2018年8月23日掲載
白楽の意図:日本の大学のネカト調査委員会とその調査報告書は玉石混交である。そして悪いことに、玉石どころか、石未満、つまり、調査報告書を公表しないケースがかなり多い。ただ、調査報告書の玉石と石未満の混在は日本が最悪というわけではない。国によって大きく異なる。ネカト先進国の米国でも同じように玉石と石未満が混在している。日本も米国も、“ネカト”の調査報告書なのに、その調査報告書に、ねつ造・改ざんがあり、バイアス・ズサン・間違いのクログレイがある(憶測)。だから、ネカト調査報告書をすべて公開にし、ネカト調査の知識とスキルを向上させる仕組みが必要である。米国でのネカト調査報告書の問題点を議論した2018年4月の論文を読んだので、紹介しよう。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.論文内容
4.白楽の感想
5.関連情報
6.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。
●1.【論文概要】
大学のネカト調査報告書はとても重要である。それにも関わらず、調査報告書の内容と質は、従来、あまり検討されてこなかった。現実には、ネカト調査報告書の質は玉石混交で、必要な内容が欠落していることがシバシバある。2017年12月、この問題を検討するための専門家会議が開催された。討議の末、チェックリストを作ることが提案された。そこに至る状況と出来上がったチェックリストを論文に記載した。
●2.【書誌情報と著者】
★書誌情報
- 論文名:Institutional Research Misconduct Reports Need More Credibility
日本語訳:大学のネカト調査報告書はもっと信頼性が必要である - 著者:C. K. Gunsalus, Adam R. Marcus, Ivan Oransky
- 掲載誌・巻・ページ:JAMA. 2018;319(13):1315-1316
- 発行年月日:2018年4月3日
- DOI: doi:10.1001/jama.2018.0358
- ウェブ:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2675025?guestAccessKey=4e9cca18-b588-4d83-8a60-5296ff71041e
- PDF:上記ウェブサイトにPDFダウンロードの案内がある。一般的には有料。無料登録するとアクセスできると書いてある
★著者
- 第1著者:シーケー・ガンセイラス(C. K. Gunsalus)
- 写真:http://www.gunsalus.net/about.html
- 履歴:①:C. K. Gunsalus – Wikipedia、②:http://gunsalus.net/assets/CKGunsalusCV.pdf
- 国:米国
- 学歴:1984年、米国・イリノイ州のイリノイ大学法科大学院(University of Illinois College of Law – Wikipedia)、法務博士(J.D.)取得
- 分野:大学運営
- 所属・地位:イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の ①全米研究倫理センター(NCPRE)所長(National Center for Professional and Research Ethics, University of Illinois at Urbana–Champaign)、②経営学・名誉教授(Professor Emerita of Business)、③調整科学研究所の研究教授(Research Professor at the Coordinated Sciences Laboratory)
- 動画:2017年4月11日:New Report Calls for Action to Protect Integrity in Research
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- 最後著者:アイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)
- 既出:1‐4‐8.撤回監視(リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch)
- 国:米国
- 学歴:
- 分野:
- 所属・地位:「撤回監視(Retraction Watch)」の主催者。ニューヨーク大学・アーサー・カーター・ジャーナリズム研究所(Arthur Carter Journalism Institute, New York University)・客員研究員
●3.【論文内容】
●【1.調査報告書の問題点】
大学は研究公正を守る中心的な役割を担っている。大学は研究者を雇い、研究施設を所有し、助成金を受け取り、多くの学生に研究プロセスについて教えている。 論文にネカト疑惑が生じれば、研究者や学術誌編集者は、まず、その著者の所属する大学にネカト疑惑を申し立て、調査を要請する。調査結果は学術誌、政府の監督機関、その他の関連団体に報告される。[US Dept of Health and Human Services (HHS). Public Health Service policies on research misconduct: final rule. Fed Regist. 2005;70(94):28369-28400. https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2005-05-17/pdf/05-9643.pdf]
大学は所属教員のネカトを調査するので、調査にはかなりのストレスがかかる。ネカト調査報告書は、米国連邦政府の助成金を受給している大学に課された義務だが、幅広い問題を抱えている。
ネカト調査報告書の問題点を4点指摘すると、次のようだ。①標準的記載様式がない。②制度的な利益相反があり信頼性が欠ける。③品質管理または専門家による評価が低劣である。④調査が制限されている。
というわけで、大学が調査報告書を公開しても、情報が限定的で、役に立たないことが多い。
学術界のネカト対策は、大学のネカト調査報告書に依存している。それなのに、上記の結果、ネカト研究者は、ネカト疑惑の発生頻度や解決方法に関する情報にアクセスできない。ネカト疑惑に対する大学の対処の実態ををほとんど知ることができない。そして、アクセスできた場合でも、今度は、ネカト調査報告書に多くの問題があるのことを思い知らされるのだ。
☘余談☘
以下の大幅にクロ塗りされた調査報告書は白楽が勝手に挿入した。コロラド大学デンバー校のアルムット・グレンツ(Almut Grenz)に関するネカト調査報告書(2016年)が開示請求され、入手した「撤回監視(Retraction Watch)」がウェブ上にアップした。その冒頭部分である。
→ アルムット・グレンツ(Almut Grenz)(米)
以下の文書(の一部)をクリックすると、全文のPDFファイル(17.2 MB、25ページ)が別窓で開く。☘余談☘ここまで
●【2.全米アカデミーズ】
全米アカデミーズ(米国科学工学医学アカデミー、NASEM:National Academies of Science, Engineering, and Medicine)の3つの報告書が、ネカト調査報告書の問題点を指摘している。
第一の報告書は、2016年の「学術研究への国家による投資の最適化 ~21 世紀の新たな規則枠組み~(Optimizing the Nation’s Investment in Academic Research: A New Regulatory Framework for the 21st Century)」である。
→ 報告書(英語):https://www.nap.edu/read/21824/chapter/1
→ 日本学術振興会ワシントン研究連絡センターの解説(日本語):http://jspsusa.org/wp/wp-content/uploads/2016/08/20160629-2.pdf
報告書では、「一部の学術機関は、調査員の過ちに対して適切に対応していない。また、学術界の基準と規範に矛盾していて、大学と個人の両レベルがヤル気をなくす環境になっている」と指摘している。
第二の報告書は、2017年の「責任ある科学委員会(Committee on Responsible Science)」で、報告書は次の点を指摘している。
「当該大学が利用可能な情報と学術界一般が利用可能な情報との間に大きなギャップがある。つまり、当該大学がどのようにネカト告発を扱い、その過程でどのような問題が生じ、それらをどのように効果的かつ上手に処理したのかの情報について、学術界一般は限定された情報しか得られず、当該大学が持っている情報との間に大きなギャップがある」
第三の報告書は、3番目の全米アカデミーズ(NASEM)グループである「臨床試験で患者の治療成績を予測するオミックス・ベース試験の評価委員会(Committee on the Review of Omics-Based Tests for Predicting Patient Outcomes in Clinical Trials)」である。この報告書は2012年に報告された。
報告書は次の点を指摘している。「大学は財務状況に影響を受けるが、それ以上に世間の評判に影響を受ける。それで、大学の評判を高め維持することは、大学にとって非常に重要になる。大学の評判の要因は、潤沢な研究費をもつ尊敬される研究者の数と質、高いインパクト・ファクターを持つ論文出版数などもあるが、評判を高め維持するのは非常に困難でもある」。
●【3.科学庁(NSF)・監査総監室(OIG)】
科学庁(NSF:National Science Foundation)・監査総監室(OIG:Office of Inspector General)は、一部の大学の調査報告書が必要な基準を満たしていないと指摘している。
例えば、①関連する研究について調査していない、②告発された事項だけしか調査せず、周辺を調査していない。③その研究には多くの人が関わっているのに特定の個人だけに焦点を当てている。④調査委員に専門知識が欠けている。
これらの欠陥は特殊な例でも、1つの報告書だけに見られる例でもない。科学庁・監査総監室のスタッフが会議で編集し、共有している欠点を部分的にリストすると以下のようだ。
- 証拠の裏付けがなく。ネカト行為の具体的内容を示していない。特に「意図的である」証拠がない。
- 調査対象の研究者は院生やポスドクを非難しているのに、調査委員会は該当する院生やポスドクをインタビューしていない。
- 調査対象の研究者の弁明を疑問視せずに受け入れている。
- 告発情報のみに依存し、ネカトの実態調査が甘い。また、他のネカト行為をチェックしていない。
ネカト告発に対する大学の対処になぜこれほどたくさんの欠陥があるか、社会心理学で読み解いてみよう。
Valdesolo P, DeSteno Dの社会心理学の論文によると、「自分の道徳的な罪に対する“自分”の評価は、他人が同じ道徳的な罪を犯した時に対する評価とは大きく異なる」と指摘している。そして「大学はかなりのことを自分で定義でき、可能な限り、大学の尊厳を守ることに熱心になる」と指摘する。つまり、社会心理学的には、大学は所属教員のネカト行為を隠蔽する、あるいは、軽く扱い、処分を甘くする傾向がある。[閲覧有料:Valdesolo P, DeSteno D. Moral hypocrisy: social groups and the flexibility of virtue. Psychol Sci. 2007;18(8):689-690.]
ネカト疑惑が生じたときの大学の対処は、洗練された大学、財政豊かな大学でさえ、経験不足、非効率というオソマツな対処になる。そのオソマツな対処は、さらに、排他的な仲間内思考によって歪められてしまう。
研究再現性、研究公正、さらには大学と学術界の信頼性を強化するうえで、このような社会的心理学的な人間の傾向を理解し、その心理を乗り越えることが重要である。
●【4.チェックリスト】
大学は、ネカト調査報告書を最終的にまとめる前に、研究公正に関する調査の計画と報告を強化すべきだろう。
ダヴィドフ(Davidoff)がネカト調査報告書のチェックリストを作成し、チェックしながら調査報告書を完成することを2010年に提唱した。チェックリストは上記の問題を解決する1つの方策である。チェックリストは、医学だけでなく他の分野のネカト調査報告書でも重要なツールとして浮上している。[閲覧は2ページ目有料:Davidoff F. Checklists and guidelines: imaging techniques for visualizing what to do. JAMA. 2010;304(2):206-207. ]
チェックリストを作りにしても、どんな項目が必要なのか?
作業を進める上での重要な第一歩として、大学の調査報告書が満たすべき基準を学術界が検討し合意する必要がある。
2017年12月、この問題を検討するための専門家会議(以下、「専門家会議」)が開催された。大学の元学長、研究所長、連邦政府の官僚、研究者、学術誌編集者、ジャーナリスト、全米アカデミーズ(NASEM)のパネル委員、ネカト被疑者・告発者、研究機関の弁護士など、研究ネカトを扱う幅広い専門家が集まった。
そして、専門家会議は、討議の末、研究ネカト調査のチェックリストを作成した。チェックリストは調査が合理的で、調査基準に従ったかどうかをチェックするように設計されている。と同時に、調査報告書が修正される場合、適切かつ完全に修正されるように設計されている。
チェックリストの全文を以下に示す。2ページ目もある。
JVP180008supp1_prod 2-3
チェックリストの最初の数項目への記入例を以下に示す。全文は → https://retractionwatch.com/wp-content/uploads/2018/06/Katiyar-checklist2.pdf
チェックリストを使うことで、今まで問題視されたは次の問題が解決できる。
- 疑惑を特定し、確実に答えを得るために、有意義なアプローチを提案・実行したかどうか。大学の調査計画と報告書がその方向で計画され作成されたかどうか。
- 正しい人物が面接されたかどうか。
- 関連するデータが確実に入手でき、適切な専門家によってレビューされたかどうか。
- 報告書は事実とデータを提供したかどうか。
- 報告書はその結論を支持しているかどうか。
このチェックリストは専門家会議に出席したすべての人が同意したわけではない。しかし、学術界がより信頼されるために、大学のネカト調査報告書は最終的に公開され、精査される必要がある。
「撤回監視(Retraction Watch)」は、情報開示請求などの公的記録法(public records laws)で大学のネカト調査報告書をいくつか入手することに成功したが、このアプローチには限界がある。
学術の発展は論文発表に依存している。論文を掲載する学術誌は、研究公正の確保を大学(のネカト調査報告書)に依存している。大学は、ネカト調査報告書をもっと良くできるし、すべきなのである。
☘余談☘
以下の調査報告書は白楽が勝手に挿入した。カナダのトロント大学・教授のシルヴィア・アサ(Sylvia Asa)、シェリーン・エザット(Shereen Ezzat)に関するネカト調査報告書(2014年、UHN:University Health Network Toronto)の冒頭部分である。
→ シルヴィア・アサ(Sylvia Asa)、シェリーン・エザット(Shereen Ezzat)(カナダ)
以下の文書(の一部)をクリックすると、全文のPDFファイル(1.49MB、31ページ)が別窓で開く。
☘余談☘ここまで
●4.【白楽の感想】
《1》日本の調査報告書チェックリスト:文部科学省の指針
本論文で問題にしているチェックリストは、日本ではどうなっているのか?
ネカト対処の基本である文部科学省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(2014年8月26日)」に「調査結果の報告書に盛り込むべき事項」が記載されている。
→ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf#zoom=75
つまり、チェックリストがある。なお、次項で問題にする「調査委員会の構成(氏名・所属)」と「研究者(氏名、所属・職)」を記載するこも要求されている。
以下に、貼り付けた。
文科省書式
《2》日本の調査報告書の具体例
本論文で問題にしているチェックリストに絡むネカト調査報告書は、日本でどうなっているか、典型的な例を挙げ、具体的に見ていこう。
2018年3月、愛知学院大学(私立大学)・歯学部のネカト事件が発表された。この事件での調査報告書を日本の典型的な例として挙げよう。
愛知学院大学事件の調査報告書は、①大学、②文部科学省、③日本学術振興会の3種類があり、各自のサイトで公表した。正確に書くと、「大学の調査報告書」は2タイプあり、1つは①で、もう1つは③のためで、③のは③のサイトがリンクし公表した。
なお、日本のネカト事件で、①②③の調査報告書が揃うケースは少数である。
【大学の調査報告書】
愛知学院大学の調査報告書は11ページで、ウェブ上に公表されている。調査委員名も公表されている。学内の委員が3人、学外の委員が3人でうち1人は弁護士である。ネカト者の実名も書いてある。学外委員に弁護士がいて、ネカト者の実名が書いてる点はとても優れている。これらの点、ほぼ完璧である。
唯一不思議な点は「不正行為に関与していない」教員を監督責任者として処分している点である。この「不正行為に関与していない」人を処分するのは、世界標準では「奇異」である。不正行為をしていないと認定された研究者がどうして処分されるのか?
なお、この不思議な処分は文部科学省のガイドラインに沿っているので、問題は、文部科学省のガイドラインに問題がある。
具体的に、日本の学術振興会の「研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への対応に関する規程」(平成18年12月6日規程第19号)(PDF)を以下に示す。最下段左側に、「特定不正行為に関与していないものの、・・・」とネカトに関与しなかった人も処分対象にしていて、とても驚きである。
話を戻すと、文部科学省は「調査結果の報告書に盛り込むべき事項」(チェックリスト)を提示していて、本論文で問題にしているチェックリストは「大学の調査報告書」に対してはあると考えられる。
以下の文書(の一部)をクリックすると、全文のPDFファイル(60.5 KB、11ページ)が別窓で開く。
【文部科学省の調査報告書】
大学の調査報告書を受けて、文部科学省もネカト調査報告書を、ウェブ上に公表している(科学技術・学術政策局・人材政策課・研究公正推進室が行なっている)。その調査報告書には調査委員名は「ない」。ネカト者の実名も書いて「ない」。なんとも不思議である。
なお、書式は統一されているので、書式それ自身が本論文で問題にしているチェックリストの機能を果たしている。
以下の文書(の一部)をクリックすると、全文のhtmファイルが別窓で開く。
【日本学術振興会の調査報告書】
日本学術振興会は文部科学省の下部機関で、国の研究費を配分する助成機関である。
愛知学院大学のネカト者は日本学術振興会から受給した研究費でネカト行為を行なった。それで、日本学術振興会がペナルティを科した。その調査報告書にはネカト者の「実名が書いてある」。実質、文部科学省の下部機関なのに、親機関は「実名を書かない」のに、子機関は書いて「ある」。なんとも不思議である。
日本学術振興会がリンクしている「大学の調査報告書」は、この項の最初に示した「大学の調査報告書」とは異なり、2ページで、「調査委員名は掲載されていない」。
なぜ2つの異なるタイプの「大学の調査報告書」を作成させるのだろう。
2つ目の「大学の調査報告書」 → https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_180315/data/2.pdf
なお、「日本学術振興会の調査報告書」の書式は統一されているので、書式それ自身が本論文で問題にしているチェックリストの機能を果たしている。
以下の文書(の一部)では、「Ⅰ.渡邊嘉典・・」が最初に出ているが、無視してよい。文書(の一部)をクリックすると、愛知学院大学事件の全文のhtmファイルが別窓で開く。
《3》日本の調査報告書
《1》《2》で示したように、本論文で問題にしているチェックリストは日本にある。
ただ、問題もある。
文部科学省は自分で作成したガイドラインでは、大学の調査報告書に「研究者(氏名、所属・職)」を記載するこを要求しているが、文部科学省自身が発表する時は、実名を隠して発表している。
最初にこの発表を見た時、なんという屈折した発表なんだろう、と愕然とした。文部科学省が事実を事実のまま発表しない・できない。この日本の体質に今でも複雑な思いである。
世界的に見て、ネカト事件のメディア報道(新聞など)で、ネカト者の名前を発表しないのはとても珍しい。
ただ、調査報告書ではネカト者の名前を発表しない例はある。調査報告書とメディア報道(新聞など)は異なる。
ネカト先進国の米国でも、省庁や局レベルでネカト対処の方針が異なり、調査報告書にネカト者の名前を発表しない省庁や局がある。
ネカトでクロの場合、米国では、研究公正局は実名報道だが科学庁は匿名報道である。そのため、メディア報道(新聞など)は科学庁絡みのネカト事件をほとんど報道しない。
→ 1‐3‐3.米国の研究ネカト問題 | 研究倫理(ネカト)
日本では、文部科学省系列の日本学術振興会はネカト者の実名を発表しているのに、文部科学省・本省は実名を隠している。なんか矛盾している。
文部科学省が率先して名前を隠蔽している利点はなんなのだろう? あまり思いつかない。
欠点は思いつく。①基本的に、事件を曖昧にしている。②ネカト事件を発表するのはネカト事件の実態を周知させるためなのに、周知になっていない。③また、実名隠蔽はネカトを許容し促進する方向に作用する。ネカト者が特定されないために、ネカト者とは知らずに大学が雇用するという事態も起こっている。
日本は、①ネカト調査報告書のウェブ上での発表すること、②ネカト者を実名で記載すること、③調査委員名を実名で記載すること、を大学に義務づけるべきである。
さらに、ネカト調査の結果、ネカトではなかった場合も、同様に、報告書をウェブ上に発表すべきである。そうすることで、ネカト行為と非ネカト行為の線引きがハッキリ見えてくる。現状では、この線引きがとても曖昧である。
●5.【関連情報】
① 2018年3月12日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Misconduct investigation reports are uneven at best. Here’s how to make them better. – Retraction Watch
② 2018年7月2日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Reports of misconduct investigations can tell us a lot. Here are more than a dozen of them. – Retraction Watch
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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