2‐1 ねつ造・改ざんのすべて

2020年9月27日改訂

ワンポイント:【長文注意】。ねつ造・改ざんについての日本で最良の解説(のつもりで書いた・・・が、読み直すとマダマダ。でも、長文なので、このへんで)。

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目次(赤字をクリックすると内部リンク先に飛びます)
1.ねつ造・改ざんの種類
2.ねつ造・改ざんのルールと解説
 《1》ねつ造・改ざんの基本ルール
 《2》ねつ造・改ざんの解説
 《3》大学のねつ造・改ざんルールと解説
 《4》学会のねつ造・改ざんルールと解説
3.ねつ造・改ざんの具体例
 《1》ねつ造・改ざんの具体例:細胞生物学
 《2》ねつ造・改ざんの具体例:研究公正局
 《3》ねつ造・改ざんの具体例:歴史や一般社会
4.ねつ造・改ざん事件例
 《1》ねつ造事件例
 《2》改ざん事件例
5.ねつ造・改ざんの検出法・証拠提示法
 《1》ねつ造・改ざん検出法
 《2》ねつ造・改ざん証拠の提示法
6.ねつ造・改ざんの根本的に難しい点
7.白楽の感想
8.コメント
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【最初にガツンと一発】
ねつ造(fabrication)・改ざん(falsification)は、「研究不正(research misconduct)」(ネカト)の3つの内の2つである。大学教員、研究者、技術者、高校生・学部生・院生・ポスドクは、決して「してはいけない」。してしまうと致命的である。汚名は生涯にわたる。

●1.【ねつ造・改ざんの種類】

★ 文部科学省のルール

文部科学省のルールでは、

「ねつ造」は「存在しないデータ、研究結果等を作成すること」である。

「改ざん」は「研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によっ て得られた結果等を真正でないものに加工すること」である。

文部科学省の定義を一言で言い替えると、《ないデータを作るのが「ねつ造」で、あるデータを変えるのが「改ざん」》である。

文部科学省のルールは「ねつ造・改ざんの種類」について何も触れていない。

実際の「ねつ造・改ざん」で最も多いのは、画像の「ねつ造・改ざん」である。

「最も多い」という意味は、発覚し事件となった「ねつ造・改ざん」事件数という意味である。観測データ(や測定値)の「ねつ造・改ざん」はほとんど発覚しない。白楽は、実際は、観測データ(や測定値)の「ねつ造・改ざん」方が画像の「ねつ造・改ざん」より多いと思うが、証拠はない。

★ 米国の用語

「ねつ造・改ざん」は英語では「ねつ造(fabrication)」「改ざん(falsification)」で、「misconduct」が一般的な用語である。

以下の類義語(名詞・動詞・形容詞)も使用される。

  • making up data or results
  • manipulating research materials, equipment, or processes
  • changing data or results
  • omitting data or results 
  • scientific fraud
  • irregularity
  • misappropriate
  • bogus
  • cheat
  • cook
  • deception
  • doctor
  • embezzle
  • false
  • fake
  • fool
  • forgery
  • scam

「医者」や「博士」を意味する英語の「doctor」は、他動詞だと

  • 〔人を欺くために文書などを〕改ざんする、不正に変更する
    ・Somebody doctored the sales report. : 誰かが売上報告をごまかした。
    ・The company’s officers doctored financial statements to dupe investors. : 会社幹部は投資家をだますために財務書類を不正に変更しました。
  • 〔スポーツ用具などに〕不正な細工[改造]をする[施す](出典:doctorの意味・使い方|英辞郎 on the WEB:アルク

となるのは、意味深です。

撤回監視データベース(Retraction Watch Database)で「ねつ造・改ざん」に該当する用語はおおむね以下の通りである(正確には他の用語も少し入る)(「5B 日本のネカト政策のあるべき姿 | 白楽の研究者倫理」の付録2を修正)

  • ねつ造/改ざん:
    Falsification/fabrication of data 
    Falsification/fabrication of  images
    Falsification/fabrication of  results
    Manipulation of results
    Manipulation of  images
  • 重複(盗用かもしれない):
    Duplication of data
    Duplication of  image
  • 不信頼(「ねつ造・改ざん」以外の原因もある):
    Unreliable data
    Unreliable  image
    Unreliable results
  • 査読偽装:
    Fake Peer Review
  • 研究妨害:
    Sabotage of Materials
  • インフォームドコンセントなし、倫理委員会未承認:
    Informed/Patient Consent – None/Withdrawn
    Lack of IRB/IACUC Approval

★ ねつ造・改ざんの種類

以下、「ねつ造・改ざんの種類」を白楽が整理した。

  1. 画像(manipulation of image):画像を切り取り、加工し、別の試料の画像として使用する。画像には、電気泳動のバンド、ウェスターンブロットンのバンド、細胞の写真、組織切片の写真などが多いが、どんな画像でも加工されうる。自分の画像もあれば他人の画像もある。他人の画像の場合は、出典を示さないので、「盗用」になる。
  2. 観測データ(fake data):研究行為によって得られた観測データ、測定値、アンケートの数値・回答などを変える(改ざん)。または、実際には研究行為を行なっていないのに、観測データ、測定値、アンケートの数値・回答などを創作する(ねつ造)。通常、自分の学説に都合の良いように変える、または創作する。結果を表やグラフで示すことが多いが、テキストの場合もある。
     

    ーーー[以下は、日本では「罰せられるねつ造・改ざん」かどうか微妙である]ーーー

  3. 査読偽装(fake peer review):論文投稿時に希望する査読者を伝える。その時、希望する査読者の名前・所属は普通の研究者から著名な研究者まで適当に挙げるが、連絡先は自分が管理する電子メールアドレスにする。結局、自分で自分の投稿原稿を査読するので論文は採択される。査読者の「ねつ造」である。
    事件例:①ヒュンイン・ムン(Hyung-In Moon)(韓国)、②物理学:サラー・エラヒ(A. Salar Elahi)(イラン)
  4. 研究妨害(sabotage):他の研究者の試料・試薬・機器・実験ノート・実験生物(動植微生物など)を破壊・破棄や細工し、研究の進行を邪魔する。他人の研究「過程を変更する操作を行い」(文部科学省の「改ざん」ルール)、研究を遅らせる。
    米国でクロの例:①ヴィプル・ブリグ(Vipul Bhrigu)(米)、②「妨害」:プリンス・アロラ(Prince K. Arora)(米) 
  5. 経歴詐称・業績詐称(false credit?):事実ではない学歴、職歴、役職、研究業績(論文リスト)、研究費採択実績、などを記載し、研究費、就職、昇進、賞の申請をする。研究公正局は経歴詐称・業績詐称の結果、研究費申請書の評価を高くする可能性があり、「ねつ造・改ざん」としている。
    米国でクロの例:①ジェラルド・リースマン(Gerald Leisman)(米)、②アンマリー・サープリナント(Annmarie Surprenant)(米)
  6. インフォームドコンセントなし、倫理委員会未承認(lack of formal ethics approval): 臨床試験やヒトを対象とした研究は、患者からインフォームドコンセントを得、研究開始前に計画書を提出し、大学・研究機関から承認を得なければならない。これらがなくて研究を開始し、論文では、インフォームドコンセントがあった、また、大学・研究機関から承認されたと「ねつ造」する。あるいは、事後に得た承認日を研究開始前に承認されたかのように「改ざん」する。多くの学術誌は規則違反とし、論文撤回する。
  7. 資金不開示(failure to disclose COI、undisclosed conflicts of interest ):各種申請で、企業・外国・個人などから得た資金を開示しないのは「ねつ造・改ざん」である(利益相反違反)。研究公正局は「罰せられるねつ造・改ざん」としていないが、多くの学術誌は規則違反とし、論文を訂正・撤回する。最近、米国在住の中国人研究者・中国関係研究者の資金不開示を米国政府は犯罪と認定し、逮捕・投獄している。
    米国でクロの例:ホセ・バーゼルガ(Jose Baselga)(米)

1つの論文に上記の複数の「ねつ造・改ざん」を混用するケースもある。「盗用」が加わる場合もある。

「ねつ造・改ざん」事件で最も多いのは、画像の「ねつ造・改ざん」である。ネカトハンターが見つけ告発するケースが多い。

次いで多いのが、観測データの「ねつ造・改ざん」である。外部から、観測データの「ねつ造・改ざん」を見つけるのは、至難だから、同じ研究室や同じ研究グループなどからの内部告発で発覚する。

このように、「ねつ造・改ざん」事件の主要な行為は「画像」と「観測データ」の「ねつ造・改ざん」である。

それで、一般的に、「画像」と「観測データ」の「ねつ造・改ざん」を想定して、ルールが制定されている。

その状況に合わせ、以下の章では、基本的に「画像」と「観測データ」の「ねつ造・改ざん」を想定して話を進める。

●2.【ねつ造・改ざんのルールと解説】

ねつ造・改ざんルールの基本は「2 ネカト」に書いた。ここでは一部再掲しつつ、詳しく見ていこう。

《1》ねつ造・改ざんの基本ルール

★文部科学省のねつ造・改ざんルール

再掲するが、文部科学省のルールでは、

「ねつ造」は「存在しないデータ、研究結果等を作成すること」である。

「改ざん」は「研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によっ て得られた結果等を真正でないものに加工すること」である。

★「ねつ造」と「改ざん」の区別

「ねつ造」と「改ざん」は言葉の定義上では明確だが、実際の研究現場では、区別は難しい。

例えば「改ざん」の定義にある「真正でないものに加工すること」に関して、「真正な元データがある」かどうか、第三者にはわからない場合が多い。

「真正な元データ」があれば「真正でないもの」かどうかを判定できる。つまり、「改ざん」かどうかを証明できる。しかし、「真正な元データ」が提示されない場合(そのケースがほとんどだが)、第三者には「ねつ造」か「改ざん」かわからない。

ネカト疑惑者が「真正な元データ」を提示しない場合、元々「ない」ので提示できないのか、「あった」けど破棄して今は「ない」のか、「ある」けど忘れているのか、提示したくないから提示しないのか、どこで嘘をついているのか、第三者にはわからない。

ネカト疑惑者が元データを提示した場合でも、それが「真正な」元データなのか、元々(あるいは問題視されてから)「ねつ造・改ざん」した“元データ”なのか、どこで嘘をついているのか、第三者には簡単には(あるいは全く)わからない。

ネカト疑惑者が実際にネカト行為を犯した研究者なら、「ねつ造・改ざん」した“元データ”は、第三者には絶対わからないように「ねつ造・改ざん」するだろう。だから、第三者は、簡単には(あるいは全く)わからないのが、当然である。

また、改ざんは「真正でないものに加工する」とあるが、この意味が、本質的に不明である。何をもって「真正」と定義し、何をもって「加工」と定義し、判定するのか? 言葉で定義できたとしても、実際の判定は至難である。

以上のような、いろいろな観点を含め、白楽は基本的に「ねつ造」と「改ざん」をあまり区別しないで使用する。

米国の研究公正局、研究倫理学者、日本の諸組織の多くも、厳密に区別していない。また、区別する意味はほとんどない。

★ねつ造・改ざんの法律

ねつ造・改ざんは他人をダマす行為だが、ダマす行為そのものを禁じる法律はない。

なお、現状でも、「詐欺罪(刑法第246条)」や刑法第17章「文書偽造の罪」の「私文書偽造行使等(刑法159条)」の趣旨に抵触すると思うが、法律で研究者の「ねつ造・改ざん」を罰した事件は日本ではなかった。

詐欺罪(刑法第246条)は以下のようだ。

詐欺罪の保護法益は個人の財産であり、単に「騙した」だけの場合や財産以外の利益が侵害された場合は成立しない。そのため、社会一般でいう詐欺の概念とはやや乖離している。(出典:詐欺罪 – Wikipedia

ネカト研究者は、データの「ねつ造・改ざん」で不当な研究費や地位を得ているので、法の趣旨として。詐欺罪が成立すると思う。現状の詐欺罪に合わないなら、是非、ネカト罪を制定して欲しい。

米国では一部のネカト研究者に刑務所刑を科している。日本では、今まで例がない。

★米国のねつ造・改ざんルールと日米比較

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米国は、2000年12月6日、大統領府科学技術政策局(OSTP: Office of Science and Technology Policy)が連邦政府規律(Federal Research Misconduct Policy)を発表した。この規律が米国の基本で、米国のすべての政府機関はこの連邦政府規律に従う。

これを米国政府のルールとしよう。 → Federal Register / Vol. 70, No. 94 / Tuesday, May 17, 2005 / Rules and Regulations、のページ28,386「§ 93.103 Research misconduct」。

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《ねつ造》

  •  文部科学省:
    存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
  • 米国政府:
    データや研究結果をでっちあげ、記録または発表・報告すること。
    Fabrication is making up data or results and recording or reporting them.

問題点:
文部科学省の定義は「存在しないデータ、研究結果等を作成すること」とある。この中の「作成する」はどのような行為をさしているのかによるが、例えば、自分のパソコンで、チョッと「作成」したとしよう。この行為自体は、どう考えても、不正ではない。それを「記録または発表・報告」するから不正になるのである。

文部科学省のこの定義文は前文(投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造(ねつぞう)、改ざん)と合わせて理解すれば間違いではないけれど、「ねつ造」の定義文にこの前文の併記が必須である。

つまり、定義文だけでは欠陥がある。前文の併記が必須なら、米国政府の定義文のように一緒に記述すべきだ。

定義文はそれだけでアチコチに引用されるので、独立完結していないのは欠陥の定義文になる。全員に前文と合わせて理解することを要求するのは不親切で、定義を読む多くの人は間違える可能性が高い。

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《改ざん》

  • 文部科学省:
    研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
  • 米国政府:
    研究記録を正確に表現しない形で、研究資料・機器・過程を操作すること、あるいは、データや研究結果を変更、あるいは除外すること。
    Falsification is manipulating research materials, equipment, or processes, or changing or omitting data or results such that the research is not accurately represented in the research record.

問題点:
前項の「★「ねつ造」と「改ざん」の区別」で指摘したが、文部科学省の「真正でないものに加工」の具体的証明はとても困難である。米国政府の「研究記録を正確に表現しない形」は具体的に証明できる。米国政府の記述の方が優れている。

文部科学省は米国政府ルールを直訳したのに、どうして、ポイントをハズしたのだろう。

なお、米国政府の「研究記録を正確に表現しない形」は、「ねつ造・改ざん」されていない研究記録が残っていることが前提である。

そういうわけで、米国では、研究記録がないのは重要な不正だと思うのだが、米国の「研究不正(research misconduct)」の規定に、「研究記録なし」を重要な研究不正にしてしていない(ネカトではなくクログレイに分類されている)。

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話は少しズレる。

実は、米国の生命科学研究者の数割はチャンとした研究記録を取っていない(3割くらい? 出典を思い出せない。ゴメン)。白楽の推察だが、そのために規定に盛り込めなかったのだ。

理研の小保方さん(生命科学研究者)の研究記録は非常にお粗末だったが、研究記録をチャンと取らない生命科学研究者は日本にも相当いる(半数程度いると白楽は推定している)。

文系ではもっと多いだろう。研究記録をつける必要があることさえ知らなかった文系の研究者に、白楽は何人も遭遇した。

話は大きくズレるが、ここで、日本と世界に提案である。

《研究記録なし》を重要な研究不正に加える

同じ研究分野の他人が見てわかるように研究の実際の過程と結果を記録し、それを保存する。

保存は30年以上とするが、研究をリタイアあるいは死去した場合はこの限りではない。これを守らない場合、研究不正とみなす。

という規則を最初に設定すべきだ。

つまり、「研究不正(research misconduct)」は、《研究記録なし》を最初に加えた「記録なし」「ねつ造」「改ざん」「盗用」の4つとすることを提案したい。ウウン? となると、研究ネカトではなく、研究ネカト?

保存期間は30年以上と長いけど、研究記録は電子情報を想定している。電子情報なら、保存に場所も経費もさほどかからない。ネカトの発覚・処罰は10年前、20年前の研究についても起こっている。

ここまで書いたが、3章の《1》の「研究公正局の「ねつ造・改ざん」検出の基本的な考え」では、「元の画像データが存在しないことは、研究不正行為の証拠となる」とある。つまり、実質上、《研究記録なし》は重要な研究不正になっている。

白楽の主張は、実質上そうなら、規則に明記すべしということだ。

《2》ねつ造・改ざんの解説

★文部科学省の「ねつ造・改ざん」の解説

見当たらない。

★米国・NIHの「ねつ造」の解説

2014年頃、米国・NIHが示す「ねつ造」の具体例として、以下のように示していた(Research Misconduct、2020年9月現在、内容が変化している)。

  • 参加者を集めなければならないという期待と圧力に負けて、研究コーディネーターが架空の人物名と参加者情報を記入して医薬品の治験参加書を作成した。
  • バーモント州の生物医学研究者・エリック・ポールマン(Eric Poehlman)が実在しない患者のデータをでっちあげた。 ニューヨーク・タイムス紙の記事「エリック・ポールマン事件」を参照のこと。
  • 2012年6月の『科学者』誌(The Scientist)の記事「パーキンソン病研究者・モナ・ティルチェルヴァン(Mona Thiruchelvam)事件」を参照のこと。

米国・NIHが示す3つの「ねつ造」の具体例の内、2つは、他の記事を参照とある。その2つの「ポールマン事件」「ティルチェルヴァン事件」を4章に示した。

★米国・研究公正局の「改ざん」の解説

臨床研究で「改ざん」の具体例((23) Assessing Research Misconduct Allegations Involving Clinical Research| ORI – The Office of Research Integrity)(2020年9月4日保存版

  • ある患者の記録を別の患者の記録に置き換える
  • 被験者を処置する資格を持つ臨床試験スタッフが処置しなかったのだが、資格者が処置したとデータ調整センターに偽の報告をする
  • 患者の訪問日や診察内容の変更
  • 患者のスクリーニングの日付の変更、または同じ記録を日付を変えて提出する
  • 患者の状況を更新せず、前回の状況を最新として記述
  • 病気または再発を示すように血液サンプルの測定結果を変える
  • 研究プロトコルに決められた時間枠におさまるようにフォローアップ・インタビューの日付を後から変える
  • 患者から血液サンプルを採取した日時を変える

そして、米国・NIHは以下の3つの「改ざん」の具体例とした。(Research Misconduct、2014年頃の記載。2020年9月現在、内容が変化している)。

  • 生物医学の分野で、複数のウェスタン・ブロットの画像を「コピー・ペースト」で張り合わせ、単一のウェスタン・ブロット実験で得られたかのような最終画像を作る。
  • ハーバード大学の研究者・マーク・ハウザー(Marc Hauser)は、研究結果を「ねつ造」「改ざん」した。ボストン・グローブ紙の記事「ハウザー事件」を参照のこと(Carolyn Y. Johnson:Harvard professor who resigned fabricated, manipulated data, US says – White Coat Notes – Boston.com、September 5, 2012)。
  • Nature.com の記事「細胞生物学での画像操作」を参照のこと。

米国・NIHが示す3つの「改ざん」の具体例の内、2つ目の「ハウザー事件」を4章に示した。3つ目は、有料記事なのでヤメ、別の記事を「3章.ねつ造・改ざんの具体例」で示した。

《3》大学のねつ造・改ざんルールと解説

大学での「ねつ造・改ざん」は、教員・研究員・ポスドクの学会発表・学術論文などの学術文書が主要な対象である。

しかし、学部生・院生の研究レポート・学会発表・学術論文などの研究関連文書も対象になる。

さらに、学部生・院生が、授業で提出するレポート、学部生の卒業論文、院生の修士論文・博士論文も対象である。

これらで「ねつ造・改ざん」すると、カンニングと並ぶ(または以上の)重大な学則違反になる。

以前、日本全国の大学を調査した時、大学の規則に「ねつ造・改ざん」いう用語がなく、当然、「ねつ造・改ざん」の説明がない大学がいくつもあった。つまり、大学によって「ねつ造・改ざん」に対する姿勢が大きく異なっていた。

2020年9月現在、十分調査していないが、大学による格差は依然として、大きいと感じる。

ここでは京都大学(国立大学)の「ねつ造・改ざん」の解説例を挙げる。

関東の私立大学も探ったが、早稲田大学は「2‐2 盗用のすべて」で登場するので他の大学を探した。しかし、慶應義塾大学、明治大学など、まともな解説がなかった。それで掲載しないことにした。調べ方は浅かったかもしれないが、浅く調べてヒットしないのは、「ない」と同じである。

★京都大学

京都大学は研究倫理リーフレットを作っている。「責任ある学術研究 活動のために」で、ウェブでも公開している。日本語だけでなく、英語版がある点は優れている。ここでは示さないが、東京大学も同じようなリーフレットを作っている。

リーフレットなので、説明が貧弱である。「ねつ造・改ざん」を中心に見てみよう。

捏造(Fabrication)
存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
例)期待した実験結果が得られなかったので、画像を切り貼りして架空の画像を作り、論文上で発表した。

改ざん(Falsification)
研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を、真正でないものに加工すること。
例)複数回の実験データのうち、都合の悪いデータを削除して、推論に合うように加工したグラフを作成して発表した。

盗用(Plagiarism)・・・略・・・

上記の他に、二重投稿や不適切なオーサーシップ等が、研究者倫理に反する行為として、多くの学術誌の投稿規程等において禁止されています。

▼生データや実験ノート等の研究の記録や実験試料等を一定期間保存し、適切に管理、開示することは、不正行為の抑止や、研究者が万一不正行為の疑いを受けた場合にその自己防衛に資することのみならず、研究成果を広く科学コミュニティの間で共有する上でも有用です。

京都大学では、特段の事情がある場合を除き、当該論文の発表後少なくとも 10 年間研究の記録を保存することとしています。

部局内規等のルールや、研究上の監督者・指導者が示す研究データ保存計画に従って適切に保存してください

わからない人に解説するのだから、例は1つではなく、もっと多く示してほしかった。実験記録の保存の説明はしっかりしている。

★米国の大学例1:ノーザンイリノイ大学

以下米国の2つの大学の「ねつ造・改ざん」の解説例を示す。これらの大学を選んだ理由は、たまたま、偶然、検索にヒットしただけなので、米国の典型例かどうか不明である。

ノーザンイリノイ大学(Northern Illinois University)の「ねつ造・改ざん」の説明を以下に示そう。 → Fabrication or Falsification – NIU – Academic Integrity Tutorial for Students

「ねつ造」または「改ざん」は、学術活動における情報の不正な創作、変更、報告です。「ねつ造」または「改ざん」の例には次のものがあります。

    • 実際の実験から収集すべきデータなのに、実験をせず、データを創作
    • データ、文書、画像、音楽、芸術、その他の論文・作品を無許可で変更
    • 文書、レポート、プレゼンテーションのデータ、情報、結果を無許可で削除
    • チャート、グラフ、その他の表現で、不適切なスケール、拡大率、表現でデータ、結果、情報を表示する
    • 実験に参加した被験者に関する偽造情報
    • 実験の目的を明らかにしないで被験者を募集し、大学・倫理委員会の承認を得る
    • 情報源の偽造
    • 学術行為を完了するため無許可で別人になりすます
    • 他人のコンピュータのログインIDとパスワードを無許可で使用
    • 所定の実験手順からの未承認の逸脱

★米国の大学例2:・マイアミ大学

米国・マイアミ大学が示す「ねつ造」の具体例 → Research Integrity – Regulatory & Compliance Services – Office of Research, University of Miami(以下は2014年時点の記述で、リンク切れ。保存版:Research Integrity – Regulatory & Compliance Services – Office of Research

  • 実際はインタビューしていない架空の人のアンケート回答を作る・・・(心理学などで散見する「ねつ造」例)
  • 実際には遂行していない実験データを作成する
  • 実際の実験で集めたデータの統計的な妥当性を高めるために架空データを加える
  • 臨床研究で、法令順守に必要だった経過記録(clinical note、progress note)を記入せず、事後に、研究記録に挿入する。

米国・マイアミ大学が示す「改ざん」の具体例

「改ざん」は研究記録の記載とは正確には合わない形で、研究資料・機器・過程を操作すること、あるいは、データや研究結果を変更、あるいは除外すること。「改ざん」は、また、科学的正当性や統計的正当性なく、矛盾するデータを選択的に省略/削除/抑制することも含まれる。

  • データの分散を修正するためにデータを変更する
  • 研究ノート中の日付および実験手法を後から変える
  • 統計分析から得られた結果と異なる記述・発表をする
  • 実験遂行に使うモデル(例えば細胞系)のような実験方法の偽記述・発表
  • 原稿あるいは出版論文に偽記述をするか誤解を招きやすい表現をする。例えば統計のサンプル数「n」の偽記述・発表
  • 同じ研究結果を複数の論文に発表し研究業績数を増やす (重複発表)
  • 米国・公衆健康局(PHS)の継続研究費申請でのデータ改ざん
  • 出版論文での研究材料や方法の偽記述・発表
  • 専門学会や研究会の口頭発表やアブストラクトで、研究内容に関する虚偽の発表・記述
  • 新しい母親および赤ん坊の危険要因を決定するための連邦政府資金によるアンケート調査研究などで、架空の電話アンケート調査を記述する

さらに、研究公正局のサイトを引用して、臨床研究で「改ざん」の具体例を示している。

「たまたま、偶然、検索にヒットしただけ」の米国の大学の例だが、解説は優れている。日本の大学は見習った方がいい。

《4》学会のねつ造・改ざんルールと解説

学会のルールを少しだけ示す。ルールには「盗用」も入ったネカト規則である。

★日本の学会のネカト規則

日本の学会はネカト規則を定めて公表している学会、ネカト規則を定めていない学会などさまざまである。つまり、学会によってネカトに対する姿勢は大きく異なっている。

以前調査した時、日本化学会は特に優れていた。日本化学会の例を以下に挙げる。

以下は、日本化学会の「会員行動規範」のネカト規則の部分である。

 1.論文の著者として

1)著者の主要な義務は、行った研究の正確な説明とその意味の客観的な議論を提示することである。論文に記載するデータの偽造、ねつ造や他の著者の文献からの盗用を行ってはならない。

2)著者はその研究の背景となる以前の研究や、その研究を他の研究者が繰り返すために必要な情報の出所を明らかにしなければならない。また、関連する他者の重要な貢献を無視するような不適切な引用を行ってはならない。

3)研究に使う物質、装置、手順に特別な危険の怖れがある場合にはそれらを明示しなければならない。

4)本質的に同じ研究を報告した論文原稿を複数の雑誌に投稿してはならない。

5)論文の共著者は、その研究に重要な科学的寄与をし、結果に対して責任と説明義務を共有するすべての者とすべきである。

●3.【ねつ造・改ざんの具体例】

《1》ねつ造・改ざんの具体例:細胞生物学

米国の細胞生物学会誌「Journal of Cell Biology」のガイドラインが優れている。

2002年、「Journal of Cell Biology」は論文投稿を全部電子ファイルに切り替えた。当時、編集部長だったマイク・ロスナー(Mike Rossner、写真出典)が、投稿された論文原稿にウェスタンブロットの改ざん画像があるのに気がつき、問題に対処することにした。

「Journal of Cell Biology」は、2003年6月、最初のガイドラインを発表し、2004年に詳細な解説論文「What’s in a picture? The temptation of image manipulation」を発表した(Rossner and Yamada, J. Cell Biol. 166:11 – 15)。

この論文は無料閲覧できるので、ここで紹介する。ここでは「JCBガイドライン」と呼ぶ。

なお、話はズレるが、共著者の「Yamada」は日系3世の米国人で、昔、白楽がNIH・国立がん研究所(NCI)に研究留学した時のボスである。いまだにクリスマス・カードのやり取りが続いている。

「JCBガイドライン」は16年前の指針だが、具体的でわかりやすい。ここでポイントを紹介するが、生命科学の専門家は原典を参照されたい。

★電気泳動バンドの「明白」な「ねつ造・改ざん」

電気泳動の画像の黒いバンドは、特定のタンパク質、DNA、RNAの存在を示す。バンドの濃さと縦方向の位置が重要で、1~4はサンプル(検体)番号で、4列あるからサンプルが4つあった。(出典:上記JCBガイドライン)

141005 F1.medium[1]

図の左側の上下段がオリジナルな画像である。

上段(A)の右図では、列3にあったバンドが削除された(改ざん)。
下段(B)の右図では、列3に新しいバンドが加えられた(ねつ造)。

バンドの加工は加工痕跡が見つからないほどきれいである。また、削除・加筆されたバンドはハッキリとしている。

オリジナルデータがあれば「ねつ造・改ざん」は明白だが、オリジナルデータがないと「ねつ造・改ざん」はわからない。

ーーーーー
電気泳動バンドの「ねつ造・改ざん」をもう1つ示そう(出典:上記JCBガイドライン)。

左の図が元のオリジナル画像である。右の図は、背景を薄くして、主要バンドだけをよく見えるようにし、他のバンドがほとんど見えない画像に加工した。ついでに、オリジナル画像のゴミも削除した。

加工された画像(右図)だけを見ると、バンド1本に見える。明白な「改ざん」である。

★電気泳動バンドの「微妙」な「ねつ造・改ざん」

上記の例は「ねつ造・改ざん」が明白だが、実際は、微妙なケースが多い。下図で説明しよう(出典:上記JCBガイドライン)。

図A。左の図が元のオリジナルな画像である。右の図は、矢印のレーンの2本のバンドを薄くして、あたかも、上のバンド1本だけが主要であるかのように加工した。とは言え、下のバンドの存在もわかる。加工はとても微妙だが、これは、「改ざん」と判定されている。
141005 F3.medium[1]-1

ーーーーー
図B。左の図1が元のオリジナルな画像である。右の3つの図2,3,4は、図1のコントラストを変えた画像である。図4は画像のコントラストを極端に変え、バンドが1本しかないように見せている。これは明白な「改ざん」である。

図2、図3は、さて、どうでしょう? 皆さんは、「改ざん」と判断されますか? 許容範囲と判断されますか? 判断の理由はなんでしょうか?
141005 F3.medium[1]-2

答:図2は許容範囲、図3は「改ざん」である。

理由は、元のオリジナルな画像・図1に見られるバンド(左の2つの列の下半分)が図2では薄くなっていても存在することがわかるが、図3では存在しないように見える。

★組織像の「ねつ造・改ざん」

免疫ゴールド組織像の「ねつ造・改ざん」例を示そう(出典:上記JCBガイドライン)。

左の図が元データだが、ゴールド粒子が薄い。それで、加工して右図のようにゴールド粒子を濃く、かつ、大きくした。つまり、見栄えを良くした。加工ついでに元データのゴミのような黒い色を薄くした。こんな「お化粧」しなくても、論文の結論は主張できたのに、と思うのだが。

★細胞像の「ねつ造・改ざん」

細胞像の「ねつ造・改ざん」例を示そう(出典:上記JCBガイドライン)。

図には細胞が10数個ある。蛍光顕微鏡のかなり美しい画像である。ところが、この画像が「ねつ造・改ざん」なのだ。皆さんは、どこがどう「ねつ造・改ざん」「なのかわかります? 

どうです?

降参?

下図は、同じ細胞像のコントラストを変化させた。

下図では、背景が異なっていますね。つまり、上図は別々の視野から得た顕微鏡像を、あたかも1つの視野にあったかのように、切り貼りしたのである。これは、「ねつ造・改ざん」である。なかなか巧妙で、こうなると、芸術的です。

《2》ねつ造・改ざんの具体例:研究公正局

研究公正局が過去の事件で「ねつ造・改ざん」と判定した画像をアップしている。その画像を以下に流用する(出典):Samples | ORI – The Office of Research Integrity

ここまでお読みの皆様な、既に優れたネカトハンターです。それで、以下は皆様への出題です。

5問全部正解の方、抽選で5名様に7泊8日の豪華ハワイ旅行に、・・・・ご自分でお出かけください。

図1。3本のレーンに同じ画像がある。どのレーンかわかります? 正解は、番号でお答えください。

図2。67のバンドと32のバンドは同一バンドのコピペ。どうやって証明します?

図3。どのデータがねつ造されたか、わかります?

図4。ヘンなバンドがありますか? ヒント:似たバンドがあるかも。

図5。以下の画像で、コピペした部分がどこだか、わかります? なお、これは、過去の事件の画像ではない。

《3》ねつ造・改ざんの具体例:歴史や一般社会

「ねつ造・改ざん」は、生命科学分野に多いが、生命科学分野だけというわけではない。すべての学問分野で「ねつ造・改ざん」がある。そして、論文で画像やデータを示す学問分野を中心に、心理学でも、物理学でも事件になっている。

学問とは異なる一般社会でも「ねつ造・改ざん」はそれなりの頻度で行なわれている。

歴史的な写真が改ざんされた例もある。(出典:Falsification of Photographs。2020年9月現在、リンク切れ)。

写真では真中のレーニンの右にトロツキーが写っている。
141008 trotsky-orig1[1]

下の写真では、トロツキーが消されている。これが「改ざん」である。
141008 trotsky-alt1[1]
元々の出典は、David Kingの著書 『The Commissar Vanishes: The Falsification of Photographs and Art in Stalin’s Russia』 (1997年) である。

これは学問ではなく、単なる政治闘争の手段ですかね。日本でも「モリ・カケ・サクラ」で公文書が改ざんされた。政治の世界では珍しいことではないようです。

もう1つ、ごく普通の生活で起こる写真の改ざんをお見せしよう。

学校の集合写真でベランダの人たちが邪魔だった(上)。それで、画像を加工して、ベランダの人たちを消した(下)。(出典:http://www.town-local.net/removals_and_replacments.htm。2020年9月現在、リンク切れ。保存版があった)

141008 SchoolRemoval[1]
学校の集合写真は研究発表や科学成果ではないので、この改ざんが“不正”ということはない。

これらの「改ざん」写真を見ると、「百聞は一見にしかず」ということわざも、「百見一聞にしかず」というか、物事の何を信じて良いのやら・・・。

ただ、画像やデータを意図的に加工する「改ざん」行為は、全て「悪い」「不正」というわけではない。

ファッション界、雑誌、宣伝、芸術、写真界などでの画像の「改ざん」は、「編集」と呼ぶ方がふさわしく、むしろ優れた技術である。

近現代の人類は、画像の「改ざん」技術を積極的に開発し、発展させてきた。例えば、以下の写真のように、画像の「改ざん」で独特の面白さがでる(写真出典:ライセンスは商用利用無料)。

さらに言うと、「ねつ造」も、映画や小説では「創造」「創作」と呼ばれるが、しごく当然な世界である。役者・俳優は人をだます職業である。

ファッション界、雑誌、宣伝、芸術、写真界などでも独創的な「創造」「創作」、つまり「ねつ造」を求められる。

こう書くと、事実を伝えるハズのテレビや新聞でも、事件の一部を「選択」(つまり「改ざん」)し、視聴者・読者が面白く感じるように構成(つまり「改ざん」)している。

写真も一瞬の真実と言いながら、被写体の一部を「選択」(つまり「改ざん」)している。「実をして」いるわけではない。

突き詰めていくと、全ての研究論文は、事実の一部を意図的に「選択」して発表している。「選択」つまり「改ざん」をしていることになる。

●4.【ねつ造・改ざん事件例】

★ねつ造・改ざん事件データベース

白楽ブログの「5A 事件集」の「事件一覧」には、2020年9月現在、日本の研究者のねつ造・改ざん事件が約230件、リストされている。外国の研究者のねつ造・改ざん事件は約700件、リストされている。

その内のかなりの事件を白楽ブログで解説した(している)。

《1》ねつ造事件例

★米国のねつ造事件:ポールマン事件

140912 エリック・ポールマン1111143407_3630[1]米国・バーモント大学が詳細に調査し、バーモント地方裁判所も調査・裁決した。米国・研究公正局も調査し、2008年に結論を記録した事件である(Case Summary: Poehlman, Eric T. | ORI – The Office of Research Integrity)。(写真出典)。

事件の詳細は以下に記述した。白楽ブログでも事件を解説した → エリック・ポールマン(Eric T. Poehlman)(米) | 白楽の研究者倫理

ニューヨーク・タイムス紙の記事「エリック・ポールマン事件」からポイントを拾う(直訳ではありません) (Jeneen Interlandi:「An Unwelcome Discovery」, New York Times, October 22, 2006)。

エリック・ポールマン(Eric Poehlman、1956年 – )は、米国・バーモント大学医学部・教授の生物医学研究者で、ヒトの肥満と老化の内分泌学に関する研究では200報以上の論文を発表し、著名な研究者だった。

ポールマンは、患者の加齢とともに、脂質の1種である低比重リポタンパク(LDL)が血液中に増加すると予想した。低比重リポタンパク(LDL)は動脈にコレステロールを沈着させる作用がある。同時に、加齢とともに、今度は逆に、血液中の高比重リポタンパク(HDL)が減少すると予想した。

高比重リポタンパク(HDL)は肝臓にコレステロールを運び、コレステロールは肝臓で分解される。

それまでの数十年間の情況証拠は、加齢とともに脂質レベルが悪化することを支持していたので、ポールマンの仮説は生物医学研究界にすんなり受け入れられた。

ポールマンは、患者の血液中の脂質を測定することで、この仮説を実証しようと考えた。

1998年、ポールマンを師と仰ぐ22歳の若い男性・ウォルター・デニーノ(Walter DeNino)がポールマン研究室のテクニシャンとして採用された。

2000年の10月、決定的なことが起こった。

デニーノは、共同研究として行なっている患者の血液中の脂質データを論文にするよう、ポールマンに命じられた。

デニーノは早速、脂質データの統計分析したが、データはポールマンの仮説と合わなかった。ポールマンにデータを見せると、ポールマンは患者の元データが自宅にあるから検討すると、データの電子ファイル(エクセル)を自宅に持ち帰った。

翌週、デニーノは、ポールマンからは電子ファイルを返してもらったが、その時、「いくつかの間違いがあったので、それを修正しておいた。もう一度、統計分析をしてくれ」とポールマンに依頼された。

それで、デニーノは、電子ファイルを開けて、データの統計分析をし直した。すると、先週まではバラバラだったデータが、今度は全く整然としていて、仮説通りに、加齢と伴にHDL値は減少し、LDL値は増加していた。

デニーノは不思議に思い、元のデータ一覧表とポールマンが彼に渡してくれたデータ一覧表を比較した。

1回目の血液検査と2回目の血液検査を比較すると、元のデータ一覧表では、多くの患者のHDL値は特定の傾向を示していなかった。あえて言えば、増加の傾向にあった。しかし、ポールマンが改訂したデータ一覧表では、患者のHDLはどれも減少していた。

デニーノは、患者の元データと比較したいので見せてほしいとポールマンに頼んだ。

ポールマンの返事は、元データは見せられないということだった。この時、デニーノは、患者の元データはポールマンの自宅にはなく、なにかおかしなことをしているのではないかと疑った。

それで、再度、データ一覧表をよく調べた。すると、ポールマンに変更された数値は、ポールマンの仮説に合わなかった数値だけで、変更されなかった数値は、ポールマンの仮説に合った数値だけだった。デニーノは驚いて、何度も、データ一覧表を見直した。

デニーノは大学に告発し、またバーモント地方裁判所に訴えた。

結局、ポールマンは、2001年、データねつ造・改ざんが発覚し、2001年9月、バーモント大学を退職した。

2006年、バーモント地方裁判所により、17件の研究費申請書と10報の論文のデータねつ造・改ざんを犯した罪で1年1日、刑務所に収監された。不正研究で刑務所暮らしをした最初の米国研究者である。

ウン、待てよ。この行為だと、ポールマンはデータを変えたので、白楽には「ねつ造」ではなく「改ざん」と思える。米国・研究公正局は「ねつ造」の具体例として挙げている。

ヘンである。

そう思ってもう一度見直した。ゴメン、ありました。

「1995年11月発表の論文「Annals of Internal Medicine 123(9):673-675, November 1, 1995」で35人の女性患者の存在しない測定値をねつ造した」とあった。

これは、「ねつ造」ですね。ただ、ニューヨーク・タイムス紙の記事は、デニーノが告発し事件が発覚する部分を中心に書いてあったので「改ざん」の印象を受けてしまったのだ。ゴメン。

★米国のねつ造事件:ティルチェルヴァン事件

モナ・ティルチェルヴァン(Mona Thiruchelvam)事件の詳細を以下に記述した。白楽ブログでも事件を解説した →  → モナ・ティルチェルヴァン(Mona Thiruchelvam)(米) | 白楽の研究者倫理

2012年6月の『科学者』誌(The Scientist)の記事から以下にポイントだけ書いた。(Hayley Dunning:「Parkinson’s Researcher Fabricated Data」、2012年6月29日)

2003年、モナ・ティルチェルヴァン(Mona Thiruchelvam)はニュージャージー医科歯科大学(University of Medicine and Dentistry, New Jersey:UMDNJ) の助教授に着任した。その数年後、大学の研究公正局は、彼女が不正研究をしているという最初の告発を受けていた。

2012年6月29日、モナ・ティルチェルヴァンは、2005年にEnvironmental Health Perspectiveと Journal of Biological Chemistryに出版した2つの論文でのデータねつ造を認め、論文を撤回した。

2つの論文とも、パーキンソン病(PD)患者の神経細胞への殺虫剤の影響に関する研究で、研究データである細胞数をねつ造した。研究は、マウスとラットの脳の中の黒質線条体の神経細胞数を数えたことになっている。しかし、ニュージャージー医科歯科大学(UMDNJ)の調査の結果、神経細胞は一度も数えられていなかったことが判明した。

他にも記事がある(Thiruchelvam ? Parkinson’s Disease ? Researcher Guilty Of Faking Data On Pesticides ? 2012 06 29 ? Pesticide Truths)。

ポールマンは、35人女性患者の存在しない測定値を「ねつ造」した。ティルチェルヴァンは、数えていない細胞数の数値を「ねつ造」した。

ティルチェルヴァン事件では、ティルチェルヴァン自身は細胞数を測定する設備を持っていない。共同研究者は、以前、細胞数の測定を依頼され、測定した。それが、今度は測定を依頼されなかったのに細胞数のデータがあった。誰が測定したのだろうという疑念から「ねつ造」に気付いて、告発した。

ポールマン事件は、共同研究者が「改ざん」で告発した。調査を進めるうちに別件で「ねつ造」が発覚した。

他の事件も合わせて、共同研究者が告発しない場合、別件での不正研究疑惑での調査が入らない場合、ねつ造の発覚はかなり難しいだろう。

もう1つ、「ねつ造」が明確と思われているサマリン事件を考えよう。なお、米国では、サマーリンではなくサマリンと発音するので、サマリンとした。

★米国のねつ造事件:サマリン事件
140910 サマーリンsci_FRAUD_pic_06[1]

ウィリアム・サマリン(William Summerlin)事件の詳細を以下に記述した。白楽ブログでも事件を解説した → ウィリアム・サマリン(William Summerlin)(米) | 白楽の研究者倫理

サマリン事件とは、1974年、ニューヨークのスローン・ケタリング記念癌研究所で勤務するウィリアム・サマリン(William Summerlin)の「ねつ造」事件である。(写真:サマリン:The New York TimesKodėl mokslininkai sukčiauja? – DELFI Gyvenimas。白色マウスの黒色はサマリンのマウスそのものではない。出典:The Patchwork Mouse 2 by MouseSneezes on deviantART

サマリンは、自分が行なっている皮膚移植の実験がうまくいっていないにもかかわらず、白いネズミの体の一部を黒色のマーカーペンで塗り、あたかも黒い皮膚の移植がされ、それが成功したかのように見せかけた事件である。(サマリン事件 – Wikipedia

140910 The_Patchwork_Mouse_2_by_MouseSneezes[1]実際は、白いマウスに黒いマウスの皮膚を移植した実験をしていたに違いない。しかし、移植した黒い皮膚が剥げ落ち(現在の知識ならそうなる)、変色していたのだろう。つまり、移植手術した治りかけの皮膚の色は白色ではなくて、肌色あたりの色だったのだろう。その肌色部分の皮膚と毛をマーカーペンで黒く塗ったのに違いない(ここらは白楽の推定)。

★日本のねつ造事件:藤村新一の旧石器ねつ造事件

有名な「ねつ造」事件である。

140910 藤村伸一mainichi_fujimura[1]アマチュア考古学研究家の藤村新一が、1970年代から2000年11月5日に不正が発覚するまでの4半世紀に行なった不正研究である。

藤村新一は、旧石器時代の地層からそれまで誰も見つけなかった石器を次々に発掘した。この“発見”で、日本史が書き換えられ、その影響は中学・高校の歴史教科書まで及んだ。

しかし、この“発見”は、藤村自身が採取した縄文時代の石器を旧石器時代の地層に埋め込んでおいて、自分で“発見する、あるいは他人に“発見”させた「ねつ造」行為だったのである。(写真:藤村新一;旧石器捏造2、ねつ造石器:埼玉県立埋蔵文化財センター・ねつ造事件)。
140910 藤村伸一saitama_maibun17[1]

元々、旧石器時代の石器ではないものを、意図的に旧石器時代の地層に置いて、旧石器時代の石器だとした。つまり、ごまかす意図で、「ない」データを作った「ねつ造」だった。

毎日新聞の取材班が藤村新一の「ねつ造」行為を写真に収めた、という大スクープだった。

《2》改ざん事件例

★米国の「改ざん」事件:ハウザー事件
140925 マーク・ハウザー

マーク・ハウザー(Marc Hauser)は、1998年に38歳でハーバード大学・教授になった米国の進化生物学者で、ハーバード大学でも有名な学者だった。

人間や類人猿に特有と思われていた認識能力がサルにもあることを発見し、この分野のカリスマ的学者だった.

2010年、論文における不正が発覚し、2011年、ハーバード大学を辞職した(写真の出典:後述するボストン・グローブ紙の記事)。

日本語版ウィキペディアに「マーク・ハウザー – Wikipedia」の記事があるが、不正研究については一行しか書いてなかった。2014年10月6日 (月) 、白楽が不正研究について加筆した。

マーク・ハウザー(Marc Hauser)事件の詳細を以下に記述した。白楽ブログでも事件を解説した →  心理学:マーク・ハウザー(Marc D. Hauser)(米)改訂 | 白楽の研究者倫理

ボストン・グローブ紙の2012年9月5日の記事 と2014年5月30日の記事 、研究公正局の2012年9月10日の通達 を中心に、「マーク・ハウザー事件」からポイントを拾う(直訳ではありません)(Carolyn Y. Johnson:Harvard professor who resigned fabricated, manipulated data, US says – White Coat Notes – Boston.com、September 5, 2012)。

1960年代、米国・チューレン大学(Tulane University)のゴードン・ギャラップ(Gordon G. Gallup)は、鏡に映った自分を自分と認識できる能力で動物の知能を測る方法を考案した。これは「鏡像認知」「自己鏡映像認知能力」(Mirror test)と呼ばれている。

1970年、ギャラップは、チンパンジーに鏡像認知能力があるが、サルにはないと報告した。

その後、2014年10月の現在まで、チンパンジーなどの類人猿のほか、イルカ、ゾウ、カササギなども鏡像認知能力があるとされている。しかし、類人猿以外の動物での結果は、追試実験が不十分と考えられ、専門家の間では論争になっている。

サルではどうだろうか?

1995年、ハウザーは、サルの1種であるワタボウシタマリンに鏡像認知能力があると発表した。

ニューヨーク州立大学オールバニ校の心理学教授に移籍していたゴードン・ギャラップは、ハウザーの発見に疑問を抱き、ハウザーが実験で撮影したビデオ録画を調査した。

「私がハウザーの実験ビデオを観ても、そこには、科学的であろうとなかろうと、とにかく、鏡に映ったタマリンがタマリン自身を認識しているという彼の結論に納得できる映像は、どのタマリンにも見出せなかった」と述べている。

ギャラップが残りのビデオ録画見せて下さいとハウザーに依頼すると、ハウザーの返事は、「ビデオは盗まれてしまった」だった。

1997年、ギャラップは、アンダーソン(Anderson)と共著で、ハウザー論文に批判的な論文を書いた。その論文には、「ハウザーの論文では、“鏡像認知”の基準が不十分である。自分たちの評価では、チンパンジーや他の大型類人猿が、鏡像認知を示すときに見られるようには、タマリンは、鏡像認知を示す行動をしていない」と述べた 。

1997年、ハウザーはギャラップに反論した。

2001年、しかし、ハウザーは、自分たちの実験が追試できないと認め、以前の結論の証拠が得られないと報告した。

2007年、ハーバード大学はハウザーを科学における不正行為の嫌疑で内部調査をしていると発表した。

2010年8月20日、ハーバード大学のマイケル・スミス(Michael Smith)人文科学部長は、3年間の調査の結果、8件の不正研究を見つけ、ハウザーに単独責任があると発表した。3件は出版論文、5件は未発表の研究だった。

2011年7月、ハウザーはハーバード大学を2011年8月1日付けで辞職すると発表した。

2012年9月、米国政府機関の研究公正局は調査し、「ハウザーの研究には不正があり、1つの研究でねつ造、複数の実験で改ざんが見つかりました。それらの研究は、政府研究費の援助を受けていました」、と発表した。

「改ざん」の具体例を以下に示す。

2007年の論文「Hauser, M.D., Glynn, D., Wood, J. “Rhesus monkeys correctly read the goal-relevant gestures of a human agent.’ Proceedings of the Royal Society B 274:1913-1918, 2007」は、アカゲザルが人間のジェスチャーを理解できるかどうかの実験を行なったが、7つの実験のうちの1つの「実験方法」と「結果」で改ざんをした。

人間がエサ箱(エサは入っていない)を指でさすと、サルが近づくかどうかの実験である。

「結果」の改ざんは、43匹の内、31匹が近づいたと書いたが、実験記録には27匹しか近づいていない。

「実験方法」の改ざんは、全部、ビデオ撮影したとあるが、実際には、30匹分しか撮影していなかった。

改ざんしなくても、統計的有意性はあった(調査員の判断)のにデータをよりきれいにしたかったのだろう。

事件の大きさに比べ、改ざんの中身は単純だった。数値を変えただけである。「ハーバード大学の著名教授がこんな小さなことを変えなくても」と思うような改ざんである。

改ざんしなくても、統計的有意性はあったのだから、結論は同じなのに、改ざんしたのである。バカじゃないのか。イヤ、ハーバードの著名教授だ。バカであるわけがない。

ーーー
【深読み】

研究テーマからして国際政治とは無関係だろうが、一般論として思いつくのは、ハーバードの学内抗争に巻き込まれた可能性である。

で、ハウザーの経歴を見る。1959年11月25日生まれである。1992年(32歳)でハーバード大学の助教授、1995年(35歳)に準教授、1998年に38歳で正教授に昇格した。この経歴から、将来、ハーバード大学を背負って立つ可能性の高い教授である。

2007年にハーバード大学が不正調査に入ったと公表したときは、教授就任9年後の47歳だった。ある意味、油の乗り切った研究盛りの年齢であり、政治活動盛りの年齢でもある。

問題視された論文は、2002年、2005年、2007年の論文だから、教授に就任してからの論文である。もうすでに教授になっているので、無理する必要はない。どうしてこんな危険なことをしたのか。教授の地位を保つという圧力だけなら不正をしなくても良いように思える。

ハーバードの学内抗争に巻き込まれた可能性が本当にあるのか、現実的がどうかは、かなり調べないとわからない。本題から外れるので、このまま放置。ゴメン。

もう1つ、ハーバードの学内抗争でないとしたら、どんなことがあり得るだろうか?

教授に就任してから不正研究に手を染めたのだろうか?

白楽はそう思わない。1995年(35歳)準教授の時のハウザーの論文に、別の研究者・ギャラップが公然と疑惑を表明している。多分、すでにこの時、ハウザーは不正研究をしていたのだろう。35歳にジャーナルに印刷公表された論文だから、実際の研究は遅くともその1~2年前頃に実施していたハズだ。

つまり、33~34歳頃には不正研究を織り交ぜながら研究成果を出すのがハウザーの研究スタイルだったのだろう。多分、院生、ポスドクを通して研究の最初から、ハウザーは不正研究を織り交ぜる研究スタイルを身につけてしまったのだろう。

ーーー
【ストレーベ説を加味】

2012年のウルフガング・ストレーベ(Wolfgang Stroebe)らの論文によると、「ねつ造・改ざん」をした研究者は2種類に分類できる。 → 事件から学ぶネカト対策:ウルフガング・ストレーベ(Wolfgang Stroebe)他、2012年 | 白楽の研究者倫理

①研究キャリアの最初から研究不正をする人と、②途中からする人である。ダーシー、シェーン、スペクターは①の研究者で、研究キャリアの最初から研究不正をするから昇進が早く、若い時から有名である。

ハウザーも38歳でハーバードの教授に昇格し、カリスマ的学者だったので、①の最初から研究不正の研究者だったのだろう。

早くから秀才の誉れ高く、優位に学位・就職・昇進してきた典型的な人のように思える。とてもズル賢い、世渡りの優れた人なのだろう。

最初から研究不正する人は、院生時代の指導教員がズル賢しさを見ぬき、まともに躾けるか、躾けることが無理なら、学術界から排除すべきだ。学内抗争もあっただろうが、ハウザーは、最初から研究不正する人だったと考える方が事実に近いだろう。

★日本の「改ざん」事件:林愛明(りん あいめい)事件

以下、2019年7月23日のNHKニュース記事を引用する。

京大教授 論文不正で停職1年に

停職1年間の処分を受けたのは京都大学大学院理学研究科の林愛明教授です。
林教授らのグループは、3年前の熊本地震で起きた断層の破壊が、阿蘇山のマグマだまりによって止まった可能性があるという内容の論文を科学雑誌の「サイエンス」に発表しました。

しかし、「図表に多数のミスがある」などと通報があり、大学は、ことし3月、調査の結果、東京大学の教授らが作成した断層のずれの量を示す図を上下逆さに引用したり、ほかの研究データを出典を示さずに使ったりするなど、結論を導く6つの重要な図のうちの4つで改ざんや盗用があったと認定しました。( 京大教授 論文不正で停職1年に|NHK 京都府のニュース

【動画】 ニュース動画:「京大教授 論文不正で停職1年に|07月23日 京都府のニュース – YouTube」(日本語)1分48秒。 あむばるわりあAmbarvaliaが2019/07/27に公開:https://www.youtube.com/watch?v=yMIpGzAWwyE

●5.【ねつ造・改ざんの検出法・証拠提示法】

《1》「ねつ造・改ざん」検出法

★ 基本的な考え

研究公正局が「ねつ造・改ざん」検出の基本的な考えを示している(出典:Samples | ORI – The Office of Research Integrity

  • 画像は科学では「データ」であることが多い。それで、その画像の加工はデータ「改ざん」なのか、データ「改ざん」ではないのか、が問題になる。
  • データの提示方法が不運だったか、またはダマす意図があったかどうかは、論文中での画像の役割、加工が論文結果の解釈にどのように影響しているかに依存する。
  • 犯罪科学的には、画像が「本物ではないことを認証する( “de-authenticate” )」(つまり、食い違いがある)ことだけが可能である。
  • 本物であることを認証する( Authentication )には、元の画像データへのアクセスが必須である。
  • 食い違いがあると認定したことは単に事実の主張であって、それ自体はデータ「改ざん」の意図を示していない。
  • 画像の食い違いを、データ「改ざん」の発見、さらに言えば研究不正行為の発見、と混同してはならない。後者の判定には、追加の事実調査が必要である。
  • 上記の調査では、元の画像データを検査する必要がある。ただし、画像が「本物ではない」場合、元の画像データが存在しない場合がある。従って、元の画像データが存在しないことは、研究不正行為の証拠となる。そして、さらなる事実調査を行なうための理由として、十分に正当的である。
  • 画像の加工が深刻な加工かどうかの解釈は、その実験と画像加工技術に精通している必要がある。
  • 「ねつ造・改ざん」検出ソフトであるフォレンジック・ドロップレット(Forensic Droplet)またはフォレンジック・アクション(Forensic Action)は、初期検査の道具である。それらの結果は完全な証拠ではありません。別の手法を用いることで、初期検査で見つからなかった面を明らかにできる可能性がある。
  • 解析結果の品質は、画像の解像度と、画像が圧縮されている(されていない)度合いによって異なる。 (テストパターンを参照)
  • 画像圧縮による人工産物で「ねつ造・改ざん」と判定されることはない。画像加工の兆候は、論文の中の科学的関心のある特定の画像にのみ画像圧縮による人工産物が施されている。

★電気泳動バンドの「ねつ造・改ざん」

ベルギーのリエージュ大学 (Université de Liège)のジャックス・ピエト教授(Jacques Piette、写真出典同)の解説が有用である。 → 2013年11月4日のアンソニー・ニューマン(Anthony Newman)の「Elsevier」記事:The art of detecting data and image manipulation

ピエト教授は学術誌・編集長の立場から、論文原稿を受け取った時、ウェスターンブロットのバンドを含め電気泳動バンドの注意点を述べている。

少なくとも、以下のようなバンドは怪しい(画像の出典)。論文原稿の段階で注意すべきだと指摘している。

  • 過大に試料を載せたバンド
  • 過剰露光した画像
  • 不適切なゲルの切断。

また、一次抗体と二次抗体について、材料と方法のセクションで説明する必要がある。 抗体が試薬業者の製品でなければ、その特性を説明する必要がある。

とにかく、電気泳動バンドに疑念が生じれば、著者にオリジナル画像全体の提供を要求すべし、と指示している。

★ デジタルツール

ねつ造・改ざんは、デジタルツールである程度、検出できる。但し、デジタルツールでの検出は入り口である。疑念が生じた画像を専門的知識と技術で解析する必要がある。

以下、研究公正局がおススメのソフトを示す。白楽は実際に使用していないので、使い心地、長所・短所はわからない。

研究公正局のフォレンジック・ツールのセットは、「Photoshop©v.CS4-CS5」で使用するように設計されている。

アクションズは主に画像内の固有の不規則性を視覚化するために設計されている。直接オーバーレイによる2つの画像の比較を容易にするためにも使われる。

アクションズは特に単一の画像の詳細な犯罪科学検査を対象としているが、画像グループを検査することもできる。

研究公正局・副局長(2015年末に退任)のジョン・ダーベルグ(John Dahlberg、写真出典同)の解説も有用である → 2013年11月4日のアンソニー・ニューマン(Anthony Newman)の「Elsevier」記事:The art of detecting data and image manipulation

ファッション界、雑誌、宣伝、芸術、写真、モンタージュ、コラージュなどで画像の加工されてきた。従って、様々な加工技術が開発されてきた。学術研究の画像はそれらに比べると、小さな領域である。

様々な加工技術が開発されてきたことに伴い、その加工を突き止めるデジタルツールもたくさん開発されてきたし、現在も、デジタルツールが開発されている。

以下のようなソフトもあるという例を挙げるが、白楽は実際に使用していないので、使い心地、長所・短所はわからない。

《2》ねつ造・改ざん証拠の提示法

基本的に「ねつ造・改ざん」がわかりやすく提示できればよい。経験則から以下の応な点がポイントである。

  • ねつ造・改ざんのネカト論文の書誌情報と図表番号を示す。
  • 画像のラベルを変えて重複使用している場合、同じ画像を同じ枠の色で示す。
  • 疑惑部分が小さな部分や線状ならその部分を矢印で示す。
  • 表の数値が異常なら、その部分を着色する。
  • 別論文からの重複使用なら両方の論文と図表番号を示す。

以下、具体的に見ていこう。

★画像(電気泳動バンド)のねつ造・改ざん指摘図:その1

以下は、日本語の「画像のねつ造・改ざん指摘図」である(出典:論文#2(BBB 2003) – 九州大学 論文捏造疑惑)。

同じバンドの単純なコピペだと、同じバンドを同じ枠の色で示せば、それでコピペだとわかる。

★画像(電気泳動バンド)のねつ造・改ざん指摘図:その2

テレシタ・ブリオネス(Teresita Briones)の画像のねつ造・改ざん事件から「画像(電気泳動バンド)のねつ造・改ざん指摘図」を示す。(出典:テレシタ・ブリオネス(Teresita Briones)(米) | 白楽の研究者倫理)。

ブリオネスの「2015年のBehav Brain Res.」論文の書誌情報を以下に示す。2014年3月にオンライン出版され、2016年1月に撤回された。

どの部分がどのように不正だったのか、パブピアで見てみよう。

2014年12月29日、図2Eと図5Dの電気泳動バンドに同じバンドの使い回しがあると、ネカト・ハンターのポール・ブルックス(Paul S Brookes)がパブピアで指摘した「commented Mon Dec 29 2014 20:12:22 GMT+0000 and accepted Mon Dec 29 2014 20:12:22 GMT+0000」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/FB7967D1081CAE144A02A6DE18FCA1#1

図2E

図5D

両図とも電気泳動バンドの使い回しだが、単純な使い回しではない。バンドを反転させたり、180度回転させたり、と加工が発覚しないように工夫している。

それを指摘するには、コピペし、文字ごと反転させたり、180度回転させたりして、並置して指摘する。

★画像(細胞・組織)のねつ造・改ざん指摘図:その1

ローガン・フルフォード(Logan Fulford)の画像のねつ造・改ざん事件から「画像(細胞・組織)のねつ造・改ざん指摘図」を示す。(出典:ローガン・フルフォード(Logan Fulford)(米) | 白楽の研究者倫理)。

フルフォードの「2016年のScience Signaling」論文の図2Cが「ねつ造・改ざん」された。書誌情報を以下に示す。2018年7月31日に撤回された。

以下の図2Cの免疫化学画像の最下段「Cle casp-3」は同じ画像を使用している(ねつ造)。緑色枠内の2つの画像が同じ。青色枠内の2つの画像が同じ(図の出典は原著、加工は白楽)。

★画像(細胞・組織)のねつ造・改ざん指摘図:その2

スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)の画像のねつ造・改ざん事件から「画像(細胞・組織)のねつ造・改ざん指摘図」を示す。(スチトラ・スミトラン=ホルガーソン(Suchitra Sumitran-Holgersson)(スウェーデン) | 白楽の研究者倫理

スミトラン=ホルガーソンの「2014年のTissue Eng Part A」論文の書誌情報を以下に示す。2016年5月に撤回された。

【図1S】2016年3月10日に、図1Sの組織切片像はサイクルごとに毎回異なるハズなのに、サイクル11とサイクル12の組織切片像は同じである、と指摘された「Peer 3: (commented March 10th, 2016 11:29 AM and accepted March 10th, 2016 11:29 AM)」。

どちらかがねつ造だ。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/F751766FCE1F3B45E78DD0AB7363BD#5

このように、拡大し併記すると類似性がわかりやすい。

同じ研究者の別の論文にも「画像(細胞・組織)のねつ造・改ざん」があった。

まず、「2013年のStem Cells Transl Med」論文の書誌情報を以下に示す。2018年8月1日現在、撤回されていない。

【図1A】2016年3月1日に、図1Aの細胞の写真は2008年の論文の図1の再使用だと指摘された「Peer 2: (commented March 1st, 2016 10:55 PM and accepted March 1st, 2016 10:55 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/D4D480B3FC85FF68A139A4004A2C01#1

別の色枠だが、このように、コピペし併記すると類似性がわかりやすい。

★観測データのねつ造・改ざん指摘図:その1

ジョナサン・プルイット(Jonathan Pruitt)の観測データねつ造・改ざん事件から「観測データのねつ造・改ざん指摘図」を示す(出典:ジョナサン・プルイット(Jonathan Pruitt)(カナダ) | 白楽の研究者倫理

ケイト・ラスコウスキー(Kate Laskowski)が、観測データの非常によく似ている数値を同じ色に着色することで「ねつ造・改ざん」と指摘した。出典 → 2020年1月29日のケイト・ラスコウスキー(Kate Laskowski)の記事:What to do when you don’t trust your data anymore – Laskowski Lab at UC Davis

以下の4つの表で、着色した数値が2桁、3桁、そして、4桁まで同じである。勿論、たまたま同じ数値になることはある。いかし、こんなに多数の実験観測値が同じということはあり得ない。

数値をねつ造したと思われる。

表1

表2

表3

表4

●6.【ねつ造・改ざんの根本的に難しい点】

110804-1 カバー表1&背白楽ブログの【執筆方針】は

  • 誰もがインターネットで検証できるように、出典はインターネットの無料サイトの記事に極力限定する。有料のサイト/図書/論文の引用は極力避ける。

なので、自分の書籍も示さないようにしてきた。

それでも、同じ人間だから、今まで何度も同じことを書いてきた。

この6章は(も?)、今までと内容が重複する。ご勘弁願って、自著を引用したい。 → 白楽ロックビル(2011):『科学研究者の事件と倫理』、講談社、東京: ISBN 9784061531413

この本は、10年余りの調査研究を経て、明治7年(1874年)~平成21年(2009年)、136年間の日本の「研究者の全事件」データベースを作り、2011年9月に講談社から、『科学研究者の事件と倫理』を出版した。

以下は。上記の『科学研究者の事件と倫理』と基本的内容(文章もある程度)が同じである。

★「改ざん」と「改善」の区別は困難

どんな研究も、生データをそのまま発表することはない。生データを整理し、考え、計算し、選択し、加工する。このような過程を経て、発表する図表になる。つまり、生データを「改善」するのは、必須であり、推奨される。

しかし、ある種の加工は不正な「改ざん」とみなされる。

実験科学の現場では、不正な「改ざん」と必須な「改善」は紙一重というか、ゴッチャというか、混然一体である。ウウン? 言葉が、既に混然一体?

以下、「白楽ロックビル(2011):『科学研究者の事件と倫理』、講談社、東京: ISBN 9784061531413」の148-150頁をコピペした。

★独創的なアイデアは「ねつ造・改ざん」から生まれる

白楽は、研究の独創的なアイデアは、“ねつ造・改ざん”から生まれる、と考えている。この“ねつ造・改ざん”はネカトのねつ造・改ざんとは若干違うニュアンスもあるが、一括りで「ねつ造・改ざん」としておこう。

研究は創造的な作業で、研究者は独創的なアイデアを生み出し、発表することが求められる。独創的なアイデアは、つまり、今まで誰も考えなかった(発表しなかった)アイデアである。

この「独創的なアイデア」は、ハッキリ言えば、「ねつ造」した結果である。

文部科学省の「ねつ造」の定義は、「存在しないデータ、研究結果等を作成すること」だが、「独創的なアイデア」は、「存在しないアイデアを作成すること」なのである。

研究者は、仕事として、いつも、何か新しい考え方、見方を、つまり「独創的なアイデア」を探求し、わずかなヒントをもとに学説を「ねつ造」する。

その「ねつ造」した学説が理論や実験結果に合わなければ、学説を捨て、また、別の学説をひねり出す(ねつ造する)のである。

アイデアを熟成させる過程では、「存在しないデータ、研究結果等を作成」し、仮想的に作成した「データ、研究結果等」が、学説に合うか合わないかを試す。

合わないならどの部分が合わないのかを見つけ、削り、捻じ曲げ、押しつぶし、いろいろ加工、つまり、「研究活動によっ て得られた結果等を真正でないものに加工する」という「改ざん」を行なうのである。

この「改ざん」作業で、学説の完成度を高めていくのである。

このような、何度も何度も「ねつ造」「改ざん」の工程を織り込んだスパイラルを経て、学説が成長し、確実視できる自然法則が見えてくるのである。

また、次のことも指摘しておきたい。

先ほど、「独創的なアイデア」は、「存在しないアイデアを作成すること」なのである、と書いたが、実は、人間は「存在しないアイデアを作成すること」はできない。

人間は、既にあるアイデアを真似て、加工(つまり「改ざん」)することでしか、新しいアイデアを創ることはできない。全くの「ゼロ」から「1」を生むことはできない。知識、書籍、他人、自然界、外界を見て真似る、観察し何らかのヒントを得る。そういう、切っ掛け、経験という土台が必要なのだ。

白楽は、今までたくさんの研究者の事件を調べてきた。

読者は最初から理解していると思うが、白楽がここで主張している「研究の独創的アイデアは“ねつ造・改ざん”から生まれる」の“ねつ造・改ざん”は、研究不正だと糾弾された「ねつ造・改ざん」とは「動機」の点で次元が異なる。

「動機」の点で次元が異なるが、しかし、行為は同じである。

だから、「研究の独創的アイデアは“ねつ造・改ざん”から生まれる」こともしっかり認識して欲しい。

そして、アナタが、そういう、“ねつ造・改ざん”を巧みに使って、素晴らしく「独創的なアイデア」を生み出して欲しい。

●7.【白楽の感想】

《1》研究記録なし

1章に書いたが、感想としては、《研究記録なし》を重要な研究不正として明記すべきだと思う。

マズ、基本的に考えて、研究には研究記録が必須である。それがない事態、異常である。

白楽の主張は、実質上《研究記録なし》は異常なのだから、研究記録が必須と規則に明記すべきということだ。

《2》担当者が低能

どうして、日本は米国にこんなに劣るんだろう? というのが正直な感想だ。

政府のルールや解説でも、大学のルールや解説でも、日本は水をあけて、米国に負けている。

断っておくが、白楽は外国崇拝者ではない。どちらかと言えば日本中心主義だ。例えば、国連とか外国の賞とか多くの日本人が大好きだったり、信奉するのをヘンに思うし、斜に眺めている。

だから、

  • なんで、ユネスコ世界遺産をありがたるの? 外国の価値観に頼るな! 
  • なんで、ギネス記録? 日本でサントリー記録を作れ!
  • 米国の野球チームの日本人選手、欧州のサッカー・チームの日本人選手、どうしてそんなに日本で大ニュースなの?
  • 世界の大学ランキング、日本でも日本基準で発信しろ(と朝日新聞の編集者に伝えたことがある)。

日本中心主義の傾向はあるが、白楽は、「良いものは良い」を基本にしたい。

「ねつ造・改ざん」でも米国のルールや解説を、米国だからという理由で崇拝する気はない。しかし、事実として、日本は水をあけて、米国に負けている。

米国のルールや解説はウェブで公開されている。日本はそれを単純に学習し、日本に生かせばいい。それが最低線で、それ以上は日本独自の工夫や発展を期待したい。しかし、日本の現実は、その最低線もできていない。日本の当局の担当者・専門家の能力が低い(低能)ということだ。

とはいえ、白楽は、ネカトウオッチャーとして白楽ブログを書いている。だから、世間的には白楽も日本の専門家の1人なので、「担当者・専門家が低能」は自分のことも含めている。自戒している。しかし、ブログで指摘する以外、どうすればいいんだろう?

白楽のように「忖度なしに、意見を言う」教授(名誉教授)は、日本政府や日本の大学では、公式な専門家として政策決定に関与できない。

50代前半に、研究費問題の政府委員を務めたことがある。その時、張り切って活動しようとしたら、委員長から「おとなしくしてろ!」と叱られた。すっかり、やる気をなくした。

利益相反の政府委員になった時は、日本政府の政策決定に関与した気もするが、定かではない。

ただ、ネカトのルールを決める当事者として、日本政府や日本の大学で働いたことはない。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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@Bluesky
@Bluesky
2021年6月15日 3:03 PM

このサイト好きです。いろいろ努力していることを感じる。
【国民の損害額】も面白い

岡山大学教授らの論文はどうなるでしょうね?
https://pubpeer.com/publications/64FCCAB9E4267D5A1DBC8A631F0509
この論文であちこち申請していたと思う、恐らく。一億円を超えてる。

研究代表者:神谷厚範
文部科学省科研費(基盤A、2020-2025)
研究題目:システム自律神経制御による、がんと高血圧の神経医療の開発
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H00666/
44,460千円
日本医療研究開発機構(AMED、2020-2021)
システム自律神経制御による異分野融合新規がん治療の開発
https://research-er.jp/researchers/view/141176
16,500千円
文部科学省科研費(萌芽、2020-2022)
研究題目:癌組織等の末梢神経線維終末動態の生動物2光子イメージング・MEMS神経マシン解析
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K21897/
6,500千円
キヤノン財団 (第11回研究助成、2020-2022)
研究助成プログラム「新産業を生む科学技術」
研究題目:がん組織の神経を操作してがんを抑制するがん神経医療の創出
https://www.canon-foundation.jp/aid_awardees/awardees_11.html
20,000千円
武田科学振興財団(2020年度 研究助成)
研究題目:がん組織に分布する神経を操作してがん進展を抑制する、がん神経医療の開発
https://www.takeda-sci.or.jp/business/doc/2020_list.pdf
10,000千円
中谷電子計測技術振興財団(令和2年度 中谷賞、技術開発研究助成)
研究題目:がん組織等の自律神経動態のMEMS神経マシン・2光子蛍光イメージング解析
https://www.nakatani-foundation.jp/news/grantlist2020/
30,000千円

計:100,460千円

sasaki
sasaki
Reply to  @Bluesky
2023年2月27日 1:58 PM

神谷氏のresearchmapにはその例の論文は載っていません。関与した論文を全て載せないといけない規定はないのかもしれませんが、Nature Neuroscienceに掲載されたせっかくの大仕事が載っていないのは奇妙です。