7-78 研究での成功・公正・文化の関係を再考

2021年8月30日掲載 

白楽の意図:研究者は「研究での成功」を追求するから研究不正もする。日本ではあまり研究や議論がされていない「研究での成功」と「研究公正」の関係を論じたベルギーの若手・ノエミ・オベール・ボン(Noémie Aubert Bonn)の「2021年1月のResearch Integrity and Peer Review」論文(第Ⅰ部)(第Ⅱ部)を読んだので、紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.日本語の予備解説
4.論文内容
5.関連情報
6.白楽の感想
8.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

論文に概要はあるが、省略。

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

論文は2部構成なので、2報示す。

第Ⅰ部の書誌情報:

  • 論文名:Rethinking success, integrity, and culture in research (part 1) — a multi-actor qualitative study on success in science
    日本語訳:研究における成功、公正、文化の再考(第Ⅰ部)—科学における成功に関するマルチアクターの定性的研究
  • 著者:Noémie Aubert Bonn & Wim Pinxten
  • 掲載誌・巻・Research Integrity and Peer Review 6, Article number: 1
  • 発行年月日:2021年1月14日
  • 指定引用方法:Aubert Bonn, N., Pinxten, W. Rethinking success, integrity, and culture in research (part 1) — a multi-actor qualitative study on success in science. Res Integr Peer Rev 6, 1 (2021). https://doi.org/10.1186/s41073-020-00104-0
  • DOI:https://doi.org/10.1186/s41073-020-00104-0
  • ウェブ:https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41073-020-00104-0
  • PDF:https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s41073-020-00104-0.pdf
  • 著作権:

第Ⅱ部の書誌情報:

  • 論文名:Rethinking success, integrity, and culture in research (part 2) — a multi-actor qualitative study on problems of science
    日本語訳:研究における成功、公正、文化の再考(第Ⅱ部)—科学の問題に関するマルチアクターの定性的研究
  • 著者:Noémie Aubert Bonn & Wim Pinxten
  • 掲載誌・巻・Research Integrity and Peer Review 6, Article number: 3
  • 発行年月日:2021年1月14日
  • 指定引用方法:Aubert Bonn, N., Pinxten, W. Rethinking success, integrity, and culture in research (part 2) — a multi-actor qualitative study on problems of science. Res Integr Peer Rev 6, 3 (2021). https://doi.org/10.1186/s41073-020-00105-z
  • DOI:https://doi.org/10.1186/s41073-020-00105-z
  • ウェブ:https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s41073-020-00105-z
  • PDF:https://researchintegrityjournal.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s41073-020-00105-z.pdf
  • 著作権:

★著者

  • 第1著者(連絡著者):ノエミ・オベール・ボン(Noémie Aubert Bonn)
  • 紹介: The Failure of Success – What a PhD on success in science taught me about academia | Eurodoc
  • 写真:http://eurodoc.net/news/2021/the-failure-of-success-what-a-phd-on-success-in-science-taught-me-about-academia
  • ORCID iD: https://orcid.org/0000-0003-0252-2331
  • 履歴: Noémie Aubert Bonn | LinkedIn
  • 国:ベルギー
  • 生年月日:カナダ生まれ育ち? 現在の年齢:35 歳?
  • 学歴:カナダのマギル大学(McGill University)で2011年5月に学士号(心理学)、ベルギーのハッセルト大学(Hasselt University)で2020年10月に研究博士号(PhD)取得
  • 分野:研究規範
  • 論文出版時の所属・地位:ベルギーのハッセルト大学・ポスドク(Research Group of Healthcare and Ethics, Faculty of Medicine and Life Sciences, Hasselt University, Martelarenlaan 42, 3500, Hasselt, Belgium)

ハッセルト大学(Hasselt University)。写真出典

●3.【日本語の予備解説】

★2019年5月5日:ともよしブログ(博士院生):「研究の成功=人生の成功」とは思えなかった

出典 → ココ、(保存版) 

“研究の成功=人生の成功”と言えばなんだか聞こえがいい気もしますが、悪く言えば家族や自分のことを犠牲にしている。

若い頃は夜中まで実験し、徹夜をすることも。休日実験も当たり前。数をこなすことで道を拓く。

上に立てば学生の労働力を最大限に引き出し、ボロ雑巾のように扱う。そんな感じでやってきたんじゃないかと。

★2020年03月06日:エディテージ・インサイト:Irfan Syed(日本語訳者名不記載):「成功する研究者の12の資質」

出典 → ココ、(保存版) 

研究者としてのあなたの夢は何ですか? 難病の治療法を開発すること、歴史に名を刻む発明をすること、それともノーベル賞を取ることでしょうか?――では、その夢を叶えるために必要なものは何だと思いますか?

成功を収めた科学者たちには、共通するいくつかの資質があるようです。これらの資質は、その人たちを研究者たらしめるものであり、それぞれの分野で成功を収める一因となったものです。ある資質を顕著に持っている研究者もいれば、そうでもない研究者もいますが、皆一定のレベルで、すべての資質を兼ね備えています。それらの資質がどのようなものなのか、そしてあなたの資質がどの著名研究者と共通しているのか、知りたくありませんか?その答えを探っていきましょう。

●4.【論文内容】

研究成果は論文の第Ⅰ部と第Ⅱ部の2報に分けてある。それぞれ、長文である。

第Ⅰ部は、「研究での成功」の要因と指標を研究している。

第Ⅱ部は、「研究での成功」の要因と指標が「研究公正」にどのように関係すのかを研究している。

つまり、研究者は「研究での成功」を求める。その行為の中で研究不正が生じるので、その関係を解き明かそうとしたのである。

なお、本ブログでは、原論文の内容を大幅に省略し、エッセンスを抽出した。

研究者レベルの人で、この論文を引用するなら、自分で原著論文を読んだ方がいい。

《1》序論 

研究の卓越性(たくえつせい)(excellence)は、研究助成、大学、研究政策で重要なテーマである。

しかし、卓越性の概念は自明ではない。また、卓越性を定義するのは難しい。

定義するのは難しいのは事実でも、しかし、研究者が卓越した研究成果を挙げたかどうかを評価するしかない。

この卓越性を具体的な評価項目に落とすのは簡単ではない。

それにもかかわらず、「研究者は多く、資金は乏しい」ので、評価(evaluation and assessment)の基準を適正に定めなければならない。

研究者を評価するとき、研究で成功しているという基準と卓越性とが相関していることは重要である。

ただし、卓越性の概念が十分に定義されていない上[1, 2]、研究評価の統一基準はないので、実際に両者が相関しているという保証はない。

どのような状況であれ、この問題は、多くの人々の関心を集める問題である。

それで、研究評価宣言(Declaration on Research Assessment:DORA [3])、ライデン声明(Leiden Manifesto)[4]、メトリクスの潮流(Metric Tide [5])、研究者評価の香港原則(Hong Kong Principles for Assessing Researchers [6])など、このトピックに関する声明や論文の数は増えている。

これらの22件の文書をレビューしたモハー(Moherら[7])は、現在の研究評価には改善すべき点がたくさんあると指摘している。

特に、研究の社会的価値、信頼できる指標の開発、再現性のある研究成果、完全に透明なアクセス可能な発表方法、知的リスクを許す余地の確保、などでだ。

しかし、多くの文書が言及しているように、研究評価の基準を変更するのは簡単ではない。さまざまな関係者からのさまざまな抵抗に直面する。この抵抗の理由の1つは、学術研究界を支配する当事者間の複雑な権力闘争があるからだ。

とはいえ、欧州大学協会(European Universities Association :EUA)が最近の報告で明らかにしたように、研究機関、資金提供者、政策立案者は、「研究評価に対するより正確で透明なアプローチを開発・実施するために協力すべきである」([8]、p.13)。

従来、この問題に対して、研究者や学術誌編集者など、特定の関係者が議論に深く関わってきた。しかし、他の関係者は議論にほとんど関わっていない[9]。

それで、政策立案者、資金提供者、大学・研究機関の幹部、研究公正機関のメンバー、研究公正ネットワークのメンバー、検査技師、かつて研究者だったがキャリアを変えた元研究者、などの意見を取り入れて、「研究での成功」と「研究公正」の理解を深めることが、私たち著者は、重要と考え、研究し、本論文にその研究成果をまとめた。

研究成果は多量になったので、論文を2報にした。

第Ⅰ部では、さまざまな関係者が「研究での成功」と論文出版[10]をどうとらえているかかについて検討した。

私たちの研究結果が示すところ、研究界の現在の研究評価がネカトやクログレイ行為を助長し、研究公正を損なっていることを示していた。これは、従来の論文の結果と同じである。

《2》方法 

省略

《3》調査参加者 

「研究での成功」の調査対象者として56人が参加した。

56人を、以下の表1人示す11種類の異なるグループに分類した。

《4》第Ⅰ部の結果を「簡単」にまとめる 

論文に「結果の簡単な要約(Short summary of results)」の章があるので、以下は、そこを利用した。
ーーーーーーーーー

「研究での成功」の調査対象者として56人が参加した。56人は11種類の異なるグループに分類できた。

「研究での成功」について調査したところ、、「研究の定義」と「研究の卓越性の評価」について、グループ内およびグループ間で矛盾する視点があることが明らかになった。

まず、明かになったことは、「研究での成功」の定義に標準的な定義がないことだった。そして、「研究での成功」はさまざまな状況、およびキャリアの段階で変化した。

たとえば、キャリア初期の研究者は、研究を通して、より良い社会にしたいという願望が強かった。一方、確立した研究者は、知的好奇心に従って物事を追求し、研究を通して、その答えを出すことが「研究での成功」だと評価した。

このように、異なる研究者グループの意見を取り入れることで、「研究での成功」は微妙で多因子的な素因の相互作用の結果だという答えになった。

つまり、「研究での成功」は、以下の4項目の相互作用の結果である(右図、英語のママでスミマセン)。

  1. 研究者個人の特性(Who)
  2. 研究成果(What)
  3. 研究を進める過程(How)
  4. 運(luck)

しかし、現在の研究評価は「2.研究成果(What)」だけを過大に評価している。

評価すべき対象は、研究成果だけでなく、研究者社会の機能向上や研究者の社会的役割という共同体意識を高める「3.研究を進める過程(How)」も重要である。現代の研究評価は、これがほとんど無視されている。

「4.運(luck)」は「研究での成功」に決定的な役割を果たすと考えられている。と同時に、評価が不公平だと思われるケースを説明するために「4.運(luck)」がよく使われる。

例えば、優秀な研究者なのに相応の地位・報酬・称賛が与えられない場合、「不運」だと説明される。他方、通常の研究者が実力・実績以上の地位・報酬・称賛が与えられた場合、「幸運」だと説明される。

なお、「1.研究者個人の特性(Who)」が「研究での成功」の要因の1つであることは、論を待たないであろう。 → 白楽付記:成功する研究者の12の資質 | エディテージ・インサイト

参加者は、現在の研究評価は「研究での成功」の全体像を捉えていないという点ではおおむね一致した。

そして、「研究での成功」の要因となる特定の指標については意見が一致しなかった。特に、論文出版、インパクトファクター、科学コミュニケーション、開放性と透明性という指標では、意見が一致しなかった。

参加者は、「研究での成功」の要因は、透明性があり、堅牢で、有効で、バランスのとれた多様な見方を可能にする多様な指標が必要だと主張した。

「研究での成功」を考える時、研究評価は、測定基準に盲目的・機械的に依存するのではなく、生身の人間の意見を取り入れて評価する必要がある。そして、その評価は「量」よりも「質」を重視すべきだと答えた。

最後に、研究で改善すべきことを質問すると、多くの参加者は、研究者の評価と報酬を改善すべきだと回答した。

つまり、研究資源(カネ・モノ・ヒトなど)のより公平な分配、そして適正な地位・報酬・称賛が緊急に必要だと、繰り返し述べた。

《5》第Ⅱ部の結果を「簡単」にまとめる

以下、第Ⅰ部と同様に、論文の「結果の簡単な要約(Short summary of results)」の章を利用した。
ーーーーーーーーー

多様な立場の研究者にインタビューした結果、研究上の不正行為や研究公正を議論する時に使う用語が共通ではなかった。つまり、研究公正に対する考え方は、用語が異なるほど、研究界では多様だった。

そして、研究公正問題を真剣に受け止める理由も多様だった。ある研究者は個人的な関心という理由を挙げた。一方、別の研究者は、間違った研究知識を信じてしまう悪影響を防止したいという理由を挙げた。他の理由もあり、個人間でも研究グループ間でも理由も多様だった。

ただ、回答者の多くは、優れた研究成果を出すように過度のプレッシャーをかけられている状況が、ネカト行為やクログレイ行為の原因である可能性は高いと述べた。

しかし、過度のプレッシャーが原因とは言え、多くの回答者は、研究上の不正行為は、最終的には研究者の責任であり、研究者自身が自分の研究行動を律すべきだと考えていた。

図2.許しがたい研究上の行為(英語のママでスミマセン)図をクリックすると図は大きくなります

参加者は、ネカト行為やクログレイ行為の事例を議論するよりも、研究公正を防止する方策の議論を好む傾向があった。

その議論をまとめると研究公正を防止する対象は2種類に分類できた。

  • 研究者の性格と態度(personalities and attitudes)
  • 研究環境(research climates)

「研究者の性格と態度(personalities and attitudes)」は、研究者を採用する時、重要な選考条件の1つである。但し、人間は自分の性格と態度をなかなか変えられない。

「研究環境(research climates)」は、社会・研究者・研究室・大学・学術界とそれらの研究文化に起因する問題である。

以下、「研究環境(research climates)」について取り上げる。

最初に結論である図3を以下に示す。

図3.「研究での成功の要因と指標」と「研究公正の問題と脅威」の複雑な相互作用。相互作用は多様で循環的である。(英語のママでスミマセン)

大きな図3を挿入したが、「研究環境(research climates)」との相互作用を取り上げていこう。

研究職数が足りず、仮に研究職に就けてもその職が不安定という構造的な問題下に置かれている若手研究者は、特に、研究成果を出さなくてはという強いプレッシャーを受けやすい。

と同時に、不正をしてでも研究成果を出すというひねくれた動機を増長させる状況にもなりやすい。

学問の専門化が極端に進み、研究者同士のコラボレーションが減り、研究者に研究以外の発表力・文章力・管理力・教育力などの多様な才能が期待されている。一方、研究に使える時間は減っている。

これらは、研究者へのプレッシャーをさらに強めているだけでなく、個々の研究者に目が届かなくなり、研究者の倫理行動を補正できない状態を加速する結果になっている。

つまり、研究文化として、研究者へのケアとサポートが減ってきた。

研究者は研究に専念できる状況になればなるほど、幸福感と満足感は高まると言われている。

ところが、研究に専念できる状況とは程遠く、役立つ研究を推進する文化、失敗に対する不寛容な文化、並外れた研究成果を期待する文化がますます強くなっている。

そして、競争力が重視され、研究職の階層化が進んでいる。

これらの動向が、研究界の「出版か死か(Publish or Perish)」の文化を増強している。

最後に、参加者に、では、どのように改善すべきかと問うた。

すると、多くの参加者は、ここで論じた問題の改善に対しては、無力感しかなく、フラストレーションを感じている、と述べた。

そして、研究政策者と研究界の重鎮たちが、不適切な政策を実施してきたために現在の問題が起こっていて、今や彼らを信頼できないとのことだった。

●5.【関連情報】

《1》序論」で述べた、研究評価宣言(Declaration on Research Assessment:DORA [3])、ライデン声明(Leiden Manifesto)[4]、メトリクスの潮流(Metric Tide [5])、研究者評価の香港原則(Hong Kong Principles for Assessing Researchers [6])について、下記の日本語の文章・解説がある。

  1. 研究評価宣言:①欧州研究図書館協会(LIBER)、研究評価に関するサンフランシスコ宣言(DORA)に署名 | カレントアウェアネス・ポータル、②インパクトファクターへの批判
  2. ライデン声明:研究計量に関するライデン声明について
  3. メトリクスの潮流:①メトリクスは査読の代わりとなり得るか? | エディテージ・インサイト、②英HEFCE、研究評価における評価指標の役割に関するレポートを公開 | カレントアウェアネス・ポータル
  4. 究者評価の香港原則:研究公正の促進を目的とした「研究者評価のための香港原則」(文献紹介) | カレントアウェアネス・ポータル

●6.【白楽の感想】

《1》難解な論文

感想として、この論文は「難解」だと思った。

白楽の場合、2種類の「難解」がある。

  • 1つは、論文の文章は理解できるが、内容が異質、あるいは、深くて、白楽が著者のレベルに達していない場合である。例えば、数学や素粒子物理学の論文は「難解」で理解できない。つまり、白楽の異分野カバー力が弱い、あるいは、洞察レベルが低い
  • もう1つは、内容は異質でも深くもないのだが、論文の文章が理解できなくて「難解」と感じる場合である。白楽の読解力が低いのが理由だが、著者の表現力に難があるように思える場合である

今回のノエミ・オベール・ボン(Noémie Aubert Bonn)の「2021年1月のResearch Integrity and Peer Review」論文(第Ⅰ部)(第Ⅱ部)の論文は、後者である。

読んでいて、わかりにくい。何を言いたいのか、特定しにくい。論旨の脈絡が弱い。

それでも、皆様にお伝えするには、わかる日本語にしないと意味がない。それで、白楽流に加筆訂正するのだが、時々、間違って理解した気もする。

そう思って読んでくださいね。

《2》銅鉄研究のススメ 

日本では、「研究者として成功するため」のハウツウは解説されているが、「研究での成功とは何か?」は、意外と議論されていない。研究もされていない。

そして、その「研究での成功」の要因と指標を「研究公正」と結びつける発想の研究や議論はほとんどない。

ノエミ・オベール・ボン(Noémie Aubert Bonn)の「2021年1月のResearch Integrity and Peer Review」論文(第Ⅰ部)(第Ⅱ部)をナナメに読んだが、日本でもこのような研究は必要だ。

日本にいる日本人を対象にこのような研究をすると、日本の特性が浮き出て面白いと思う。

日本にいる外国人研究者と比較してもいい。

外国に研究留学している日本人研究者と比較してもいい。

《3》サンプル数

タイトルや序論を読んだ段階で、白楽はこの論文にとても興味をもった。それで、論文を読んで、白楽ブログで取り上げることにした。

しかし、実は、途中で、まともに読む気が「大きく」減少した。

というのは、表1に示したように、調査への参加者56人を11グループに分けている。

1グループの平均は5人である。表1に示すように、3人のグループもある。1人の意見が結果の3割にも及ぶ。これでは、客観性が大きく欠ける。一般化できるほど確実なことは言えない、というか、言ってはいけない。サンプル数が少なすぎだ。

また、5~6人いる場合でも、共同インタビューをしている。共同インタビューでは有力者(オピニオン・リーダー)の意見が中心になってしまう。人数分の意見を吸い上げられない。

ウ~ン。どうしよう。白楽は論文は読むけど、白楽ブログで解説するのはヤメようかなあ~、と思った。

しかし、思い返した。

論文の評価は読者がすればいい。論文の良い面を見れば、「それなり」のことは言える。

と、気持ちを切り替えて、要点だけは最後まで解説した。

共著者であるハッセルト大学のウィン・ピンクステン教授(Wim Pinxten)。写真出典:https://www.hbvl.be/cnt/dmf20210327_92386996

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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