マーク・シェパー(Mark A. Scheper)(米)


【概略】
150202 JCarcinog_2011_10_1_2_75723_a8[1]マーク・シェパー(Mark A. Scheper)は、米国・メリーランド大学(University of Maryland)・助教授・歯科医師で、専門は細胞生物学(頭部がん細胞の細胞情報伝達)だった。写真出典

2014年、2009年発表の論文にデータ改ざんが発覚した。

2014年1月22日、シェパーは45歳で病死した。研究公正局が調査開始したばかりだったが、被疑者が死亡したので、調査を中止した。

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:米国・メリーランド大学(University of Maryland)
  • 男女:男性
  • 生年月日:1968年10月7日
  • 没年:2014年1月22日、病死。享年45歳
  • 分野:細胞生物学
  • 最初の不正論文発表:2009年(40歳)
  • 発覚年:2014年(45歳)
  • 発覚時地位:米国・メリーランド大学(University of Maryland)・助教授
  • 発覚:匿名の公益通報
  • 調査:①メリーランド大学調査委員会。②研究公正局
  • 不正:改ざん
  • 不正論文数:撤回論文1報。他に不審論文3報あり
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:

【経歴と経過】

  • 1968年10月7日:米国で生まれる
  • 19xx年(xx歳):米国・オハイオ州のザビエル大学(Xavier University)卒業
  • 1995年(26歳):米国・オハイオ州立大学・歯学部(Ohio State University College of Dentistry)を卒業。歯科医師免許取得
  • 19xx年(xx歳):米国・メリーランド大学(University of Maryland)で研究博士号(PhD)取得
  • xxxx年(xx歳):メリーランド大学(University of Maryland)・助教授
  • 2014年1月22日(45歳):病死。享年45歳
  • 2014年(45歳):死後、不正研究が発覚する

【不正発覚・調査の経緯】

150202 saukis[1]撤回した論文は、「Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol.」誌の2009年の論文である。撤回論文の最終著者はジョン・ソーク教授(John Sauk 写真出典)で、ソークが上司と思われる。

2007年9月4日、ソーク教授は、米国・メリーランド大学(University of Maryland)から米国・ルイビル大学(University of Louisville)歯学部長に栄転している。・・・不正発覚と関係があるのだろうか?

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2013年秋(推定)、メリーランド大学は、シェパーの論文に研究ネカトがあるとの匿名の公益通報を受け、調査委員会を発足し、調査を始める一方、研究公正局にも通知した。

調査委員会を発足した後に、シェパーが死亡した(2014年1月22日)。

2014年12月、メリーランド大学の調査とは別に、「Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol.」誌編集長が、2009年のシェパーの論文にデータ改ざんがあると判断し、論文を撤回した。論文共著者(ソーク教授?)はシェパーが単独で改ざんしたと述べている。ただ、シェパーは改ざんを認めていないまま死亡した。

シェパーはNIHグラントを2件(DE13118 と DE12606)受給していたので、米国・研究公正局も調査を開始した。しかし、研究公正局は、シェパーが死亡したとの通知を受け、調査未了のまま、調査を終えた。

2015年1月29日、フェルナンド・ペソア(Fernando Pessoa)は、2009年論文以外に、シェパーの以下の3論文にデータ改ざん疑惑がある、と指摘した。

  1. https://pubpeer.com/publications/647271173699AD33378C24F373F9F7
  2. https://pubpeer.com/publications/287B636EF762DEE83472CADFF5B792
  3. https://pubpeer.com/publications/D47ACDF5910C04D399C400E656BFF7

メリーランド大学調査委員会も、2009年論文以外に不正論文があると述べている。論文名をまだ公表していないが、ペソアが指摘した論文と同じだろう。

【論文数と撤回論文】
パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、マーク・シェパー(Mark A. Scheper)の論文を「Scheper MA[Author]」で検索すると、2005年~2014年の10年間の40論文がヒットした。

2015年1月31日現在、1論文が撤回されている。

撤回論文の最終著者はジョン・ソーク教授(John Sauk)である。シェパーは第二著者である。

論文内容を精査していないが、第二著者のシェパー1人に不正の罪をかぶせている印象がある。死人に口なしということだろうか? いつもヘンに思うが、第一著者か最終著者のどちらにも責任がないのは、ナンカ変だ。

【白楽の感想】

《1》 死亡者の扱い

研究公正局は、調査委員会を発足した後に、対象者のシェパーが死亡した(45歳)ので調査を中止した。研究ネカトした研究者が、調査途中や調査以前に死亡した場合、調査すべきかを考えてみる。

★調査対象は研究か研究者か?

リー・ルドルフ(Lee Rudolph)は、研究公正局は、「研究」の公正を調べる機関であって、「研究者」の公正を調べる機関ではない。死亡した研究者の「研究」(成果、論文)は調査すべきだと主張している。

発表された論文は誰もが読むことができる。著者の生死にかかわらず、データねつ造・改ざん論文を撤回させないと、いつまでも「正しい研究結果」と思われかねない。つまり、「研究」(成果、論文)の公正性が保てない。

そうかもしれないが、調査にはヒト・カネ・時間がかかる。不審な論文は膨大にある。費用対効果を考えれば、不審論文の公正性をどこまで調査すべきかは、単純に結論できない。

研究者の世界では、従来、研究者が追試し、訂正・賛否を表明してきた。しかし、データねつ造・改ざんの視点では検討していない。調査委員会がデータねつ造・改ざんの視点で調査すると、権限、方法、費用が大きく異なる。

白楽は、現時点ではどうすべきかという答え見出せない。ゴメン。

なお、一般的に、研究公正局と研究機関は、「研究上の不正行為」の疑惑が発生した時、「研究」(成果、論文)と「研究者」の両方を調査している。

★欧米でも「死者に鞭打たない」?

「死者に鞭打たない」(死屍(シシ)に鞭打たない)、つまり、死んだ人の言行を非難しないのは、東洋的風習である。昔(春秋時代・呉)の中国の「伍 子胥(ご ししょ)」という、政治家、軍人が残した言葉である。

この東洋的風習は、事件を大きくゆがめるので、白楽は、大嫌いである。

欧米でも「死者に鞭打たない」風習があるのだろうか?

【主要情報源】
① 2015年1月29日のリトラクチョン・ウオッチ(Retraction Watch)の記事:Fraud retraction appears for deceased Maryland dental researcher – Retraction Watch at Retraction Watch