ワンポイント:企業出身の大学教員が論文盗用なのにほぼ無処分の激甘
●【概略】
スザンナ・ディッキンソン(Susannah Dickinson、写真出典)は、英国に育ち、英国・リヴァプール大学(University of Liverpool)・建築学科卒業後、主に米国でいくつかの設計事務所に22年間勤めた。2009年に米国・アリゾナ大学(University of Arizona)・建築学部(School of Architecture)・助教授になった。専門は建築学だった。
2013年(48歳?)、教え子の修士論文の文章を盗用したと、2012年に修士号を取得し卒業した教え子が大学に訴えた。
2014年9月(49歳?)、アリゾナ大学の調査委員会は盗用だと結論したが、大学はディッキンソンをほぼ無処分にした。2015年9月現在、ディッキンソンは準教授に昇進していて、アリゾナ大学で教鞭をとっている。
アリゾナ学(University of Arizona)。写真出典
アリゾナ大学(University of Arizona)・建築学部(College of Architecture, Planning, & Landscape Architecture)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:英国
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に、1965年1月1日生まれとする
- 現在の年齢:59 歳?
- 分野:建築学
- 最初の不正論文発表:2010年(45歳?)
- 発覚年:2013年(48歳?)
- 発覚時地位:米国・アリゾナ大学・助教授
- 発覚:教え子が実名で大学に公益通報
- 調査:①アリゾナ大学・予備調査委員会。②アリゾナ大学・調査委員会
- 不正:盗用
- 不正論文数:2報
- 時期:研究キャリアの中期から。企業から大学教員に採用されて1~2年
- 結末:ほぼ無処分
★【動画】
ニュース:「UA Teacher Plagiarizes Student’s Work – YouTube」、(英語)34秒、 AZdailywildcatが2014/10/01 に公開に公開
●【経歴と経過】
経歴出典
- xxxx年月日:英国(?)で生まれる。仮に、1965年1月1日生まれとする。
- 1987年(22歳?):英国・リヴァプール大学・建築学科(Arts in Architecture, University of Liverpool, England)を卒業
- 1987 – 1988年(22 – 23歳?):英国・ロンドンのコンラン・ロシェ(Conran Roche)社でデザイナーとして勤務
- 1988-89年(23 – 24歳?):米国・オレゴン大学に建築学の海外留学
- 1998年(33歳?):カリフォルニア州立理工大学ポモナ校(California State Polytechnic University, Pomona)、修士号取得。建築学
- 1999 – 2004年(34 – 39歳?):ロサンゼルスの建築家・フランク・ゲーリー(Frank O. Gehry)の事務所に建築家として勤務
- 2004 – 2006年(39 – 41歳):米国・ニューヘヴンのシーザー・ペリ(Cesar Pelli and Associates)設計事務所に建築家として勤務
- 2006 – 2008.年(41 – 43歳?):ニューヨークのショップ設計事務所(SHoP Architects)に建築家として勤務
- 2008 –現(xx歳?):ニューヨークのM+D事務所のコンサルタント
- 2009年(44歳):米国・アリゾナ大学(University of Arizona)・建築学部(School of Architecture)・助教授
- 2013年(48歳?):論文盗用が発覚する
- 2014年(49歳?):全米建築学大学教育学会(Association of Collegiate Schools of Architecture)の全国指導者賞(national teaching award)を受賞(2014 Award Winners、下の写真)
- 2015年9月現在(50歳?):辞職なし
●【作品】
スザンナ・ディッキンソンが貢献した建築作品例のいくつかを以下に示す。出典
★作品例1.米国・ウォルト・ディズニー・コンサートホールの創始者室
Founders’ Room, Disney Concert Hall, Los Angeles, CA
with Gehry Partners, LLP 1
1999, opened 2003
★作品例2.プリンストン大学の図書館(Lewis Library, Princeton University)
with Gehry Partners, LLP 5
work through CDs 2002-4, opened 2008
★作品例3.モンゴルのオルドス博物館(Ordos Museum, Ordos, Mongolia)
with M+D as facade consultants to MAD Architects, Beijing, China 15
facade consultation 2008-10, opened 2011
●【不正の内容】
ディッキンソン助教授が盗用したの文章を使ったのは以下の申請書1つと学会発表概要1つの計2つで、学術ジャーナルの査読付き論文ではない。
2009年にアリゾナ大学の助教授に就任しているので、2010年の申請書は、時系列的には、就任して1年程度で盗用したことになる。
- 2010年 Association Architecture Visiting Teachers’ Programme in London。英国・ロンドンでの訪問教授申請書。アリゾナ大学は最終的に9節のうち2節を盗用と判定した。
- 2013年 「Biomimetic Performance」 ARCC Architectual Research Conference。ノースカロライナでの学会発表で9ページ(PDF)。全体では約20%が盗用されている。6ページ目を以下に示す。盗用部分が下線で示されている(Pdf : Professor’s paper)が、このページの文章はほとんど盗用だ。
●【不正発覚と対処の経緯】
以下、2014年9月30日のマックス・ロドリゲス(Max Rodriguez)の「アリゾナ・デイリー・ワイルドキャット」記事を主に参考に記述する(Arizona Daily Wildcat :: Ex-Student: UA botched plagiarism inquiry)。
★ 教え子ジョンソンが公益通報
ニコラス・ジョンソン(Nicholas Johnson、男性)は、ディッキンソン助教授の研究室で2012年に修士号を取得し企業で働いていた。
2013年4月25日、ニコラス・ジョンソン(27歳)は、自分の修士論文中の文章が引用されずにディッキンソン助教授の論文に使われている(つまり盗用)、とアリゾナ大学の研究公正官(Research Integrity Officer)に訴えた。
大学内の研究ネカトはその大学の研究公正官に訴えるのが正式な手続きである。研究公正官はシンディ・ランキン(Lucinda(Cindy) Rankin、写真出典)で生理学科・講師だった。
2013年5月、ランキン研究公正官は予備調査(pre-inquiry)のためにジョンソンに会って、事情を聞いた。
その時、ランキン研究公正官は、ディッキンソン助教授に問題を直接突きつけると、ディッキンソン助教授はいろいろと言い訳を述べたが、最終的にはジョンソンの文章を自分の論文に使用したことを認めた、とジョンソンに説明した。
ランキン研究公正官は、職務上、ジョンソンの訴えと会話したことなどをまとめて、関係者に通知すべきだった。関係者とは、ディッキンソン助教授、研究担当副学長のレスリー・トルバート(Leslie Tolbert)、建築学カレッジ(CAPLA)長のジャニス・チェルベリ(Janice Cervelli)、建築学部長のロバート・ミラー(Robert Miller)、倫理委員会(University Committee on Ethics and Commitment:UCEC)委員長のスリニ・ラガバン(Srini Raghavan)である。
ジョンソンの話では、しかし、その通知はされなかった。
ランキン研究公正官は通知しないで、非公式の示談で調査終了にしようとジョンソンに打診した。
ランキン研究公正官の申し出はアリゾナ大学教職員規則(UHAP:University Handbook For Appointed Personnel)に従っていない。それで、ジョンソンは、示談に応じないと返信した。
なお、アリゾナ大学教職員規則の第2条13項.09に研究ネカトの詳細な規則が示されている → 「2.13.09 Policy And Procedures For Investigations Of Misconduct In Scholarly, Creative, And Research Activities」
後に、ランキン研究公正官は、大学協議会(general council)から、「学部長とカレッジ長に通知しないように」と指示されていたと弁明した。
また、ランキン研究公正官は、予備調査の期限を3週間延長したが、このことで、予備調査の締め切り日に遅れるという失態を犯している。
★ 調査の停滞
2013年7月7日、ジョンソンは、ランキン研究公正官ではらちが明かないと判断し、建築学カレッジ長のジャニス・チェルベリ(Janice Cervelli、写真出典)に直接訴えた。しかし、チェルベリは非協力で、訴状の受け取りを拒否し、見もしなかった。
実は、ランキン研究公正官は、ジョンソンの申し立てが大学規則で定める研究ネカトとして扱うのが妥当がかどうか迷っていた。というは、ディッキンソン助教授が盗用し、利用したのは査読付きの学術論文ではないからである。その判断のために、事件に関して集められるすべての資料を集めていた。
大学規則によると、ランキン研究公正官が研究ネカトと判断すれば、倫理委員会委員長のスリニ・ラガバン(Srini Raghavan)に通知することになる。すると、ラガバン委員長は正式な調査委員会を設置することになる。
予備調査期間の最初の締め切りが17日過ぎた時、ジョンソンはランキン研究公正官から、ランキン研究公正官が倫理委員会と会う予定だとの連絡を受けた。大学規則によると、予備調査は60日以内に終了しなければならなのだが、ジョンソンは締切り期限について何も知らされていなかった。
2013年8月12日、ジョンソンは、新任の研究担当副学長のジェニファー・バートン(Jennifer Barton)に締切日を過ぎてしまったことを伝えた。すると、期限を2013年10月31日に延期すると通知されてきた。
★ 予備調査委員会
2013年9月24日、スリニ・ラガバン倫理委員会委員長、研究教育部門の司書、法律の臨床教授のポール・ベネット(Paul Bennett)の3人の委員で構成された予備調査委員会(委員長はベネット教授)が設置され、ジョンソンに面談した。
ジョンソンによると、予備調査委員会の質問は、結論を特定の方向に誘導している印象を受けた。というのは、「盗用と問題視した論文に関して、ディッキンソン助教授から共著者にならないかというメールを受け取っているでしょう」と質問してきたからだ。ディッキンソン助教授がそういうメールを送ったと主張したらしいのだ。
ジョンソンは、「ディッキンソン助教授の論文が盗用だと訴えるまで、そのようなメールを見ておりません」と答えた。盗用だと訴えてからは、ディッキンソン助教授はジョンソンにコンタクトしようとしないので、ジョンソンの方もディッキンソン助教授とコンタクトをしたくないと思ったし、実際していなかった。それで、「共著者にならないかというメール」は見ていなかった。
ジョンソンは予備調査委員会に、「教授が学生の文章を盗用して自分の論文に使っていいんですか?」と質問したが、予備調査委員会は何も答えなかった。
予備調査委員会は、盗用の証拠を見つけたのでディッキンソン助教授に盗用があった。別の委員会を設け正式に調査するよう要請すると結論した。
ベネット委員長は、予備調査委員会の上記の決定をランキン研究公正官に伝えた。ランキン研究公正官が大学に正式な特定調査委員会を設けることを通知する役目だった。特定調査委員会(ad hoc Investigative Committee)は、大学の規則によれば9人に委員が任命される正式な委員会だった。
予備調査委員会は、委員会の決定を2013年10月31日までにランキン研究公正官とアンドリュー・コムリー学長(Andrew Comrie、写真出典)に伝えなければならないのに、ランキン研究公正官が予備調査委員会の決定を受け取ったのは2013年11月2日だった。
正式な特定調査委員会が発足するには、発足通知の期限は11月10日だったが、この期限も守られなかった。ジョンソンが通知を受け取ったのは11月14日だったのだ。
★ 正式な特定調査委員会
アリゾナ大学教職員規則によれば、特定調査委員会は2013年12月10日までに開始されなければならなかった。それなのに、特定調査委員会の初の会合は、2014年1月14日に開催されたのだ。
特定調査委員会の委員長は植物学部のデニス・レイ教授(Dennis Ray、写真出典)で、レイ教授がジョンソンにコンタクトをとったのは2014年3月だという。
2014年5月20日、アンドリュー・コムリー学長(Andrew Comrie)は、特定調査委員会のディッキンソン助教授についての調査結果を手紙で受け取った。
ジョンソンは、2014年8月20日に自分にも手紙を送付するようにコムリー学長に要求するまで手紙を送ってもらえなかった。ジョンソンは、2014年8月28日に手紙を受け取った。
手紙では、特定調査委員会は、ディッキンソン助教授はジョンソンの論文を引用せずに論文中の文章を使ったので、研究ネカトがあったと結論していた。
もし、アリゾナ大学の学生が研究ネカトをすれば、学業公正規範(Code of Academic Integrity)により、軽度だと警告、重度だと、学位取り消し、あるいは退学というペナルティが科されることになっている。
アリゾナ大学教職員規則によると、教職員が研究ネカトをすれば、学長は、懲戒免職処分に科すことができる。
★ 大学の処分
しかし、特定調査委員会がディッキンソン助教授に科すことを勧告したペナルティは、ディッキンソン助教授が盗作に関するワークショップを開催することと、彼女の論文にジョンソンの寄与があったと出版社に通知することだけだった。
アリゾナ大学スポークスウーマンのアンドレア・スマイリー(Andrea Smiley)は、特定調査委員会とコムリー学長の決定について、意見を述べることを望まなかったが、「はっきりしていることは、彼らは、それが[ディッキンソンに対する]適切な救済だと思った」のでしょうと述べた。
2015年、ディッキンソン助教授は、準教授に昇進し、年俸は5千ドル増え、7万ドルになった。
2015年9月22日現在、アリゾナ大学で少なくとも3つ科目の教鞭をとっている。
●【論文数と撤回論文】
2015年9月22日現在、パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、スザンナ・ディッキンソン(Susannah Dickinson)の論文を「Susannah Dickinson [Author]」で検索した。論文は1報もヒットしなかった。建築学分野を生命科学論文データベースで検索しても、当然ながら、ヒットしない。
2015年9月22日現在、グーグル・スカラー(Google Scholar)で、スザンナ・ディッキンソン(Susannah Dickinson)の論文を「”Susannah Dickinson”」で検索した。57件がヒットした。
グーグル・スカラーで撤回論文を「(retraction OR retracted) author:”Susannah Dickinson”」で検索すると、2件がヒットした。しかし、2件とも撤回論文ではなかった。
2015年9月22日現在、撤回論文はない。
●【事件の深堀】
★ 学生が指導教授を告発
【主要情報源②】による
メール・インタビューで、盗用事件専門の弁護士のロナルド・スタッドラー(Ronald Standler、写真出典)は、「大学院生が指導教官を盗用で訴えるのは稀です。指導教官から好意的な推薦書がもらえないからです」と答えた。
ジョンソン事件については言及しなかったが、スタッドラーは、全国の大学院生がこの問題に直面していると、以下のように述べた。
「大学院時代を生き延びて専門家になった人との非公式な会話で、彼らの経験では、教授の盗用は公式に報告されているよりずっと頻繁に起こっている」
スタッドラーは、学生・院生の文章を教授が盗用する行為は、高等教育界での1つの問題だと指摘した。
日本では、指導教官の推薦書は重要視されないこともあり、院生が指導教官を訴えることはそれほど稀ではない。しかし、教授の盗用は一般に思われているより頻繁に起こっている点に関して、白楽は同意見だ。
●【防ぐ方法】
《1》実業界から大学教員
ディッキンソン助教授が盗用して提出したのは以下の「2010年の申請書」である。2009年にアリゾナ大学の助教授に就任しているので、就任してすぐに盗用したのだ。
- 2010年 Association Architecture Visiting Teachers’ Programme in London。英国・ロンドンでの訪問教授申請書。
企業から大学に移籍した大学教員は、論文の書き方の十分な訓練を受けていない。研究ネカトの十分な訓練も受けておらず、何が研究ネカトかを理解していない人が比較的多い。日本でも同様である。企業から大学に移籍した大学教員には、論文の書き方の訓練をし、研究ネカト教育をすることが必須である。
●【白楽の感想】
《1》処分が激甘
大学は盗用と判定したのに、ディッキンソン助教授の処分が大甘である。その理由はなんだろう?
- 盗用が、査読付き学術論文ではないこと、政府からの研究助成金とは無関係だったことで、盗用論文の悪影響は大きくなかった。それで、処分が甘くなった?
- 大学は新規採用教員への研究ネカト研修をしていなかった。ディッキンソン助教授はそこを指摘し、それを大学側が手落ちとし、妥協した?
- ディッキンソン助教授は大学上層部に影響する力がある? まさかと思うが、学長と愛人関係? 大型寄付者? 夫が影響者?
《2》大学が規則を破ってる
アリゾナ大学はディッキンソン助教授の盗用を認定したのに、ほぼ無処分にした。学術界とアリゾナ大学の学生・院生はこの不当性を忘れないだろう。
【主要情報源①】に次の記載がある。
アリゾナ大学の盗作防止ウェブサイトに、「他人の文章をそのまま使用するとき、引用符で囲み、さらに引用文献を示すこと」がされないと、盗作であると記述されている。
また、アリゾナ大学の学業公正規範(Code of Academic Integrity)には、次の規則が明記されている。
教職員は、学術公正を養育し、学生が学術論文を投稿するときに学術公正の方針を学生に伝える。通常の科目・プログラムで学術公正の通常の規範、特定の科目・プログラムで特別の規範(共同作業授業の規範、実験室規範、臨床割り当てなど)を学生に伝える。教職員はこの学業公正規範に違反しないよう、妥当なすべての努力をする。
米国のブログ「論文撤回監視(Retraction Watch)」は、ディッキンソン助教授は自分の所属大学の規則を守っていないし、大学も規則を守っていないと、暗に、非難している(【主要情報源①】)。
《3》師弟は対等?
研究室の院生が書いた修士論文の文章を、教員が引用符で囲まずに、引用もしないで、他で使用した。とはいえ、引用符で囲んで引用すればよいレベルの流用量ではない。
ただ、研究室の成果は研究室のものという文化もある。建築学では知らないが、生命科学ではそうだ。
研究室の学生・院生・ポスドク・教員は、同じボートに乗っているようなもので、誰が漕いだから船が進んだと教室員の個々の評価はしにくい。教員は船の舵を握り、教室員はオールを握る。強い共同作業(“highly collaborative”) で研究を進める。
この場合、教員が書いた文章を、研究室の学生が学外に出ない卒業論文・修士論文・博士論文で使用しても、盗用と公表して非難はしないだろう。白楽の場合、学生・院生にサンプルとして示した白楽の文章がそのまま卒業論文・修士論文に使われたことはある。
コマッタモンダとは感じたが、指導の一環だと考え、白楽は盗用とは考えなかった。というのは、学内の文章であることが理由の1つでもあるが、一部の学生・院生は、具体的なサンプルを示して論文の書き方を指導しないと、把握できないようだった。
また、文章なら盗用の議論になるが、研究のアイデアは教員が学生・院生に示さなければ、学生・院生が独自に考えるのはほぼ無理である。研究のアイデアはほぼ全部「盗用」される。というか、強い共同作業で進める研究室は、研究室員は教員のアイデアを実験で展開することが期待されている。
なお、「強い共同作業」組織なら、学生・院生の文章を教員が使うという逆の場合、どう考えるか?
「強い共同作業」組織ではあるが、師弟は対等ではない。学生・院生の文章を教員が引用しないで使うのは、明白な盗用である。
《4》全国指導者賞を受賞
ディッキンソン助教授は、2014年(49歳?)、学生・院生の指導が優れているという、全米建築学大学教育学会の全国指導者賞(national teaching award)を受賞したのだ(2014 Award Winners)。
皮肉なことに、その直前の2013年に盗用が発覚している。
賞の選考はいい加減だ。選考は厳密な審査ではないことが多いし、選考委員はいい加減な選考過程でも選考結果について非難されない。2015年9月22日現在、受賞は撤回されていない。
一般に、倫理委員が倫理違反をし(例:松本和子)、セクハラ委員がセクハラをする、というケースも散見する。
選考した人に選考の責任と重要性を認識してもらうために、選考から数年以内の不祥事には選考委員にもペナルティを科すべきだろう。
●【主要情報源】
① 2014年10月1日の「論文撤回監視(Retraction Watch)」記事:Arizona prof plagiarizes student’s thesis, gets reprimanded, but keeps her job – Retraction Watch at Retraction Watch
② 2014年9月27日、キャロル・アライモ(Carol Ann Alaimo)の「tucson.com」記事:UA professor plagiarized student’s work, school finds
③ 2014年9月30日、マックス・ロドリゲス(Max Rodriguez)の「アリゾナ・デイリー・ワイルドキャット」記事:Arizona Daily Wildcat :: Ex-Student: UA botched plagiarism inquiry
④ 2015年9月19日、キャロル・アライモ(Carol Ann Alaimo)の「tucson.com」記事:UA professor who plagiarized student gets tenure
★ 記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。