アザ・エル=レメスィー(Azza B. El-Remessy)(米)

2016年12月2日掲載。

ワンポイント:2016年までに画像のねつ造で4論文が撤回されたが、大学の調査報告書、研究公正局の発表はなく、大学を辞職していない。エジプト出身で米国・ジョージア大学・薬学部・準教授(女性)。

【追記】
2017年7月31日記事:Why would a university pay a scientist found guilty of misconduct to leave? | Science | AAAS
2017年9月29日、研究公正局がクロと発表した。3年間の締め出し処分:Case Summary: El-Remessy, Azza | ORI – The Office of Research Integrity

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
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●1.【概略】

el-remessy-croppedアザ・エル=レメスィー(Azza B. El-Remessy、写真出典)は、エジプトのマンスーラ大学で研究博士号(PhD)を取得し、米国・ジョージア大学・薬学部(College of Pharmacy, University of Georgia)・準教授になった。専門は眼科学(血管、糖尿病)で、医師ではない。

2014年(45歳?)、論文画像のねつ造を、第一次追及者(詳細不明)が学術誌編集局へ公益通報した。多分、大学と研究公正局にも通報したと思う。

2016年12月現在(47歳?):論文が4報撤回されたが、大学の調査報告書、研究公正局のクロ発表はない。エル=レメスィーは大学を辞職していない。

flagship-pharmacy-school米国・ジョージア大学・薬学部(College of Pharmacy, University of Georgia)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:エジプト
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:エジプトのマンスーラ大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1969年1月1日生まれとする。1991年の大学卒業時を22歳と仮定した。エジプトで生まれる(推定)
  • 現在の年齢:48 歳?
  • 分野:眼科学
  • 最初の不正論文発表:2000年(31歳?)
  • 発覚年:2014年(45歳?)
  • 発覚時地位:ジョージア大学・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)の学術誌編集局への公益通報。多分、大学と研究公正局にも通報したと思う。学術誌編集局は所属大学に通知した
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌編集局。②ジョージア大学・調査委員会。③ジョージア医科大学・調査委員会。 ④研究公正局?
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。現在調査中?
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:少なくとも撤回論文は4報。他に2報の不正が指摘されている
  • 研究費:米国・NIHから複数回、計約3億円以上、受給している。主要内訳 → ①NIH: $ 308,700。②NIH/ NEI: RO1 $1,600,000(約1億6千万円)/5年間(2012年4月- 2017年2月)。③VDI (GRU): $40,000(July, 2011 to June, 2014) 。④AHA $43,540/year(July 2010- June 2012)。⑤NIH/NINDS RO1 $1,422,958(約1億4千万円)(2009年7月- 2014年2月).
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:大学の調査が終了しておらず、在職のまま

●2.【経歴と経過】

主な出典(保存済)

  • 生年月日:不明。仮に1969年1月1日生まれとする。1991年の大学卒業時を22歳と仮定した。エジプトで生まれる(推定)
  • 1991年(22歳?):エジプトのマンスーラ大学(Mansoura University)・薬学部を卒業。学士(薬学)
  • 1995年(26歳?):エジプトのマンスーラ大学(Mansoura University)・薬学部で修士号を取得した。生化学
  • 1999年(30歳?):エジプトのマンスーラ大学(Mansoura University)・薬学部で研究博士号(PhD)を取得した。眼科学
  • 2000-2002年(31-33歳?):米国・ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)・ポスドク
  • 2002-2005年(33-36歳?):米国・ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)・研究員
  • 2005-2006年(36-37歳?):米国・ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)・講師
  • 2006年(37歳?):米国・ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)・助教授
  • 2011年(42歳?):米国・ジョージア大学・薬学部(College of Pharmacy, University of Georgia)・準教授
  • 2014年(45歳?):論文の研究ネカトが発覚した
  • 2014年9月(45歳?):学術誌編集局が3論文を撤回した
  • 2016年8月(47歳?):学術誌編集局がさらに1論文を撤回した
  • 2016年12月現在(47歳?):大学の調査報告書、研究公正局のクロ発表はない。エル=レメスィーは大学を辞職していない

●5.【不正発覚の経緯と内容】

el-remessy12014年(45歳?)、第一次追及者(詳細不明)が学術誌編集局へ公益通報した。多分、大学と研究公正局にも通報したと思う。学術誌編集局は所属大学に通知した。

★2014年9月に3論文撤回

2014年9月、「Mol Vis.」誌の2000年、2008年、2010年のエル=レメスィーの3論文が撤回された。

3論文とも、仮説はテストされておらず、結論を支持するデータの画像が間違っている、と編集局が判断し撤回した。

「撤回監視(Retraction Watch)」はこの時、エル=レメスィーに事情を問い合わせた。

エル=レメスィーは「学術誌に反論準備中で、貴殿と議論する余裕がありません」と答えている。

★2016年8月に1論文撤回

「2005年のJ Cell Sci」論文が2016年8月に撤回された。

撤回理由は、読者からの図3B、4A、4,B、5Bのバンドに重複使用があると公益通報を受けた。それで、編集局は、連絡著者のエル=レメスィーに問い合わせたが、納得できる説明がない。それで、所属大学であるジョージア大学とオーガスタ大学に調査を依頼した。

2大学共同の調査委員会とエル=レメスィーが兼務していたCharlie Norwood Veterans Affairs Medical Centerは、エル=レメスィーが「2005年のJ Cell Sci」論文でねつ造・改ざんをしたと結論した。それで、J Cell Sci編集局は論文を撤回した(出典:http://jcs.biologists.org/content/129/16/3203)。

問題の図3B、4A、4,B、5Bのバンドは、パブピアで、2014年8月12日に指摘されていた。以下、パブピアの図を掲載しよう。同じ色枠のバンドが重複使用である。確かに、全く同じバンドが複数回使用されている。0kkni7o出典:Peer 1: ( August 12th, 2014 9:03pm UTC )、PubPeer – Oxidative stress inactivates VEGF survival signaling in retinal endothelial cells via PI 3-kinase tyrosine nitration

★「2013年のPlos One」論文

まだ撤回されていないが、「2013年のPlos One」論文でも、パブピアが画像の重複使用を指摘した。以下に示す。

nigru3y出典:Peer 1: ( August 12th, 2014 9:04pm UTC )
PubPeer – Diabetes-Induced Superoxide Anion and Breakdown of the Blood-Retinal Barrier: Role of the VEGF/uPAR Pathway

●6.【論文数と撤回論文】

2016年12月1日現在、パブメド(PubMed)で、アザ・エル=レメスィー(Azza B. El-Remessy)の論文を「Azza B. El-Remessy [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2016年の14年間の64論文がヒットした。

「El-Remessy AB[Author]」で検索すると、2003~2016年の14年間の74論文がヒットした。

2016年12月1日現在、パブメドの論文リストでは撤回論文は2報だった。

「撤回監視(Retraction Watch)」では4論文が撤回されている。他の2論文はどうなっているのだろう?

理由を探るうちに、2014年に撤回した「2000年のMol Vis.」論文の著者は、「El-Remessy AB」ではなく「El-Remessy AE」ということに気が付いた。

4報目はパブメドの論文リストでは撤回(Retraction)ではなく、訂正(Erratum)だった。2016年8月に訂正されているが、いずれ、撤回されるだろう。

●7.【白楽の感想】

《1》根っからのネカト者

cet-side1撤回された最古の論文は2000年(31歳?)に出版した論文である。所属・身分は米国・ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)・ポスドクである。

エル=レメスィーは、その前年の1999年(30歳?)に、エジプトのマンスーラ大学(Mansoura University)・薬学部で研究博士号(PhD)を取得した。

推定になるが、エル=レメスィーは、エジプトの院生時代から、データねつ造・改ざんをしていたに違いない。

エジプトの大学院が、研究規範についてどのような教育をしているのか白楽は把握していないが、教育が不十分な可能性がある。

さらにもう一点は、米国で最初に論文を発表する時、米国でのボスが、エル=レメスィーの研究成果だけでなく研究規範についてもチェックし、指導すべきだったと思う。

撤回された最古の論文は2000年(31歳?)だから、エル=レメスィーは、2014年(45歳?)に発覚するまでの15年間、研究ネカトしていたと思える。

2016年12月1日現在、4論文が撤回されているが、パブピアではそれらの論文以外に、「2010年のAm. J. Pathol.」論文と「2013年のPlos One」論文(5章で取り上げた)にもコメントがついている。

精査すれば、出版した74論文の内、相当数にネカトが見つかるに違いない。

それにしても、15年間も、研究ネカトが発覚しなかったとは、どういうことだ?

米国・NIHから複数回、計約3億円以上のグラントを受給しているので、研究公正局が現在・調査中だと思われる。NIH以外からの研究費、大学の経費、エジプトの教育費なども合わせると十数億円分がゴミとなったと思われる。米国の損失、人類の損失である。

《2》長期ネカト者を許容

15年間、研究ネカトが発覚しなかった理由を考えた。

1つ目は、エル=レメスィーは、研究ネカトする知識・スキル・経験を積んだのだろう。 → 特殊ではない。

2つ目は、エル=レメスィーに、人望があるのだろう。→ 特殊ではない。

3つ目は、人種差別と女性差別もあるだろう。エル=レメスィーの写真のヒジャブから推察して、エル=レメスィーはイスラムである。そして、女性である。米国のジョージア州はディープサウスで、人種差別がきつい州だ。ということで、逆に、下手にエル=レメスィーを告発すると、人種差別と女性差別の両方の叱責を受けかねない。学内から、研究ネカトで告発しても、「誠実な間違い」と処理され、告発者がみじめになる公算が高い。

しかし、論文だけ見れば、イスラムも男女も関知しない。パブピアは論文だけを見て、その図表の異常を指摘したのだろう。

●8.【主要情報源】

① 2016年11月3日のシャノン・パラス(Shannon Palus)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Eye researcher loses fourth paper for misconduct following Georgia, VA investigation – Retraction Watch at Retraction Watch
② 「パブピア(PubPeer)」のアザ・エル=レメスィー(Azza B. El-Remessy)のコメント論文群:PubPeer – Results for Azza B. El-Remessy
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。583704

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