ウェルナー・ベズウォーダ (Werner Bezwoda)(南アフリカ共和国)

【概略】
141106 34f1_C4TT[1].j-1pgウェルナー・ベズウォーダ (Werner Bezwoda)は、南アフリカ共和国・ヨハネスブルグのウィットウォーターズラント大学(University of Witwatersrand)教授・がん学者・医師で、乳癌の化学療法で著名だった。写真(ピンボケでスミマセン)出典

images1995年、ベズウォーダ(右の写真は多分)は、乳癌患者への高用量化学療法+骨髄移植法(抗癌剤の量を増やすことで癌細胞を殺し、一方、副作用で死ぬ白血球を患者の骨髄を使うことで減少を押さえる)の臨床試験が良い結果をもたらしているという研究論文を「Journal of Clinical Oncology」誌に発表した。

2000年3月、米国・ジョージタウン大学のレイモンド・ワイス教授の現場監査チームが、ベズウォーダの論文に重大なデータねつ造を見つけたと、「ランセット」誌に発表した。1995年の論文は撤回され、ベズウォーダは解雇された。

なお、ウィットウォーターズラント大学(University of Witwatersrand、通称はウィッツ大学:Wits University)は、ノーベル賞受賞者を4人も輩出している南アフリカ共和国の名門大学である。

141106写真:ウィッツ大学 出典

  • 国:南アフリカ共和国
  • 成長国:不明。多分、南アフリカ共和国
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。多分、1945年頃
  • 現在の年齢:不明
  • 分野:がん学
  • 最初の不正論文発表:1995年(多分50歳頃)
  • 発覚年:1999年(多分54歳頃)
  • 発覚時地位:ウィットウォーターズラント大学・教授
  • 発覚:学会での疑念
  • 調査:国際調査委員会。1999年5月~2000年3月。調査期間10か月未満
  • 不正:ねつ造
  • 不正論文数:1報撤回。他に不審論文あり
  • 時期:研究キャリアの初期から?
  • 結末:解雇

★主要情報源:
① 2001年4月27日のトーマス・マウー(Thomas H. Maugh II)記者とロージー・メステル(Rosie Mestel)記者の「ロサンゼルス・タイムス」紙の記事:Key Breast Cancer Study Was a Fraud – Los Angeles Times
②  2000年3月、Raymond B Weiss 他、「High-dose chemotherapy for high-risk primary breast cancer: an on-site review of the Bezwoda study 、The Lancet,  Volume 355, Issue 9208, Pages 999 – 1003, 18 March 2000
③  2000年4月、Scott Gottlieb、「News and Features: Breast cancer researcher accused of serious scientific misconduct」、West J Med. Apr 2000; 172(4): 229.
④ 日本語の解説:阪大の論文捏造事件に思う その2 三余亭/ウェブリブログ
⑤ ★【動画】エボラがらみでアフリカ医学の暗部の歴史を語る動画「The History of Medical Exploitation in Africa – Harriet Washington on the Ebola Outbreak (2/2)」、(英語)10分47秒、5分8秒頃にウェルナー・ベズウォーダ (Werner Bezwoda)の言及がある。TheRealNewsが2014/08/10 に公開

【経歴】
不明点多し。

  • 仮に、1945年1月1日生まれとする
  • 19xx年(xx歳):xx大学医学部・卒業。医師免許
  • 1972年(27歳?):最初の論文発表
  • 1974年(29歳?):南ア・ウィットウォーターズラント大学で論文発表
  • 19xx年(xx歳):南ア・ウィットウォーターズラント大学・教授就任
  • 1995年(50歳?):問題の論文出版
  • 1999年(54歳?):南ア・ウィットウォーターズラント大学から解雇

【研究内容と不正発覚の経緯】

乳癌は女性の癌で女性の罹患率が最も高く、10%が罹患する。患者の20%が死亡する。

1990年代、治療法として、高用量化学療法がブームとなった。米国では、その時すでに、少なくとも3万人の女性が治療費の平均が約10万ドル(約1千万円)の高用量化学療法+骨髄移植法の治療を受けていた。しかも、治療法の初期には、少なくとも、10~20%の患者が治療の直接の結果として死亡した。

以下は「三余亭」の解説をベースに少し改訂した:阪大の論文捏造事件に思う その2 三余亭/ウェブリブログ

1995年、ベズウォーダは、乳癌患者への高用量化学療法+骨髄移植法(抗癌剤の量を増やし、患者の骨髄を使い白血球の減少を押さえる)の臨床試験が良い結果をもたらしているという研究論文を、一流研究論文誌の「J Clin Oncol」誌に発表した(J Clin Oncol 13:2483-2489, 1995)。

乳癌が他臓器に転移した患者さんに対する最初の治療として抗癌剤の量を増やし(高用量化学療法)、自分の骨髄などを使いながら白血球が減るなどの副作用に対処したら、よい結果が得られました、ということです。

これは、一つの施設だけで行なわれたランダム化比較試験でした。ランダム化比較試験とは、患者さんを試験治療群と標準治療群にランダムに割り付けて治療効果を見るというものです。一つの施設でやることもあれば、多施設共同で行なう場合もあります。論文によれば、90人の患者さんに参加していただき、45人が高用量群(抗癌剤の量が多い群)、45人が標準治療群(抗癌剤の量が普通の群)でした。

結果は、有効率(完全に病気が消えた、あるいは、半分以上縮小した率)は高用量群で95%(45人中43人)、標準治療群では51%(45人中23人)で、有意差あり。生存率も高用量群で良く、生存期間中央値は高用量群で90週に対して標準治療群で45週というものでした。毒性は高用量群で血液毒性、吐き気、嘔吐が多いのですが、死亡は高用量群で1名、標準治療群で2名でした。死亡については差がなさそうです。

1999年5月15日~18日、米国・ジョージア州アトランタで第35回・米国臨床腫瘍学会が開催された。上記論文が出版された4年後のこの学会のハイライトは、乳癌患者への高用量化学療法+骨髄移植法の有用性の検討だった。

米国、スカンジナビア、南アフリカでの臨床試験が報告された。ベズウォーダは高用量化学療法+骨髄移植法の臨床試験が良い結果をもたらしていると発表したが、治療成績が良かったのベズウォーダの臨床試験だけだった。

それで、臨床腫瘍学の専門家の間で、ベズウォーダの研究結果への疑念が噴出した(Boven E: 「American Society of Clinical Oncology–35th annual meeting. 15-18 May 1999, Atlanta, GA, USA」、IDrugs. 1999 Jul;2(7):617-9.)

Dr-Raymond-B-Weiss1-199x300[1]多数の疑念が寄せられたのを受け、ベズウォーダの所属大学である南アフリカのウィットウォーターズラント大学が、米国・ジョージタウン大学のレイモンド・ワイス(Raymond B Weiss 写真出典)教授を委員長とするベズウォーダ調査委員会を招集した。(American Society of Clinical Oncology–35th annual meeting. 15-18 M… – PubMed – NCBI)。

2000年3月、調査の結果を、レイモンド・ワイスらは、医学雑誌「ランセット」誌に公表し、ベズウォーダの研究結果はデータねつ造だとした(Lancet 355巻、999-1003頁:High-dose chemotherapy for high-risk primary breast cancer: an on-site review of the Bezwoda study : The Lancet)。

以下は再度、「三余亭」の解説をベースに少し改訂した:阪大の論文捏造事件に思う その2 三余亭/ウェブリブログ

どうしてねつ造と断定されたかというと、「ランセット」の論文の著者らが国際的な研究を進める前に、ベズウォーダらの研究結果を確認するために患者の記録を南アフリカまで見に行ったからです。そうしたら、そもそもプロトコールの表題が発表と違うし、施設にある記録は発表データと違うし、サインされた同意書はないし、治験審査委員会が承認した記録が無い等々、いろいろおかしな点が見つかりました。結局ベズウォーダ博士は不正を認めました。

「ランセット」の論文では、現地で記録を見るときにバイアスがかからないようにどんな風にメンバーを選んだとか、細かく書いてあります。しっかりしてますね。このメンバーが、1999年の米国臨床腫瘍学会では154名の患者と発表したのに現地では151名の患者しか臨床試験に参加した記録が無く、標準治療群の記録は見せてもらえず、試験治療群の記録も58名分しかチェックできず、しかも臨床試験に参加する適格条件が発表と異なったとか、再発率のデータは信頼できないといったこと、試験治療群の死亡率が低く見積もられていたこと、などを見つけ出します。

発覚の経緯について、「ロサンゼルス・タイムス」紙の記事(主要情報源①)では、以下のようだ(Key Breast Cancer Study Was a Fraud – Los Angeles Times)。本質的な問題ではありませんが、「三余亭」の説明とは若干異なります。

1999年、ベズウォーダの報告書が臨床腫瘍学の専門家の間でスキャンダルになったので、南アフリカのウィットウォーターズラント大学が、米国・ジョージタウン大学のレイモンド・.ワイス教授を委員長とするベズウォーダ調査委員会を招集した。

その委員会が、以下の科学上の不正行為の「実質的証拠」を見つけた。

  • 研究開始9年後に、研究プロトコル(あるいは計画)を書いていた。
  • 1995年の論文では高用量化学療法での死亡者はゼロと記載してあったが、実際は、3人死亡していた。
  • 90人の患者のうち、29人の治療記録がなかった。
  • 他の多くの患者の治療記録も不十分だった。また、何人かの女性は論文に記載された薬と治療法とは異なる薬と治療法の処置がなされた。
  • ベズウォーダの他の8論文に虚偽の記述があった。

【撤回論文】
パブメドで検索すると、ウェルナー・ベズウォーダ (Werner Bezwoda)は、1972年~2001年の30年間に219論文を発表している。

2014年11月5日現在、以下の1論文が撤回されている。

  1. High-dose chemotherapy with hematopoietic rescue as primary treatment for metastatic breast cancer: a randomized trial.
    Bezwoda WR, Seymour L, Dansey RD.
    J Clin Oncol. 1995 Oct;13(10):2483-9.
    Retraction in: J Clin Oncol. 2001 Jun 1;19(11):2973.

【事件の深堀】

【白楽の感想】

《1》 詳細が不明

マルコム・ピアース(Malcolm Pearce)事件と同じで、詳細が不明である。事件の詳細が不明だと、「どんな人が、どの状況で、どうして?」がわからない。