1‐4‐9.韓国の研究ネカト問題

2016年11月23日掲載。

ワンポイント:韓国の研究ネカトは社会構造・文化・慣習・価値観に深く絡まっている。これらを断ち切る熱意、未来に向けて強力に改善する動き、が感じられない。

【追記】
・2019年10月11日(金)の「レコードチャイナ」記事:韓国で大学教授による論文不正が頻発も半数近くは罰受けず、その理由は―韓国メディア

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語記事
3.英語記事
4.多角的視点
5.白楽の感想
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●1.【概略】

★全体

  • 日本を標準として、研究倫理を比べると:①とても良い、②良い、③日本と同等、④悪い、⑤とても悪い。
    理由:学歴詐称者が学術職に在職している
  • 世界的なレッテル:「盗用天国」、「韓国の文化人・芸術人の80%は学歴詐称」
  • 国家管理組織:なし
  • 最近10年間の研究ネカト者数(2007-2016年):約110人? 2015年の11件を10倍した。2015年の盗用教授200人は入れていない。
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https://www.youtube.com/watch?v=VVUXIXsYuZc

★有名な事件と改革の契機

●2.【日本語記事】

★2007年2月20日:東亜日報「剽窃、世界大学では通じない」

出典 → 剽窃、世界大学では通じない : 東亜日報保存版)、の選択引用です。

中学3年の時、米国バージニア州に家族と共に移民に行った金某(22)氏は、04年、バージニア大学に入学した。彼は卒業後医大に進学するため、昨年春、化学の講義を受講した。友人の実験報告書から3、4つの文章を書き写して宿題を提出したが、たいした問題ではないと思っていた。

しかし、担当教授は剽窃のくだりを正確に指摘し、「絶対にしてはいけないタブーを破った」と言って、金氏を懲戒委員会にかけた。無期停学の処分を受けた金氏は、他の大学への編入もできなかった。米国の大学では剽窃事実が成績表に残るからだ。

学校側に手紙で何回も許してくれるように訴えているが、学校側はまったく動じない。金氏のある友人は、「彼は挫折感にさいなまれて韓国人の友だちとも連絡を絶っている」と語った。

金氏だけではない。外国で他人のものを剽窃して大恥を書く韓国人が少なくない。

グローバル時代を迎え、世界各国で活動している韓国人たちは剽窃に関するグローバル・スタンダードとは程遠く、国際的にも大恥をかいている。これは個人の問題ではない。彼らは小さい時から剽窃防止教育を受けていない「剽窃共和国」韓国社会が生み出した被害者でもある。

今や、韓国も「剽窃共和国」という汚名を返上すべきだ。剽窃をしたら胸を張って世界を歩き回れなくなった時代だ。剽窃の規定を見直し、実質的な教育を通じて、剽窃を追放しなければならない理由はこれで明白だ。

【白楽の感想】

2007年の東亜日報の記事が韓国を「剽窃共和国」と指摘したのに、10年経過した2016年現在、韓国は、いまだに「盗用天国」のままである。改善点の指摘は、ナンだったのだろう?

★2014年9月8日:高橋真理子|WEBRONZA「クローンES細胞論文を捏造した黄禹錫博士の「復活」」

出典 → クローンES細胞論文を捏造した黄禹錫博士の「復活」 – 高橋真理子|WEBRONZA – 朝日新聞社保存版

2014090400011_7今年に入り、韓国の論文捏造事件の主役・黄禹錫(ファンウソク、写真出典同 黄禹錫ソウル大教授=2005年11月24日、ソウル市内、東亜日報)元ソウル大学教授の報道が相次いでいる。ネイチャー2014年1月14日号の記事のタイトルは「クローニング・カムバック」、サイエンス1月17日号の記事は「ザ・セカンド・アクト(第二幕)」。いずれも、青い手術着姿の近影を載せ、一度は表舞台を去った博士の復活を伝えている。

ネイチャーに掲載された年表は「上昇、転落、そして上昇の黄禹錫」の題がついている。ソウル大学教授だった博士は、2004年にヒトクローン胚から胚性幹(ES)細胞をつくったとサイエンスに発表。05年5月、さらに11の細胞株をつくったと主張する第二論文を発表した。

中略

ソウル大調査委員会は06年1月に「クローンES細胞は存在せず、データは捏造だった」と認定した。

博士はソウル大学を追われ、政府から与えられた名誉はすべて剥奪された。研究費詐取や生命倫理法違反の疑いで起訴もされた(今年2月に最高裁で懲役1年6ヶ月、執行猶予2年の判決が確定)。

【白楽の感想】

韓国であれほど大事件となったネカト研究者が、研究者として復活できてしまう。研究ネカトをしても、結局、許されると韓国人研究者は受け取るだろう。

不正をしてでも、とにかく偉くなり、見つかれば、見つかった時だ。処分されても、復活の道はある。これでは、調査しペナルティを科す意味が激減する。根本的にマズイ。

★2015年11月25日:河鐘基の日刊サイゾー記事 「表紙をすり替えて内容を丸パクリ! 韓国“盗作疑惑”で大学教授200人が一斉にクビ!?」

出典 → 日刊サイゾー / 2015年11月25日
表紙をすり替えて内容を丸パクリ! 韓国“盗作疑惑”で大学教授200人が一斉にクビ!?- 記事詳細|Infoseekニュース (保存済)

韓国の大学が、過去に例を見ないスキャンダルに揺れている。韓国検察は24日、全国50大学の教授200人を立件したと発表した。問題になったのは本の盗作。教授らは、他人の本の表紙だけをすり替え、自らの著作として出版していた罪に問われている。

200人の教授たちの中には有名大学の講師や、人気や知名度を集める教授も大勢名を連ねている。一部には同じ方法で3~4冊もの本を出版した教授や、金銭的な報酬と引き換えに著作の中身だけを売る大学関係者もいた。

今回の摘発を受け、教授ら200人は大学を一斉に解雇される可能性がある。というのも、韓国の大学では、論文盗用などの罪で法廷から罰金300万ウォン(約30万円)以上の罰則を言い渡された教授については、基本的に雇用しないという方針となっているからだ。

実はこの表紙すり替えは、1980年代以前からすでに蔓延し始めていたそうだ。当時はそれが事件化しにくかったという時代背景もあり、現代まで脈々と受け継がれていた。

韓国の私立大学では、国内で本を1冊発刊すると教授の研究実績表に5点が加算されるが、一方、韓国学術引用索引のデータベースに登録される論文を書いたとしても3点しか加算されない。地道な研究よりも、目立つ本を出したほうがメリットは高く、かつパクリが蔓延していさめる人もいないとなれば、ある意味、当然の帰結なのかもしれない。

【白楽の感想】

唖然とする事件です。韓国は、将来のためにも、200人の教授を解雇すべきです。

もちろん、この事件の英語報道もある。2015年11月25日:Rishi Iyengarの「TIME」記事「韓国の教授200人が盗用」 → 200 South Korean Professors Charged in Massive Plagiarism Scam | TIME 保存版

★2016年2月14日:Record China「韓国、博士号取得後に就職した人の4割が非正規職」

出典 →  韓国、博士号取得後に就職した人の4割が非正規職=韓国ネット… – Record China (保存版

韓国職業能力開発院のソン・チャンヨン専任研究委員が2014年8月と15年2月に博士号取得者9259人を対象に実施した調査によると、就職しているか就職が内定している人は76.4%にとどまった。20.3%はまだ就職が決まっておらず、3.3%は留学準備や育児などで求職する予定がないという。

実際に就職した人でも、正規職は60.2%にすぎず、時間講師など雇用条件が相対的に劣悪な非正規職が約40%に達し、就職の質が低下している。

【白楽の感想】

博士号取得者の就職率76.4%が他国と比べて高いのか低いのか、最近の状況を白楽は把握していない。就職率が研究ネカトの発生にどのような影響があるのかデータや分析はないが、大きく関係するだろう。

それに、博士号取得後に就職した人に限っても、その4割が非正規職という状況も他国と比べて高いのか低いのか、最近の状況を白楽は把握していない。しかし、この数値も研究ネカトの発生に大きく関係するだろう。

★2016年6月20日:チョン・ミングン韓国研究財団理事長「魚1匹が水を濁らせる研究費不正」

出典 → 【コラム】魚1匹が水を濁らせる研究費不正=韓国(中央日報日本語版)保存版

幹細胞事件の後、韓国の研究倫理が制度化されて10年経過した。今では研究界・教育界で高い倫理性を要求することに対して誰も異議を唱えないほど雰囲気が変わったのは望ましい。

しかし研究開発(R&D)分野の不正はまださまざまな形で存在する。偽造・変造・ひょう窃など研究不正行為や研究費不正執行などがその例だ。財団の過去3年間の年平均支援課題数およそ2万件に比べると、研究不正は昨年の場合11件と、0.1%にもならないほど少ない。しかし重要なのは「一魚濁水」という言葉があるように、少数の過ちで研究界が揺れることがあり、これはさらに韓国社会、国家の問題になることもあるという問題意識を共有するところにある。

米国の場合、研究不正当事者は関連学会にも出席できない雰囲気であり、参加しても同僚教授から冷たい視線を向けられる。しかし韓国は交通罰則金を支払うように運が悪い人が引っかかるというレベルで考える。学会で会っても「キム教授、最近は苦労が多いですね」という程度だ。

【白楽の感想】

韓国研究財団理事長という韓国研究界の偉い人が事実誤認をしている。感覚がズレている。

「研究不正が0.1%にもならないほど少ない」。そうではないでしょう。不正行為はこの10倍以上起こっているけど、発覚できていない、クロと判定していないからです。つまり「必見」「必罰」とは程遠い現状だからで、そのことにもっと焦点を当てないと、見当外れも甚だしい。

「米国の場合、研究不正当事者は関連学会にも出席できない雰囲気であり」。何を言っているのですか? 米国では、研究不正者は学術界から排除されます。学会出席できない雰囲気レベルの話ではありません。

●3.【英語記事】

★公表日不明:Turnitin「韓国の学生10人のうち4人が盗用」

出典 → Turnitin – Four out of ten South Korean students has plagiarised保存版

韓国の学部生370人にアンケート調査を依頼し、約300人から回答を得た。

10人のうち4人がインターネット上のコンテンツをコピー・ペーストして自分の研究のように大学にレポート提出したことを認めた。

5人のうち1人しか、大学は盗用に対して真剣に取り組んでいると思っていない。

自分の所属する大学のガイドラインは他人の研究を正しく引用する方法を明確に示していないと約70%の学生が感じている。

ターンイットイン(Turnitin)のアドバイザーであるジル・ロウエル(Gill Rowell)は、「学生は、盗用や研究ネカトに該当する行為について妥当なレベルの知識を持っている。ところが、大学が盗用の適切な規則・ガイダンスを持っていない」と述べている。

【白楽の感想】

学生の4割が盗用する。この盗用率の高さに愕然とする。大学が盗用に対して真剣に取んでいないことにも愕然とする。

大学の規則・ガイドラインは、韓国社会・韓国文化として盗用を許容していることを反映しているのだろう。

早急に大改革すべきだ。そうしないと、研究(者)の信用が失墜する。一度失墜すると、回復には相当の年月がかかる。

韓国社会はいろいろな領域・階層で腐敗まみれなのだろうか? → 【コラム】韓国型腐敗は何が問題か(1) | Joongang Ilbo | 中央日報保存版

★「韓国の盗用問題」の記事はたくさんある

  1. 2012年4月13日:「Korea Times」記事:Plagiarizers‘ paradise保存版
  2. 2012年6月7日:「Learning English」記事:The Problem With Plagiarism in South Korea保存版
  3. 2013年7月28日:Sabrina Hillの「SEOULfi」記事:Busted! Academic Integrity and Plagiarism in South Korea | SEOULfi保存版
  4. 2014年8月31日:David Volodzkoの「Diplomat」記事:Korea’s Plagiarism Problem | The Diplomat保存版
  5. 2014年9月11日:Song Jung-aの「Financial Times」記事:Plague of plagiarism tarnishes South Korea’s credibility(保存版)

●4.【韓国の研究倫理を多角的にみる】

★政府の研究倫理確立の努力

  • 組織:国家的調査機関はない。研究助成機関の韓国研究財団(NRF:National Research Foundation of Korea)が活動している(らしい)
  • 政策と予算等:
  • 法律・ガイドライン:
  • 時効ルール:
  • 直面している問題、改善しようとしている点:
  • 政策、システムの特徴:

★研究助成機関の研究倫理ガバナンス

  • 組織:
  • 政策と予算等:
  • 法律・ガイドライン:
  • 研究倫理への研究助成:韓国研究財団(NRF:National Research Foundation of Korea)が、研究倫理政策研究プロジェクト「主要先進国の研究倫理政策とガバナンス研究」を支援
  • 直面している問題、改善しようとしている点:
  • 政策、システムの特徴:

★大学・研究機関の研究倫理ガバナンス(研究倫理教育は別項目)
大学・研究機関が調査と処分の主役

  • 組織:
  • 政策と予算等:
  • 法律・ガイドライン:
  • 博士論文のネカト:「博士号は教育科学技術部(教科部)の指針に従って5年以内の不正行為に対してのみ取り消すことができる」(2013年2月21日記事:許泰烈氏、論文盗用を謝罪 : 東亜日報保存版))。
  • 研究倫理官:いない
  • 研究ネカト調査の透明性:
  • 研究ネカト調査報告書のウェブ公開・保存:
  • 研究ネカト者の実名報告:匿名もかなりある。実名率不明
  • 研究ネカト者の処分:学術界から排除しない。処分は日本より甘い
  • 直面している問題、改善しようとしている点:
  • 政策、システムの特徴:

★学術誌の研究倫理ガバナンス
学術誌に重要な機能なし

★学会の研究倫理ガバナンス
学会に重要な機能なし

★研究ネカトの研究者・専門家・ハンター・ブロガー

  • 育成システム:ない
  • ネカト研究を専門とする大学教員・研究者数:いない?
  • ネカト学会:ない
  • ネカト・シンポジウム:ない
  • ネカト・ハンター:いない?
  • ネカト・ブロガー:いない?

★研究ネカトのニュース・メディア

  • 記者育成システム:
  • ニュース・メディアの具体例:日本語版で判断すると、中央日報、朝鮮日報の新聞は、研究ネカト事件を詳細に記述し、日本の新聞記事より優れている。

★研究倫理教育

  • 組織:国家研究開発事業等に関しての規程33号で研究開発国専門教育機関に指定されている‘国家科学技術人材開発院(http://www.kird.re.kr/front/portal/main/Main.jsp)というウェブサイトに人文社会学のための研究倫理(研究員用・研究責任者用)、理工系のための研究倫理(研究員用・研究責任者用)のイーラニング過程が開設されています(キ厶・チイン助敎授)
  • 選択・必修:私が属している大学は修士論文を書く時に上記のサイトでオフライン教育を受け確認書を出す、また最終論文を出す前に指定した類似度検査プログラムを利用してその確認書を出す(キ厶・チイン助敎授)
  • 政策と予算等:
  • 直面している問題、改善しようとしている点:
  • 政策、システムの特徴:

●5.【白楽の感想】

《1》全体

  • いろいろなことが、日本とよく似ている。①処分が甘い。②匿名報道する。
  • 新聞記事は日本より格段と優れている。米国の新聞と似ていて、記者は取材し、事件を詳しく記述する。
  • 研究倫理の意識・価値観から抜本的に改革しないと、欧米先進国から研究結果や論文が信用されなくなる。また、欧米に留学した院生が相変わらず盗用事件を起こし、欧米で研究する韓国人ポスドク・研究者が、欧米でネカト事件を起こすでしょう。
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