ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)(米)改訂

ワンポイント:韓国出身で米国でねつ造し、裁判で4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)

旧版:2015年2月26日

【概略】
hanドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han、写真出典)は、韓国に生まれ育ち、米国・アイオワ州立大学(Iowa State University)・助教授になった。専門はエイズワクチンの開発だった。

2012年(55歳)に、最初の研究ネカト論文を発表した。そのねつ造が発覚し、大学を解雇され、 2014 年6月(57歳)に逮捕された。

2015年7月1日(58歳)、アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所で、4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)、刑期終了後の3年間の保護観察が科された。

「国際ビジネス・タイムス(ibtimes)」誌が選んだ2013年度・7大科学スキャンダルの第4位である(7 Scientific Scandals Of 2013: From A Retract)。
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中央がドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)。手前はハンの国選弁護人・ジョー・ヘロルド(Joe Herrold)。写真(Charlie Neibergall/AP/PA)出典

  • 国:米国
  • 成長国:韓国
  • 研究博士号(PhD)取得:
  • 男女:男性
  • 生年月日:1957年月日。仮に、1957年1月1日生まれとする
  • 現在の年齢:67 (+1)歳
  • 分野:エイズワクチン開発
  • 最初の不正論文発表:2012年(55歳)
  • 発覚年:2013年(56歳)
  • 発覚時地位:アイオワ州立大学(Iowa State University)・助教授
  • 発覚:公益通報
  • 調査:①アイオワ州立大学・調査委員会。②研究公正局。~2013年12月23日。③裁判所。~2015年7月1日
  • 不正:ねつ造
  • 不正論文数:1報
  • 時期:研究キャリアの後期から
  • 結末:解雇。刑務所。罰金

【経歴と経過】

  • 1957年月日:韓国で生まれる。仮に、1957年1月1日生まれとする
  • 19xx年(xx歳):韓国(?)のxx大学で研究博士号(PhD)取得
  • 1999年(42歳):韓国・延世大学(Yonsei University)・医学部・生化学教室の教員(または研究員)として在籍していた
  • 2001年(44歳):米国・NIHの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の分子微生物学研究室のマイケル・チョー(Michael Cho)研究室の研究員として在籍していた
  • 20xx年(xx歳):米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)のマイケル・チョー(Michael Cho)研究室の研究員(助教授?)
  • 2009年(52歳):米国・アイオワ州立大学のマイケル・チョー(Michael Cho)研究室・助教授
  • 2013年(56歳):不正研究が発覚する
  • 2013年秋(56歳):アイオワ州立大学・調査委員会が報告書を公表
  • 2013年10月4日(56歳):アイオワ州立大学を解雇
  • 2013年12月23日(56歳):研究公正局が調査報告書を公表
  • 2014 年6月(57歳):逮捕され、アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所で裁判
  • 2015年1月16日(58歳):司法取引し、有罪を認めた
  • 2015年7月1日(58歳):アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所で、4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)、刑期終了後の3年間の保護観察が科された

150217 aidsre連邦裁判所を出たハン。写真出典 (AP)

【不正発覚・調査の経緯】

150217 Cho%20Bio%20Pic2009年、ハンは、米国・アイオワ州立大学のマイケル・チョー教授(Michael Cho、写真出典)の研究室で、エイズワクチンの開発研究をしていた。

マイケル・チョー教授は、1994年、ユタ大学(University of Utah)で研究博士号(PhD)を取得した。途中の経過を省くが、2001年、NIHの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の分子微生物学研究室(Laboratory of Molecular Microbiology)に在籍(室長?)していた。その時、ハン(44歳)は自分より若いチョーの部下(?)として、チョー研究室で研究していた。

2009年、チョーはオハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)からアイオワ州立大学に栄転した。この時、ハンは、チョーに随伴して、助教授になった。2人は、約15年、一緒に研究してきた。

2010年、ハンは、エイズウイルス(HIV-1)のgp41糖タンパク質の一部であるgp41-54ペプチドを用いてエイズワクチンの開発に成功したと発表した。

つまり、gp41-54ペプチドを抗原としてウサギに注射し、エイズの抗血清をウサギに作らせた。この抗エイズ血清は、広範なエイズウイルスに反応し、エイズウイルスの働きを阻害した。画期的なことは、この方法をヒトに適用し、ヒトのエイズワクチンとして応用できることだった。

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エイズウイルス。写真出典 Credit: National Institute of Allergy and Infectious Diseases

2010年~2012年、この研究成果を研究室ミーティングでなんども発表し、全米のシンポジウムや国際シンポジウムで7回発表した。

2012年9月13日、論文を「Retrovirology」誌に発表した(Retrovirology 2012, 9(Suppl 2):P362 doi:10.1186/1742-4690-9-S2-P362)。ハンが第一著者である。フル論文ではなく、学会のポスター発表要旨である。

  • Eliciting broadly neutralizing antibodies against HIV-1 that target gp41 MPER.
    Han D, Habte H, Qin Y, Takamoto K, LaBranche C, Montefiori D, Cho MW.
    Retrovirology. 2012;9(Suppl 2):362. doi: 10.1186/1742-4690-9-S2-P362. http://www.retrovirology.com/content/9/S2/P362.

一方、マイケル・チョーは、政府・NIHの研究費を何年にもわたり獲得し、その総額は1900万ドル(約19億円)に及んでいた。その内、ハンが貢献した研究成果により、エイズワクチン開発が有望とみなされて獲得した額は約1000万ドル(約10億円)だった。NIHの研究課題番号は、P01 AI074286-03、-04、-05、-06;R33 AI076083-04;U19 AI091031-01と-03; R01 AI090921-01である。

しかし、上記したウサギ抗エイズ血清は、実は、驚いたことに、エイズウイルスに反応しなかったのである。これは、確実に、大きなスキャンダルである。

ハンは、検査する時に、エイズウイルスに反応することが知られているエイズ患者の抗血清、あるいは、ウサギの抗HIV-1 gp120・抗血清(これもエイズウイルスに反応することが知られている)を、自分が造ったウサギ抗エイズ血清に意図的にまぜていたのだった。

抗血清はウサギ由来でもヒト由来でも見た目には全く区別がつかないし、混ぜても何ら異常なことは起こらない。だから、一見、ヘンな操作がされたとは誰も気が付かない。

ハンの話だと、2009年8月11日、共同研究者に自分が作成したウサギ抗エイズ血清のサンプルを送った時、後で、間違えたことに気が付いた。これが、最初で、すべての出発だとハンは述べている。

実験室では、エイズウイルスに反応することが知られているエイズ患者の抗血清、また、ウサギの抗HIV-1 gp120・抗血清(これもエイズウイルスに反応することが知られている)を頻繁に扱っている。自分が造ったウサギ抗エイズ血清に、何かの折に間違えてエイズ患者の抗血清の一部を混入してしまった、とハンは言う(真偽は不明ですが・・・。普通は意図的な混入しかあり得ない)。

しかし、間違いと気が付いた時、既に、共同研究者は、その間違い抗血清で画期的なデータをだしていて、研究結果に大興奮していた。ハンは、今さら、間違いでしたと、チョー教授に伝えることができなかった。

そして、それ以後、問題が発覚するまでの数年間、ウサギ抗エイズ血清を意図的に細工するようになった、とハンは述べている。

当然、他の研究者からは、発表論文が追試できない、とクレームがついた。

科学的な常識を述べれば、ウサギ抗エイズ血清にヒト血清が混入しているかどうかは、その気になれば、簡単に判定できる。

2013年1月、ハーバード大学の研究者がデータねつ造ではないかと公益通報した。

アイオワ州立大学は、研究担当副学長補佐で研究公正官(Research Integrity Officer )のシャーロット・ブロンソン(Charlotte Bronson)を軸に調査委員会を設け、調査した。

2013年8月、調査委員会は、ハンがデータをねつ造したと特定した。

2013年秋、ハンは、大学に手紙を書き、データねつ造を自白した。「ねつ造は2009年頃から始めました。研究結果がよりよく見えてほしかったのです。ねつ造は自分一人で行ないました。私が愚か者でした。ひきょう者で、素直ではありませんでした」。

アイオワ州立大学・調査委員会は、ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)がデータをねつ造し、そのねつ造を単独で行なったと発表した。上司・マイケル・チョー教授(Michael Cho)は無罪となった。

150217 1396378995000-michael-cho-and-team-pic前列右がドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)。前列左はマイケル・チョー教授(Michael Cho)。写真出典 (Photo: Iowa State University)

★逮捕と裁判

2014 年6月(57歳)、ハンは逮捕され、アイオワ州南地区の米連邦検事であるニコラス・クラインフェルド(Nicholas Klinefeldt)がハンを起訴した。有罪なら、1件当たり、最高5年の刑務所での服役および25万ドル(約2,500万円)の罰金になるのが、4件あった。

アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所で、裁判が行われた。

ハンはデータねつ造で、政府・NIHから1900万ドル(約19億円)の研究費の助成を受けていたが(書面ではチョー教授が受けていた)、申請書類の内容が虚偽だったのだ。

800px-Sen_Chuck_Grassley_official[1]この裁判と訴追の裏には、アイオワ州選出の共和党の上院議員・チャック・グラスリー(Chuck Grassley、写真出典)の動きがあった。グラスリー上院議員は医療詐欺・研究不正の処罰に熱心な議員である。

グラスリー上院議員は、ハンに支給した研究助成金を政府は取り戻すことができるかとNIHに質問した。

2014 年5月9日、NIH所長のフランシス・コリンズ(Francis Collins)は、グラスリー上院議員に次のように回答した。

「研究助成金の中からアイオワ州立大学がハンの給料として支払った496,832ドル(約4,968万円)は返還すべきですと、アイオワ州立大学に伝えてあります。ただ、アイオワ州立大学以外の最近の事件では、研究費の返還を要求していません」。

そして、アイオワ州立大学・相談役のポール・タナカ(Paul Tanaka)は、496,832ドル(約4,968万円)を政府に返還したと述べた。

ハンは、大学を解雇された後、オハイオ州に住んでいたが、交通事故で負傷し、裁判が最初の予定より遅れた。

2014年7月(57歳)、ハンは、アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所に出頭し、4件の罪に対し無罪を主張した(AIDS Scientist Dong-Pyou Han Pleads Not Guilty To Faking Study)。

しかし、もし有罪なら、1件あたり、最高5年の刑務所での服役および25万ドル(約2,500万円)の罰金になる。4件とも有罪なら、最高20年の刑務所での服役および100万ドル(約1億円)の罰金が科せられる可能性がある。

保釈金を払い、ハンは保釈された。次回の審理は2014年9月2日に予定された

★4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)

2015年1月16日(58歳)、ハンは、司法取引(plea agreement)し、有罪を認めた。司法取引の内容は2015年1月21日時点では公表されていなかった(2015年1月21日の記事:Former ISU researcher to plead guilty in federal court – Iowa State Daily: Academics)。

法廷文書によると、ハンは、保釈中の身だが、その後しばらく、健康上の理由で、アイオワ州まで運転してくることができず、司法取引の裁判記録が作成できなかったとある。

2015年2月15日、裁判記録が作成された(PDF)。

ハンの国選弁護人・ジョー・ヘロルド(Joe Herrold)は、ハンのために優秀な韓米語通訳者を探す時間と、その韓米語通訳者が韓国から米国に来る経費はハンが支払うのだが、その適切な値段の飛行機をさがす時間を要求した。

2015年3月2日(58歳)、審理再開した(推定)。

2015年7月1日(58歳)、審理の結果、結局、アイオワ州デモイン(Des Moines)の連邦裁判所で、4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)、刑期終了後の3年間の保護観察が科された。裁判記録:判決(PDF

ハンの国選弁護人・ジョー・ヘロルド(Joe Herrold)は、「ハンは法的には米国永住権を持っているが、刑期を終えたのちは、韓国に強制送還され、2度と米国に入国できないだろう。ハンの妻と2人の子供は米国国籍を持っているので、別居することになるだろう」と述べている。
150217 B9315895166Z_1_20150116173131_000_GS29MPI98_1-0左はハンの国選弁護人のジョー・ヘロルド(Joe Herrold)、中央はドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)。2014年7月、写真出典(Photo: Associated Press file photo)。

★「Nature」の記事【主要情報源④】

研究ネカトで刑事訴追されるのは稀である。

研究公正局の元・科学調査官であるアラン・プライス(Alan Price)は、「ハンのように悪質度が“中”の研究ネカトで刑事訴追になるのは異常である。そもそも、ほとんど研究ネカトは、刑事訴追が望ましいとは思えない。今回は、グラスリー上院議員が研究ネカト問題を深く憂慮していて、何とかしたいと思っていたのだろう」と述べている。

米国政府各省庁のほとんどの研究助成機関〈科学庁(NSF)を含む〉は、監察官(inspector-general)がいる。監察官は研究ネカトを含む「研究上の不正行為」を調査する権限を持っている。また、監察官は研究助成金を引き戻したり、受領を差し止めたり、刑事訴追に持ち込むことが可能である。

ところが、健康福祉省だけは、権限が分散していて、研究公正局には調査権+アルファしかない。調査の結果、クロの場合、研究費を数年間、申請不可にできるだけである。研究公正局として、研究助成金を引き戻したり、受領を差し止めたり、刑事訴追に持ち込むことはできない。刑事訴追に持ち込むには、司法省または健康福祉省の監察官(inspector-general)に依頼するしかない。

そして、健康福祉省の監察官(inspector-general)は医療詐欺事件で手一杯で、研究ネカト事件を処理する余裕はない。

もっとも、研究公正局の前局長のデヴィッド・ライト(David Wright、写真出典)は、研究ネカトの刑事訴追に否定的である。「刑事訴訟するメリットはなんなのでしょう。はっきりしません。研究ネカトでクロなら、研究費の申請が数年間できないペナルティが従前より科されています。そのペナルティで研究者としてのキャリアは終わります。申請不可以上のペナルティとして刑事訴訟し、刑務所に投獄した時、さらに何が得られるのでしょうか? 疑問です」。

【論文数と撤回論文】

2015年7月12日現在、パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)の論文を「Han D[Author]」で検索すると、4,261論文がヒットした。数字の多さから、大半は、他の人の論文だろう。

2015年7月12日現在、撤回論文は1報のみである。

2012年9月13日の1論文(Retrovirology 2012, 9(Suppl 2):P362 doi:10.1186/1742-4690-9-S2-P362)を2014年2月6日に撤回している。とはいえ、この論文はフル論文ではなく、学会のポスター発表要旨である。

【白楽の感想】

《1》成功の誘惑

以下は憶測である。

ハンは、韓国に生まれ育ち、韓国の大学で研究生活を送り、40歳を過ぎてから渡米し米国・研究機関の研究者になった。母国の両親・親戚・友人は、世界的に大活躍していると思っていたに違いない。しかし、50代になっても助教授で、学問の成果はさほどない。自分のボスは年下である。徐々に精神が歪んできた。

ねつ造が発覚した時、「最初は、間違えて血清を混ぜてしまった」と述べているが、これは言い訳だろう。最初から、後先考えずに、華々しい研究人生を夢見て、意図的に混ぜたに違いない。

しかし、コトは甘くはなかった。この手のデータねつ造はどう考えてもバレる。エイズワクチンの開発に成功すれば、ワクチンはモノ(物質)なので、モノがなければ不審に思われる。そしてモノがない。代用品はきかない。バレた。

当面バレないように、意図的に抗血清を混入し続けた。ワクチン開発に成功したと嘘をつき通すため、意図的に混入した抗血清を使い続けた。それで、研究成果をねつ造データで塗り固め、負の連鎖泥沼に陥ったのだろう。

このような研究ネカトをどう防げるか?

マイケル・チョー教授は、上司とは言え、ハンは助教授で独立した研究者だ。実験ノートをもってこさせてデータをチェックするのは難しい。もしもってこさせても、この場合、データは既にねつ造実験のデータなので、実験ノートをチェックしても不正を見つけることができない。

今回の件は他の研究室が追試できなかったことから調査が入った。本人がねつ造を自白しているから、ねつ造が明るみに出ているが、一般的に、追試できない研究結果はヤマほどあり、その大半は研究ネカトではない。単なる「間違い」や「思い違い」である。どう考えても研究ネカトしかないと思えるケースでも、多くの場合、本人は自白しない。そうなると、研究ネカトと断定するのはとても困難である。

とはいえ、15年以上、一緒に研究してきたマイケル・チョー教授にも何らかの責任があるだろう。

《2》生きていけるか?

以下も憶測である。

ハンは、健康に問題がある。研究職への復帰はあり得ない。裁判に巨額のお金を使った。そして、判決は、4年9か月の実刑、罰金720万ドル(約8億6千万円)、刑期終了後の3年間の保護観察が科された。

ハンの国選弁護人・ジョー・ヘロルド(Joe Herrold)は、「ハンは法的には米国永住権を持っているが、刑期を終えたのちは、韓国に強制送還され、2度と米国に入国できないだろう」と述べている。

この状態で、58歳のハンが生きていくのは大変だろう。支えてくれる家族・親族・友人と資産の両方が十分であっても、仕事・夢・生きがいを見つけるのは大変である。

資産が不十分で、しっかり支えてくれる家族・親族・友人がいなければ、白楽なら自殺してしまうだろう。

《3》刑事訴訟

白楽の意見は、日本でも研究ネカトを刑事訴訟すべきだと思う。

多くの事件では、何億円もの公金を無駄に使って、意図的に研究ネカトをしている。研究ネカトで増やした論文を業績とし、本来、他の研究者が採用・昇進したはずの地位・名声を不当に奪っている。研究ネカト行為は、自分の利益のためだけに社会を不幸にさせた、まったく自己本位な行為である。

日本は処分が甘すぎる。

デヴィッド・ライトは「研究費の申請が数年間できないペナルティ」で十分だと主張しているが、これは日本ではまったく機能しない。それは、日本の制度を作った人も十分承知しているはずだ。

デヴィッド・ライトは「刑務所に投獄した時、さらに何が得られるのでしょうか?」と疑問視しているが、日本では、刑罰を与えることが最大の抑止力になる。実名で報道する「報道刑」もかなりの脅威を与える。

研究ネカトは多くの場合、故意犯である。故意犯に対して、刑罰を与えなければ、どうやって研究ネカトを防止できるのだろう。さらに言えば、「目には目を」では足りない。「目には目と耳を」の2倍罰にすべきだ。5千万円の研究費不正なら2倍の1億円を返金してもらう。

【主要情報源】
① 「論文撤回監視(Retraction Watch)」記事群:dong-pyou han Archives – Retraction Watch at Retraction Watch
② ◎2014年7月2日、デビィト・ピット(David Pitt)の「Huffington Post」の記事:AIDS Scientist Dong-Pyou Han Pleads Not Guilty To Faking Study
③ ウィキペディア英語版:Dong-Pyou Han – Wikipedia, the free encyclopedia
④ 2015年7月1日、サラ・リードン(Sara Reardon)の「Nature」の記事:Nature 523, 138–139 (09 July 2015), DOI: doi:10.1038/nature.2015.17660:US vaccine researcher sentenced to prison for fraud : Nature News & Comment
⑤ 2013年12月23日、研究公正局:Case Summary: Han, Dong-Pyou | ORI – The Office of Research Integrity
⑥2013年12月23日、Federal Register: Federal Register | Findings of Research Misconduct
⑦ トーマス・オドンネル(Thomas R. O’Donnell)の記事:ISU research fraud probe staked out faked results | Iowa Science Interface
⑧ 2013年12月23日、トニー・リーズ(Tony Leys)の「Des Moines Register Staff Blogs」の記事:ISU researcher quits amid allegations of AIDS-research fraud involving millions of federal dollars | Des Moines Register Staff Blogs
⑨2014年10月21日、デビィト・フィッツパトリック(David Fitzpatrick)とドリュー・グリフィン(Drew Griffin)の「CNN」の記事。【動画あり】:Government prosecutes alleged scientific fraud on AIDS research – CNN.com
⑩ 3頁しか見れないが資料:

2013-10-15.Inquiry Report – Redacted – Reduced Size