2025年4月23日掲載最初 随時更新 【進行中/終了】
2024年1月17日、済生会二日市病院に所属する(していた)研究者たちの「2023年11月のJ Infect Chemother」論文を、学術誌・編集者が撤回した。撤回理由は、二重出版である。二重出版は文部科学省の規定する研究不正行為である(文部科学省は「二重投稿」としている)。既に調査に着手されているかもしれませんが、二重出版(二重投稿)行為に対し、適切な調査・対処・処罰をして下さるようお願い申しあげます。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.最終評価
2.通報・経緯
3.各段階の評価
4.疑惑者
5.疑惑論文
7.白楽の感想
ーーーーーーー
- 記述は敬称略。
- 白楽ブログの「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」の意図は、日本の研究者の研究不正(含・疑惑)を具体的に示し、該当する研究機関の調査・対処の実態を公表・情報共有することです。そのことで、日本の研究不正調査・対処の問題点を日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、日本の研究倫理体制をより良い方向に改善することです。
情報共有し改善策を考えるため、メールおよび文書は基本的に公表します。
●1.【最終評価】
★ステップ
【進行中/終了】
発覚 → 通報(allegation) → 通報対応 → 告発判断(assessment) → 予備調査(inquiry) → 本調査(investigation) → 認定(finding) → 行政措置(懲戒処分など)の裁定(adjudication) → 不服申立て(appeal)
★白楽の最終評価とコメント(終了時に記述する)
福岡県済生会二日市病院。字入れ前の写真出典:https://megalodon.jp/2025-0415-1342-46/https://www.saiseikai-futsukaichi.org:443/about
●2.【通報・経緯】
★通報
今回は、「論文撤回」案件で、著者は既に研究不正が指摘されたことを知っているはずである。
本件の特徴は、①被疑者の所属が私立病院であること、②論文は国の助成金を使用していないこと、の2点がある。
―――以下は白楽のやり取り(新→旧 順)ーーー
ーー通報当日:2025年4月23日(月) 07:42、白楽 → 済生会二日市病院ーーー
[白楽注:「お問い合わせフォーム」で伝えた。伝えた文面は以下と同じだが、要求された住所や電話番号はデタラメを記入した]
済生会二日市病院・研究不正担当者殿
件名:研究不正疑惑
2024年1月17日、貴病院に所属する(していた)研究者たちの「2023年11月のJ Infect Chemother」論文を、学術誌・編集者が撤回しました。撤回理由は、二重出版です。二重出版は文部科学省の規定する研究不正行為です(文部科学省は「二重投稿」としている)。既に調査に着手されているかもしれませんが、二重出版(二重投稿)行為に対し、適切な調査・対処・処罰をして下さるようお願い申しあげます。
疑惑者は、代表として連絡著者を示しますが、多田和弘氏です。
連絡著者:多田和弘(タダ カズヒロ)
部署:論文での所属は済生会二日市病院(他の情報では福岡大学 福岡大学病院とある)
職位:部長(他の情報では助教)
撤回公告:https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(23)00168-X/fulltext
以下の記事でも説明しております。
多田和弘(Kazuhiro Tada)(済生会二日市病院)https://haklak.com/page_Kazuhiro_Tada.html
なお、調査委員会を設置する場合、委員は全員(弁護士を含め)、研究不正問題を専門とする委員を選任して下さるようお願い申しあげます。さらに、「被疑者と同じ分野(広義)の研究不正問題に関する専門家」を少なくとも1人含めてください。つまり、研究不正問題の調査委員会なのに、研究不正問題の専門家ではない委員は妥当な調査・判断ができるとは思えません。
また、貴病院の研究不正調査・対処の問題点を貴病院の職員・日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、貴病院の研究倫理体制をより良い方向に改善したいと考えています。それで、研究不正調査・対処に関する情報の透明性を高めて下さるようお願い申しあげます。いただいたメールと文書は基本的に公表しますのでご了解ください。
よろしくお願い申し上げます。
白楽ロックビル
お茶の水女子大学名誉教授
ーーーーーーーーーー
●【通報先】
① 済生会二日市病院・お問い合わせフォーム
https://www.saiseikai-futsukaichi.org/tel/inquiry
済生会二日市病院のサイト内で「研究不正」を検索してもヒットしなかった。
ーーーー
万一、済生会二日市病院が対応しないとき、以下にも伝える。
② 福岡大学・内部監査室
fuadvice@adm.fukuoka-u.ac.jp
- 通報(告発)先は、一般的に、①学術誌、②大学・研究所、③調査機関(日本にはない)、④メディア(新聞など)、⑤ネカト・ウオッチャー(「撤回監視:Retraction Watch」、「パブピア:PubPeer」、「より良い科学のために:For Better Science」、など)、⑥ネカト・ハンターがある
- ネカト疑惑者には直接、問い合わせしない方が良いとされている
★通報窓口のあらまし:①済生会二日市病院
日本語・英語共に、研究不正の通報窓口は見つからなかった。「お問い合わせフォーム」を使って通報した。
★通報窓口のあらまし:②福井大学
ーーー日本語版ーーー
お問い合わせ|福岡大学研究推進部
https://www.suisin.fukuoka-u.ac.jp/home1/toiawase/toiawase.html
研究不正についての通報窓口
お問い合わせ部署 | 場 所 | 電話番号・内線 | メールアドレス |
---|---|---|---|
内部監査室 | 福岡市城南区七隈八丁目19番1号 7号館 4階 | 092-871-631(代表)内線 4660~4662 | fuadvice[at]adm.fukuoka-u.ac.jp ※[at]を@に変えてください。 |
ーーー英語版ーーー
英語で通報:できない。
福岡大学の英語サイトで「research misconduct」を検索しても、通報窓口は見つからなかった。
●3.【各段階の評価】
★通報:済生会二日市病院:評価(優/良/可/困難/悪質)とコメント
- 日本語・英語共に、研究不正の通報窓口がなかった。
★通報対応:評価(優/良/可/悪質/なし)とコメント
ーーーーーーーーーーー
★通報:福岡大学:評価(優/良/可/困難/悪質)とコメント
- 日本語版の通報方法はわかり易い。Emailアドレスが示されている。
- 英語版がない(または、見つからなかった)。外国人は英語で通報する。英語で通報できるようにしてほしい。
★通報対応:評価(優/良/可/悪質/なし)とコメント
●4.【疑惑者】
★疑惑:二重出版
★研究者の経歴・所属・地位など
代表として1人の連絡著者を示した。
他の情報:①researchmap、②福岡大学 医学部 腎臓・膠原病内科学講座の紹介|スタッフ紹介
●5.【疑惑論文】
★疑惑の具体例
2025年4月22日現在、多田和弘が連絡著者の1論文が二重出版で撤回されている。
二重出版は文部科学省の規定する研究不正行為である(文部科学省は「二重投稿」としている)。
二重出版は研究不正なので、適正な調査・処分をして下さい。
============【論文1】============
「2023年11月のJ Infect Chemother」論文
- Severe disseminated infection by hypermucoviscous Klebsiella pneumoniae successfully treated by intensive therapy with continuous hemodiafiltration using AN69ST: A case report and review of the literature.J Infect Chemother. 2023 Nov;29(11):1075-1080. doi: 10.1016/j.jiac.2023.07.006. Epub 2023 Jul 13.
多田和弘は連絡著者である。著者の所属は最後著者の升谷耕介(Kosuke Masutani)の福岡大学を除くと、著者全員が済生会二日市病院である。済生会二日市病院は、福岡大学 腎臓・膠原病内科の「関連病院」である。
研究助成金:なし
2024年1月17日、二重出版で論文は撤回された。 → 撤回公告
ーーーーーーー論文1:二重出版ーーーーー
論文1は同じ著者4人を含む以下の「2022年11月のUrol Case Rep」論文(ここでは論文2と呼ぶ)を6か月後に出版した、二重出版である。学術誌・編集者が二重出版と認定し論文を撤回した。
- A case of emphysematous pyelonephritis caused by the hypermucoviscosity phenotype of Klebsiella pneumoniae.
Kawaguchi Y, Tada K, Shibata R, Ishii H, Ito N, Igawa T.
Urol Case Rep. 2022 Nov 30;46:102290. doi: 10.1016/j.eucr.2022.102290. eCollection 2023 Jan.
●7.【白楽の感想】
《1》私立病院
済生会二日市病院は私立病院で、ウェブで探す限り、研究不正対応窓口は見つからなかった。
私立病院の医師が出版した論文に不正疑惑が生じた場合、私立病院はどのように対処するのか、日本では事例報告がない(と思う)。米国では多数の例がある。
この私立病院は福岡大学の関連病院で、ほとんどの著者は、実際は福岡大学にも所属しているらしいので、福岡大学が対処するのかもしれない。
また、この論文は、文部科学省系列からも厚生労働省系列からも研究助成金を受けていない。この場合、省庁系列の機関は対応しない?
なお、疑惑者として連絡著者の多田和弘を代表として挙げたが、実際のネカト行為者は共著者の誰かかもしれない。
もちろん、論文の著者は全員、実際のネカト行為者でなくとも、その論文に不正が見つかれば、不正者としての責任がある。ただ、研究室主宰者や連絡著者の責任は大きい。
ーーーーーーー
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
ーーーーーーー