岩石学:エム・サントシ(M Santosh)(高知大学)

2024年12月25日掲載

本記事を「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」に分類したが、当該大学への「調査・対処」の記載を省略する。

ワンポイント:2000年12月~2012年3月(44~56歳?)の11年4か月、日本の高知大学・教授だったサントシは、現在、高知大学の名誉教授、中国の中国地質大学 (北京)・教授、オーストラリアのアデレード大学・プロフェッショナル・フェローである。サントシは約1,600論文を出版し、共著者は約2,000人もいる。サントシは、2014~2023年の10年間、高被引用者(Highly Cited Researchers)に選ばれた。しかし、2024年(68歳?)、ネカトハンターであるデスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)が、サントシの「引用/査読カルテル」・「自己編集不正(self-edited misconduct)」を突き止めた。エルゼビア社(Elsevier)の学術誌「Geoscience Frontiers」と「Gondwana Research」を主な舞台にしたサントシの不正論文は2010~2024年の15年間に出版した約600論文に及び、現在進行中で増えている。いずれ、サントシの数百論文が撤回されると思われる。日本、インド、中国、その他の国の研究者を巻き込んだ大規模な学術スキャンダルになるだろう。日本の少なくとも7人の地球科学者・岩石学者(含・紫綬褒章受章者や元南極地域観測隊隊長)が不正論文の共著者(共犯者? 被害者?)になっている。日本の地球科学・岩石学の大規模な学術スキャンダルになるかもしれない。国民の損害額(推定)は現時点で予測不能。

ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
ーーーーーーー

●1.【概略】

エム・サントシ(エム・サントシュ、M Santosh、マダヴァ・サントシ、Madhava Santosh、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-1073-8477、写真出典)は、インドで育ち2000年12月~2012年3月(44~56歳?)の11年4か月、日本の高知大学・教授だった。現在は高知大学・名誉教授、中国の中国地質大学 (北京)(China University of Geosciences (Beijing))・教授、オーストラリアのアデレード大学(University of Adelaide)・プロフェッショナル・フェロー(Professorial Fellow)である。専門は岩石学である。

白楽ブログでは、サントシは高知大学・名誉教授なので日本の事件として扱った。

姓名の名は「Madhava」であるが、サントシは通常、「M」で通している。 → Attraction of the great outdoors – Chinadaily.com.cn

CiNii 博士論文の姓名に「著者名Santosh, M、著者別名サントシ, エム」とある。姓の日本語を「サントシ」とした。

サントシは、約1,600論文を出版し、共著者は約2,000人いて、2014~2023年の10年間、高被引用者(Highly Cited Researchers)に選ばれた。

2024年(68歳?)、ネカトハンターであるデスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)が、サントシの研究上の不正行為である利益相反を突き止めた。実は、利益相反よりも、「引用/査読カルテル」・「自己編集不正(self-edited misconduct)」 の方が適切だと思うので、白楽ブログではそちらを使用した。

エルゼビア社(Elsevier)の2つの学術誌「Geoscience Frontiers」と「Gondwana Research」を主な舞台にしたサントシの不正論文は、2010~2024年の15年間に出版した約600論文に及び、現在進行中で増えている。

エルゼビア社(Elsevier)はサントシの不正を調査中で、いずれ、サントシの数百論文が撤回されると思われる。日本、インド、中国、その他の国の研究者を巻き込んだ大規模な学術スキャンダルになるだろう。

日本の少なくとも7人の地球科学者・岩石学者(含・紫綬褒章受章者や元南極地域観測隊隊長)が不正論文の共著者(共犯者? 被害者?)になっているので、日本の地球科学・岩石学の大規模な学術スキャンダルになる可能性もある。

日本では、サントシ事件を誰が調査するのだろう?

高知大学 朝倉キャンパス。写真出典

  • 国:日本、中国、オーストラリア
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インドのコーチン科学技術大学、日本の大阪市立大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1956年1月1日生まれとする。1978年に学士号を取得した時を22歳とした。インドで生まれた(と思う)
  • 現在の年齢:68歳?
  • 分野:岩石学
  • 不正論文発表:2010~2024年(54~68歳?)の15年間
  • ネカト行為時の地位:高知大学・教授、中国の中国地質大学 (北京)・教授、オーストラリアのアデレード大学・プロフェッショナル・フェロー
  • 発覚年:2024年(68歳?)
  • 発覚時地位:高知大学・名誉教授、中国の中国地質大学 (北京)・教授、オーストラリアのアデレード大学・プロフェッショナル・フェロー
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)はネカトハンターであるデスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)で、「パブピア(PubPeer)」で指摘
  • ステップ2(メディア):中国のメディア、「For Better Science」、「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①エルゼビア社(Elsevier)編集部。②大学は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:自己編集不正(self-edited misconduct)、引用/査読カルテル、利益相反
  • 不正論文数:約600論文(推定)
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし。大学は調査していない
  • 対処問題:大学は対処していない
  • 特徴:新しい研究不正、大規模な学術スキャンダル
  • 日本人の弟子・友人:多数

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は現時点で予測不能。

●2.【経歴と経過】

経歴は虚偽かもしれない。主な出典:(1):Professor M Santosh | Researcher Profiles、(2):M. SANTOSH | Professor | Ph.D., D.Sc., D.Sc.

  • 生年月日:不明。仮に1956年1月1日生まれとする。1978年に学士号を取得した時を22歳とした。インドで生まれた(と思う)
  • 1978年(22歳?):インドのケーララ大学(Kerala University)で学士号取得
  • 1981年(25歳?):インドのルールキー大学(University of Roorkee)で修士号取得:応用地質学
  • 1986年(30歳?):インドのコーチン科学技術大学(Cochin University of Science and Technology)で研究博士号(PhD)を取得:岩石学
  • 1990年12月18日(34歳?):日本の大阪市立大学(Osaka City University)で理学博士号(D.Sc.)(乙)を取得 → CiNii 博士論文 – Role of fluids in granulite petrogenesis : evidence from fluid inclusions
  • 1992~2000年(36~44歳?):インドの国立地球科学研究センター(Centre for Earth Science Studies)・教授
  • 2000年12月~2012年3月(44~56歳?):日本の高知大学・教授
  • 2010~2024年(54~68歳?):この15年間、研究不正
  • 2012年(56歳?):南アフリカ共和国のプレトリア大学(Osaka City University)で理学博士号(D.Sc.)を取得
  • 2012年5月~2024年現在(56~68歳?):中国の中国地質大学 (北京)(China University of Geosciences (Beijing))・教授
  • 2012年12月10日(56歳?):中国のGlobal 1000 Talents Awardを受賞
  • 2014年11月~2024年現在(58~68歳?):オーストラリアのアデレード大学(University of Adelaide)・プロフェッショナル・フェロー(Professorial Fellow)
  • 2024年7月(68歳?):研究不正が発覚
  • 2024年12月24日(68歳?)現在:従来職を維持

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
「エム・サントシ」と紹介。
動画はあまり関係がない。音声で説明している。説明動画:「The Dark Side of Peer Review: Examining the Geoscience Frontiers Controversy – YouTube」(英語)3分43秒。
Ricardo Valls(チャンネル登録者数 2500人) が2024/07/30に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究人生

エム・サントシ(M Santosh、写真出典)はインドで育ち、1986年(30歳?)、インドのコーチン科学技術大学(Cochin University of Science and Technology)で研究博士号(PhD)を取得してから、来日した。

1990年12月18日(34歳?)、日本の大阪市立大学(Osaka City University)で理学博士号(D.Sc.)(乙)を取得とあるから、課程博士ではなく論文博士を取得している。 → 以下出典:CiNii 博士論文 – Role of fluids in granulite petrogenesis : evidence from fluid inclusions

その後、インドに帰国したが、2000年12月、日本の高知大学・教授に就任し、2012年3月までの11年4か月(44~56歳?)、在職した。

2012年(56歳?)、日本を去り中国に移った。この時、高知大学の名誉教授になったと思われるが、56歳(?)でなぜ退職したのか、白楽はわからない。有りうる理由は中国の大学の方が待遇が良いからだと思うが、日本で何らかのトラブルを起こしたからかもしれない。

2012年5月~2024年現在(56~68歳?)は、中国の中国地質大学 (北京)(China University of Geosciences (Beijing))の教授になっている。

中国地質大学 (北京)(China University of Geosciences (Beijing))の「地球科学(Earth Sciences)」部門は、米国のプリンストン大学の1つ下だが、コロンビア大学より上位の世界ランキング第9位(2024年)の超有力大学である。ちなみに東京大学は第25位の格下である。 → ShanghaiRanking’s Global Ranking of Academic Subjects

サントシは、また、2014年11月~2024年現在(58~68歳?)、オーストラリアのアデレード大学(University of Adelaide)のプロフェッショナル・フェロー(Professorial Fellow)でもある。

サントシは、日本の高知大学で11年4か月(44~56歳?)教授だったし、現在も高知大学・名誉教授なので、日本の事件として扱った。

★高被引用者

エム・サントシ(M Santosh、写真出典)はクラリベイト社のWeb of Scienceに索引付けされた論文を1,585報も出版している多数論文出版者である。

また、2014~2023年の10年間、高被引用者(Highly Cited Researchers)だった。

高被引用者リストは2001年から始まっている。2001~2013年の高被引用者リストを白楽は見ていないが、2013年以前もサントシは高被引用者だったかもしれない。

以下の出典:M Santosh – Web of Science Researcher Profile

ただし、サントシは2024年の高被引用者(Highly Cited Researchers)になっていない。 → Highly Cited Researchers | Clarivate

2017年4月20日(61歳?)、高知大学は、高被引用者の受賞を記念した講演会を設けた:複合領域科学部門主催 M.Santosh名誉教授の受賞記念講演会 | 高知大ポータル

元総合科学系複合領域科学部門所属で本学名誉教授の M. Santosh 氏が、Clarivate Analytics社から2016年のHighly Cited Researchers(高被引用論文著者:論文の引用分析による世界で影響力を持つ科学者)として選出されました。それを記念して、M. Santosh名誉教授の受賞記念講演会を開催します。奮ってご参加ください。

https://www.kochi-u.ac.jp/fukugo/pdf/prof_santosh.pdf

★中国の第2位、世界の第15位

2023年11月21日(68歳?)収集のデータで、サントシは1,457報の論文を出版し、D-indexが127、地球科学(Earth Science)分野で、中国の第2位、世界の第15位にランクされている。以下出典:https://archive.is/wip/UsgvZ

★獲得研究費

日本の高知大学で11年4か月(44~56歳?)教授だったので、科研費も獲得している。

研究代表者として以下の2件を獲得し、研究分担者として別に6件が助成された。
2011年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
コロンビアからロディニアへ:インドプレート東部の原生代地史
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23403013/

2005~2007年度11,300千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 1,200千円)
コロンビアからゴンドワナへ:南インドKeralaコンダライト帯から推定される二つの超大陸の歴史
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17403013/

★発覚の経緯

エム・サントシ(M Santosh)はWeb of Scienceに索引付けされた論文を1,585報も出版している多数論文出版者である。

そして、2014~2023年、連続して10年間も高被引用者になった。

学術誌「Gondwana Research」の編集長である。

しかし、2024年12月24日現在、「パブピア(PubPeer)」に3,966論文にコメントしている有力なネカトハンターであるデスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)が、「パブピア(PubPeer)」で、エム・サントシ(M Santosh)の研究上の不正行為を多数指摘している。 → PubPeer

アンタークティカが研究上の不正行為として指摘しているのは利益相反(conflict of interest)である。サントシが編集委員(Handling Editor)になっている学術誌にサントシ自身が著者の論文を多数掲載しているのだ。

編集委員(Handling Editor)は投稿原稿の採否を決められるので、自分が著者に入っている投稿原稿を当然、採択する。これでは「査読なし」と同じで、内容のチェックなしで論文が出版される。

この学術上の不正行為を中国のウー・グアンヘン(WU Guangheng)記者は「自己編集不正(self-edited misconduct)」と名付けている。 → 又一起作者给自己当编辑,这次是中国地质大学(北京)外籍职员

「自己編集不正」をすれば、多数論文出版者になるのは容易である。

しかし、それだけでは高被引用者になれない。

ここからは推察も入るが、編集委員(Handling Editor)の立場を利用して、他の仲間の研究者とお互いの論文を「査読なし、かつ、相互に引用」する「引用/査読カルテル」を作っている(いた)と思われる。

お互いの多数の論文を「査読なし」で出版し、お互いの論文を「多数引用」すれば、高被引用者になれるだろう。

「論文工場」も運営しているかもしれないが、この証拠はつかめていない。サントシの論文販売広告を白楽はまだ見ていない。

なお、2024年7月23日(68歳?)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事で、エルゼビア社は、サントシの「自己編集不正」を調査中だと述べている。しかし、2024年12月24日現在、調査結果について、何も発表がない。まだ、調査中ということなのだろう。

★カルテル仲間

サントシは自分が自由にできる学術誌を抱えている。

サントシは学術誌「Gondwana Research」を創設し、現在、編集長である。学術誌「Gondwana Research」はエルゼビア社(Elsevier)の学術誌で、サントシが教授を務める中国地質大学(北京)が出版している。

以下出典:Editorial board – Gondwana Research | ScienceDirect.com by Elsevier

サントシはエルゼビア社(Elsevier)の学術誌「Geoscience Frontiers」の編集アドバイザー(Editorial Advisor)でもある。サントシが教授を務める中国地質大学(北京)と北京大学が「Geoscience Frontiers」を出版している。

以下出典:Editorial board – Geoscience Frontiers | ScienceDirect.com by Elsevier

以下は、サントシの「自己編集不正カルテル」・「引用/査読カルテル」仲間と思われる。

最初の3人はインド系の仲間である。

  1. 韓国の延世大学(Yonsei University)・研究員のヴィノッド・サミュエル(Vinod O. Samuel、写真出典)は「Geoscience Frontiers」の副編集委員。
    インド出身のサミュエルは2017~2024年に「Geoscience Frontiers」に掲載されたサントシの少なくとも20論文を編集した。サミュエルとサントシは複数の学術誌で少なくとも15報の論文を共著で出版している。
  2. インドのケーララ大学(University of Kerala)のイラス・シャジ準教授(Erath Shaji、写真出典)は「Geoscience Frontiers」の副編集委員
    シャジ準教授は2017~2024年に「Geoscience Frontiers」に掲載されたサントシの少なくとも10論文を編集した。シャジ準教授とサントシは複数の学術誌で2016~2023年に少なくとも29報の論文を共著で出版している。
  3. インドのチャクラヴァダヌラ・マニカンバ(Chakravadhanula Manikyamba、写真出典
    マニカンバは少なくともサントシの4論文の編集者で、2022年以降、サントシの3論文で共著者になっている。

次の3人は詳細を省くが中国系の仲間である。

  1. 中国のLi Tang
  2. 中国のCheng-Xue Yang
  3. 中国のQiong-Yan Yang

そして、上記6人を含めた以下の16人の「引用/査読カルテル」仲間を示したスプレッドシートがある。

スプレッドシートはネカトハンターであるデスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)が作成していると思われる。2024年12月現在、情報は追加されている。 → Goescience Frontiers, Gondwana Research, Geological journal and Geosystems and Geoenvironment (M. Santosh) – Google スプレッドシート

スプレッドシートのデータを見ると、問題論文は2010~2024年の15年間に及んでいる。2010年の論文での所属はもちろん、高知大学なので、高知大学在職中にこの研究不正行為を始めたと思われる。

★日本のカルテル仲間

サントシの「引用/査読カルテル」の16人のメンバーに以下の日本人が1人いる。

角替敏昭(ツノガエ トシアキ、写真出典)筑波大学生命環境系教授 → TRIOS 筑波大学研究者総覧

「パブピア(PubPeer)」で、角替敏昭の論文のコメントを「authors:”Tsunogae”」で検索すると、32論文にコメントがあった。

角替は平成30-令和3年度(4年間) 科学研究費補助金(基盤研究(B))の研究代表者になっている。
合計:15,990千円 (直接経費合計:12,300千円+間接経費合計: 3,690千円)
研究組織を見ると、サントシが連携研究者になっていた(以下出典:筑波大学変成岩研究グループ2018-21 科研費[基盤B](速報))。

★日本の共著者

サントシの論文共著者は「‪M. Santosh‬ – ‪Google Scholar‬」にリストされている。

また、「M. SANTOSH | Professor | Ph.D., D.Sc., D.Sc. | China University of Geosciences (Beijing), Beijing | School of Earth Sciences and Resources | Research profile」では、サントシが1,885論文を出版したことと、50人の論文共著者がリストされている。

さらに、「M. Santosh: Earth Science H-index & Awards – Academic Profile | Research.com」では、サントシが1,457論文を出版したことと、10人の論文共著者がリストされている。

上記の3つのサイトに、日本に所属する論文共著者が7人いた(以下、英語は原文のまま。日本語とリンクは白楽が加えた)。

  1. Toshiaki Tsunogae:前項の角替敏昭(筑波大学生命環境系・教授) → 前項に既出
    Professor of Petrology, Faculty of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
  2. M. Satish-Kumar:マドスーダン・サテイツシユ・クマール(Madhusoodhan Satish Kumar)(新潟大学)
    Professor of Geology, Niigata University
    https://megalodon.jp/2024-1212-0714-17/https://researchers.adm.niigata-u.ac.jp:443/html/100000640_ja.html
  3. Dapeng Zhao:趙 大鵬(ちょう たいほう、東北大学 災害科学国際研究所・教授)
    Professor of Geophysics, Tohoku University
    https://megalodon.jp/2024-1222-0914-43/https://irides.tohoku.ac.jp:443/organization/zhao_dapeng.html
  4. Yasuhito Osanai:小山内 康人(九州大学名誉教授。元日本鉱物科学会会長。元南極地域観測隊隊長)
    Professor of Geology, Kyushu University
    小山内康人 – Wikipedia
  5. Masaru Yoshida:吉田 勝(大阪市立大学・教授だった)
    Gondwana Institute for Geology and Environment
    https://web.archive.org/web/20241222000221/https://www.gondwanainst.org/gige/G003.pdf
  6. Shigenori Maruyama:丸山茂徳(東京工業大学地球生命研究所特命教授、2006年紫綬褒章受章)
    Tokyo Institute of Technology
    丸山茂徳 – Wikipedia
    http://old.elsi.jp/ja/research/member/researcher/professor/shigenori-maruyama.html
  7. H. Wada:和田秀樹(静岡大学理学研究科地球科学専攻・教授、2014年定年退職)https://megalodon.jp/2024-1222-0833-31/https://www.jstage.jst.go.jp:443/article/shizuoka/41/0/41_Intro-1/_pdf/-char/ja

【引用/査読カルテルの具体例】

問題の論文は多数(多分、数百論文)ある。

3論文を選んで、不正部分を以下に示す。論文の書誌情報は略記した。

―――――――以下は「2012年5月のGondwana Research」論文―――

以下のパブピアの図の出典:デスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)の指摘、https://pubpeer.com/publications/8C7DEF4EAD642264CFAAC524858F4F

サントシが第二著者になっている「2012年5月のGondwana Research」論文はW.J.Xiaoが編集委員(Handling Editor)になっていた。

ところが、上記の数か月前の以下の論文で、W.J.Xiaoはサントシと共著の論文を出版していた。つまり、W.J.Xiaoはサントシの「引用/査読カルテル」仲間のようだ。

―――――――以下は「2022年6月のGondwana Research」論文―――

以下のパブピアの図の出典:デスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)の指摘、https://pubpeer.com/publications/A90ED5A483D1A912769CC3DE6F35BA

サントシが第三著者になっている「2022年6月のGondwana Research」論文はZ.M.Zhangが編集委員(Handling Editor)になっていた。

ところが、その数か月前の以下の論文では、Z.M.Zhangはサントシと共著の論文を出版していた。つまり、Z.M.Zhangはサントシの「引用/査読カルテル」仲間のようだ。

―――――――以下は「2022年6月のGondwana Research」論文―――

以下のパブピアの図の出典:デスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)の指摘、https://pubpeer.com/publications/99DDE59F65BE3555FEBFF7D2919D13

丸山茂徳(Shigenori Maruyama)とサントシの「2017年3月のGeoscience Frontiers」論文は丸山茂徳とサントシが編集委員(Editor)になっていた。

つまり、丸山茂徳とサントシの「引用/査読カルテル」・「自己編集不正(self-edited misconduct)」不正である。このURLは、丸山茂徳(+サントシ)の不正を数件指摘している。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★スコーパス(Scopus)

2024年12月24日現在、スコーパス(Scopus)で、エム・サントシ(M Santosh)の論文を「著者の姓 “Santosh” , 著者の名 “M”」で検索した。約1600論文が出版されている。「Santosh, M. Warrier」とすると、共著者は2,632人だった。

★撤回監視データベース

2024年12月24日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでエム・サントシ(M Santosh)を「Santosh, M」で検索すると、「2020年のEnergy Geoscience」論文・1論文が撤回されていた。実際は16論文がヒットする場合もあるが、データベースの異常で、16論文のうちの15論文は同姓の別人(名は「M」ではない)の論文である。

★パブピア(PubPeer)

2024年12月24日現在、「パブピア(PubPeer)」では、エム・サントシ(M Santosh)の論文のコメントを「authors:”M Santosh”」で検索すると、311論文にコメントがあった。

サントシが絡む論文のコメントを「Santosh」で検索すると、618論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》スキャンダル? 

新シリーズ・「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」(2024年12月10日に公表)を開始して10日目くらいに、こんな事件に遭遇した。

最初は、軽い情報だったし、日本との関係も少ししか書いていなかった。

でも調べていくうちに、日本人も絡むスキャンダル・重大事件が見えてきた。

知り合いの新聞記者(や週刊誌記者)に伝えようかと思ったが、多くの場合、白楽がスキャンダル・重大事件だと思っても、科学部系の新聞記者の関心は薄い。

研究者の関心は測りようがないので、わからない。

それで、まずはシッカリと実態を調べようと、奮闘しているうちに、年末が近くなったので、記事にした。

《2》大規模な不正 

サントシ事件は、従来の研究不正であるねつ造・改ざん・盗用とは分類が異なる。

不正内容を一言でいえば、「引用/査読カルテル」・「自己編集不正(self-edited misconduct)」なので、白楽記事ではそれを使用した。

しかし、この手の不正は関係者全員が得をするので、内部でもめないと、不正がバレない強固な不正である。デスモコッカス・アンタークティカ(Desmococcus antarctica)はよく見つけました。

アンタークティカは論文の編集者が明記されている論文で編集者が著者になっていたことから、不正と指摘したが、論文の編集者が明記されてない場合、アンタークティカのような第三者は、「自己編集不正(self-edited misconduct)」の証拠示せない。

それで、アンタークティカが見つけた数より、不正論文はもっと多いと思われる。

出版社が過去の編集作業の記録を残していれば、出版社の調査で、サントシの「自己編集不正(self-edited misconduct)」を特定できる。それで、不正論文はもっと増えるだろう。

なお、関係者全員が得をすると書いたが、この論文の出版経費の原資は研究費、つまり、国民の税金なので、損をするのは国民である。荒い概算をすると、研究者の給料や出版経費などで1論文当たり300万円のコストとし、500論文が不正論文だとすると、計15億円の損になる。

この手の不正は、今回のように、学術界ぐるみになり、岩石学・地球科学の研究者は、不正論文に振り回されるという損害も生じる。蓄積した学術論文体系は、広く・深く汚染される。除染するのはかなり大変になる。

サントシは、仲間を全員インド人で当初、固めていたが、徐々に、日本人、そして中国人などアジア圏の研究者、そしてオーストラリアの研究者を巻き込んでいった。

サントシは賢く、人当たりが良く、魅力的な人物なのだと思う。

日本人は、少なくとも7人の教授(元・教授、含・紫綬褒章受章者や元南極地域観測隊隊長)が頻繁に共著者になっていた。

1回~数回の共著者はもっとたくさんいる。「m santosh kochi university – Google Scholar」で検索したら、サントシと日本人(姓から判断)の共著論文が多数ヒットした。以下は参考に6例を示した。

2024年7月23日の「撤回監視(Retraction Watch)」記事で、エルゼビア社はサントシの不正を調査中とある。徹底的に調査され、調査が済めば、サントシ関連の数百論文が撤回される可能性がある。

11年4か月教授として在籍し、現在、名誉教授である高知大学がサントシの不正行為を調査するのか・しないのか、白楽はわからないが、不正を暴くにはそれなりの能力と意欲と時間がかかる。高知大学が調査しても、多分、全貌を解明するのは難しいだろう。

日本地質学会や日本鉱物科学会などの学会、または、日本学術会議が調査すべきなのかもしれない。

高知大学は、別の組織がサントシの不正を暴いた時点、あるいは、この白楽ブログを読んだ時点で、名誉教授の称号剥奪を検討した方が良いと思う。

オーストラリアのアデレード大学はわからないが、2024年7月時点でサントシの不正を報道した中国メディアの記事があるので、中国地質大学 (北京)はサントシの不正に気が付いていると思う。

ただ、習近平と握手するサントシの写真がある(写真出典)。習近平の友人かもしれないサントシ教授の不正を中国人が暴くのは、それなりの覚悟がいるだろう。とはいえ、サントシは67歳(?)なので、年齢や健康上の理由などで、静かに退職(解雇?)かも。

ーーーーーーー
日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
ーーーーーー
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
ーーーーーー

●9.【主要情報源】

① 2024年6月3日のウー・グアンヘン(WU Guangheng)記者の「5GH」記事:又一起作者给自己当编辑,这次是中国地质大学(北京)外籍职员
② 2024年6月13日:XユーザーのSpottingさん: 「M. Santosh from @UniofAdelaide and his impressive cartel can be found in the link below. The name Santosh cartel (@mumumouse2) was picked rather than Santosh #papermill. Many of Santosh his papers are edited by co-authors. Something fishy is happening. https://t.co/sg8CuC2y2J」 / X
③ 2024年6月28日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Schneider Shorts 28.06.2024 – a series of improper, erroneous, and potentially fraudulent manipulations – For Better Science
④ 2024年7月23日のエイブリー・オラル(Avery Orral)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Elsevier investigating geology journal after allegations of pal review – Retraction Watch
⑤ 2024年7月25日の記事:期刊编辑涉嫌操纵?!Elsevier出版社正对这本双1区TOP进行调查!_来源_官网_PubPeer