チョルホ・キム、金鉄虎、김철호(Cheorl-Ho Kim)(韓国)


2016年10月15日掲載。

ワンポイント:2006年に盗用疑惑で大学教授を辞任し、別の大学教授になるものの、2009年にも盗用し、韓国研究財団から学術界から排除と宣告されたが、大学教授に留任した。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
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●1.【概略】

%b1%e8o%c8%a3チョルホ・キム、金鉄虎(Cheorl-Ho Kim、写真出典 )は、日本の東京大学で修士号・博士号を取得し、韓国の東国(トングク)大学(Dongkuk University)・韓医大・教授になった。医師ではない。韓医大は韓国式漢方の教育・研究をする学部である。キムの専門は糖質生物学である。

2006年(44歳)、論文データ盗用疑惑で、学校研究倫理委員会が調査を始めると、キム教授はすぐに東国(トングク)大学を辞任し、成均館(ソンギュングァン)大学に移籍した。

2009年(47歳)、キム教授に対して、再度、論文盗用疑惑が起こり、韓国研究財団は「キム教授をすべての国家研究事業から排除する」と宣言した。しかし、キム教授は成均館(ソンギュングァン)大学の教授職を維持した。

2016年10月14日現在(54歳)、6つの学術誌「Journal of Glycobiology」「Journal of Microbial and Biochemical Technology」「Journal of Glycomics and Lipidomics」「Open Glycoscience」「Open Complementary Medicine Journal 」の編集長で、韓国のこの分野の重鎮である。

この事件の日本語解説は少し(3つ以下)あった。「中央日報」の文章を2つ、本文に引用した。

なお、東国(とんぐく)大学(Dongkuk University)は、私立大学で、「Times Higher Education」の大学ランキング(2015-2016年)で韓国第24位以内に入っていない(World University Rankings 2016 | Times Higher Education)。

1200px-DONGGUK_UNIVERSITY_팔정도韓国・東国(とんぐく)大学(Dongkuk University)。写真出典

  • 国:韓国
  • 成長国:韓国・日本
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:日本の東京大学・農学部
  • 男女:男性
  • 生年月日:1962年 5月12日
  • 分野:糖質生物学
  • 最初の不正論文発表:?
  • 発覚年:2006年(44歳)
  • 発覚時地位:東国(トングク)大学・漢方医科大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明。東国(トングク)大学に通報した(推定)
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①東国(トングク)大学。②学校研究倫理委員会(政府機関?)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:数十件
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 結末:辞職せず

●2.【経歴と経過】

主な出典:① http://141.223.114.1/hanbitsa/author_cvpop_after.php?idauthorid=603、② http://www.kast.or.kr/html/member_search_men_career.php?idx=3949&PHPSESSID=3716034399a6bfae738be37e2ea3595c

  • 生年月日:1962年 5月12日ソウル生まれ
  • 1984年(22歳):韓国の中央(チュンアン)大学(Chung-Ang University)を卒業。専攻:生化学
  • 1987年(25歳):日本の東京大学・農学部で修士号を取得。専攻:生化学
  • 1990年(28歳):日本の東京大学・農学部で研究博士号(PhD)を取得。専攻:生化学。博士論文「新機能を有する酵素の遺伝生化学的な研究」
  • 1990-1996年(28-34歳):韓国の生命工学研究院・専任研究員
  • 1996年(34歳):東国(トングク)大学・漢方医学部・生化学教室、副教授。後に主任教授
  • 2006年(44歳):論文データ盗用疑惑
  • 2006年(44歳):成均館(ソンギュングァン)大学・教授に移籍
  • 2009年(47歳):論文データ盗用疑惑が再度発生。
  • 2016年10月14日現在(54歳):成均館(ソンギュングァン)大学・教授を維持し、いくつもの学術誌編集委員長をしている

受賞
e_cheorlho_kim1985 – 1987 Fellow of Nomura Foundation, Japan
1985 – 1990 Fellow of Rotary Yonetama Fondation, Japan
1989 Award of Toyobo Biotechnology 100 year’s Memorial Foundation, Japan
1994 Excellence Researcher Award, KRIBB
2002 Excellence Professor Award, Dongguk University
2004 National Medal for Science and Technology, Korean Government
2005 Medial and Excellence Professor Award, Dongguk University
2006,2007 Excellence Award of Natural Science Faculty, Sungkyunkwan University

●3.【動画】

【動画1】
KBSニュースが肝臓がんでの発見を伝えている(韓国語)1分35秒。
Glycobioをクリックすると、韓国語の画面が開く。左下に下記の部分がある。wmv上記の画面の右の灰色部分をクリックすると、ビデオを開くか、保存かを聞いてくる。好みの方法で視聴する。

●4.【日本語の解説】

★2003年07月01日:中央日報「B型肝炎が肝臓ガンに進む原因を糾明」

出典 → B型肝炎が肝臓ガンに進む原因を糾明 | Joongang Ilbo | 中央日報

B型肝炎ウイルスが肝炎患者の体内で肝臓ガンを起こす過程を、韓国内研究陣が糾明した。

東国(トングック)大学・韓医大の金鉄虎(キム・チョルホ)教授は1日、肝炎ウイルスが作りだすXたんぱく質が、人体のがん抑制たんぱく質に働きかけ、もう一つのがん抑制たんぱく質の生成を阻害することによって、肝臓ガンに発展させるとの事実が分かったと発表した。この研究内容は、世界的な医学学術紙「キャンサーリサーチ」の今月1日付けに掲載された。

B型肝炎ウイルスは、人体に侵入し、慢性の肝疾患を起こすが、肝炎患者の70%が硬化と肝臓ガンなどに発展する。肝臓ガンに進む過程で、同ウイルスのDNAで作られる「Xたんぱく質」が働くとの事実はすでに知られていたことだが、正確なメカニズムについては判明されていなかった。

金教授は、Xたんぱく質が、人体内のがん抑制たんぱく質「p53」にくっ付いて肝臓ガン細胞の発生を抑制するたんぱく質「PTEN」の生成を防ぐとのことを、ヒト肝細胞の実験を通じて糾明した。

同教授は「韓国は人口全体の7~8%が保菌者であり、肝臓ガンによる死亡率は世界第1位」とし「Xたんぱく質とp53の結合を抑制する薬物やPTENの発現を誘導する物質の開発など、可能な肝炎の治療、予防策を見いだせるだろう」と話した。

上記の論文は、2003年7月1日発行の「2003年のCancer Res」論文である。下記に書誌情報を示す。

★2012年06月18日:中央日報「温情主義が育てた“論文盗用コリア”」

出典 → 温情主義が育てた“論文盗用コリア” | Joongang Ilbo | 中央日報

06年、東国大韓医大のキム・チョルホ教授は論文データ盗用疑惑のため、学校研究倫理委員会に回付された。キム教授はすぐに辞任した後、成均館大に移った。キム教授は09年にも数十件の論文盗用疑惑を受けた。韓国研究財団は「キム教授をすべての国家研究事業から排除する」と宣言したが、キム教授も教授職を維持している。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

不正発覚の経緯と内容は、よくわかりません。

148_10960_14127620502006年(44歳)、チョルホ・キム(Cheorl-Ho Kim)の論文にデータ盗用疑惑が発生した。しかし、どの論文なのか、どのデータをどこから盗用したのか、白楽にはわかりませんでした。

ただ、「学術誌に謝罪する」という文章が「2006年のNeurochemical Research」に発表された。従って、データ盗用は本人も認めたのだ。

  • Apology to the Journal
    Cheorl-Ho Kim in Neurochemical Research (2006), October 2006, Volume 31, Issue 10, pp 1295-1295

その不正を認めたことに伴い、大学を移籍した。ということは、研究ネカトを承知で、引き受ける大学が韓国にはあったということだ。問題ですね。成均館(ソンギュングァン)大学ですが。

2009年(47歳)、キム教授に数十件の論文盗用疑惑が再度発生した。これもどの論文なのか、どのデータまたは文章をどこから盗用したのか、白楽にはわかりませんでした。

cheorl-ho-kim-2ただ、不正をしたのに、大学は解雇しなかった。この大学は、不正を承知で教授に採用したのだから、驚くことではないかもしれません。

そして、2016年10月14日現在(54歳)、キム教授は、6つの学術誌編集委員長を務め、韓国の糖質生物学の大教授になっている。

●6.【論文数と撤回論文】

2016年10月14日現在(54歳)、パブメド(PubMed)で、チョルホ・キム(Cheorl-Ho Kim)の論文を「Cheorl-Ho Kim [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2016年の15年間の288論文がヒットした。

2016年10月14日現在(54歳)、「2004年のImmunopharmacol Immunotoxicol」論文が2009年3月に撤回されている。

撤回理由は、以下の論文から「内容(content)」を盗用したためとある。内容は文章なのか、データなのか、わかりません。ただ、2009年3月に撤回されていることから、2009年(47歳)の時の2回目の盗用事件で指摘された論文と思える。

  • Brazillet MP, Batteux F, Abehsira-Amar O, Nicoletti F, Charreire J.
    Induction of experimental auto-immune thyroiditis by heat-denatured porcine thyroglobulin: a Tc1-mediated disease.
    Eur J Immunol. 1999, 29(4):1342–52.

●7.【白楽の感想】

《1》釈然としない

2006年にデータ盗用を本人も認めている。しかし、大学を移籍できた。つまり、研究ネカトを承知で教授に迎える大学が韓国にはあった。そして、3年後、再び、論文盗用が発覚する。韓国研究財団は学術界から排除すると宣告した。しかし、この大学はキム教授を解雇しなかった。

そして、2016年10月14日現在(54歳)、キム教授は、いくつもの学術誌編集委員長を務め、韓国の糖質生物学の大教授になっている。

148_10960_1412762044ネカトのし得で、出世した。釈然としません。米国では研究ネカト者は学術界から排除される。

米国基準からすれば、韓国のシステムは批判の対象になる。が、同じことが日本でもごく普通に起こっている。日本の大甘な処分も、米国基準とは大きく異なり、もちろん、白楽は、釈然としていません。

●8.【主要情報源】

本文中に示した。
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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