2022年12月5日掲載
ワンポイント:エルガザールは、エジプトのタンタ大学(Tanta University)で修士号を取得後、2002年(35歳?)に日本の熊本大学で博士号を取得した。その後渡米し、イースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)・教授になった。ネカトハンターのチェシャー(Cheshire)などが「パブピア(PubPeer)」でエルガザールの 14報のデータ疑念を指摘した。2022年9月19日(55歳?)、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)がデータ疑念をブログ記事で解説した。エルガザールはネカトしていないと主張し、研究公正局もシロとした。しかし、白楽は、ネカトしたと思うし、研究公正局が判定を間違えた珍しい例だと思う。イースト・テネシー州立大学はネカト調査をしていない。熊本大学時代の論文は博士論文を含め未検討。国民の損害額(推定)は5千万円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
モハメド・エルガザール(Mohamed Elgazzar、Mohamed El Gazzar、Mohamed A. Elgazzar、Mohamed A.M.El-Gazzar、 ORCID iD:?、写真出典)は、エジプト出身で、日本の熊本大学で2002年(35歳?)に博士号を取得し、米国のイースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)・教授になった。医師免許は所持していない。専門は分子免疫学である。
ネカトハンターのチェシャー(Cheshire)などが、エルガザールの14論文のデータ疑念を「パブピア(PubPeer)」で指摘した。指摘点を見ると、クロ濃厚である。
2022年9月19日(55歳?)、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)がエルガザールのデータねつ造・改ざんをブログ記事で解説した。。
イースト・テネシー州立大学はネカト調査をしていない(推定)。
また、研究公正局は、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire)に「エルガザールはシロ」とメールした。
研究公正局がネカト疑惑段階でシロと公言することは珍しいが、シロの判定は間違っていると思う。研究公正局が判定を間違えるのも珍しい。
白楽が記事に取り上げた大きな理由の1つ目は、エルガザールが、2002年(35歳?)に、日本の熊本大学(Kumamoto University School of Medicine)で研究博士号(PhD)を取得していたことだ。
熊本大学での博士論文もクロということにならないのか? また、研究不正大国の日本で育てた研究者は外国に行ってもネカト体質になっているのか? つまり、日本の大学院教育の欠陥なのか? 気になった。
2つ目の理由は、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire)の問い合わせへの研究公正局の答えが、明らかに間違っている(と白楽には思える)ことだ。
つまり、研究公正局のネカト捜査官の質が悪く、判定が間違っている実例(珍しいと思う)なので取り上げた。
米国のネカト判定では、研究公正局の判定が絶対正しいと受け止められがちだが、調査・分析・判断しているのは人間である。調査・分析・判断の能力は、研究公正局のネカト捜査官が特別優れた能力を持っているわけではない。我々研究者と同等レベルだろう。
3つ目は、「よく似ているけど別の画像」と「同じ画像」を、どうやって区別できるのか? という根本的問題が投げかけられているので取り上げた。
イースト・テネシー州立大学・医科大学院(Quillen College of Medicine East Tennessee State University)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:エジプト、日本
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:熊本大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1967年1月1日生まれとする。エジプトで生まれる。1991年に修士号を取得した時を24歳とした
- 現在の年齢:57 歳?
- 分野:分子免疫学
- 不正疑惑論文発表:2006~2021年(39~54歳?)の16年間
- 発覚年:2020年(53歳?)
- 発覚時地位:イースト・テネシー州立大学・医科大学院・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの名をActinopolyspora biskrensis)が、「パブピア(PubPeer)」で指摘
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①研究公正局
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。イースト・テネシー州立大学はネカト調査していない(推定)
- 大学の透明性:調査していない(推定)(✖)
- 不正:ねつ造・改ざん。研究公正局はシロ判定
- 不正疑惑論文数:「パブピア(PubPeer)」で14論文
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)。研究公正局はシロ判定なので当然
- 処分:なし。研究公正局はシロ判定なので当然
- 日本人の弟子・友人:博士論文指導者は 阪口薫雄(さかぐち のぶお)(熊本大学・教授)
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5千万円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主は出典:(1):Mohamed A. Elgazzar, Ph.D.、(2):Dr. Mohamed Elgazzar receives 2020 Distinguished Faculty Award for Research
- 生年月日:不明。仮に1967年1月1日生まれとする。エジプトで生まれる。1991年に修士号を取得した時を24歳とした
- 1991年(24歳?):エジプトのタンタ大学(Tanta University)で修士号取得
- 2002年(35歳?):日本の熊本大学(Kumamoto University School of Medicine)で研究博士号(PhD)を取得:免疫学。阪口薫雄(さかぐち のぶお)・教授:保存版
- 2003~2004年(36~37歳?):米国のナショナル・ジューイッシュ病院(National Jewish Medical Center)・ポスドク
- 2004~2006年(37~39歳?):米国のコロラド大学病院(University of Colorado Health Sciences Center)・ポスドク
- 2006~2010年?(39~43歳?):米国のウェイクフォレスト大学医科大学院(Wake Forest University School of Medicine)・教員?
- 2010年?(43歳?):イースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)・教授
- 2020年(53歳?):イースト・テネシー州立大学・研究優秀教員賞を受賞:Dr. Mohamed Elgazzar receives 2020 Distinguished Faculty Award for Research
- 2022年9月19日(55歳?):研究不正が指摘される
- 2022年12月4日(55歳?)現在:教授職を維持:【魚拓】Mohamed A. Elgazzar, Ph.D.
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
自己紹介動画:「Research – YouTube」(英語)2分05秒。
East Tennessee State University(チャンネル登録者数 1030人)が2020/08/22に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★熊本大博士の優秀な研究者
モハメド・エルガザール(Mohamed Elgazzar)はエジプトのタンタ大学(Tanta University)で修士号を取得後、2002年(35歳?)に日本の熊本大学(Kumamoto University School of Medicine)で研究博士号(PhD)を取得した。博士論文指導者は 阪口薫雄(さかぐち のぶお)・教授だった。以下出典。
その後、渡米し、イースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)・教授になった。
2020年(53歳?)、エルガザールは、イースト・テネシー州立大学大学から研究優秀教員賞を受賞した。この大学では優秀な教授だと認められているわけだ。 → Dr. Mohamed Elgazzar receives 2020 Distinguished Faculty Award for Research
米国NIHからのグラントは2012年以降2020年まで毎年受給している。計9件あった。 → Grantome: Search:Mohamed Elgazzar
★発覚の経緯
2020年6月(53歳?)、告発名・メソサイクロプス・メイジャー(Mesocyclops major)がエルガザールの論文のデータ疑惑をパブピア(PubPeer)で最初に指摘した。それは、以下の「2018年10月のCell Immunol」論文だった。
- IL-10 induces an immune repressor pathway in sepsis by promoting S100A9 nuclear localization and MDSC development.
Bah I, Kumbhare A, Nguyen L, McCall CE, El Gazzar M.
Cell Immunol. 2018 Oct;332:32-38. doi: 10.1016/j.cellimm.2018.07.003. Epub 2018 Jul 11.
不正疑惑は画像の複製使用(データねつ造)である。画像を反転するなど、明白に加工している。以下数枚のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/1100CBDE2045B6F26434A85841A539
2020年11月(53歳?)、指摘の5か月後、エルガザールは、「スミマセン、間違え(mistake)ました」と、論文を訂正した。
→ 2020年11月訂正公告:Corrigendum to “IL-10 induces an immune repressor pathway in sepsis by promoting S100A9 nuclear localization and MDSC development” [Cell Immunol. 332 (2018) 32–38] – ScienceDirect
画像を水平反転し、コントラストを調整しているいので、「ウッカリ」の間違い(mistake)ではない。明白な意図的操作のネカトである。
2022年4月(55歳?)、今度は、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの名をActinopolyspora biskrensis)が同じ論文の図7に画像の複製使用を指摘した。
2022年4月(55歳?)、チェシャーは元データを見せてとエルガザールに依頼した。
2022年4月(55歳?)、しかし、エルガザールはそれを拒否し、「バンドは似ている(very close)けど同じではない(not the same)」と主張した。
★研究公正局はシロ判定
2022年5月(55歳?)、チェシャー(Cheshire)はエルガザールが元データを開示しないので、エルガザールの疑惑を研究公正局に通報した。以下のメール。
「NIHグラント受給者の研究論文に画像操作の可能性があちます。著者は、元データを開示してくれません。 この著者には、多数の論文に画像操作の懸念があります」。
2022年9月15日(55歳?)、4か月後、驚いたことに、チェシャー(Cheshire)は研究公正局・調査監督部門のネカト捜査官から次のメールを受け取った。
「研究公正局のディスカッション・スレッドに懸念を記載し、注意喚起して下さったことを、感謝します。
問題の画像を科学分析しました。2つのバンドは非常に似ている(very similar)けれど、サイズと形状に明確な違いがあり、同じではありません(not the same)。
著者および/または大学からのさらなる説明が必要な場合、また、他の出版物に追加の懸念がある場合、大学に直接お問い合わせください:イースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)は、Dr. Nick Hagemeier, Interim Vice Provost for Research, ETSU ・・・。
今回の申し立ては研究不正の定義に該当しないため、研究公正局はこの問題を終了したと見なしました」。
では、チェシャーたちは間違ったのか?
★2回目の訂正
実は、研究公正局からの返事が来る約1か月前、エルガザールが申し出て、この「2018年10月のCell Immunol」論文は2回目の訂正が行なわれていた。
2022年8月4日(55歳?)、2回目の訂正。 → 2022年8月4日訂正公告:Corrigendum to “IL-10 induces an immune repressor pathway in sepsis by promoting S100A9 nuclear localization and MDSC development” [Cell Immunol. 332 (2018) 32–38] – ScienceDirect
エルガザールは、間違って、図7Dの下のS100A9のバンドと同じバンドを図7Bの下のS100A9バンドに重複使用してしまった。図を組み立てる時、間違って配置してしまい申し訳ないと陳謝した。正しいバンドを使い、図7Dを訂正した。ただ、この訂正をしたことは、論文の結論に影響しない、と述べた。
以下が訂正版の図7Dである(次の図の2022-06)。
2回の訂正を示すと以下のようだ。
★研究公正局の失態
ここで、研究公正局の失態がハッキリしてくる。
最初、エルガザールは、「バンドは似ている(very close)けど同じではない(not the same)」と主張した。
研究公正局も「バンドのサイズと形状に明確な違いがあり、同じではない(not the same)」と保証した。
ところが、その後、エルガザール自身、最初の主張と異なることを言い始め、2回目の訂正公告で、「同じバンドを重複使用してしまった」と、論文を訂正した。
エルガザールは、初期に「別のバンド」と主張したが、その後、「同じバンド」であることを認めたのである。
エルガザールが「同じバンド」だと認める直前、不運なことに、研究公正局は「バンドのサイズと形状に明確な違いがあり、同じではない(not the same)」と保証してしまったのだ。
研究公正局は「梯子が外された(はしごがはずされた)」。
米国連邦政府機関のネカト調査機関が、間違えてしまったのだ。
権威失墜。とてもマズイと思いますけど。
★「2006年7月のImmunol Lett.」
エルガザールの疑惑論文は上記した「2018年10月のCell Immunol」論文だけではない。パブピアで14論文の疑念が指摘されている。
日本人が共著者になっている以下の論文を見ていこう。「バンドは似ている(very close)けど同じではない(not the same)」と主張した論文である。
熊本大学の野見山尚之 (Hisayuki Nomiyama)が最後著者なっている「2006年7月のImmunol Lett.」論文の書誌情報を以下に示す。2022年12月4日現在、訂正も撤回もされていない。
- Effect of thymoquinone on cyclooxygenase expression and prostaglandin production in a mouse model of allergic airway inflammation.
El Mezayen R, El Gazzar M, Nicolls MR, Marecki JC, Dreskin SC, Nomiyama H.
Immunol Lett. 2006 Jul 15;106(1):72-81. doi: 10.1016/j.imlet.2006.04.012. Epub 2006 May 22.
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/EAD10782A73EDAA31B02A9329F4580
2022年4月(55歳?)、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの名をActinopolyspora biskrensis)が図5の画像の一部が酷似しているので、著者は元データにアクセスできるかと、質問した。
すると、モハメド・エルガザール(Mohamed Elgazzar)は「綿密な検査と色のコントラストを見ると、これらのバンドは非常に近い(close)けど、似て(similar)いません」と反論した。
チェシャー(Cheshire)は、「私の質問は、著者が元データにアクセスできるかどうかだけです」と返事した。
すると、エルガザールは、「元データにはアクセスできなくなりました。あなたは、これらのバンドが似ていると100% 確信していますか? 私には、いくつかの違いが見られます」と返事している。
元データはないとしつつ、「よく似ているけど別のバンド」と主張している。怪しさ満載である。
★「2017年11月のMol Immunol」論文
エルガザールの「2017年11月のMol Immunol」論文では、「同じバンドを重複使用してしまった」と、論文を訂正した。
- Expression of C/EBPβ in myeloid progenitors during sepsis promotes immunosuppression.
Dai J, Kumbhare A, Youssef D, Yao ZQ, McCall CE, El Gazzar M.
Mol Immunol. 2017 Nov;91:165-172. doi: 10.1016/j.molimm.2017.09.008. Epub 2017 Sep 19.
2022年4月(55歳?)、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの名をActinopolyspora biskrensis)が図7AとBの各画像の一部が酷似していると指摘した。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/2FB7BAB78C715BC45B24472ED86915#
2022年4月(55歳?)、すると、エルガザールは、「バンドの切り貼りとパネルの組み立てに明らかなミスがありました。後で訂正版を投稿します」と素直に重複画像を認めている。
★補足
なお、チェシャー(Cheshire)はエルガザールの疑惑をイースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University)にも通報した。2022年12月4日現在、返事はない。イースト・テネシー州立大学はネカト調査しているかどうか不明。
レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は、ネカト者は論文の他の共著者ではなく、エルガザール本人の可能性が高いと指摘している。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したので省略。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2022年12月4日現在、パブメド(PubMed)で、モハメッド・エルガザル(Mohamed Elgazzar)の論文を「Mohamed Elgazzar[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2012~2022年の11年間の22論文がヒットした。
2022年12月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
「El Gazzar M」で検索した。この検索方法だと、1982~2022年の41年間の124論文がヒットした。
★撤回監視データベース
2022年12月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでモハメッド・エルガザル(Mohamed Elgazzar)を「Mohamed Elgazzar」で検索すると、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年12月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、モハメッド・エルガザル(Mohamed Elgazzar)の論文のコメントを「”Mohamed El Gazzar”」で検索すると、2006~2021年(39~54歳?)の12論文にコメントがあった。
「”el gazzar”」で検索すると、2006~2021年(39~54歳?)の14論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》不誠実
モハメド・エルガザール(Mohamed Elgazzar)は、ネカトしていないかも知れないが、本記事では、ネカト者として解釈を進める。
理由は、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)の視点と同じである。
- バンドを水平反転し、コントラストを調整して別のバンドとして使用している。これは、「ウッカリ」の間違い(mistake)ではあり得ない。明白な意図的操作である。 → 7-96 ビックの画像不正基準 | 白楽の研究者倫理
- 元データを開示しない
- 画像は酷似している
- いくつかの論文では同じ(same)画像であることを認めている
エルガザールは、いつからデータねつ造・改ざんをしているか不明だが、指摘されると、「元データはない。よく似ているけど別のバンド」と主張し、不誠実である。
しかし、NIHグラントをそこそこ受給し、大学上層部から称賛されている。大学の研究優秀教員賞を受賞していることから人間関係も上手なのだろう。
思うに、ネカト論文でグラントを獲得し、出世してきた研究者だと思う。
ただ、振る舞いが巧妙である。
自発的な情報提供はほぼない。
2022年にチェシャー(Cheshire)が叩いたので、ますますガードが固くなり、研究公正局が失態を変えなければ、今後、クロと認定することは難しくなるだろう。
《2》研究公正局の失態
研究公正局がエルガザールの肩を持ち、「バンドのサイズと形状に明確な違いがあり、同じではない(not the same)」と保証した。
しかし、研究公正局が「同じではない(not the same)」と判断した後に、エルガザールは「同じ(same)画像だった」ことを認めている。
研究公正局の大失態である。
《3》似ているけど別のバンド
エルガザールは複数の論文で酷似画像を指摘されているが、「よく似ているけど別のバンド」と主張し、証拠(生データ)を示さなかった。
原理的な問題として、電気泳動バンドでは「よく似ている(very close)別のバンド(not the same)」と「同じバンド(not the same)」は科学技術的にどう区別できるのだろうか?
絵画の真贋を見分けるのも難しい。 → 7-84 研究偽造と絵画偽造 | 白楽の研究者倫理
実のところ、電気泳動バンドが同じか別かを科学技術では見分けられない。
科学技術的ではないが、実際に実験したのなら、どんなデータも元データがあるハズだ。それがあれば、どっちか判別できる。
ところが、「元データはない」。
この場合、どうなる?
「元データはない。よく似ているけど別のバンド」と主張し続ける戦略で、モハメド・エルガザール(Mohamed Elgazzar)は全勝できのか?
一般的な事を言えば、元データを提示しない疑惑研究者を、「まとも」な大学はクロと判定する。ただ、「まとも」ではない大学はたくさんある。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】
① 2022年9月19日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:ORI Fail – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
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