2023年8月30日掲載
ワンポイント:ルケはコルドバ大学(University of Cordoba)・教授。多数論文出版者で高被引用者である。2022年(43歳)、①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売、に関与していたことが発覚した。2023年1月(44歳)、大学の許可を取らずに、ロシアとサウジアラビアの大学に所属していたことで、コルドバ大学は、ルケを実質上解雇した。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ラファエル・ルケ(Rafael Luque、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-4190-1916、写真出典)は、スペインのコルドバ大学(University of Cordoba、 University of Córdoba)・教授だった。医師免許は持っていない。専門は化学(有機化学、グリーンケミストリー)である。
ルケ事件はネカト事件ではない。①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売、の事件である。いわば、新しい研究不正事件である。
コルドバ大学から実質的な解雇処分を受けたが、処分理由は、上記した不正に対してではなく、本務であるコルドバ大学の許可を得ず、論文に他大学の所属を記載した行為である。
ルケは多数論文出版者で、2022年は100論文以上を発表した。単純に割り算すると、37時間に1報出版していた。2015~2021年は一貫して毎年50~70報の論文を出版していた。
世界中の大学が、国際的な大学ランキングの順位を上げる工夫をしている。
一部の大学は、高額な報酬を出して、多数論文出版者で高被引用者に、名目上、自大学の所属にしてもらおうと、長年、工作してきた。
2018年、ルケはその話に乗って、本務であるコルドバ大学の許可を得ず、ロシアのロシア人民友好大学(Peoples’ Friendship University of Russia、別名・ルムンバ大学(RUDN University)、現・パトリス・ルムンバ大学(Patrice Lumumba University))の実験室長を兼任した。
2019年、ルケはまた、コルドバ大学の許可を得ず、サウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)・教員も兼任した。
つまり、ルケは 、①大学ランキング不正に加担していた。
さらなる不正として、ルケは、②論文工場の主(または、協力者)であり、③論文を販売していた。
2022年(43歳)、これらの不正が発覚した。
2023年1月(44歳)、コルドバ大学は、ルケがコルドバ大学とフルタイム契約を結んでいるにもかかわらず、大学の許可を取らずに、ロシアとサウジアラビアの大学に所属していたことで、ルケを停職処分に科した。
停職期間はナント、13年間である。
実質、解雇である。
2023年8月29日(44歳)現在、ルケは、やはり、サウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)・殊勲教授になっていた。 → Rafael Luque | KSU Faculty
コルドバ大学(University of Cordoba、 University of Córdoba)。写真出典
- 国:スペイン
- 成長国:スペイン
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:コルドバ大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。2023年4月2日の記事に44歳とあった
- 現在の年齢:45 歳
- 分野:化学(有機化学、グリーンケミストリー)
- 不正論文発表:2007~2023年(28~44歳)の17年間
- ネカト行為時の地位:コルドバ大学・教員、教授
- 発覚年:2022年(43歳)
- 発覚時地位:コルドバ大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのニック・ワイズとアレクサンダー・マガジノフ
- ステップ2(メディア):「EL PAÍS」、「パブピア(PubPeer)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②コルドバ大学・調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:大学以外が詳細をウェブ公表(⦿)、実名報道だが大学のウェブ公表なし(△)
- 不正:①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売
- 不正論文数:撤回論文0報だが、パブピア(PubPeer)で100+報にコメントあり
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に移籍し研究職を続けた(◒)
- 処分:13年間の休職処分、実質的解雇
- 日本人の弟子・友人:①:成田 憲保(Norio Narita、東京大学・先進科学研究機構・教授)、共著論文が4報ある。②:石塚 大晃(Hiroaki Ishizuka、東京工業大学・物理学系・准教授)、共著論文がある
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主は出典:【魚拓】https://anvur.it:443/CV2022/VQR-CV/CV_LUQUE_RAFAEL_177634.pdf
- 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。2023年4月2日の記事に44歳とあった
- 2001年(22歳):スペインのコルドバ大学(University of Cordoba)・で学士号取得:化学
- 2005年(26歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:化学
- 2007年(28歳):同大学・教員、その後、教授
- 2007~2023年(28~44歳):この17年間の100+論文にパブピアでコメントがある
- 2022年(43歳):不正研究が発覚
- 2022年12月1日(43歳):スペインのコルドバ大学を辞職
- 2023年1月(44歳):スペインのコルドバ大学から13年間の停職処分、という記述もある
- 2023年8月29日(44歳)現在:サウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)・殊勲教授:Rafael Luque | KSU Faculty
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
「ラファエル・ルケ」と紹介。
講演動画:「”El poder de los residuos”. Ponencia de Rafael Luque en la Jornada de Sociedades COSCE 2022 – YouTube」(スペイン語)12分47秒。
COSCE org(チャンネル登録者数 239人)が2022/10/05 に公開
【動画2】
講演動画:「Rafael Luque, químico: “Los residuos son una fuente inagotable de recursos” – YouTube」(スペイン語)4分24秒。
(チャンネル登録者数 3.2万人)が2012/12/27 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
ラファエル・ルケ(Rafael Luque)は、2013年に英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)から「環境、持続可能、エネルギーの アーリーキャリア賞(Environment, Sustainability & Energy Early Career Prize)」を受賞したほか、2011年にドイツ研究省からグリーン・タレントとして言及されるなど、多くの賞を受賞している。
→ Royal Society of Chemistry: Environment, Sustainability & Energy Early Career Prize – previous winners
→ Awardees 2011 – Green Talents
ルケのウェブサイトは2023年8月29日現在、閉鎖されている。かつては活発に情報発信していた。 → LUQUE RESEARCH WEBSITEの2014年3月7日保存版
ルケは多数論文出版者で、2022年は100論文以上を発表した。単純に割り算すると、37時間に1報出版していたことになる。2015~2021年は一貫して毎年50~70報の論文を出版していた。 → Rafael Luque Alvarez de Sotomayor – Google Scholar
ラファエル・ルケは、約800報の研究論文を発表しただけでなく、被引用数も高い。過去5年間(2018~2022年)、クラリベイト社(Clarivate)の最も被引用数の高い研究者の1人である(以下出典、保存版は不稼働になった)。
★発覚
ラファエル・ルケ(Rafael Luque)は、スペインのコルドバ大学(University of Cordoba)・教授である。ところが、論文の所属欄に、サウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)とか、ロシアのロシア人民友好大学(Peoples’ Friendship University of Russia)に所属していると記載していた。
ロシアのロシア人民友好大学(Peoples’ Friendship University of Russia)=ルムンバ大学(RUDN University)の実験室長に 2018年5月に就任している記事がある。 → 2018年5月25日の記事:【魚拓】Chemist with a worldwide reputation becomes the head of research laboratory at R…
2019年、ルケはサウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)に所属するという契約書にサインをしていた。
2023年1月(44歳)、コルドバ大学は、ルケがコルドバ大学とフルタイム契約を結んでいるにもかかわらず、大学の許可を取らずに、ロシアとサウジアラビアの大学に所属していたことで、ルケを停職処分に科した。
停職期間はナント、13年間である。
実質、解雇である。
ルケのリンクトイン(LinkedIn)のページによると、香港科技大学(Hong Kong University of Science and Technology)と英国のヨーク大学(University of York)、その他、に所属していたこともある。 → Rafael Luque | LinkedIn
コルドバ大学の広報担当者は、ルケの処分は「公務員規則に違反」であって、研究の質や内容についてではないと強調した。
ルケは、他の機関と協力する際の所定の手続きを怠ったことを認めている。しかし、今回の制裁は妬みと理解不足が原因だとしている。
2023年8月29日(44歳)現在、ルケは、やはり、サウジアラビアのキング・サウド大学(King Saud University)・殊勲教授になっていた。 → Rafael Luque | KSU Faculty
★①大学ランキング不正
ルケ事件の1つは、本務であるコルドバ大学の許可を得ず、他大学の所属だと論文に記載した行為である。
本務の大学に無許可で他大学の所属を論文に記載しても、それ自身は研究上の不正行為ではない。
記載した大学で研究を実施していれば論文上の問題はない。記載した大学で研究を実施していなければ所属偽装なので、クログレイである。
ただ、他大学の所属を論文に記載した意図によっては大きな問題になる。
ルケ事件の第1点は、大学ランキング不正に絡んでいることだ。大学ランキング不正は新しい研究不正である。
世界中の大学が、国際的な大学ランキングでの順位を上げることができるルケのような科学者を採用しようと競争している。大学ランキングでの順位を上げれば、より多くの学生・研究者・研究費・寄附を惹きつけることができる。
ルケが多数の論文を出版して、非常に高い被引用数を得ていることで、ルケの所属先にA大学を加えてもらえると、世界大学ランキングでA大学の順位が高くなる。ルケに所属先を加えてもらうことで、A大学は大きな利益が得られる。
サウジアラビアの複数の大学は、キャンパスで1~2週間過ごし、研究グループを監督し、論文の第2の所属としてその大学を追加するという条件で、研究者を非常勤教授として雇い、年間7万ドル(約700万円)以上を支払っている。 → 2011年12月9日のサイエンス誌の記事:Saudi Universities Offer Cash in Exchange for Academic Prestige | Science。
ルケは、サウジアラビアやロシアの大学から、研究費をもらい、研究のためにビシネスクラスの旅行費用と高級ホテルでの滞在費を受け取っていた。
コルドバ大学から糾弾された時、ルケは、しかし、その他のお金を「直接」受け取っていないので、不正なことをしていない、と主張した。
停職は「私の名声・実力への純粋な妬みです。私がいなければ、コルドバ大学は上海ランキングなどで大学ランキングを下げることになります。彼らは自分で自分の足を引っ張ったのです」とルケはコルドバ大学の停職処分を批判した。
白楽は、上海ランキング(Academic Ranking of World Universities)でコルドバ大学の化学の順位を調べた。 → 上海ランキング:ShanghaiRanking
すると、2017~2019年はランク外。2020年は401~500位。2021~2022年は、ランク外だった。 → ShanghaiRanking’s Global Ranking of Academic Subjects
以下は「2020年の401~500位」部分。
コルドバ大学はルケがいなくなって上海ランキングで大学ランキングを下げたのかどうか、つまり、ルケの指摘があっているのかどうか、はっきりしなかった。
なお、記事掲載の直前に、上海ランキング への影響を調べた40ページの報告書があることに、白楽は気が付いた。コルドバ大学のランキングは低下したようだが、シッカリは読んでません。 → 2023年4月10日のシリス・アカデミック社(SIRIS Academic)の報告書:The affiliation game between Spanish and Saudi Arabian higher education & research institutions
★②論文工場、③論文販売
ルケ事件の第2・第 3点は、②論文工場、③論文販売、である。
英国のニック・ワイズ(Nick Wise、写真出典)は、論文工場をあばきだしてきたネカトハンターである。
論文工場は、研究業績を水増ししたい研究者からお金をもらって論文を売る悪徳組織だ。
他人の論文をコピペした論文、自動テキスト生成ソフト(chatGTP)で作った論文、などを作り、その著者名を密かに数百ドル~数千ドル(数万~数十万円)で売る。
2022年11月、ニック・ワイズは、ラファエル・ルケの「2022年10月のEnviron Sci Pollut Res」論文の問題点を指摘した。
- Photodegradation of ibuprofen laden-wastewater using sea-mud catalyst/H2O2 system: evaluation of sonication modes and energy consumption.
Zahra Asadi , Sina Dobaradaran , Hossein Arfaeinia , Mohsen Omidvar , Sima Farjadfard , Rauf Foroutan , Bahman Ramavandi , Rafael Luque
Environ Sci Pollut Res 30, 16707–16718 (2023).
Published: 03 October 2022
https://doi.org/10.1007/s11356-022-23253-9
ルケ以外の7人の共著者は全員、所属する国がイランである。
この論文の著者名が2022年2月23日、テレグラム(Telegram、社交メディア)で売られていたと、ニック・ワイズが指摘した。宣伝文はペルシア語なので、最初から、イラン人に売るつもりだったようだ。以下の画像出典:https://pubpeer.com/publications/8AF14503BCD28365A0C945BA3AF188
ルケは論文工場とコラボしている研究者で、たくさんの論文を出版しているが、その共著者の国は、中国、イラン、パキスタン、サウジアラビア、エジプト、ロシアなど、アジア全域に及んでいると、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は指摘している。
そして、ルケは論文を売っているので、共著者になっている研究者を実際には知らない。
ルケは論文工場の主役なのか協力者なのか不明だが、多量の論文を作っている(白楽は、あえて執筆と書かない)。その際、ChatGPTを使って論文原稿を作っていることを認めている。
「この数か月間は非常に生産的でした。以前は1論文を作るのに2~3日必要だったけれども、今では1 日で作れるようになりました。ChatGPTは、複雑な質問に応じて詳細な文章を書いてくれます」。
ルケは基本的に英語での文章表現を改善するためにChatGPTを使っていると述べ、論文工場とのいかなる関係も強く否定した。
さらなる問題点として、ロシアのネカトハンターであるアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov 、写真出典)はルケの「2022年のChemosphere」論文の異常な文献引用を指摘した。
- Graphene based composite membranes for environmental toxicology remediation, critical approach towards environmental management
Miriam Lopez-Fernandez , Sadaf Tariq , Khalida Naseem , Awais Ahmad , Safia Khan , Umer Younas , Muhammad Sufyan Javed Wong Siew Fan , Rafael Luque , Shafaqat Ali
Chemosphere (2022) Volume 307, Part 4, November 2022, 136034
ルケの「2022年のChemosphere」論文は論旨がメチャクチャなのだが、それとは別に、共著者の「Awais Ahmad」を何回も引用している。以下の図出典:https://pubpeer.com/publications/36DEAA7526163C9D19EBE08757F2F4
このように、1つの論文で特定の人(「Awais Ahmad」は顧客だと思う)を何回も引用している。同じ人を多数の論文で何回も引用すれば、簡単に高被引用者を作ることができる。
お金をもらって、多数論文出版者でかつ高被引用者を仕立て上げるビジネスモデルである。
このビジネスを世界で数十~数百の悪徳グループが国際カルテルを結んで実行していると思うが、実態はつかめていない。調査も法的規制も全く不十分である。日本人がどれだけ関与しているのか、日本では誰も調べていない。
★2011年の事件
ラファエル・ルケ(Rafael Luque)は、上述してきた ①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売、とは別に、12年前の2011年にも事件を起こしていた。
スペインのラ・ラグーナ大学・院生のダニエル・ガルシア=ベラスケス(Daniel Garcia-Velazquez、写真出典)の盗用事件である。
2011年、院生のガルシア=ベラスケスが、ラ・ラグーナ大学の2人の教授、ホセ・フアン・マレロ教授(José Juan Marrero)とデイヴィッド・ディアス教授(David Díaz)の研究データを盗用し、「2011年3月のChemistry: A European Journal」論文として発表した。
- Spontaneous Orthogonal Self-Assembly of a Synergetic Gelator System
Daniel García Velázquez, Rafael Luque
Chemistry: A European Journal
First published: 01 March 2011
その論文は、ガルシア=ベラスケスが第一著者だが、ルケが唯一の共著者である。
つまり、ルケは盗用者(盗用協力者)だった。
2022年、スペインのサンタクルス・デ・テネリフェの裁判所(court in Santa Cruz de Tenerife)は、知的財産の盗用罪でルケとガルシア=ベラスケスに有罪判決を下した。
なお、ルケは、ガルシア=ベラスケスから、論文原稿の英語を修正して欲しいと依頼されただけで、論文の盗用には関与していないと主張し、控訴した。
2023年8月29日現在、それから1年が経過したが、結末を、白楽は把握していない。ゴメン。
●【日本の多数論文出版者】
白楽ブログは外国の事件を扱い、日本の事件を扱わない。それが基本だが、外国の事件に日本が絡んでくることが時々ある。
ラファエル・ルケ(Rafael Luque)を調べていると、日本人の多数論文出版者が2人でてきた。
アンヘル・デルガド=バスケス(Ángel M. Delgado-Vázquez、写真出典)は、多数論文出版の世界ランキングの第1位と第 2位が日本人だと指摘した。以下の図の出典 → https://twitter.com/amdelvaz/status/1644481901908971522
2人は、物質・材料研究機構 (NIMS)の理事の谷口 尚 (TANIGUCHI, Takashi、写真左出典)と特命研究員・招聘研究員の渡邊 賢司(WATANABE, Kenji、写真右出典)である。
2020年5月5日、2人は強力なコンビで優れた研究成果を挙げてきた、と紹介されている。 → 2020年5月5日記事(写真出典同):These materials scientists are a ‘power couple’ in the physical sciences | News | Nature Index
左が渡邊、右が谷口。Credit: Kenji Watanabe (left) Mark Zastrow
強力なコンビなので、ほとんどの論文は2人の共著論文だそうだ。
スコーパスのサイトでみると、論文出版数は、谷口は2021年に336報、2022年に343報の論文を出版した。ほぼ毎日、1論文出版である。出典:Taniguchi, Takashi – 著者詳細 – Scopus Preview
渡邊は2021年に344報、2022年に348報の論文を出版した。こちらも、ほぼ毎日、1論文出版である。出典:Watanabe, Kenji – 著者詳細 – Scopus Preview
スコーパスの分析によると、2013 – 2022 年の 1851 件の谷口の論文の著者ポジションは、
第一著者率:0%
最後著者率:2%
共著者率:98%
連絡著者率:0%
渡邊の2013 – 2022 年の 1668件の論文の著者ポジションは、
第一著者率:0%
最後著者率:0%
共著者率:100%
連絡著者率:0%
谷口は少し最後著者になっているが、2人とも第一著者にも連絡著者にもなっていない。
ヘンである。
論文の責任を負う立場の第一著者にも連絡著者にもなっていないのは、論文工場製の論文のにおいがする。
新しい論文を2報見てみよう。
2023年8月19日出版の以下の2論文。多数の著者の間に谷口と渡邊の名前が入っている。
- Observation of ultrafast interfacial Meitner-Auger energy transfer in a Van der Waals heterostructure
Shuo Dong, Samuel Beaulieu, Malte Selig, Philipp Rosenzweig, Dominik Christiansen, Tommaso Pincelli, Maciej Dendzik, Jonas D. Ziegler, Julian Maklar, R. Patrick Xian, Alexander Neef, Avaise Mohammed, Armin Schulz, Mona Stadler, Michael Jetter, Peter Michler, Takashi Taniguchi, Kenji Watanabe, Hidenori Takagi, Ulrich Starke, Alexey Chernikov, Martin Wolf, Hiro Nakamura, Andreas Knorr, Laurenz Rettig & Ralph Ernstorfer
Nature Communications volume 14, Article number: 5057 (2023) - Exciton Superposition across Moiré States in a Semiconducting Moiré Superlattice
Zhen Lian, Dongxue Chen, Yuze Meng, Xiaotong Chen, Ying Su, Rounak Banerjee, Takashi Taniguchi, Kenji Watanabe, Sefaattin Tongay, Chuanwei Zhang, Yong-Tao Cui & Su-Fei Shi
Nature Communications volume 14, Article number: 5042 (2023)
これらの論文は、純粋に谷口と渡邊が共同研究した結果の論文だと思いたい。
しかし、論文工場に論文作成と高被引用を依頼したのか? 名前と所属を勝手に使われた被害者なのか? という、疑惑も生じる。
どなたか、調べてください。
本人に聞けば済むかもしれないが、隠蔽を刺激するかもしれない。
●【研究不正の具体例】
主要な不正は上述した。それらは省略する。
それら以外に、ラファエル・ルケ(Rafael Luque)は、論文中の画像の重複使用、自己引用過大、自己盗用などしている。具体例は省略する。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)
★論文数
2023年8月29日現在、ラファエル・ルケ(Rafael Luque)は、約800報の研究論文を発表している。
★撤回監視データベース
2023年8月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでラファエル・ルケ(Rafael Luque)を「Luque」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2023年8月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ラファエル・ルケ(Rafael Luque)の論文のコメントを「”Rafael Luque”」で検索すると、2007~2023年の104論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》新しい研究不正
ラファエル・ルケ(Rafael Luque、写真出典)の事件は、①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売、で、ネカトではない。
①大学ランキング不正、②論文工場、③論文販売、は比較的最近の事件なので、ネカトと定義されていないが、実質はネカト相当事件で、研究上の不正事件である。
日本の学術界も世界の学術界は早急に対策を講じる必要がある。
日本の中で「②論文工場、③論文販売」はまだ摘発されていないが、既に実行者がいると考えた方がいい。「①大学ランキング不正」もまだ摘発されていないが、ほぼ確実に実行者がいる。
同じスペインで似たような事件を起こした日本人のアイ・コヤナギ(Ai Koyanagi、小柳 愛)もいる。
《2》大学ランキング不正
大学ランキングの数値の信憑性が問われたためか、ここ1~2年、大学ランキングから脱退する米国の大学が話題になっている。 → 2022年7月16日記事:名門大不参加で問われる大学ランキングの信憑性 アイビーリーグの一角、コロンビア大学抜ける | The New York Times | 東洋経済オンライン
日本の筑波大学も汚い数値の改ざんをしているようだ。 → 2021年2月10日記事:外国人学生数の調査要望 筑波大、学長選考批判の教授ら:朝日新聞デジタル
大学ランキングは、同じ国の中の大学同士を比べるならそれなりの信憑性はあるだろうが、国際比較となると、ほとんど無意味に思える。
ましてや、データは各大学が提出する生データをチェックなしにそのまま使用すれば、信憑性に問題が生じる。しかし、各大学が提出した生データは貴重な極秘情報である。それをそのまま公表すると、ランキング会社の優位性が失われるので、生データを公表しない。従って、データの信頼度は低い。
そして、大学とランキング会社の攻防戦がある。
ランキング会社が大学の上位に立つので、ランキング会社が大学をコントロールしやすい。不正も起こりがちになる。
有力大学は自大学が正当に評価されてないという不満をずっと持ち続けていた。
公的機関がランキングをしているわけではない。
それで、有力大学は脱退したのだろう。
《3》論文工場事件
論文工場事件は重要な問題である。日本の研究者がこれにどれほど汚染されているのかハッキリつかめないが、その内、徹底的に解説しようと思う。
とはいえ、なかなか、手が回らない。
そのうち、です。
ーーーーーここから、「アイ・コヤナギ(Ai Koyanagi、小柳 愛)(スペイン)」の記事と同じ。見出しの番号もそのままにした。
《2》大学ランキング:日本 の国策、大失敗
2013年、安倍首相が日本の世界大学ランキング入りを国策で進めた。
文部科学省は国立大学改革プランを発表した。第3期中期目標期間(2016年度から2021年度)には各大学の特色を生かした機能強化を推進、今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上のランクインを目指す。(2013年11月27日記事:文科省、10年間で世界大学ランキングTOP100入り10校を目標 | リセマム、保存版)
2013年11月の文部科学省の「国立大学改革プラン」(保存版)によると、以下の目標が設定された。
2013年当時、世界大学ランキングトップ100に東京大学と京都大学の2校しかランクインしていなかった。それを10年間で10校にする計画である。
現在、目標達成年の2023年だが、達成できないのは確実だ。
というのは、2022年時点で、9年前と同じ2校しかランクインしていない。9年間、全く成果があがっていない。10校のランクインが無理なのはハッキリしている。
「結果は表題の通り、目標達成は非常に厳しく、東大が35位、京大が61位、その他大学は100位まで程遠い位置にいます。」 → 2022年4月12日記事:【最新2022年】世界大学ランキング、安倍内閣の目標「世界トップ100に10校ランクイン」は達成出来そうにない
ランキング入りのために、日本政府は、10年間でどれだけ国民の税金を投入したか、白楽は調べていない。
しかし、10年かけても全く前進していない。前進どころか、東京大学が23位→35位、京都大学が52位→61位へと、むしろ、後退している。
日本政府の誰がどう責任を取るのか? 責任者でてこ~い。
今年が目標達成年だが、メディアは批判・追及しない。政府も大学も、関係者はみな黙っている。なんかヘンだ。
サウジアラビアは予定より11年も早く達成したのに、日本は、トホホである。
《3》異常
そもそも、「世界大学ランキング入りが国策」って何かヘンだ。
ランキングに入れるかどうかは、結果であって、本来、優れた大学にすることが目標でしょう。本末転倒である。
もちろん、「世界大学ランキング入り」活動をすることは不正ではない。
しかし、国策となると(国策とならなくても?)、不正な手段を使ってでも目標達成をしようとする人がでてくる。
サウジアラビアの手法は高被引用者をカネで釣って、第一所属をサウジアラビアの大学に変えてもらうことだ。
これは、所属偽装に近いのでクログレイである。
ただ、手法としては純朴である。
もっと簡単には、「大学ぐるみ」で数値データを改ざんし、大学ランキング不正をすることだ。
テンプル大学(Temple University)のように、大学の担当者が、優れた評価を得られるように自大学のデータを改ざんしてランキング企業に送ればよい。
2022年9月、コロンビア大学も大学ランキング不正がバレた。 → 2022年9月12日の記事: Columbia University Drops From No. 2 to No. 18 in U.S. News Rankings – The New York Times
テンプル大学やコロンビア大学はバレたけど、多分、米国の多くの大学は改ざんデータを送っている。
多分、日本の大学も改ざんデータを送っている。
2021年2月、筑波大学が改ざん(数値の水増し)データを送っていたのが、竹谷悦子教授に指摘された。 → 2021年2月10日記事:外国人学生数の調査要望 筑波大、学長選考批判の教授ら:朝日新聞デジタル
大学ランキングの数値データは第三者がチェックできない内部情報が多いので、誰も検証しない(できない?)。
検証できない状況では、多くの人は、不正を承知で利得行為をする。
ーーーーーここまで、「アイ・コヤナギ(Ai Koyanagi、小柳 愛)(スペイン)」の記事と同じ。
[事件とは無関係な事件の国の写真]:昔、スペインを旅行したことがある。コインブラの街にバスが到着したのが午後2時ごろ。とにかく空腹である。街の地元の薄汚れた小さな食堂で「フィッシュ」と言っても女店主には通じない。半ズボンの小学生の息子がでてきて、通じたらしい。そして、待つこと15分。でてきた焼き魚は、極上の味だった。ゆでジャガイモ、トマトの輪切り、玉ねぎ。レタス、が付け合わせ。値段忘れた。2006年9月。撮影:白楽
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】
① 2012年12月27日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:University of La Laguna ethics committee finds evidence of misconduct in chemists’ papers – Retraction Watch
② 2023年3月24日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Schneider Shorts 24.03.2023 – Do not permit to write again – For Better Science
③ ◎2023年4月2日のマヌエル・アンセデ(Manuel Ansede)記者の「EL PAÍS English」記事:One of the world’s most cited scientists, Rafael Luque, suspended without pay for 13 years | Science & Tech | EL PAÍS English
④ 2023年4月5日のダルミート・チャウラ(Dalmeet Singh Chawla)記者の「C&EN」記事:Highly-cited chemist is suspended for claiming to be affiliated with Russian and Saudi universities
⑤ 2023年4月7日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Schneider Shorts 7.04.2023 – Warning about a Suspicious Website – For Better Science
⑥ 2023年4月21日のミケーレ・カタンツァーロ(Michele Catanzaro)の「Chemistry World」記事:Prolific Spanish chemist suspended over multiple affiliations | News | Chemistry World
⑦ 2023年4月10日のシリス・アカデミック社(SIRIS Academic)の報告書:The affiliation game between Spanish and Saudi Arabian higher education & research institutions
⑧ 2023年7月31日の卜金婷・記者と田瑞颖・記者の「中国科学新聞」記事:平均1.5天发1篇论文!44岁高产学者却遭高校停薪停职—新闻—科学网
⑨ 2022年11月23日のアレクサンダー・マガジノフ(Alexander Magazinov)の「For Better Science」記事:The Highly Cited Researchers of Clarivate – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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こんにちは。楽しく記事を拝見いたしました。
さて、文中の日本研究者に関する疑惑ですが、渡邊&谷口は調査に書かれている通り、h-BN製造の巨匠です。この二人の異常な論文数は、(1) h-BNは世界的にホットな研究対象ですのと (2)この二人の特有の技術によって、世界中にh-BNが安定供給ができているからです。
「渡邊 谷口 h‐BN」で検索していただければ色々記事が出てきますので、ご参考ください。
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v16/n11/%E7%B5%90%E6%99%B6%E4%BD%9C%E3%82%8A%E3%81%AE2%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%B7%A8%E5%8C%A0/100885
https://www.nhk.or.jp/mito-blog/500/474764.html