メディ・ボーニー(Mehdi Borni)(チュニジア)

2022年2月8日掲載 

ワンポイント:ボーニーはアビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院(University Hospital Center Habib Bourguiba, in Sfax)・医師。2021年10月12日(41歳?)、ボーニーの「2021年6月のPan Afr Med J.」論文が撤回された。他人の論文画像を盗用した典型的なネカトだった。病院はネカト調査していない。処分なし。国民の損害額(推定)は1000万円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

メディ・ボーニー(Mehdi Borni、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-1151-574X、写真出典)は、チュニジアのスファックス大学(University of Sfax)付属のアビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院(University Hospital Center Habib Bourguiba, in Sfax)・医師で、専門は神経外科である。

2021年10月12日(41歳?)、ボーニーの「2021年6月のPan Afr Med J.」論文が撤回された。撤回は編集長の権限で行なわれ、ボーニーは撤回に同意していなかった。

研究不正は他人の論文画像を盗用した典型的なネカトである。秘書が画像を間違えたと釈明しているが、多分、ウソである。

ネカト発覚の経緯は不明。

アビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院はネカト調査している様子はない。従って、ボーニーは解雇などの処分を科されていない。

アビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院(University Hospital Center Habib Bourguiba, in Sfax)。写真出典。グーグルマップで白楽が作成

  • 国:チュニジア
  • 成長国:?
  • 医師免許(MD)取得:xx大学
  • 研究博士号(PhD)取得:?
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。根拠なしの推定
  • 現在の年齢:42 歳?
  • 分野:神経科学
  • 不正論文発表:2021年(41歳?)
  • 発覚年:2021年(41歳?)
  • 発覚時地位:アビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院・医師
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被盗用者と思うが、不明
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②アビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院は調査していない(推定)
  • 病院・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない(推定)
  • 病院の透明性:調査していない(推定)、発表なし(✖)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:3報。1報撤回
  • 盗用内容:他人の論文の2つの画像を盗用
  • 時期:研究キャリアの中期(?)
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1000万円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

ほとんど不明

  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日生まれとする。根拠なしの推定
  • xxxx年(xx歳):xx大学(Kanpur)で医師免許(MD)取得
  • xxxx年(xx歳):スファックス大学(University of Sfax)付属のアビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院(University Hospital Center Habib Bourguiba, in Sfax)・医師
  • 2021年6月(41歳?):直ぐに問題視される「2021年6月のPan Afr Med J.」論文を出版
  • 2021年6~10月(41歳?):上記論文のネカトが発覚
  • 2021年10月(41歳?):上記論文が撤回
  • 2022年2月7日(42歳?)現在:上記職を維持(推定)

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★経歴不明

メディ・ボーニー(Mehdi Borni)の経歴は不明である。

不正発覚時は、チュニジアのスファックス大学(University of Sfax)付属のアビブ・ブルギバ・ド・スファックス病院(University Hospital Center Habib Bourguiba, in Sfax)・医師で、専門は神経外科である。。

★経緯

ネカト発覚の経緯は不明である。

ネカトは他人の論文の画像を盗用して自分の論文に使用した盗用である。ということは、被盗用者が気付いて学術誌に通報したと推定される。これが発覚の端緒だろう。

2021年10月12日(41歳?)、メディ・ボーニー(Mehdi Borni)の「2021年6月のPan Afr Med J.」論文が撤回された。撤回は編集長の権限で行なわれ、ボーニーは撤回に同意していなかった。

「Pan Afr Med J.」誌は次のように撤回理由を述べている。 → 撤回告知:Retraction: a case of meningitis due to <i>Achromobacter xylosoxidans</i> in a child with a polymalformative syndrome: a case report

私たちの内部調査で、この論文に、画像の盗用、画像の操作、文章の盗用の明らかな証拠を見つけました。

図3・パネルAは、以下の論文[2]の図1に酷似しています。この論文の図1をコピーし、加工したようです。

[2] Roy P. Pulmonary Infection Caused by Achromobacter xylosoxidans in a Patient with Carcinoma of Epiglottis: A Rare Case. J Clin Diagn Res. 2014 May;8(5):DD01-2.

図3・パネルBは、以下の論文[3]の図4に酷似しています。色をわずかに変えて、画像を再利用しています。

[3] Sebanayagam V, Nguyen P, Nassar M, Soubani A. Nosocomial Achromobacter xylosoxidans Infection Presenting as a Cavitary Lung Lesion in a Lung Cancer Patient. Cureus. 2020 Aug 17;12(8):e9818.

さらに、著者・メディ・ボーニーは他の2論文で、画像操作と盗用の疑念が指摘されています[4,5]。

[4] PubPeer – Ruptured Central Nervous System Dermoid Cyst of Suprasellar…
[5] PubPeer – An isolated conus medullaris cystic lymphangioma: Uncommon l…

著者・メディ・ボーニーは私たちの疑念に対して合理的な説明ができていませんが、撤回に同意しませんでした。

「Pan Afr Med J.」誌はこれらの重大なネカトが論文公表前に特定できなかったことを陳謝し、科学界に心からお詫び申し上げます。

「撤回監視(Retraction Watch)」の問い合わせに、ボーニーは次のように答えている。

アップロードされた画像は、論文原稿用ではなく、教育目的のためだけの画像です。

秘書がミスを犯し画像をアップロードしてしまったと、編集長に何度もメールしました。私は編集長に謝罪し正しい画像を送りました。それで、私は編集長の撤回決定に同意しませんでした。

なお、秘書は、間違えたことを認めています。私は秘書を非難していません。 

「撤回監視(Retraction Watch)」は、上記の内容を秘書に直接確かめようと、秘書の連絡先を聞いたが、ボーニーは連絡先を教えてくれなかった。

白楽は、秘書の件はウソだと思った。本当に秘書の間違いなら、秘書の連絡先を教えても問題ないハズだ。

【ねつ造・改ざんの具体例】

「Pan Afr Med J.」誌が撤回告知で「2021年6月のPan Afr Med J.」論文のネカト箇所を指摘している。 → 撤回告知:Retraction: a case of meningitis due to <i>Achromobacter xylosoxidans</i> in a child with a polymalformative syndrome: a case report

★「2021年6月のPan Afr Med J.」論文

「2021年6月のPan Afr Med J.」論文の書誌情報を以下に示す。2021年10月12日に撤回された。

盗用と指摘された図3のパネルAは以下である(出典:原論文)。

被盗用図は以下である(出典:原論文)。

確かに酷似している。誰が見ても盗用だと思うでしょう。

盗用と指摘された図3のパネルBは以下である(出典:原論文)。

被盗用図は以下である(出典:原論文)。

一部を切り取って流用している。これも確かに酷似している。誰が見ても盗用だと思うでしょう。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2022年2月7日現在、パブメド(PubMed)で、メディ・ボーニー(Mehdi Borni)の論文を「Mehdi Borni[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2018~2021年の4年間の12論文がヒットした。

2022年2月7日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2022年2月7日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでメディ・ボーニー(Mehdi Borni)を「Mehdi Borni」で検索すると、本記事で問題にした「2021年6月のPan Afr Med J.」論文・ 1論文が撤回されていた。

「2021年6月のPan Afr Med J.」論文が2021年10月12日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2022年2月7日現在、「パブピア(PubPeer)」では、メディ・ボーニー(Mehdi Borni)の論文のコメントを「Mehdi Borni」で検索すると、2論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》研究者がいるところネカトあり 

チュニジアは北アフリカにある人口が1200万人の国で、白楽はまるで知らない国だ。

そのような国にも研究者がいて、ネカトする研究者がいる。

研究者は世界中にいて、ネカトは世界中で起こっている、という、至極当然のことをこのような事件で改めて認識した。

《2》多数の小さなネカト行為 

メディ・ボーニー(Mehdi Borni)のネカト行為は他人の論文画像を盗用した典型的なネカトである。

しかし、学術誌「Pan Afr Med J.」はインパクトファクターが0.519(データ画像出典)の平凡な学術誌で、ボーニーの論文は平凡な論文である。しかも、チュニジアという小国で起こした、平凡で中くらいのネカト事件である。

中くらいのネカト事件
白楽は、ネカト行為の「大中小」を、産業メディア(新聞など)に掲載された行為を「大」または「中」の2種類に、されなかった行為をまとめて「小」としている。それで、ボーニーの事件は「中」規模のネカト行為という判定である。以下その基準で話す。

白楽ブログでネカト関連記事を980本以上書いているが(もうじき1000本)、結果的に、有名な研究者の大きな事件を書く傾向が強くなる。

人々に何かを伝えるメディアは基本的な性質として、産業メディア(新聞など)でも社交メディア(SNS)でも、大きな事件を書く傾向が強くなる。

報道されるネカト事件は世界中で年間300~500件(推定値)あるが、白楽が記事にするのは年間 120件ほどだ。だから、どの事件を記事にしようかと選ぶ時、白楽は有名な研究者の大きな事件を書く傾向が「そこそこ」ある。

それで、つい、世間と読者は、特殊な研究者がトンデモない大きな研究不正をしていると受け取りがちになる。

しかし、実際は、多くの普通の研究者が軽い気持ち軽いネカトをする。だから本当は、今回のような「中」規模の事件の方が「大」事件より多い。

そして、実は、事件として報道されない「小さな」ネカト「行為」(定義により、「事件」ではない)は、メチャクチャたくさんある(世界で年間10万件はあるだろう。根拠薄弱な値です)、と白楽は推測している。

だから、研究界におけるネカト「行為」の実態を認識してもらうためにも、本当は「小さな」ネカト「行為」を記事にしたいのだが、事件としてメディアが報道しないので、記事にできない。

それで、今回のような「中」規模の事件は、読者は面白くないかもしれないが、事実を記載する白楽ブログなので、意図的に、時々、記事にしようと思う。

そうしないと、ネカト防止は「大」事件ばかり対象にしてしまう。大事件のネカト防止策と「小さな」「ネカト行為」の防止策は異なる可能性がある。

例えば、院生が「小さな」「ネカト行為」をした時、指導教員が少し注意しただけで、その院生は、その後の数十年の研究人生の中で、二度と再び「ネカト行為」をしないかも知れない。

こういう抑止方法の開発と効果を検討したいが、そのような論文はみつからない。「小さい」けど、とても多い「ネカト行為」を防ぐ方法は、大ネカト事件とは別に考える必要がある(多分)。

出典:https://retractionwatch.com/2021/11/10/clear-evidence-of-theft-brings-down-meningitis-paper-with-dodgy-images/#more-123487

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】

① 2021年11月10日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:‘Clear evidence of theft’ brings down meningitis paper with dodgy images – Retraction Watch

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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フォスター
フォスター
2022年2月8日 1:02 PM

ハインリッヒの法則が研究ネカトにも当てはまるのかもしれませんね。

1件の重大な研究ネカトの裏には
29件の軽微な研究ネカトがあり
300件の表沙汰にならない研究ネカトがある。

労働災害は「これくらいなら大丈夫だろう」という
安易な気持ちがやがての事故に繋がるのだそうですが
研究不正の背景にも同じような心理があるのかもしれません。
全国の学術機関に共通した基本的なルール作りが求められますね。