2023年8月10日掲載
ワンポイント:【長文注意】。コヤナギは琉球大学・医学部を卒業し、複数の所属を経た後、2014年(40歳?)、サン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)・研究員になった。と同時に、論文工場に論文作成と高被引用を依頼し始めた(ココは推定)。その結果、7年後の2021年、続く2022年、ナント、多数論文出版者で高被引用者になった。ただ、2022年、第一所属を、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)に変更していた。この変更で、コヤナギは大学ランキング不正に加担していると、2023年4月19日(49歳?)、エル・パス(EL PAÍS)新聞に指摘された。コヤナギは11日後の2023年4月30日(49歳?)、サン・ジョアン・デ・デウ研究所を辞職し、以来、行方不明。論文工場への論文作成依頼や大学ランキング不正の加担は新しい研究不正で、国・大学の現行規則ではネカトではないが、学術界・出版界ではクロである。日本も対処すべき新しい研究不正問題である。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-9565-5004、 Scopus Author ID: 57197741912 、写真出典)は、琉球大学・医学部を卒業した日本の医師免許所持者で、スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)・グループ長になった。専門は精神科学である。
本件はネカト事件ではない。
2014年(40歳?)、コヤナギは論文工場に論文作成と高被引用を依頼した(ココは推定)。その後数年で、多数論文出版者になった。新聞記事によると、2020年に78報、2021年は69報、2022年は115報の論文を発表した。
2021年(47歳?)、そして、高被引用者になった。
それで、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)に勧誘され、名目上、第一所属をサウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)に変え、大学ランキング不正に加担した。
白楽は把握できないが、この加担で、かなりのお金を手に入れたと思う。
そして、2022年(48歳?)、去年に続いて再度、スペインの高被引用者になった。
これら論文工場への論文作成と高被引用の依頼、大学ランキング不正の加担は新しい研究不正で、国・大学の現在の規則ではネカトではない。しかし、学術界・出版界ではクロである。
繰り返すが、論文工場ぶ論文作成と高被引用の依頼、大学ランキング不正加担は法律違反ではないし、国・大学の規則で禁止してはいない。
ただ、学術的には両方とも研究不正または研究不正に近い。国・大学は研究不正規則を改訂し、この手の行為を禁止すべきである。
2023年4月19日(49歳?)、スペインンの地元紙であるエル・パス(EL PAÍS)新聞のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者がコヤナギの大学ランキング不正加担を報道した。
その2日前の2023年4月17日(月)(49歳?)、内偵しているとの情報を受け、コヤナギはキング・アブドゥルアズィズ大学との契約を破棄した。
そして、新聞記事掲載の11日後、2023年4月30日(49歳?)、コヤナギは、スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所を辞職した。
サン・ジョアン・デ・デウ研究所はコヤナギを処罰していない。
2023年8月9日(49歳?)現在、コヤナギは行方不明である。
サン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)。写真出典
- 国:スペイン
- 成長国:日本
- 医師免許(MD)取得:日本の琉球大学
- 研究博士号(PhD)取得:米国のジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1992年に琉球大学・医学部に入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:50 歳?
- 分野:精神科学
- 不正疑念論文発表:2014~2023年(40~49歳?)の10年間
- ネカト行為時の地位:サン・ジョアン・デ・デウ研究所・グループ長
- 発覚年:2023年(49歳?)
- 発覚時地位:サン・ジョアン・デ・デウ研究所・研究員
- ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は匿名で「パブピア(PubPeer)」に公表。マヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者がエル・パス(EL PAÍS)新聞の記事とした
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「EL PAÍS」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①サン・ジョアン・デ・デウ研究所は調査していない
- 所属機関・調査報告書のウェブ上での公表:なし。サン・ジョアン・デ・デウ研究所は調査していない
- 所属機関の事件への透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)。サン・ジョアン・デ・デウ研究所は調査していない
- 不正:論文工場製の論文発表、大学ランキング不正に加担
- 不正論文数:「パブピア(PubPeer)」では11論文にコメントがあり。推定では論文工場製の論文が700~800報ある
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後行方不明でハッキリしない。推定では、、移籍し研究職を続けた(◒)、または、やめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人:①:渋谷健司(しぶや けんじ、東京大学・助教の時の上司)、2014年の共著論文。②多数:日本で育っているので
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:(1):リクルートドクターズキャリア (保存版① ②)、(2):Ai Koyanag
- 生年月日:不明。仮に1974年1月1日生まれとする。1992年に琉球大学・医学部に入学した時を18歳とした
- 子供時代:4〜8歳は米国在住。11〜15歳はスイス在住
- 1992年4月〜1998年2月(18〜24歳?):琉球大学・医学部卒業。医師免許(MD)取得:厚生労働省の医師等資格確認検索で平成10年(1998年)、平成21年( 2009年)の2人がヒット。平成21年の医師は別人
- 1998年(24歳?):国立国際医療センター・研修医
- 2002年9月〜2003年9月(28〜29歳?):英国のリバプール大学熱帯医学大学院(Liverpool School of Tropical Medicine)・修士号取得
- 2003年9月〜2008年1月(29〜34歳?):米国のジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health: BSPH)で研究博士号(PhD)を取得
- 2008年10月(34歳?):東埼玉総合病院・医員:消化器内科
- 2011年(37歳?):東京大学・医学系研究科・助教:KAKEN — | 小柳 愛 (10585847)
- 201x~2014年(3x~40歳?):英国やスウェーデンで研究
- 2014年(40歳?):スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)・研究員:精神科。2022年8月に在職していた
- 2022年1月10日(48歳?):2021年の高被引用者になった。この時の第一所属はバルセロナ大学
- 2022年x月(48歳?):サン・ジョアン・デ・デウ研究所の許可を得て、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)を第一所属とする契約を結ぶ
- 2022年11月15日(48歳?):2022年の高被引用者になった。この時の第一所属はキング・アブドゥルアズィズ大学
- 2023年4月14日(金)(49歳?):エル・パス(EL PAÍS)新聞記者がコヤナギのキング・アブドゥルアズィズ大学との契約の妥当性をカタルーニャ高等研究所(ICREA)に問い合わせた
- 2023年4月17日(月)(49歳?):コヤナギはキング・アブドゥルアズィズ大学との契約を破棄
- 2023年4月19日(49歳?):エル・パス(EL PAÍS)新聞でコヤナギの不正疑念が報道
- 2023年4月30日(49歳?):コヤナギは、スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所・辞職:サイト削除(2022年8月保存版)
- 2023年8月9日(49歳?)現在:行方不明
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi、写真出典)は、4〜8歳の時は米国に在住し、11〜15歳の時はスイスに在住していた。親は大使館職員だったのだろうか。
1998年(24歳?)に琉球大学・医学部を卒業し、その後、英国や米国の大学院に入学している。
2014年(40歳?)、スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)の精神科に勤務した。その前に、東埼玉総合病院・消化器内科の医師だったり、東京大学・医学系研究科・助教だったりした。
★多数論文出版者で高被引用者
アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は多数論文出版者である。
新聞記事によると、2020年に78報、2021年は69報、2022年は115報の論文を発表した。
白楽が調べると、パブメド(PubMed)では、2020年に76報、2021年は82報、2022年は87報の論文発表だった。
2021年(47歳?)、そして、高被引用者になった。
2022年(48歳?)、去年(2021年)に続いて再度、スペインの高被引用者になったス(以下出典、保存版、2023年8月8日内容変更やリンク切れ)。最も多く引用された「Lancet」論文は 3,492回引用されていた。
★論文出版数の急増
2014年(40歳?)、コヤナギはスペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所・研究員に就職した。ボスはジョセップ・マリア・ハロ(Josep Maria Haro、写真出典)である。
コヤナギがスペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所から出版した最初の論文は「2014年12月のPLoS One」論文で、ボスのジョセップ・マリア・ハロ(Josep Maria Haro)が最後著者である。ということは、ハロがコヤナギをサン・ジョアン・デ・デウ研究所に招聘したのだろう。
コヤナギが出版した論文数を年別に見ていこう。
パブメド(PubMed)で、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)の論文を「Ai Koyanagi[Author]」で検索すると、以下の図に示すように、2015年(赤矢印)から論文数が急増し始めた(2023年6月12日時点。保存不可。縦軸は論文数、横軸は西暦年) → Ai Koyanagi[Author] – Search Results – PubMed。
図は2023年6月12日時点の集計なので、2023年の数値は2022年より少し少ない。
コヤナギは、2005~2013年(31~39歳?)の9年間に18報しか論文を出版していない。この出版数は、平均すると2報/年である。
ところが、驚愕だが、7年後の2020年には、1年間に76報、そして、2021年には82報、2022年には87報の論文発表するようになったのである(パブメド(PubMed)の数値)。わずか7年で大大大急増である。
論文出版数の増加は、別のデータベースである「Scopus」でも同じように2015年(赤矢印)から論文数が急増し始めている(2023年6月12日時点。以下)。論文出版数の 2年遅れて、被引用数が2017年頃から急増し始めたこともわかる。 → 出典:Koyanagi, Ai – Scopus Preview、(2023年6月12日保存版)
図は2023年6月12日時点なので、2023年の数値は2022年の約半数である。
★論文工場と大学ランキング不正
一般的に、研究者が論文工場に論文作成を依頼したことや、大学ランキング不正に加担した証拠をつかむのは難しい。
あとの節で、もう少し具体的に示すが、以下、不正の手口の全体的な流れを示す。
どうして、わずか7年で出版論文数が大大大急増したのか?
以下、推定です。
2014年(40歳?)、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は研究員として就職したサン・ジョアン・デ・デウ研究所のボスのジョセップ・マリア・ハロに勧められて、お金を払って論文工場に論文作成と高被引用を依頼した(推定ですよ)。
それで、前節で示したように、2015年を契機にコヤナギの論文出版数が急増し始めた。2年遅れで被引用数も急増し始めた、数年後の2021年と2022年にはスペインでトップクラスの多数論文出版者で高被引用者になった。
論文工場は、コヤナギの依頼に応じ、フェイク論文を作り、コヤナギを共著者に加えた論文を多量に出版した。この時、これら論文はコヤナギの論文を多数引用した。それで、コヤナギの被引用数も急速に上昇した。
コヤナギは多額のお金を払ったのだろう、論文工場は7年間も、コヤナギの論文を多量に出版し、多量に引用した。つまり、多量に出版した論文のぞれぞれがコヤナギの論文を多量に引用していた。
それで、出版論文数が急速に増え、被引用数も急上昇した。
論文工場に多額のお金を払い続けたことで、5~7年後、コヤナギはスペインでトップクラスの多数論文出版者で高被引用者になった。
2022年1月10日のスペインの新聞記事は、ジョセップ・マリア・ハロとコヤナギが世界的な業績を挙げた研究者だと紹介している。 → 出典記事はココ
高被引用者(Highly Cited Researcher)になったことは、英国に本拠を置くクラリベイト社(Clarivate)が毎年発表しているので誰にでもわかる。
2021年にコヤナギが高被引用者になった時、以下のように、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は、名目上の第一所属をスペインのバルセロナ大学(University of Barcelona, Spain)としていた。 → 「Recipients – Highly Cited | Researcher Recognition」の「Name」に「Ai Koyanagi」と打つと表示される。
この時、コヤナギは、スペインのカタルーニャ州政府の研究費配分機関であるカタルーニャ高等研究所(ICREA:Catalan Institution for Research and Advanced Studies)から給料をもらい、スペインのバルセロナ大学(University of Barcelona, Spain)に名目上は所属し、スペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所で実際の研究を行なっていた。
そして、翌年の2022年、去年(2021年)に続いて再度、スペインの高被引用者になったコヤナギの所属は、以下のように、去年と変わっていた。
つまり、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は、第一所属をサウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)に変え、第二所属をスペインのカタルーニャ高等研究所(ICREA)にした。 → 「Highly Cited Researchers – Clarivate」の「Name」に「Ai Koyanagi」と打つと表示される。
1年間で何が起こったか?
10年以上前から、サウジアラビアの複数の大学は、国際大学ランキングの順位を不正に上げる工作をしていた。
論文の第2の所属をサウジアラビアの大学にし、キャンパスで1~2週間過ごすという条件で、サウジアラビアの複数の大学は、多数論文出版者で高被引用者を非常勤教授として雇い、高額な報酬を支払っていた。
もちろん、リクルートする相手(多数論文出版者・高被引用者)によって提供する金銭・待遇は異なるが、例えば、年間7万ドル(約700万円)以上を支払っていた。 → 2011年12月9日のサイエンス誌の記事:Saudi Universities Offer Cash in Exchange for Academic Prestige | Science。
サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)もその大学の1つで、担当者は、高被引用者の中から、これと思う研究者に目を付け、キング・アブドゥルアズィズ大学を所属先にするよう、毎年、仕事として交渉し、高被引用者をリクルートしていた。
2021年にコヤナギが高被引用者になった時、コヤナギはターゲットになった。
受諾すれば、大学ランキング不正に加担することになる。
ただ、学術界と学術出版界は大学ランキング不正を研究不正とみなすが、どの国も法律で禁止してはいない。どの大学も規則で禁止していない。
コヤナギはこの誘いに乗ったが、さすが、所属するスペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)に無断で行なってはいない。
サン・ジョアン・デ・デウ研究所に申請し、許可を得て、第一所属をサウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)、第二所属をスペインのカタルーニャ高等研究所(ICREA)とした。
くどいけど、所属研究所に申請し、認められている。決して無断で行なったわけではない。
★エル・パス(EL PAÍS)新聞記者の調査報道
2023年4月19日(49歳?)、エル・パス(EL PAÍS)新聞のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede、写真出典)記者がアイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)の大学ランキング不正を報道した → 2023年4月19日、記事(スペイン語版):Una de las científicas más citadas del mundo, Ai Koyanagi, obligada a renunciar a su polémico contrato con una universidad saudí | Ciencia | EL PAÍS
→ 2023年4月20日、記事(英語版):One of the most internationally cited scientists, Ai Koyanagi, forced to renounce her controversial contract with a Saudi university | Science & Tech | EL PAÍS English
エル・パス(EL PAÍS English)新聞は、コヤナギの多数論文出版ぶりを数値を示して次のように報道した。
コヤナギは、2022年に115報の論文を発表し、世界で最も頻繁に引用される科学者の1人に選ばれた。115報の論文発表は、平均すると約3日に1報の論文出版である。
コヤナギは、バルセロナのサン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)の研究グループ長(共同)で、カタルーニャ高等研究所(ICREA:Catalan Institution for Research and Advanced Studies)から給料をもらっていた。
もう1人の共同グループ長は上司だった精神科医のジョセップ・マリア・ハロ(Josep Maria Haro)だが、ハロはカタルーニャ高等研究所(ICREA)から給料をもらっていなかった。
ハロは2017年以来、高被引用者リストに掲載されている。そのリストでは、サウジアラビアのキング・サウード大学(King Saud University)を第一所属としていた。第二所属はスペインのバルセロナ大学(University of Barcelona, Spain)である。
2022年1月10日の記事では、2021年のスペインの高被引用者100人に、コヤナギとハロが選ばれた、とあった。 → 2022年1月10日記事(写真出典同):Josep Maria Haro i Ai Koyanagi, professionals de l’Institut de Recerca Sant Joan de Déu, entre els investigadors més influents del món | Institut de Recerca SJD
2022年x月(48歳?)、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学は、2021年の多数論文出版者で高被引用者であるコヤナギに仲介者を介して接触してきた。
仲介者はカルタヘナ工科大学(Polytechnic University of Cartagena)・教授で数学者のフアン・ルイス・ガルシア・ギラオ(Juan Luis García Guirao)だった。ガルシア・ギラオ教授は自分が仲介したことを認めている。
コヤナギは、この話に乗り、2022年、サン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)の許可を得て、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)を第一所属とするように変えた。
繰り返すが、以下に示すように、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は、第一所属をサウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)に変え、第二所属をスペインのカタルーニャ高等研究所(ICREA)に変えた。 → 「Highly Cited Researchers – Clarivate」の「Name」に「Ai Koyanagi」と打つ。
★合法だけど・・・
英国に本拠を置くクラリベイト社(Clarivate)は論文の引用数が最も多い高被引用者(Highly Cited Researcher)を毎年発表している。世界中の約7,000人の研究者がリストされている。
大学ランキングはこのリストを評価の1つの基準として大学にポイントを付与している。それで、高被引用研究者が多い大学ほど、大学ランキングの上位に表示される。2022年はハーバード大学 (米国) がトップだった。
コヤナギは、大学ランキングを人為的に上げる工作に加担し、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)を第一所属とするように変えた。
この大学ランキング不正に加担した研究者は、2023年、スペインで11人も摘発された。コヤナギはその1人だった。
2023年4月14日(金)、エル・パス(EL PAÍS)新聞がカタルーニャ高等研究所(ICREA)・エミリア・ポーラ所長(Emilià Pola、事務局長かも?、写真出典)に、「コヤナギは契約違反をしたのではないか?」と問い合わせた。
2023年 4月18日(火)、ポーラ所長から次の返事がきた。
コヤナギは、金銭授与と引き換えに、サウジの大学を第一所属とすることを、サン・ジョアン・デ・デウ研究所に申請し、許可を得ていた。
コヤナギは、サン・ジョアン・デ・デウ研究所の職員であるが、公務員ではなく、サン・ジョアン・デ・デウ研究所はコヤナギの申請を許可する権限を持っていた。
従って、コヤナギの兼職は合法である。
前述したように、コヤナギは、2022年、サン・ジョアン・デ・デウ研究所(Sant Joan de Déu Research Institute)の許可を得て、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)を第一所属とするように変えた。
しかし、カタルーニャ高等研究所(ICREA)の規則はこの種の契約は認めていない、とポーラ所長は強調した。
2023年4月17日(月)、コヤナギはキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)との契約を破棄した。
そして、エル・パス新聞が記事を掲載した11日後の2023年4月30日(49歳?)、コヤナギはスペインのサン・ジョアン・デ・デウ研究所を辞職した。
今後はスペイン以外の国で働くそうだ。日本に帰国したかも?
なお、2023年8月9日現在、ジョセップ・マリア・ハロ(Josep Maria Haro)は、サン・ジョアン・デ・デウ研究所に在職している。 → ①2023年8月4日保存版:Josep Maria Haro – Parc Sanitari Sant Joan de Déu 2023年6月12日保存版:Josep Maria Haro Abad | Staff | Institut de Recerca SJD | Institut de Recerca SJD
●【論文工場・大学ランキング不正の具体例】
大学ランキング不正の証拠をつかむのは難しい。
以下は推察である。
2015年、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は、お金を払って論文工場グループに加わり、論文作成と高被引用を依頼した。
論文工場主は、フェイク論文をドンドン作り、コヤナギを共著者に加え出版した。その時、コヤナギの論文を多量に引用した。
数年後、コヤナギは多数論文出版者で高被引用者になった。
そして、2022年、コヤナギは、サウジアラビアのキング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)を第一所属とするように変え、大学ランキング不正に加担した。
★「2021年10月のLancet Rheumatol.」論文
コヤナギが著者の1人である「2021年10月のLancet Rheumatol.」論文の書誌情報を以下に示す。2023年8月9日現在、撤回されていない。
- Autoimmune inflammatory rheumatic diseases and COVID-19 outcomes in South Korea: a nationwide cohort study.
Shin YH, Shin JI, Moon SY, Jin HY, Kim SY, Yang JM, Cho SH, Kim S, Lee M, Park Y, Kim MS, Won HH, Hong SH, Kronbichler A, Koyanagi A, Jacob L, Smith L, Lee KH, Suh DI, Lee SW, Yon DK.
Lancet Rheumatol. 2021 Oct;3(10):e698-e706. doi: 10.1016/S2665-9913(21)00151-X. Epub 2021 Jun 18.
2022年8月xx日、「Melanelixia subargentifera」が論文の異常をパブピアで指摘した。その内容を、白楽がかみ砕くと以下のようだ。パブピアの出典:https://pubpeer.com/publications/AB6361CF6204574A1F49C90C59BB21
この論文は韓国での自己免疫炎症性リウマチ性疾患と新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のコホート研究なのに、21人の著者は、15の国・機関・分野に分散している。その多様性は異常である。韓国以外の国としてオーストリア、スペイン、フランス、英国、米国の研究者が参加しているが、彼らは韓国のコホート研究にどう貢献したのか? 眼科、耳鼻咽喉科、スポーツ・運動科学の研究者が参加しているが、自己免疫炎症性リウマチ性疾患のコホート研究にどう貢献したのか?
以下に、21人の著者の所属する15の機関(国)を示す。パブピアの出典:https://pubpeer.com/publications/AB6361CF6204574A1F49C90C59BB21
なお、この「2021年10月のLancet Rheumatol.」論文がコヤナギの別の論文を多数引用しているかどうか、白楽は調べていない。
文献欄の引用論文には最大3人の共著名しか記載されない。著者が多数の場合、第一著者+その他で、第一著者の名前しか記載されない。それで、引用論文を1つ1つ閲覧しないと、コヤナギの別の論文を引用しているかどうかわからない。これを調べるのはかなり重労働である。グウタラな白楽は調べるのを断念した。
★「2021年5月のInt J Biol Sci.」論文
コヤナギが著者の1人である「2021年5月のInt J Biol Sci.」論文の書誌情報を以下に示す。2023年8月9日現在、撤回されていない。
- Roles of microRNAs in inflammatory bowel disease.
Jung H, Kim JS, Lee KH, Tizaoui K, Terrazzino S, Cargnin S, Smith L, Koyanagi A, Jacob L, Li H, Hong SH, Yon DK, Lee SW, Kim MS, Wasuwanich P, Karnsakul W, Shin JI, Kronbichler A.
Int J Biol Sci. 2021 May 17;17(8):2112-2123. doi: 10.7150/ijbs.59904. eCollection 2021.
この論文も前節の「2021年10月のLancet Rheumatol.」論文とほとんど同じ異常さがある。
18人の著者の所属する国・機関、そして研究分野は分散している。その多様性が異常である。以下に所属する機関(国)を示す。パブピアの出典:https://pubpeer.com/publications/374F4F1EEE40A52867C502EEBA44F7
なお、この「2021年5月のInt J Biol Sci.」論文もコヤナギの別の論文を多数引用しているかどうか、白楽は調べていない。グウタラなので。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
パブメド(PubMed)で、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)の論文を「Ai Koyanagi[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2023年6月24日時点で2005~2023年の19年間の547論文がヒットした。それが2023年8月8日時点で562論文になった。わずか45日間に15論文も増えた。3日に1論文出版のペースである。さて、本日は何論文になっているでしょう。
以下は2023年6月24日時点の分析値です。
547論文の内、285論文が英国のアングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)のリー・スミス教授(Lee Smith)と共著である。「Ai Koyanagi[Author] AND Smith L.[Author]」で検索すると、286論文がヒットした。
コヤナギとリー・スミス教授との関係を、白楽は調べていない。
547論文の内、118論文がジョセップ・マリア・ハロ(Josep Maria Haro)と共著である。「Ai Koyanagi[Author] AND Haro JM[Author]」で検索すると、119論文がヒットした。
2023年8月9日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2023年8月9日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでアイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)を「Ai Koyanagi」で検索すると、 0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2023年8月9日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)の論文のコメントを「”Ai Koyanagi”」で検索すると、11論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》大学ランキング:サウジアラビア の国策、成功
サウジアラビアの大学を世界的に有名にしようという活動はサウジアラビアの国策である。
世界大学ランキングの上位にサウジアラビアの大学を多数入れる目標は、20~30年前からあったと思うが、白楽は調べていない。
比較的最近の政策を1つ挙げる。
2016年4月、サウジアラビアは、ムハンマド副皇太子が主導した「Saudi Vision 2030(サウジアラビア ビジョン2030)」という計画を発表した。 → ①2017年3月:「日・サウジ・ビジョン2030」の作成経緯、②The Progress & Achievements of Saudi Arabia – Vision 2030、③PIF – Who We Are | Public Investment Fund
その中の1つとして、サウジアラビアの5つの大学を世界ランキングの200位以内に入れる目標を掲げた。
ジェトロが日本語にした84ページの「サウジアラビア 「ビジョン2030」」の40ページに「経済成長に直結する教育の必要性」という節があり、その中に以下の文章がある。
「2030年には少なくともサウジアラビア国内の大学5校を、世界の大学ランキングのトップ200にランクインさせることがこのテーマの達成目標です。」
計画3年後の2019年には既に9大学がランクインしていて、目標は達成した。
→ 2022年版大学世界ランキングにサウジの14校がランクイン|ARAB NEWS https://www.arabnews.jp/article/saudi-arabia/article_65328/
20年位前、白楽は米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science:AAAS)年会に出席し(米国のサンフランシスコで開催?)、サウジアラビアのキング〇〇大学の偉い人が30分くらい発表するセッションに参加したことがある。
スクリーンに、風光明媚なビーチ沿いの美しいキャンパス、超近代的な建物と研究設備を持つキング〇〇大学を映して、院生・ポスドクに多額の奨学金、教授に高額の給料と豪華な宿舎を用意しているので、是非、来てくださいと宣伝していた。
セッション会場には無料ランチ(豪華なサンドイッチ+冷えたソーダ缶、ペットボトル飲料水)が置いてあり、参加者に無料電卓がくばられた。白楽は無料ランチと電卓を目当てに行った気もする。
セッション中、書類が回って来て、連絡先などを記入すると、当時数万円のアップル製品がもらえた。白楽は記入しなかったが、会場にいた若い人が2人記入した。もらったアップル製品を会場で開封し、かなり喜んでいた。彼らがその後、キング〇〇大学に行ったかどうか知りません。
なお、このリクルート活動は研究不正ではない。
《2》大学ランキング:日本 の国策、大失敗
2013年、安倍首相が日本の世界大学ランキング入りを国策で進めた。
文部科学省は国立大学改革プランを発表した。第3期中期目標期間(2016年度から2021年度)には各大学の特色を生かした機能強化を推進、今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上のランクインを目指す。(2013年11月27日記事:文科省、10年間で世界大学ランキングTOP100入り10校を目標 | リセマム、保存版)
2013年11月の文部科学省の「国立大学改革プラン」(保存版)によると、以下の目標が設定された。
2013年当時、世界大学ランキングトップ100に東京大学と京都大学の2校しかランクインしていなかった。それを10年間で10校にする計画である。
現在、目標達成年の2023年だが、達成できないのは確実だ。
というのは、2022年時点で、9年前と同じ2校しかランクインしていない。9年間、全く成果があがっていない。10校のランクインが無理なのはハッキリしている。
「結果は表題の通り、目標達成は非常に厳しく、東大が35位、京大が61位、その他大学は100位まで程遠い位置にいます。」 → 2022年4月12日記事:【最新2022年】世界大学ランキング、安倍内閣の目標「世界トップ100に10校ランクイン」は達成出来そうにない
ランキング入りのために、日本政府は、10年間でどれだけ国民の税金を投入したか、白楽は調べていない。
しかし、10年かけても全く前進していない。前進どころか、東京大学が23位→35位、京都大学が52位→61位へと、むしろ、後退している。
日本政府の誰がどう責任を取るのか? 責任者でてこ~い。
今年が目標達成年だが、メディアは批判・追及しない。政府も大学も、関係者はみな黙っている。なんかヘンだ。
サウジアラビアは予定より11年も早く達成したのに、日本は、トホホである。
《3》異常
そもそも、「世界大学ランキング入りが国策」って何かヘンだ。
ランキングに入れるかどうかは、結果であって、本来、優れた大学にすることが目標でしょう。本末転倒である。
もちろん、「世界大学ランキング入り」活動をすることは不正ではない。
しかし、国策となると(国策とならなくても?)、不正な手段を使ってでも目標達成をしようとする人がでてくる。
サウジアラビアの手法は高被引用者をカネで釣って、第一所属をサウジアラビアの大学に変えてもらうことだ。
これは、所属偽装に近いのでクログレイである。
ただ、手法としては純朴である。
もっと簡単には、「大学ぐるみ」で数値データを改ざんし、大学ランキング不正をすることだ。
テンプル大学(Temple University)のように、大学の担当者が、優れた評価を得られるように自大学のデータを改ざんしてランキング企業に送ればよい。
2022年9月、コロンビア大学も大学ランキング不正がバレた。 → 2022年9月12日の記事: Columbia University Drops From No. 2 to No. 18 in U.S. News Rankings – The New York Times
テンプル大学やコロンビア大学はバレたけど、多分、米国の多くの大学は改ざんデータを送っている。
多分、日本の大学も改ざんデータを送っている。
2021年2月、筑波大学が改ざん(数値の水増し)データを送っていたのが、竹谷悦子教授に指摘された。 → 2021年2月10日記事:外国人学生数の調査要望 筑波大、学長選考批判の教授ら:朝日新聞デジタル
大学ランキングの数値データは第三者がチェックできない内部情報が多いので、誰も検証しない(できない?)。
検証できない状況では、多くの人は、不正を承知で利得行為をする。
《4》軽い気持ちで
小柳事件のアイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi、写真出典)は、深刻な研究不正とは思わず、軽い気持ちで、論文工場に論文作成と高被引用を依頼したのだろう。
それが、数年後、スペインの多数論文出版者で高被引用者になって、新聞に写真入りで称賛された。
この時はまだ、論文工場不正と大学ランキング不正の問題の深刻さを認識していなかったと思われる。
ところが、2023年4月14日(金)、「エル・パス(EL PAÍS)」新聞のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者がカタルーニャ高等研究所(ICREA)・エミリア・ポーラ所長(Emilià Pola)に問題点を指摘しポーラ所長の回答を求めた。
不正を知ったポーラ所長は、アイ・コヤナギを詰問し叱責した。それでアイ・コヤナギは、初めて事態の深刻さに直面した。
驚いたアイ・コヤナギは週明け月曜日の2023年4月17日、キング・アブドゥルアズィズ大学(King Abdulaziz University)との契約を破棄した。
そして、新聞報道の11日後、処罰を恐れて、サン・ジョアン・デ・デウ研究所を辞職し、慎重にも、スペイン国外に退去した。
この素早い動きは、軽い気持ちで論文工場不正と大学ランキング不正に手を染めたが、実は、かなり深刻な不正だと認識し、不安に駆られたためだ。
2023年8月9日(49歳?)現在、コヤナギは行方不明である。
ということで、小柳事件を今後生まないためには、日本の院生・研究者の皆さん、論文工場不正と大学ランキング不正を小柳事件を通して十分習得してくださいね。
《5》所属
論文に記載する著者の「所属(affiliation)」とはどういう定義なのだろう?
- その研究を行なった大学・研究所?
- その研究費を支給してくれた大学・研究所?
- 給料を支給してくれた大学・研究所?
- 地位を与えてくれた大学・研究所?
この場合、複数だったらどうなるのか?
多くの場合、「1.その研究を行なった大学・研究所」を「所属(affiliation)」機関とすべきである。 → 例:Defining authorship in your research paper – Author Services
そして、多くの場合、「1.その研究を行なった大学・研究所」=「3.給料を支給してくれた大学・研究所」である。でも、例外や微妙な場合もある。
「2.研究費を支給してくれた大学・研究所」を所属とは言わないだろうが、米国の場合、研究費の中に自分の給料が含まれる。となると、「2.研究費を支給してくれた大学・研究所」=「3.給料を支給してくれた大学・研究所」でもある。
米国のハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute)は論文に「所属」先として記載される。ハワード・ヒューズ医学研究所は、「2.研究費を支給してくれた大学・研究所」「3.給料を支給してくれた大学・研究所」であるが、そこで研究はしない。つまり「1.その研究を行なった大学・研究所」ではない。それなのに、「所属」先として記載される。
ハワード・ヒューズ医学研究所の場合、「1.その研究を行なった大学・研究所」の「全条件(地位、研究室、院生とか。給料も)」を維持した「兼任」である。
資金提供は研究助成金(グラント)の授与ではなく、大学等に所属する研究者を在籍のまま同研究所の研究員として雇用するかたちで行われる。(ハワード・ヒューズ医学研究所 – Wikipedia)
繰り返すけど、ハワード・ヒューズ医学研究所で研究はしないのに「所属」に書く。なんかヘン。
論文に記載する著者の「所属(affiliation)」について、中途半端だが、ここでやめておく。
別の機会に、大学ランキング不正との関係でもっと深く掘り下げることにしよう。
《6》高被引用者の信頼度
英国に本拠を置くクラリベイト社(Clarivate)が世界中の高被引用者(Highly Cited Researcher)を約7000人、毎年発表している。 → Highly Cited Researchers – Clarivate
ネカトやクログレイで被引用数をかさ上げし、高被引用者になった研究者を2022年のリストから除外したと以下に述べている。
今年クラリベイトは、剽窃、画像加工、偽の査読など、不正行為の可能性に対して高まる懸念に対応するため、高被引用論文著者の候補者リストの分析を強化しました。論文撤回監視サイト、リトラクション・ウォッチの撤回監視データベースを利用し、クラリベイトのアナリストは、高被引用論文著者の候補者の全論文について、意図的な不正行為として認められるものがあるかどうかを調査しています。この作業により、研究者の所属機関もしくは政府機関、また資金提供者や出版社の正式な手続きにおいて、不正行為が認められた研究者は高被引用論文著者の候補者リストから除外されました。(2022年11月15日以降の記事:世界最高峰の研究者を選出した 高被引用論文著者リスト2022年版を発表 – Clarivate – Japan)
それでも、論文工場製の多数の論文を出版したアイ・コヤナギ(小柳 愛、Ai Koyanagi)は、堂々と、高被引用者にリストされた。
他にも、同様な不正研究者がスペインだけで11人もいた。101人中の11人だから、 1割以上が不正研究者なのだ。
他の国の高被引用者にも同じような割合で不正研究者がいるとすると、クラリベイト社(Clarivate)の高被引用者はかなり信用できない。「かなり」ではなく、「全く」信用できない、というレベルかもしれない。
そして、クラリベイト社(Clarivate)の高被引用者リストをベースにしている世界大学ランキングも「かなり」あるいは「全く」信用できない。
《7》日本の高被引用者
クラリベイト社(Clarivate)には、日本の2022年の高被引用者が100人リストされている。
その100人の中に、第一所属と第二所属の2つの「所属」を持つ研究者がいる。参考までに示すと、高被引用者の1ページ目に、以下の人たちがいる。 → Highly Cited Researchers – Clarivate
第一所属と第二所属をもつ研究者は、大学ランキング不正に加担しているのだろうか?
研究者当人に加担の意識がなくても、上記リストに登場する東京大学や理化学研究所の上層部はランキングを不正に上昇させる意図で、自分たちの「所属(affiliation)」になるよう、高被引用者を誘ったのだと思う。
何せ、安倍首相が日本の世界大学ランキング入りを国策で進めたのである。忖度大学、忖度研究所なら多少の危険を冒してでも「実」を取るだろう。
また、研究者個人としても「実」を取る。
サウジアラビアの大学や中国の大学を、名目上、第一所属や第二所属にしている日本人の高被引用者は何人いるのだろうか?
いませんよね?
日本に論文工場があるのだろうか?
ありませんよね?
この問題、誰か深堀してくれませんかね。
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日本の人口は、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。
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●9.【主要情報源】
① 2022年1月10日のサン・ジョアン・デ・デウ研究所記事:Josep Maria Haro and Ai Koyanagi, professionals from the Institut de Recerca Sant Joan de Déu, among the most influential researchers worldwide | Institut de Recerca SJD
② 2023年4月19日のジョルジオ・メンドーサ・オズナ(Giorgio Mendoza Ozuna)記者の「Notas de Prensa」記事: Una de las científicas más citadas del mundo, Ai Koyanagi, tuvo que renunciar a su contrato con una universidad saudí | Ciencia – Notas de Prensa
③ 2023年4月20日のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者の「エル・パス(EL PAÍS English)」記事:One of the most internationally cited scientists, Ai Koyanagi, forced to renounce her controversial contract with a Saudi university | Science & Tech | EL PAÍS English → スペイン語版は2023年4月19日:Una de las científicas más citadas del mundo, Ai Koyanagi, obligada a renunciar a su polémico contrato con una universidad saudí | Ciencia | EL PAÍS
④ 2023年6月4日のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者の「エル・パス(EL PAÍS English)」記事:A researcher who publishes a study every two days reveals the darker side of science | Science & Tech | EL PAÍS English
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久しぶりにこのブログに来ました。大学ランキングは、まったく当てにならないんですね。