で報道されている。セクハラではなくアカハラである。
→ 2019年3月22日のスーザン・テベン(Susan Tebben)記者の「WOUB Public Media」記事:University’s Second Investigation of Kalyango: Claim Unsubstantiated – WOUB Public Media
匿名の女性学部生は、オハイオ大学のカヤンゴ事件の調査に参加した。そのことで、大学院入学を不合格にされるというカヤンゴからの報復を受けた、と主張した。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
省略
●7.【白楽の感想】
《1》性文化指導
ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango、写真出典)は20代後半までウガンダで育っているので、カヤンゴのセクハラはウガンダの結婚観・浮気観をかなり受け継いでいると思われる。
一般的に、海外からの留学生・研究者に研究の指導はしても、性文化の指導はしない。
しかし、海外からの留学生・研究者への生活指導・性文化指導をする必要がある。と言っても、文化・習慣の異なる人に生活指導ならまだしも、性文化指導となると、かなり難しい。
日本でも、来日する海外からの留学生・研究者、そして、逆に、日本人が留学生・研究者として海外に渡航する時、ある程度の生活指導・性文化指導は必要だろう。
白楽が昔、米国・NIHに研究留学する時、誰も、そういう指導をしてくれなかった。
筑波大学の生理学教授が物知り顔で「アメリカのトイレットペーパーはゴワゴワしているから、日本からトイレットペーパーを持参した方がいい」と言っていた。白楽は、「またまた、ご冗談を」と信用しなかった。
また、当時、筑波大学・副学長だった中井準之助(解剖学、2004年3月没、写真は大西成明撮影、出典)がNIHの構内地図をくれた。これは、白楽は、大変ありがたかった。
が、留学に際しての指導と言えばそれだけだった。性文化指導はまったくなかった。
現在は、白楽が研究留学した1980年頃とは異なり、大学が指導しなくても、海外での生活情報・留学情報は豊富である。ただ、性文化についてはどうなんだろう? 日本の行動様式そのままに振舞うと性不正事件を起こすともいわれているが・・・。
《2》文化・習慣と生理的な原因
上記で誤解を与えるといけない。ウガンダだから特にセクハラ傾向が強いという意図ではない。米国で育った米国人もセクハラをする。
ただ、その国の文化・習慣とセクハラ行為数は関係があると思う。アカハラ、ネカトも同様だが、研究者の規範観・倫理観はその国の文化・習慣に大きく影響を受ける。
文化・習慣のどのような部分がセクハラ、アカハラ、ネカトを引き起こすのか? それらをどのように修復できるのか、イヤ、修復はできないのか?
ヒョットして、文化・習慣というより、生理的な原因があるのか? 例えば、男性ホルモンの量が多い・少ない、セロトニンやドーパミンなどの精神状態に影響する物質の生合成量が多い・少ないなど。誰か研究しているのだろうか?
《3》損害賠償の裁判
白楽ブログで性不正事件を何度も取り上げてきた。
そのことで日本の非常識が見えてくるが、米国は加害者・被害者を実名で報道するが日本は秘匿する。米国は学生が加害教員を解雇するように大規模デモやハンガーストライキをするが、日本はセクハラで学生デモやハンガーストライキをした例はない。
それ以外の大きな点は、米国は、被害者が損害賠償の裁判を起こすことだ。被告は、加害者だけでなく、適切に対処しなかった大学も被告になる。
今回のテス・ハーマン(Tess Herman)は900万円で、ダートマス大学3教授の院生レイプ事件では、74人の被害女性がいたが、9人の原告被害者は1人75,000ドル(約750万円)受け取った。 → 「レイプ」等:心理学:トッド・ヘザートン(Todd Heatherton)、ウィリアム・ケリー(William Kelley)、ポール・ウェイレン(Paul Whalen)(米) | 白楽の研究者倫理
一方、日本では、性不正被害者が大学を訴えることがない。
性不正被害者は、実際に、学業を絶たれる、研究をあきらめるなど、人生が狂う損害があるのだから、被害学生は裁判を起こすべきだろう。日本の弁護士もこの点に目を付けて欲しい。
日本の弁護士は、性被害の賠償金裁判で大学を訴える、という新しい商売に早く、気がつけ! 上記のダートマス大学3教授では、弁護士が510 万ドル(約5憶1千万円)も受け取っている。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●8.【主要情報源】
① 2018年8月28日のスーザン・テベン(Susan Tebben)記者の「WOUB」記事:OU Professor Suspended After Sexual Harassment Investigation – WOUB Public Media
② 2020年6月9日のベン・ピーターズ(Ben Peters)記者の「Athens News」記事:Settlement reached in OU sexual harassment suit | Campus News | athensnews.com
③ ユスフ・カヤンゴ(Yusuf Kalyango)本人のウェブサイト:Yusuf Kalyango Jr. – Home、(2020年7月25日保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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