ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)(米)

2021年3月17日掲載 

ワンポイント:この事件は、2020年ネカト世界ランキングの「4D」の「5」に挙げられたので記事にした。ワンは中国出身でカリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部(UCLA School of Dentistry)・教授になった。米国籍を取得し、米国の医学アカデミー・会員、中国工学アカデミーの外国人研究者というスーパースターである。2020年1月(56歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が2007-2019年(44- 56歳)の13年間に出版したワン教授の28論文の画像に異常があると指摘した。ワン教授はパブピアで異常が指摘されるとすぐに論文を訂正した。訂正論文は多いが撤回論文は1報しかない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校はネカト調査をせず、ワン教授は無処分である。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。

[変更]
mysmsnr様のご指摘受け、名前の「カンユー」を「ツンユー」に変えました。感謝

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang、ORCID iD:?、写真出典)は、米国のカリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部(UCLA School of Dentistry)・教授で歯科医師免許を持っている。専門は分子生物学(細胞情報伝達)である。

ワンは中国出身だが、米国籍を取得していて、2011年(48歳)に米国の医学アカデミー(Institute of Medicine of National Academies)・会員、2013年(50歳)に中国工学アカデミーの外国人研究者に選出された。NIHから1996~2020年の25年間に123件、約25億円のグラントを受領している。スーパースター研究者である。

ワン教授はネカト犯ではないようだが、「パブピア(PubPeer)」でワン教授の30論文にコメントがあるので、ワン教授を中心に話を進める。その30論文は、2002-2021年(39- 57歳)の20年間に出版されていた。

コメントの大半は、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が画像の異常(白楽はねつ造だと思う)を指摘したコメントである。

しかし、異常な画像(白楽はねつ造だと思う)と指摘されると、論文の各第一著者(複数)が「間違え(mistake)」たことを認め、「ご指摘をありがとうございます。間違えました。スミマセン」と論文を訂正した。

ビックの指摘の後、1論文が撤回された。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部はネカト調査をせず、主犯と思われる第一著者(複数)は無処分である。ワン教授も無処分である。

この事件は、2020年ネカト世界ランキングの「4D」の「5」に挙げられた。

image192012年7月9日。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles:UCLA)正門前の筆者(白楽)。出典

  • 国:米国
  • 成長国:中国
  • 歯科医師免許(DDS)取得:北京大学・歯科大学院
  • 研究博士号(PhD)取得:ノースカロライナ大学チャペルヒル校
  • 男女:男性
  • 生年月日:1963年8月23日
  • 現在の年齢:61 歳
  • 分野:分子生物学
  • 不正論文発表:2002-2021年(39- 57歳)の17年間
  • 発覚年:2018年(55歳)
  • 発覚時地位:カリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA School of Dentistry)・歯学部のカン・ティン教授(Kang Ting)で、大学に公益通報。ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)も追及
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):① カリフォルニア大学ロサンゼルス校は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし 。カリフォルニア大学ロサンゼルス校は調査していない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報撤回。「パブピア(PubPeer)」が30論文に疑惑指摘
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人: 荒井敦(松本歯科大学・講師)は2016 ? 2019年の科研費でツンユー・ワンを研究協力者にしている

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

出典:①Cun-Yu Wang, D.D.S., Ph.D. | UCLA Dentistry、② Cun Yu Wang | Faculty History Project、③UCLA Dentistry faculty member recognized by prestigious Chinese Academy of Engineering | UCLA Dentistry

  • 1963年8月23日:中国で生まれる
  • 1985年(22歳):南京医科大学(Nanjing Medical University)で学士号取得:口腔医学
  • 1989年(26歳):北京大学・歯科大学院(Perking University School of Dentistry)で歯科医師免許(DDS)を取得
  • 1995年(32歳):米国のハーバード大学/フォーサイス研究所(Forsyth Institute/Harvard University)・ポスドク:免疫学とサイトカイン生物学
  • 1998年(35歳):ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)で研究博士号(PhD)を取得:遺伝学および分子生物学
  • 1999 – 2007年(36 – 44歳):ミシガン大学(University of Michigan)・教授
  • 2007年(44歳):カリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部(UCLA School of Dentistry)・教授、後に副学部長
  • 2011年(48歳):米国の医学アカデミー(Institute of Medicine of National Academies)・会員
  • 2013年(50歳):中国工学アカデミーの外国人研究者
  • 2018年(55歳):論文中の画像の異常が指摘された
  • 2021年3月16日(57歳)まで:処分なし

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★スーパースター

ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang、写真出典)は中国出身でカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA School of Dentistry)・教授になった。米国籍を取得している。

ワンの論文は計12,000回以上引用され、米国および国際レベルで最も被引用数の多い歯学研究者の1人である。

NIHから1996~2020年の25年間に123件、約25億円のグラントを受領している。 → Grantome: Search

2011年(48歳)、米国の医学アカデミー・会員に選出された。

2013年(50歳)、中国工学アカデミーの外国人研究者(中国工程院外籍院士)に選出された。なお、この時点で、中国工学アカデミーの外国人研究者は6人しかいなかった。 → UCLA Dentistry faculty member recognized by prestigious Chinese Academy of Engineering | UCLA Dentistry

つまり、スーパースター科学者である(orだった)。

★ワル仲間

レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)のワル仲間を抉り出した。なお、ワル仲間の“ワル”は単なる言葉のアヤである。

このワル仲間はカリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部(UCLA School of Dentistry)の学部長グループで、ツンユー・ワンを含めNIHから16件のR01グラント、計3200万ドル(約32億円)の研究費を獲得している。アクドイこともしてでも手放したくない金額である。

1人目は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部(UCLA School of Dentistry)・学部長に2016年に就任したポール・クレブスバッハ学部長(Paul Krebsbach、写真出典)である。

ちなみにクレブスバッハ学部長は、ツンユー・ワンを副学部長(6人いる)の1人に選んでいる(Dean’s Suite | UCLA Dentistry)。クレブスバッハ学部長の2論文がツンユー・ワンと共著で、2論文中の1論文が疑惑論文である。

2人目は、クリスティン・ホン準教授(Christine Hong、写真出典)で、ツンユー・ワンの弟子の1人である。18論文がツンユー・ワンと共著で、18論文中の4論文が疑惑論文である。その後カリフォルニア大学サンフランシスコ校・歯学部(UCSF School of Dentistry)・準教授に移籍した。

3人目は、ソティリオス・テトラディス上級副学部長(Sotirios Tetradis、写真出典)である。ツンユー・ワンと共著が1報ある。疑惑論文はない。

4人目は、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)の友人・タイガー(虎仔、TigerBB8)が見つけたボー・ユ助教授である。

ボー・ユ助教授(BoYu、写真出典)は17論文がツンユー・ワンと共著で、17論文中の5論文が疑惑論文である。

ボー・ユ助教授の父親は中国口腔医学会(Chinese Stomatological Association)・会長のグァンヤン・ユ(GuangyanYu、?光岩、写真出典)である。

グァンヤン・ユは北京大学・歯科大学院時代にツンユー・ワンの2年先輩で、息子のボー・ユがカリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部に入学した時、ツンユー・ワンが何らかの配慮をしたと思える。

グァンヤン・ユは中国で強大な勢力を持っていて、ツンユー・ワンの中国での研究室設置、アカデミー会員選出など、いろいろ支援した。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校にツンユー・ワン研究室は、中国からの多数の若手研究者を教育する米国内の中国研究陣地となっている。

ワン研究室は、中国人の若手研究者に業績を与え、中国学術界を大きく発展させることに尽力している。例えば、その1人であるズドン・ジョウ(Xuedong Zhou)は、四川大学・西中国口腔病学部(West China School of Stomatology)の学部長になった。ズドン・ジョウ(Xuedong Zhou)の論文のネカト疑惑を大学に告発した研究者は、かなり厳しいコクハラを受けた。

ツンユー・ワンは中国にある彼の研究所で、結論が良好である限り、数字が間違っていることは大した問題ではない、と公然と述べている。つまり、「白いネコでも黒いネコでもネズミを取ってくるのがいいネコだ」(鄧小平)。

★性不正騒動:院生のタンジャヤ

ツンユー・ワン事件は性不正・アカハラ事件とも絡んでいて、ややこしい。

ネカト事件に入る前に、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)とそのワル仲間が性不正・アカハラ加害者として告発された事件にすこし触れよう。

性不正・アカハラ事件は、報道されてから1~2年間は告発者が匿名で報道されていた。それで、事件を把握しにくかったが、2021年3月現在は実名報道されているので、以下は、最初から実名で記す。

性不正・アカハラ事件では、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)はほとんど登場しないが、全体像をつかむのに、状況を理解しておいた方がベターである。

性不正の加害者はソティリオス・テトラディス上級副学部長で、被害者は女性院生のジャスティン・タンジャヤ(Justine Tanjaya)である。

2016年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA School of Dentistry)・歯学部のカン・ティン教授(Kang Ting、写真出典)は歯科矯正学科長(Section of Orthodontics)だった。

2016年5月、カン・ティン教授は、指導していた院生のジャスティン・タンジャヤ(Justine Tanjaya、写真出典)がテトラディス上級副学部長から性不正を受けていると相談されていた。

その事を、歯学部長の上のカリフォルニア大学ロサンゼルス校全体の副総長(vice chancellor)であるマイケル・レヴィン(Michael Levine、写真出典)に相談していた。

2018年6月、院生のタンジャヤは、テトラディス上級副学部長の性不正を大学に訴えた。

2018年7月7日、カン・ティン教授(Kang Ting)は、テトラディス上級副学部長がタンジャヤ院生に性不正をしていた証人として、大学を訴えた。

2019年4月、院生のタンジャヤは、テトラディス上級副学部長とカリフォルニア大学ロサンゼルス校を連邦裁判所に訴えた。 → Justine Tanjaya v. The Regents of The University of California, 2:19-cv-02956 ? CourtListener.com

以下は2020年11月30日の裁判所記録の冒頭部分(出典:同)。全文は3頁 → https://law.justia.com/cases/federal/appellate-courts/ca9/20-55040/20-55040-2020-11-30.html

裁判所に提出した院生のタンジャヤの訴状によると、ナント、指導教授のカン・ティン教授から性不正行為を受けたという虚偽の申し立てをするよう、テトラディス上級副学部長から教唆された、と述べている。院生のタンジャヤはそれを拒否した。

ところが、テトラディス上級副学部長は院生のタンジャヤに代わって、カン・ティン教授に対して虚偽のセクハラの申し立てを行なっていた。

2021年3月16日現在、この性不正騒動はまだ決着していないと思う。白楽はこの結論を把握できていない。ゴメン。

★アカハラ騒動:カン・ティン教授

セクハラ騒動だけでなくアカハラ騒動もあった。

アカハラ騒動の加害者はテトラディス上級副学部長などのワル仲間で、被害者は性不正の証人になったカン・ティン教授である。

2020年5月、カン・ティン教授(Kang Ting)は、大学、テトラディス上級副学部長、クレブスバッハ学部長、およびカン・ティン教授の後任を暫定的に務めた4人の教授を、裁判所に訴えた。

カン・ティン教授は、2017年末に台湾で病気の父親の世話のために大学に休職を申請した。裁判所に提出したカン・ティン教授の訴状によると、その時から、上記の教員たちから嫌がらせと差別を受けたと述べている。実際は、院生のタンジャヤの性不正被害の訴えを支持したり、証人になった事への報復(コクハラ)と思われる。

訴状によると、テトラディス上級副学部長とクレブスバッハ学部長の嫌がらせと差別により、カン・ティン教授は不眠症、不安神経症、うつ病、胃潰瘍、胃腸の問題を発症した。 カン・ティン教授はまた、大学が彼の病気を疑問視し病気休暇の申請を認めなかった。つまり、従業員の健康問題を適正に対応しなかった。

2021年3月16日現在、このアカハラ騒動もまだ決着していないと思う。白楽はその後の動きを把握できていない。

★ネカト騒動

タンジャヤ院生への性不正事件、カン・ティン教授へのアカハラ被害事件とは別件である。但し、同じ人物が登場する。

本記事の主役のツンユー・ワン副学部長(王存玉、Cun-Yu Wang)が主役である。

2018年8月28日(55歳)、カン・ティン教授は、ツンユー・ワン副学部長のネカト行為を、マイケル・レヴィン副総長に新たな懸念として相談していた。

2018年11月13日(55歳)、カン・ティン教授は、歯学部のクレブスバッハ学部長とツンユー・ワン副学部長のネカト行為を、大学に正式に申し立てた。

つまり、性不正事件の証人、アカハラ事件の被害者であるカン・ティン教授がネカトを訴えたのである。

それ以来、カン・ティン教授は、大学の法令順守コーディネーターであるアン・ポラック副総長補佐(Ann Pollack、assistant vice chancellor)に積極的に協力して、ポラック副総長補佐から指示されたネカト証拠の収集に取り組んだ。

2018年11月29日(55歳)、ツンユー・ワン副学部長とクリスティン・ホン準教授(Christine Hong)の論文のデータ「ねつ造・改ざん」の証拠が、歯学部のすべての教員に電子メールで送信された。送信者は匿名だった。

データ「ねつ造・改ざん」の証拠は、中国のウェブサイトにもまとめられている。このネカト画像データを提供したのはカン・ティン教授と思われる。 →  2018年11月19日の「医微客」記者の「joyzlan」記事:学?界的大海? | 中国工程院外籍院士,?表的6篇??文章?嫌一?多用_医微客_公考网

2019年1月10日(55歳)、カン・ティン教授は、クレブスバッハ学部長から歯科矯正学科長(Section of Orthodontics)を辞任させられた。コクハラ、つまり告発への報復と思われる。

2019年1月16日(55歳)、カン・ティン教授は、駐車場でツンユー・ワン副学部長に罵声を浴びせられ、大声で脅された。ツンユー・ワン副学部長は何度も「あなたは私を痛めつけようとしたが、今は、あなたが痛めつけられている。ネカト追及を止めなければ、また痛めつけるぞ!」脅した。学内の人がこの口論を目撃していた。

2019年4月(55歳)、前述したように、院生・タンジャヤが正式に性不正を連邦裁判所に訴えた。この訴えで、カン・ティン教授は彼女の証人としての役割を果たしている。

★ビックの指摘

2020年1月(56歳)、上記のような騒動とは別に、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)が2007-2019年(44- 56歳)の13年間に出版したワン教授の28論文の画像に、画像の異常があると指摘した。

しかし、ワン教授は画像の異常が指摘されるとすぐに論文を訂正した。その結果、訂正論文は多いが撤回論文は1報しかない。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校はワン教授に対するネカト調査をせず、ワン教授は無処分である。

調査をしない背景は、ワル仲間の結束とツンユー・ワンを中心にNIHから16件のR01グラント、計3200万ドル(約32億円)の研究費を獲得しているカネの力と思われる。

【ねつ造・改ざんの具体例】

2021年3月16日現在、、カリフォルニア大学ロサンゼルス校はネカト調査をしていない。

「パブピア(PubPeer)」では、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)の論文のコメントを「”Cun-Yu Wang”」で検索すると、30論文にコメントがあった。

30論文はとても多いので、ネカト論文として最新(2018年)と最古(2002年)の2論文を選んで、「パブピア(PubPeer)」での指摘点を以下に示す。

★「2018年8月のCell Stem Cell」論文

「2018年8月のCell Stem Cell」論文の書誌情報を以下に示す。2018年10月4日、訂正された。ワル仲間のボー・ユ助教授(Bo Yu)が第一著者で、クリスティン・ホン準教授(Christine Hong)も共著者になっている。

以下の内容と図の出典はパブピア:https://pubpeer.com/publications/10B25FCE509BB639E3FE6931B86808?utm_source=Chrome&utm_medium=BrowserExtension&utm_campaign=Chrome

2018年8~9月、スタンケウス・デサーティコーラ(Stahnkeus Deserticola)らが、いくつかの図の問題を指摘した。まとめると、

  1. 図4Dの画像を回転し、図S4Oで使用。
  2. 図4Dの画像を回転し、図S5Dで使用。
  3. 図4D単一ウェル画像を図S5Dでも使用。
  4. 4年前の「2014年8月のNature Medicine」論文のウエスタンブロット画像を、図7Aで再利用。

4番目の例を以下に示す。

以下が図7A。最下段の「α-tubulin」のウエスタンブロット画像が

4年前の「2014年8月のNature Medicine」論文の図5e。最下段の「α-tubulin」のウエスタンブロット画像と同じ。

2018年9月4日、第一著者のボー・ユ助教授(BoYu)が次のように対応した。

読者の皆様には、論文の誤りを発見していただき、誠にありがとうございます。ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。 現在、学術誌・編集者と協力して、これらの意図しない間違い(unintentional errors)を修正するための作業をしています。 訂正が公開され次第、情報を更新し、関連する生データにもアクセスできるようにします。 条件付きのPgc-1aノックアウトマウス系統を引き続き維持しており、実験結果を繰り返したい他の研究者に喜んで提供しています。

とても、優れた対応である。

2018年10月4日、訂正版の論文が出版された。

2020年4月3日、それから1年半後、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が訂正版論文の複数の図に以下の重複使用があると指摘した。

 

2021年3月16日現在、第一著者のボー・ユ助教授(BoYu)は何も対応していない。2018年9月4日の対応は「とても、優れた対応」だったのに、ナンタルことか。

★「2002年4月のJ Cell Biol.」論文

「2002年4月のJ Cell Biol.」論文の書誌情報を以下に示す。2021年3月16日現在、訂正、懸念表明、撤回されていない。著者にワル仲間は入っていない。

以下の内容と図の出典はパブピア:https://pubpeer.com/publications/4BEC6C3B5777B534E7047C1403ECA4?utm_source=Chrome&utm_medium=BrowserExtension&utm_campaign=Chrome

2020年4月1日、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が図3に重複使用(赤枠)があると指摘した。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年3月16日現在、パブメド( PubMed ))で、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)の論文を「Cun-Yu Wang [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の146論文がヒットした。

2021年3月16日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文訂正リストを検索すると、0論文が訂正されていた。

★撤回監視データベース

2021年3月16日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)を「Wang, Cun Yu」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、本記事で問題にした「2005年7月のCellular Signalling」論文・ 1論文が2021年1月13日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年3月16日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)の論文のコメントを「”Cun-Yu Wang”」で検索すると、30論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》ワル仲間 

ネカトもそうだが、人間は「つるん」で悪いことをする。イヤ、悪いことだけでなく良いことも「つるん」でするが・・・。

ネカト事件でその「つるみ」状況がどのようなものか、なかなかわからない。しかし、実際は「つるみ」仲間、ワル仲間が事件のもみ消しから過剰な処罰までを決めている。だから、ネカト事件を理解する時、ワル仲間の存在を把握したいのだが、そんなことは調査報告書に書かれていない。

それで、推察するしかない。

レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)とその友人は元来、そういう裏事情をえぐりだすことに優れているが、今回も、ナルホド、と思われるワル仲間を示してくれた。

《2》コクハラ 

ツンユー・ワン事件は性不正・アカハラ事件とも絡んでいて、ややこしい。

というか、多くのネカト事件では、告発者に報復するコクハラ行為が常態化している。

告発者を直接脅すこと以外に、告発者の弱みを暴露することや、不正を強調することも頻繁に行なわれている。ただ、このようなコクハラ行為はあまり取り上げられず、報道されない。

今回は、ツンユー・ワンのワル仲間が告発者カン・ティン教授(Kang Ting)の12年前の性不正事件を暴露するというコクハラ行為をしている(なお、実際は性不正したのはワル仲間の方)。

《3》「間違い」

ネカトと思われるのに、ネカト犯が「間違えました、スミマセン、論文を訂正します」と対応すると、現在のルールでは、それ以上、追求しなくてもよい状況がある。というか、カリフォルニア大学ロサンゼルス校・歯学部は「それで問題なし」として済ませた。

「間違えました、スミマセン、論文を訂正します」と対応されても、実際はネカトであることがかなりある。ネカト調査の結果、「間違い」ではなく「ネカト」と判定することもできる。調査主体である大学の胸先三寸で決まる。

ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)の疑惑論文のほとんどは、この「間違いでした」で済ませている。

ツンユー・ワンは副学部長で、ポール・クレブスバッハ学部長(Paul Krebsbach)のワル仲間の1人だから、クレブスバッハ学部長の治世下では、「不正なし」という結論になる。

イインだろうか?

「間違い」は全部、ネカトハンターの指摘に対しての回答である。自発的に「間違い」に気がついての訂正ではない。

白楽が思うに、意図的な “間違い”(早い話、「ねつ造・改ざん」)なので、著者は最初から“間違い”(ねつ造・改ざん)を知っている。その“間違い”(ねつ造・改ざん)が他人に気付かれなければ、そのままにしておきたい。だから、自発的に「間違い」に気付くということはあり得ない。それで、ネカトハンターに指摘されると、その都度、「間違い」を謝罪し、論文を訂正する。

このスタイル、不正に分類すべきだと思う。

ツンユー・ワン(王存玉、Cun-Yu Wang)、https://www.dentistry.ucla.edu/newsletter/18/07/searching-cure-dr-cun-yu-wang

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 百度百科:王存玉(中国工程院外籍院士、美国国家医学院院士)_百度百科
② 2018年11月19日の「医微客」記者の「.joyzlan」記事:学?界的大海? | 中国工程院外籍院士,?表的6篇??文章?嫌一?多用_医微客_公考网
③ 2019年5月2日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Naughty dentists, or how UCLA hunts a whistleblower ? For Better Science
④ 2019年5月10日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:UCLA hunts whistleblowers as student accuses dentistry dean of sexual harassment ? For Better Science
⑤ 2020年5月27日のジンタク・ハン(Jintak Han)の「Daily Bruin」記事:Dentistry professor sues UC for alleged retaliation following Title IX testimony – Daily Bruin
⑥ 2020年5月28日の「College Fix」記事:UCLA official filed false Title IX complaint on behalf of student who refused to accuse professor: lawsuit | The College Fix
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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