2018年8月25日改訂。
分野を記載していないのは生命科学。カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
●【研究ネカトでクロの研究者が研究を続けたケース】
クロとした公的組織(研究公正局や所属大学など)
★米国でクロ判定後、米国で研究職 年号順
研究公正局の管轄(PHS) または科学庁(NSF)で研究ネカトがクロ判定されるのは研究者として死刑判決と同じだ。
しかし、研究を続けることができた研究者がかなりいるという報告もある。
→ 少なくとも24人が研究職に戻っている。実名が出ていないので誰だか不明:2016年10月28日のジェフリー・マーヴィス(Jeffrey Mervis)の「Science 」記事:After the fall | Science
→ 研究公正局でクロ判定された研究者の約半分の人が、研究を続けていた。:2017年2月24日の「Science」記事: U.S. researchers guilty of misconduct later won more than $100 million in NIH grants, study finds | Science | AAAS
→ 2018年8月31日の粥川準二(かゆかわじゅんじ)の記事:研究不正が発覚した研究者でも、多額の助成金を獲得 – 学術英語アカデミー
以下は白楽の分析で判明した研究者たち。年号順
- チャールズ・グルック(Charles J. Glueck)(米):NIH、1987年から2年間締め出し。民間病院
- 化学:レオ・パケット(Leo A. Paquette)(米):研究公正局、1993年から10年間締め出し。
- ジェラルド・リースマン(Gerald Leisman)、ジェリー・リースマン(Gerry Leisman)(米):研究公正局、1994年から3年間締め出し。
- ルース・ループ(Ruth Lupu)(米)研究公正局、1995年から1年間締め出し。
- デイヴィット・パジェット(David A. Padgett)(米)研究公正局、2001年から3年間締め出し。
- モミアオ・シャオン(Momiao Xiong)(米):研究公正局、2001年から1年間締め出し。同じ大学
- ジャスティン・ラドルフ(Justin D. Radolf)(米):研究公正局、2003年から5年間締め出し。同じ大学
- スーザン・アロニカ(Susan Aronica)(米):研究公正局、2006年から5年間締め出し。別の大学
カーク・スパーバー(Kirk Sperber)(米):研究公正局、2008年から4年間締め出し。研究はすぐ挫折フィリップ・ボア(Philippe Bois)(米):研究公正局、2011年から3年間締め出し。研究はすぐ挫折- マイケル・ミラー(Michael Miller)(米):研究公正局、2012年から1間締め出し+2年間の監査。別の大学
- ジェラルド・ラシントン(Gerald Lushington)(米):研究公正局、2012年から2年間締め出し。民間研究所
- 建築学:スザンナ・ディッキンソン(Susannah Dickinson)(米):所属大学、同じ大学。2014年
- 材料工学:マーク・ジャクソン(Mark Jackson)(米):前所属大学、別の大学。2016年
- ガレス・ジョン(Gareth John)(米):研究公正局、2018年から1間締め出し。同じ大学
- リ・ワン(Li Wang)(米):研究公正局、2018年から1間締め出し。同じ大学
★研究公正局がクロ判定後、米国で研究職
研究公正局がクロと発表後、NIHから研究費を受給した研究者たち:「isnerd」が2014年8月15日に公表したデータを基に白楽が作成した。
★米国でクロ判定後、米国外で研究職 国別。姓のABC順
- マラビカ・サーカー(Malabika Sarker)(米)2001年:研究公正局→ バングラディシュ
- 「博士号はく奪」:ベング・シゼン(Bengü Sezen) (米):研究公正局 → トルコ
- アリ・サルタン(Ali Sultan)(米)2004年:研究公正局→ カタール
★米国でクロ判定後、日本で研究職:研究公正局がクロとした年順
- タカオ・タカハシ、高橋孝夫(Takao Takahashi)(米):2014年:研究公正局
- マコト・スズキ、鈴木実(Makoto Suzuki)(米):2014年:研究公正局
- カズヒロ・タナカ、田仲和宏(Kazuhiro Tanaka)(米):2009年:研究公正局
- テツヤ・マツグチ、松口徹也(Tetsuya Matsuguchi)(米):1995年:研究公正局
- ヒロアキ・シモカワ、下川宏明(Hiroaki Shimokawa)(米):1991年:研究公正局
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上記を除く。
★クロ判定後、その国で研究職 地域別・国別。姓のABC順
インド、ドイツ(盗博も)、韓国、日本では多数いる。これらの国の研究者名を一部書いたが、大半を省略。
- マリオ・サード(Mario Saad)(ブラジル):所属学会
- アンドレマー・ソアレス(Andreimar M. Soares)(ブラジル):所属大学、不正実行者は部下。民間研究所
- 数学:アレキサンダー・スピバク(Alexander Spivak)(イスラエル):所属大学
- ディーパク・ペンタル(Deepak Pental)(インド):所属大学
- ステファノ・フィオルッチ(Stefano Fiorucci)(イタリア):所属大学
- シルビア・ブルフォーネ=パウス(Silvia Bulfone-Paus)(ドイツ):DFG-ドイツ研究振興協会
★クロ判定後、他国で研究職 地域別・国別。姓のABC順
- ファウジ・ラゼム(Fawzi Razem)(カナダ) :所属大学→ パレスチナ
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★白楽の意見
研究界は研究ネカト者を追放すべきだと白楽は考える。研究ネカトをした研究者の研究成果を社会は信用するだろうか? 研究ネカトをした大学教授の講義に学生が信頼を寄せるだろうか? 無理だ。
研究ネカトでクロと判定後にも研究職(大学教員)を続けている研究界を、人々と社会は信用しない。研究システムは歪み・崩壊する。
もちろん、研究ネカト者も幸せに生きて欲しいとは思うが別の世界でのことだ。
交通事故では罪を償えば復職できても、研究ネカトをした研究者には研究への復職を認めるのは基本的におかしい。各職業には認められない過去がある。性犯罪を犯した裁判官が裁判することを社会や被告は納得するだろうか? 性犯罪で有罪になった裁判官は罷免され、復職できない。
しかし、研究公正局や所属大学が研究ネカトでクロと判定しても研究職(大学教員)を続けている例は、日本以外にも少しある。ところが、日本では多数ある。日本は異常に思える。