材料工学:西村 俊弥(Toshiyasu Nishimura)、ジョセフ・ラジ・ザビエル(Joseph Raj Xavier)(物質・材料研究機構)

2025年1月22日掲載最初 随時更新 【進行中/終了】

「パブピア(PubPeer)」で、物質・材料研究機構の新構造材料センターに所属する(していた)研究者たちの共著論文7~8報に、重複画像(データねつ造、自己盗用)が指摘されております。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.最終評価
2.通報・経緯
3.各段階の評価
4.疑惑者
5.疑惑論文
7.白楽の感想
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記述は敬称略。

●1.【最終評価】

★ステップ

進行中/終了】
発覚 → 通報(allegation) → 通報対応 → 告発判断(assessment) → 予備調査(inquiry) → 本調査(investigation) → 認定(finding) → 行政措置(懲戒処分など)の裁定(adjudication) → 不服申立て(appeal)

★白楽の最終評価とコメント終了時に記述する

 

物質・材料研究機構。元写真出典:https://www.nims.go.jp/

●2.【通報・経緯】

★通報

今回は、「パブピア(PubPeer)」案件なので、著者は既に疑惑が指摘されたことを知っているはずである。

―――以下は白楽と研究所とのやり取り(新→旧 順)ーーー

ーーー2025年1月22日(水) 08:00、白楽の物質・材料研究機構への通報ーーー

物質・材料研究機構 コンプライアンス室 御中

「パブピア(PubPeer)」で、貴機構(物質・材料研究機構)の新構造材料センターに所属する(していた)研究者たちの共著論文7~8報に、重複画像(データねつ造、自己盗用)が指摘されております。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。

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通報先

国立研究開発法人物質・材料研究機構 コンプライアンス室
E-mail: fuseiboushi@nims.go.jp

研究活動及び研究費使用における不正に係る通報窓口 – 公正な研究活動の推進 | NIMS
https://www.nims.go.jp/nims/compliance/hdfqf1000006aahy.html

英語版:Research Integrity | NIMS
https://www.nims.go.jp/eng/nims/compliance/index.html

  • 通報(告発)先は、一般的に、学術誌、所属大学・研究機関、調査機関、メディア(新聞など)、ネカト・ウオッチャー(①撤回監視:リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch、②パブピア:PubPeer、③より良い科学のために:For Better Science、など)、ネカト・ハンターがある。
  • ネカト疑惑者には直接、問い合わせしない方が良いとされている。
  • 一般的に、疑惑発見者は疑惑者の所属機関と学術誌に告発する。
  • かなりの割合で、学術誌はネカト調査で疑惑者の所属機関に連絡する。
  • 「パブピア(PubPeer)」は自動的に第一著者と連絡著者にコメントを伝える仕組みになっている。
  • 白楽は疑惑発見者ではないので、告発者というより通報者である。

●3.【各段階の評価】

★通報:物質・材料研究機構:評価/可/不可/悪質/なし)とコメント

  1. 通報方法はわかり易く簡潔単で優れている。英語版もまともである。Emailアドレスが示されている。

通報対応:評価(優//不可/悪質/なし)とコメント

 

●4.【疑惑者】

★疑惑:重複画像(自己盗用、データねつ造)

★西村 俊弥(Toshiyasu Nishimura)

出典: researchmap(更新日: 2024/12/18)

  • 研究者:西村 俊弥(ニシムラ トシヤス)
  • 部署:物質・材料研究機構 新構造材料センター
  • 職位:主席研究員
  • 写真出典

★ジョセフ・ラジ・ザビエル(Joseph Raj Xavier、X. Joseph Raj)

  • 研究者:ジョセフ・ラジ・ザビエル(Joseph Raj Xavier)
  • 部署:物質・材料研究機構 新構造材料センター
  • 職位:ポスドク
  • 写真出典

2025年1月21日現在、ジョセフ・ラジ・ザビエルは物質・材料研究機構に在籍していない。 → 物質・材料研究機構の所員を「Xavier」で検索してもヒットしない。「研究者| 研究者総覧SAMURAI – 物質・材料研究機構 (NIMS)

経歴(主な出典:Dr. josephraj Xavier, m.sc.,ph.d., | SciPeople

  • 生年月日:不明。仮に1984年1月1日生まれとする。2011年にインドで研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 2011年(27歳?):インドのアンナ大学(Anna university)で研究博士号(PhD)を取得:物理化学
  • 2011年(27歳?):日本の物質・材料研究機構・ポスドク
  • 2014~2017年(30~33歳?):物質・材料研究機構に所属し、問題論文を出版
  • 2017年(33歳?):インドのヴェルテック大学(Vel Tech Dr. RR and Dr. SR Technical University)・化学科 → 2020年1月2日時点では「Dr. JOSEPH RAJ. X」の名前で準教授だった。M.Sc. General Chemistry – Vel Tech
    但し、2025年1月18日現在、その化学科の教員サイトに名前はない:Department of Chemistry | Vel Tech Rangarajan Dr.Sagunthala R&D Institute of Science and Technology

●5.【疑惑論文】

★疑惑の具体例

2025年1月21日現在、「パブピア(PubPeer)」で「西村 俊弥」の論文を「authors:”Toshiyasu Nishimura” OR authors:”T. Nishimura”」を検索すると13論文がヒットした。

13論文のうちの5論文は別人の論文なので、疑惑論文は残りの8論文(2014~2022年出版)である。

以下、疑惑8論文のうち、適当に選んだ3論文の問題点を見ていこう。

【論文1】

「2014年のISIJ International」論文

著者2人とも所属は物質・材料研究機構
論文には、使用した研究費の記載はない。
西村 俊弥が連絡著者である。

ーーーーーーー論文1:重複画像(データねつ造、自己盗用)①ーーーーー

2024年12月、Thomas Kestemanが、図 9a(以下の左図)の赤色枠の画像は、試料が異なるのに、同じ著者の Int J Petrochem Sci Engin (2017) 論文の図13a (以下の右図)と同じに見える、とコメントした。出典:https://pubpeer.com/publications/6C2D4F8743C2BD44942167B2DC5D1B

2025年1月21日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。

実験は異なるのに別の実験で得られた画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造、自己盗用疑惑である。

【論文2】

「2017年のJ Coat Technol Res」論文

著者2人とも所属は物質・材料研究機構であるが、ジョセフ・ラジ・ザビエルはインドのヴェルテック大学(Vel Tech Dr. RR and Dr. SR Technical University)・化学科の所属でもある。
論文は閲覧有料なので使用した研究費の出資者を調べていない。
ジョセフ・ラジ・ザビエルが連絡著者である。

ーーーーーーー論文2:重複画像(データねつ造、自己盗用)①ーーーーー

2024年12月、Thomas Kestemanが、論文の多数の図が同じ著者の別の論文と同じに見える、とコメントした。以下に「パブピア(PubPeer)」での指摘をそのまま貼り付けた。出典:https://pubpeer.com/publications/0CBA2B4EE0A0153FB202B5A847CF73

  1. Figure 15 in J Adhesion Sci Tech (2020)https://doi.org/10.1080/01694243.2019.1661658
  2. Figure 10 in J Appl Polymer Sci (2020)https://doi.org/10.1002/app.48323
  3. Figure 14 in Mater Sci Engin B (2020)https://doi.org/10.1016/j.mseb.2020.114639
  4. Figure 13 in Int J Petrochem Sci Engin (2017)https://doi.org/10.15406/ipcse.2017.02.00028
  5. Figure 12a in J Fail Anal and Preven (2016)https://doi.org/10.1007/s11668-016-0187-x
  6. Figure 11 in Anti-Corrosion Methods and Materials (2018)https://doi.org/10.1108/ACMM-04-2017-1784
  7. Figure 11 in J Materials Engineering and Performance (2017)https://doi.org/10.1007/s11665-017-2770-z
  8. Figure 9a in ISIJ International (2014)https://doi.org/10.15406/ipcse.2017.02.00028
  9. Figure 12 in Protection of Metals and Physical Chemistry of Surfaces (2019)https://doi.org/10.1134/S2070205119010167
  10. Figure 13 in another J Fail Anal and Preven (2016):  https://doi.org/10.1007/s11668-016-0102-5
  11. Figure 12 in J Fail Anal and Preven (2020)http://dx.doi.org/10.1007/s11668-020-00847-4
  12. Figure 13 in Journal of Coatings Technology and Research (2017)https://doi.org/10.1007/s11998-016-9856-7

2025年1月21日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。

実験は異なるのに別の論文に発表した「多量」の画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造、自己盗用疑惑である。

【論文3】

「2014年のInt. J. Electrochem. Sci.」論文

著者2人とも所属は物質・材料研究機構
論文には、使用した研究費の記載はない。
西村 俊弥が連絡著者である。

ーーーーーーー論文3:重複画像(データねつ造、自己盗用)①ーーーーー

2024年12月、Thomas Kestemanが、同色枠の複数の画像は、試料が異なるのに、同じ著者の 別論文の図と同じに見える、とコメントした。出典:https://pubpeer.com/publications/3914762EF660C56366D3447BF82485

ーーーーーーー論文3:重複画像(データねつ造、自己盗用)②ーーーーー

2024年12月、Thomas Kestemanが、図2の黄色枠の画像は、試料が異なるのに、同じ著者の 別論文の図と同じに見える、とコメントした。出典:

2025年1月21日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。

実験は異なるのに別の実験で得られた画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造、自己盗用疑惑である。

★ジョセフ・ラジ・ザビエル(Joseph Raj Xavier)の大規模不正

「パブピア(PubPeer)」で「authors:”Joseph Raj Xavier” 」の検索をすると115論文がヒットした。この人物は、物質・材料研究機構に在籍し西村 俊弥と共著の論文を出版していた研究者と同一人物なのか、はっきりしない。

白楽は、同一人物だと推定している。

「authors:”Joseph Raj Xavier” OR authors:”X Joseph Raj”」で検索すると、126論文がヒットした。

2024年11月出版の論文での所属は、インドの「Department of Sustainable Engineering, Saveetha School of Engineering, Saveetha Institute of Medical and Technical Sciences」となっている。

このように、「パブピア(PubPeer)」で3桁の論文数がヒットし、研究不正疑惑が濃厚であるが、日本の事件ではないの、ここでは、これ以上、記載しない。

●7.【白楽の感想】

《1》重複画像(データねつ造、自己盗用)

今回の研究不正疑惑は、過去の自分たちの論文に掲載したデータ画像を、別の論文のデータ画像として使用した不正疑惑である。重複画像(自己盗用)ではあるが、実験は異なるので、該当論文のデータをねつ造したと解釈できる。

物質・材料研究機構はこの種の研究上の不正行為をどう判断し、どう対処するのだろうか?

《2》やり得・逃げ得?

本事件は現在在籍している研究者と約8年前にインドに帰国したポスドク(当時)の複数の共著論文での研究不正疑惑である。

研究不正と認定したとして、現在在籍している研究者にはそれなりの処罰を科すことはできても、インドに帰国したポスドク(当時)の処罰はどうなるのだろう。

処罰しない・できないなら、「やり得・逃げ得」になる。これは、研究公正を維持するうえで、かなりマズイ状況を示している。

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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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