フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)(イラン)

2021年5月4日掲載 

ワンポイント:バハーヴァンドはロヤン幹細胞生物技術研究所(Royan Institute for Stem Cell Biology and Technology)・所長・教授である。2020年11月(48歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がバハーヴァンドの46論文に不正な画像があると指摘した。ロヤン幹細胞生物技術研究所がネカト調査をしているかどうか不明で、バハーヴァンド及び室員は無処分である。撤回論文はゼロ。国民の損害額(推定)は今のところ1億円(大雑把)。この事件は、2020年ネカト世界ランキングの「4D」の「12」に挙げられたので記事にした。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0001-6528-3687、写真出典)は、イランのロヤン幹細胞生物技術研究所(Royan Institute for Stem Cell Biology and Technology)・所長・教授で医師免許なし、専門は幹細胞学である。

ロヤン研究所(Royan Institute)は1991年に設立され、現在、3研究所で構成されている。その1つは、2002年にバハーヴァンドが幹細胞部門(Department of Stem Cells)を創設し、後に、ロヤン幹細胞生物技術研究所(Royan Institute for Stem Cell Biology and Technology)に発展した研究所である。

つまり、バハーヴァンドはロヤン幹細胞生物技術研究所(Royan Institute for Stem Cell Biology and Technology)の創設者である。現在、所長である。

2003年(31歳)、バハーヴァンドは、イランで最初にマウスおよびヒト胚性幹細胞を作成した。その功績でイランでは有名な科学者で、多くの科学賞を受賞しているスーパースター科学者である。

2020年11月(48歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がバハーヴァンドの46報の論文に不正な画像があると指摘した。

なお、仮に不正なデータねつ造・改ざんだったとしても、バハーヴァンドがネカト犯ではなく室員がネカト犯なのかもしれないが、本ブログではバハーヴァンドに焦点を当てて記載した。

ロヤン幹細胞生物技術研究所がネカト調査をしているかどうか不明で、バハーヴァンド及び室員は無処分である。

2021年5月3日(49歳)現在、「パブピア(PubPeer)」では2006-2020年(34-48歳)の47論文が問題だと指摘されているが、撤回論文はゼロである。

ロヤン研究所(Royan Institute)。上の写真出典。下の写真出典

  • 国:イラン
  • 成長国:イラン
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:クワリズミ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1972年2月25日
  • 現在の年齢:49 歳
  • 分野:幹細胞学
  • 不正論文発表:2006-2020年(34-48歳)
  • 発覚年:2020年(48歳)
  • 発覚時地位:ロヤン幹細胞生物技術研究所・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)
  • ステップ2(メディア):「Science Integrity Digest」、「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ロヤン幹細胞生物技術研究所が調査しているかどうか不明
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所の透明性:調査しているかどうか不明(ー)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:2006-2020年(34-48歳)に出版された47論文に「パブピア(PubPeer)」で疑念。撤回論文はゼロ
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:今のところ処分なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Baharvand_H-Curriculum-Vitae-47.pdf

  • 1972年2月25日:イランのイスファハーン(Esfahan)で生まれる
  • 1990-1994年(18-22歳):シラーズ大学(Shiraz University)で学士号取得:生物学
  • 1994-1996年(22-24歳):シャヒード・ベヘシュティ大学(Shahid Beheshti University)で修士号取得:発生生物学
  • 1996年(24歳)-現在:ロヤン研究所(Royan Institute)・研究員
  • 2001-2004年(29-32歳):クワリズミ大学(Khwarizmi University)で研究博士号(PhD)を取得:細胞・発生生物学
  • 2003年(31歳):イランで最初に、マウスおよびヒト胚性幹細胞を作成した
  • 2006年(34歳):最初の不正論文を出版
  • 2010年1月(37歳)-現在:ロヤン幹細胞生物技術研究所(Royan Institute for Stem Cell Biology and Technology)・所長
  • 2012年3月(40歳)-現在:幹細胞発生生物学(Stem Cell and Developmental Biology)・教授
  • 2020年11月(48歳):46論文に不正な画像が指摘された
  • 2021年5月3日(49歳)現在:処分されていない

【受賞】

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
受賞記念の研究紹介動画:「Professor Hossein Baharvand, 2019 Mustafa Prize Laureate – YouTube」(ペルシア語、英語の字幕)20分25秒。
Mustafa Prizeが2020/08/10に公開

【動画2】
講演動画:「Hope for a Broken Heart | Hossein Baharvand | TEDxTUMS – YouTube」(ペルシア語)17分17秒。
TEDx Talksが2015/07/07に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★イランのスーパースター科学者

2003年(31歳)、フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)はイランで最初に、マウスおよびヒト胚性幹細胞を作成した(以下の論文)。その功績でイランでは有名な科学者で、多くの科学賞を受賞している。

2019年(47歳)、バハーヴァンドはイスラム世界の優れた科学者に授与するムスタファ賞(Mustafa Prize – Wikipedia)を受賞した。 → Mustafa Prize 2019 [Science and Technology Award) granted to UT Faculty Member

★経緯

フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand、写真出典)のネカト状況はほとんど不明である。

2020年11月(48歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がバハーヴァンドの46報の論文に不正な画像があると指摘した。

ビックは問題を「パブピア(PubPeer)」でも提示した。学術誌に通報した。

バハーヴァンドの所属するロヤン幹細胞生物技術研究所にも通報したようだが、バハーヴァンドがその研究所の創設者で所長なので、まともな調査を期待できないと述べている。

2021年5月3日(49歳)現在、「パブピア(PubPeer)」では2006-2020年(34-48歳)の47論文が問題だと指摘されているが、撤回論文はゼロである。

仮に不正なデータねつ造・改ざんだったとしても、バハーヴァンドがネカト犯ではなく室員がネカト犯かもしれない。

ロヤン幹細胞生物技術研究所がネカト調査をしているかどうか不明で、バハーヴァンド及び室員は無処分である。

【ねつ造・改ざんの具体例】

フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)の疑念論文をパブピアで点を探ったが、47論文もあるので全部は示せない。

以下に、どの論文と示さないが、不正画像を9点、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の記事から選んで貼り付けた。 2020年11月11日のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)記者の「Science Integrity Digest」記事:46 papers from a Royan Institute professor – Science Integrity Digest

顕微鏡写真、ウェスターンブロット画像、フローサイトメトリー図、その他、画像の種類を問わずに重複・加工している。

https://pubpeer.com/publications/6D22860886BC9910A079BEA2B27834

https://pubpeer.com/publications/171655C2DE811FC2E068DE93BE7B30

https://pubpeer.com/publications/BFF35F7692B70A95A2F36E749B5F89 (left) and https://pubpeer.com/publications/72B6FF9EEE9DF5EA54404417E0E143 (right).

https://pubpeer.com/publications/F3F62DEF1B56FE6D4F2E95E0120874 (left) and https://pubpeer.com/publications/171655C2DE811FC2E068DE93BE7B30 (right)

https://pubpeer.com/publications/92FCAF83A7ED8EDF3F2697C09DED41

From https://pubpeer.com/publications/8EE7A08C49278562427D91FAD9186F (left) and https://pubpeer.com/publications/F32245455A07C95B432300073055BE (right).

From: https://pubpeer.com/publications/6D22860886BC9910A079BEA2B27834 (left) and https://pubpeer.com/publications/F782FDC225A464225FF8839DA68149 (right)

 https://pubpeer.com/publications/1CDA7852E96CE10B331E0368A957C2

https://pubpeer.com/publications/0AE04FCDC2AEFBC4A1FBC5F8376950 (left) and https://pubpeer.com/publications/F782FDC225A464225FF8839DA68149 (right).

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年5月3日現在、パブメド(PubMed)で、フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)の論文を「Hossein Baharvand [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2021年の19年間の410論文がヒットした。

2021年5月3日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年5月3日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでフセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)を「Hossein Baharvand」で検索すると、 0論文が訂正、0論文が懸念表明、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年5月3日現在、「パブピア(PubPeer)」では、フセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)の論文のコメントを「”Hossein Baharvand” OR “H. Baharvand”」で検索すると(エリザベス・ビックの検索式)
47論文にコメントがあった。

47論文は2006-2020年(34 -48歳)に出版された論文である。

●7.【白楽の感想】

以下は、基本的に、アール・ロバートソン(Erle Robertson)(米)で書いたことと同じである。

《1》ステップ初期 

現在、データねつ造・改ざんへの主要な対処は次のステップで進む。

  1. データねつ造・改ざんがパブピア(PubPeer)で指摘され、指摘者が学術誌とネカト疑惑者の所属大学に通報する
  2. 学術誌が対応し、論文を撤回する
  3. 「撤回監視(Retraction Watch)」が論文撤回を記事にする
  4. 所属大学が調査する。クロなら解雇(辞職)などの処分を科す。調査結果を発表する場合としない場合がある
  5. 米国の場合、研究公正局が調査し、クロなら実名報道し、処分を科す
  6. 産業メディア(新聞など)が報道する
  7. 極端な場合、裁判となる

今回のフセイン・バハーヴァンド(Hossein Baharvand)の場合、まだ「1」の段階で、これからバハーヴァンド事件となっていくと予想される。

現在、ネカト発生状況が調査されていないし(または調査中?)、報道されていない。それで、状況は良くわからない。

https://www.tehrantimes.com/news/435213/Iran-pioneer-in-stem-cell-knowledge-technology

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Hossein Baharvand – Wikipedia
② ロヤン研究所:Royan Institute – Royan Institute – Wikipedia
③ 2020年11月11日のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)記者の「Science Integrity Digest」記事:46 papers from a Royan Institute professor – Science Integrity Digest
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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