リチャード・ボリソン(Richard Borison)、ブルース・ダイアモンド(Bruce Diamond)(米)

2023年5月5日掲載 

ワンポイント: 2人はジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授で、統合失調症薬の臨床試験で多数の製薬会社に有利なデータをねつ造し、巨額の富を得て優雅に暮らしていた。1996年5月(ボ46歳)、内部告発があり、ジョージア医科大学が調査をはじめると、2人は調査を拒否し大学を辞職した。米国・食品医薬品局(FDA)とFBIの管轄事件となり、逮捕・起訴・有罪となった。1998年10月9日(ボ 48歳)、ボリソンに15年の執行猶予付きで懲役15年、罰金125,000 ドル(約1250万円)、賠償金426万ドル(約4億2600万円)が、ダイアモンドに5年の禁固刑が科された。死者数・健康被害者数は不明。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

リチャード・ボリソン(Richard Borison、Richard L. Borison、RL Borison、 ORCID iD:?、写真出典)は、米国のジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授・医師で、専門は精神科学だった。

ブルース・ダイアモンド(Bruce Diamond、ORCID iD:?、写真出典)は、米国のジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授で医師免許は持っていない。専門は薬理学だった。ダイアモンドはボリソンの5歳上である。

ボリソンは15年の、ダイアモンドは5年の禁固刑が科された。

本記事では刑が重いボリソンを主役、ダイアモンドを脇役、ボリソンを中心に記述する。年齢は断らない限りボリソンの年齢である。

2人はジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授で、統合失調症薬の臨床試験で多数の製薬会社と結託して製薬会社に都合のいい医療データをねつ造した。その悪事で 巨額の富を得て優雅に暮らしていた。

1996年5月(ボ46歳)、内部告発され、ジョージア医科大学が調査をはじめた。すると2人は調査を拒否し大学を辞職した。

米国・食品医薬品局(FDA)とFBIが管轄する事件となり、2人は逮捕・起訴・有罪となった。

1998年10月9日(48歳)、ボリソンに禁固15年(15年の執行猶予付き)、罰金125,000 ドル(約1250万円)、賠償金426万ドル(約4億2600万円)が科された。ダイアモンドには5年の禁固刑が科された。

新聞記事では本件の治験で配偶者が亡くなったケースや、自殺者が出たケースが記載されている。

この事件で多数の死者・健康被害者が出たと思われるが、その人数は不明である。

米国では大事件として大きく報じられた。

日本の一般新聞はボリソン/ダイアモンド事件を報道しなかった(と思う)。

白楽の偏見・無知かもしれないが、製薬会社絡みの教授・医師の不正事件は日本では報道されない傾向(報道されても小さい記事の傾向)が高い(気がする)。製薬会社が大手広告主だからなのだろう。

ジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)。写真出典

★チャード・ボリソン(Richard Borison)を中心に

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:あり
  • 研究博士号(PhD)取得:不明
  • 男女:男性
  • 仮に1950年1月1日生まれとする。1997年8月15日付けの新聞で47歳とあったので。なお、ダイアモンドは52歳とあった:Test Case: Two Top Researchers Accused of Stealing $10 Million – WSJ
  • 現在の年齢:74歳
  • 分野:神経科学
  • 不正行為:1988~1996年(38~46歳)の8年間
  • 不正行為時地位:ジョージア医科大学・教授・医師
  • 発覚年:1996年(46歳)
  • 発覚時地位:ジョージア医科大学・教授・医師
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は内部の人でジョージア医科大学に通報
  • ステップ2(メディア):「Psychiatric Times」、「Los Angeles Times」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①米国食品医薬品局(FDA)。②FBI。③裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。犯罪扱いなので
  • 大学の透明性:機関以外が詳細をウェブ公表(⦿)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:論文数としては不明
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた(Ⅹ)
  • 処分:15年の執行猶予付きで禁固15年、罰金125,000 ドル(約1250万円)、賠償金426万ドル(約4億2600万円)
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

★チャード・ボリソン(Richard Borison)
ほとんど不明。

  • 生年月日:仮に1950年1月1日生まれとする。1997年8月15日付けの新聞で47歳とあったので。なお、ダイアモンドは52歳とあった:Test Case: Two Top Researchers Accused of Stealing $10 Million – WSJ
  • 1994年(24歳?)?:シカゴ医科大学(Chicago Medical School)で医師免許取得。薬理学のヘクター・サベリ教授(Hector C. Sabelli)の指導を受け、1994年に最初の論文出版した。
  • xxxx年(xx歳):ジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授
  • 1988~1996年(38~46歳)の8年間:不正実行
  • 1996年5月(46歳):不正が発覚
  • 1997年2月(47歳)?:逮捕
  • 1998年10月9日(48歳):裁判で、 15年の執行猶予付きで懲役15年、罰金125,000 ドル(約1250万円)、賠償金426万ドル(約4億2600万円)

●4.【日本語の解説】

★2004年3月xx日:柿谷正期(Masaki Kakitani、立正大学教授、臨床心理士、精神保健福祉士):立正大学大学院紀要第20号(平成16年3月)(PP.71-93):精神疾患へのアプローチ再考

出典 → ココ、(保存版) 

狂気の薬物治療期(1990年代~今日)

製薬会社が利益を確保するためには、薬の特許が切れる前に新しい薬が用意されなければならない。リスペリドン(リスパダール)が米国のFDAに認可されたのが、1993年であった。ボリソン(Borison)は1992年にリスペリドンの有用性について論文を書き、彼の論文はその後しばしば引用された。これに先立ちボリソンは1984年に製薬会社からの助成金を得て、ソラジン(日本商品名 ウィンタミン、コントミン)がよりよい結果をもたらすと発表した。しかし, FDAの調査によると、このとき実施されたという病院にはソラジンのストックがなかったことが判明している。データーの捏造であったのだ(Whitaker、p.266)。

この同じボリソンがリスペリドンのデーターをやはり捏造していることが知られるようになった。ボリソンは起訴され、15年の有罪判決を受ける。ただしこのときには彼のデーター捏造が有罪判決に至らせたのではなかった。

データー捏造は否定しがたい事実ではあったが、別件で有罪とされている。ボリソンの裁判は進行中ではあったが、1997年に彼の11番目の論文が掲載されて、リスペリドンによって統合失調症がいかに改善したかの報告がなされた。

ホイトカーは著書(2002)の中で、アメリカ社会で行なわれてきた精神病患者の治療がいかに狂っているかを告発している。アメリカ社会で行なわれていることは日本にも世界にもその影響が及ぶものである。新薬は次々に日本でも認可されている。精神病患者を抱えた家族はアメリカで新薬が開発されたと聞くと、早く認可して欲しいと訴える。薬物療法で家族が癒されることを願ってのことであるが、薬物療法が真に癒しをもたらしているのではなく、むしろ、病状を変化させ、場合によっては副作用によって生きているのがつらい状態がもたらされる可能性に気づかないでいる。

続きは、原典をお読みください。

★2022年8月15日:アルツハッカー(Alzhacekr):科学の名のもとに | 極秘計画、医学研究、人体実験の歴史 -7  第7章 組織医療: 100年にわたる人体実験

出典 → ココ、(保存版) 

1989年から1996年まで、リチャード・ボリソンとブルース・ダイアモンドの両博士はイーライ・リリーやノバルティスといった製薬会社のために精神分裂病の薬のテストを行っていた。

この間、彼らは臨床試験から多額の資金を集め、1000万ドル以上を受け取っている。精神分裂病の患者を被験者にするために、彼らの事務所のスタッフにはボーナスが支払われ、車が提供された。また、訓練を受けていない実験室職員が、資格もないのに血液サンプルを採取し、実験薬の投与量を調整していた。

裁判では、作業員たちはダイアモンド博士が患者のケアにほとんど注意を払っていなかったと証言している。裁判記録では、ダイアモンド医師は「患者がどうなっているかは気にしていない。私たちは、この1週間か2週間の間に何人の患者を登録したかを知りたいだけなのである」。ダイヤモンドとボリソンは、それぞれ5年から15年の禁固刑を言い渡され、数百万ドルの罰金を支払うよう命じられた。

続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★臨床試験不正

リチャード・ボリソン(Richard Borison)は、精神分裂病の臨床試験で、数十の製薬会社と契約し、臨床試験を行なった。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社(Johnson & Johnson)からは新しい統合失調症薬であるリスパダール(Risperdal)の臨床試験を、スミスクライン・ビーチャム社(SmithKline Beecham PLC)からは抗うつ薬であるパキシル(Paxil)の臨床試験を請け負った。

他には、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社(Bristol-Myers Squibb Co.)、イーライ・リリー社(Eli Lilly Co)、グラクソ・ウェルカム社(Glaxo Wellcome PLC)からの臨床試験も引き受けた。

そして、それらの臨床試験のデータをねつ造し、製薬会社に都合の良いデータを発表・報告していた。

製薬会社が支払う臨床試験の経費は、本来、研究者の所属する大学の会計課に送金される。

しかし、一部の製薬会社は、ボリソンの要求に応じ、ジョージア医科大学(Medical College of Georgia)はなく、ボリソンが管理する企業やボリソンの個人口座に送金していた。

1988~1996年の8年間に、ボリソン は1000万ドル(約10億円)以上の不正な収入を得ていた。

これら巨額なお金は数百万ドル(数億円)に及び、その資産は、米国の3つの州と英国ロンドンに分けて保管していた。

住んでいた家は豪邸で、16,000ドル(約160万円)のライオンの頭で飾られた青銅のドアがあり、庭には32,000 ドル(約320万円)のライオンの石造りの噴水があった。一言で言えば、とても贅沢に暮らしていた。

★発覚の経緯

1996年5月(46歳)、ボリソンが臨床試験で不正をしていると、内部の人がジョージア医科大学に告発したのがネカト発覚の発端である。

薬理学者でジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)の研究担当暫定副学長(interim vice-president of research)だったマルコム・クリング(Malcolm Kling、写真出典)は、ボリソンとダイアモンドの内部調査を始めた。

すると、ボリソンとダイアモンドの2人は内部調査への協力を拒否し、調査開始3日目にジョージア医科大学を辞職した。

それで、マルコム・クリングは、司法長官、米国食品医薬品(FDA)、他の連邦規制当局、製薬会社にボリソンとダイアモンドの不正行為を通報した。

★逮捕

1997年2月(47歳)(その数か月前?)、発覚から9か月後、リチャード・ボリソン(Richard Borison)とブルース・ダイアモンド(Bruce Diamond)は逮捕された。

ボリソンは、スミスクライン社の統合失調症治療薬であるソラジン(Thorazine)のジェネリック薬は、スミスクライン社の先発薬ほど効果的ではないと報告していた。

米国食品医薬品局(FDA)が調べると、臨床試験を行なったとされる病院は、1984年5月当時、ソラジンの先発薬を在庫していなかった。

しかも、当時、ソラジンを服用したと報告された11人の患者は入院していなかった。

ボリソンは、患者の秘密を守るために期間を変更したと弁解した。しかし、米国食品医薬品局(FDA)は、考えられるすべての期間を調査したが、ボリソンのデータを裏付けることができなかった。

また、ボリソンとダイアモンドは製薬会社がジョージア医科大学に送金するお金を彼らの会社に送金するよう求めた。

一部の製薬会社は、研究が行なわれている限り誰が報酬を得ようと気にかけなかったので、ボリソンとダイアモンドの指定した送金先に送金していた。

そして、サンドAG社(Sandoz AG) に雇われた臨床試験監視会社の検査官が、患者の記録にあるボリソンの署名の信憑性に疑問をもって、上司に報告した。すると、ダイアモンドが臨床試験監視会社の検査官の上司に不平を言った。それで、その検査官は突然、調査業務から外された。

つまり、不正行為に加担したのは、製薬会社だけではなく、臨床試験監視会社も同罪だった。

さらに、被験者の安全と権利を保護するためにゲートキーパーとして行動することになっている治験審査委員会(IRB)も、書類をチェックしただけだったので、ボリソンの不正を見逃してしまった。

実は、上記したように、米国食品医薬品局(FDA)は、1984年5月のソラジン(Thorazine)臨床試験で、ボリソンがデータねつ造したことを公表していた。

しかし、その後でさえも、製薬会社は、抗精神病薬、抗うつ薬、アルツハイマー病の治験から得たボリソンのデータにネカトがあることに疑問を抱かなかった。

リチャード・ボリソン(Richard Borison)。出典

ブルース・ダイアモンド(Bruce Diamond)。出典

★裁判

1997年2月、発覚から9か月後、ボリソン(Richard Borison、写真出典)とダイアモンドは、172件の犯罪行為で起訴された。

数か月に及ぶ綿密な調査で、検察官は、1988~1996年の8年間に、ボリソンとダイアモンドは、幅広い「精神疾患」の臨床研究で、臨床試験の結果をねつ造し、1000万ドル(約10億円)以上をだまし取り、患者の生命・健康を危険にさらした、と指摘した。

また、虚偽の陳述、処方箋の偽造、規制薬物法の違反、所得税の脱税、薬の提供における無謀な行為などの犯罪行為、を指摘した。

ダイアモンドは1997年 12月に有罪を認めた。

1998年10月9日、発覚から2年5か月後、アトランタのオーガスタ司法巡回裁判所は、ボリソンとダイアモンドが犯罪を隠すために日常的に嘘をつき、病苦を治療するべき患者と治験者の生命・健康を危険にさらした、と非難した。→1998年10月9日裁判記録:ATTORNEY GENERAL ANNOUNCES GUILTY PLEA IN MEDICAL COLLEGE OF GEORGIA FRAUD CASE | Office of Attorney General of Georgia Chris Carr保存版

ボリソンは1000万ドル(約10億円)以上の研究費を流用した罪を認めた。

リッチモンド郡高等裁判所は、ボリソンに15年の執行猶予付きで懲役15年、罰金125,000 ドル(約1250万円)、賠償金426万ドル(約4億2600万円)を言い渡した。ダイアモンドには5年の禁固刑を言い渡した。

【ねつ造・改ざんの具体例】

ボリソンは、臨床試験の結果をねつ造、虚偽の陳述、処方箋の偽造、規制薬物法の違反、所得税の脱税、薬の提供における無謀な行為などの犯罪行為を犯したとされた。

ただ、白楽は、ボリソンの研究報告でのねつ造箇所を具体的には掴めなかった。

以下の論文がデータがねつ造論文だと思われるが、この論文のどの部分のデータがねつ造なのか、具体的には白楽はわからない。

また、他のネカト論文を調べていない。

★「1996年のJ Clin Psychopharmacol」論文

「1996年のJ Clin Psychopharmacol」論文の書誌情報を以下に示す。2023年5月4日現在、撤回されていない。

データねつ造だと思われるが、閲覧有料なので、白楽は論文を読んでいない。また、具体的にはどの部分のデータがねつ造なのか、白楽はわからない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2023年5月4日現在、パブメド(PubMed)で、リチャード・ボリソン(Richard Borison、Richard L. Borison、RL Borison)の論文を「Borison RL」で検索した。1974~1997年(24~47歳)の24年間の64論文がヒットした。

64論文の内、1982~1996年(32~46歳)の15年間の 17 論文が臨床試験(Clinical Trial)の論文である。

2023年5月4日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2023年5月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでリチャード・ボリソン(Richard Borison、Richard L. Borison、RL Borison)を「Borison RL」で検索すると、 0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2023年5月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、リチャード・ボリソン(Richard Borison)の論文のコメントを「Richard Borison」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》医者の職業観 

リチャード・ボリソン(Richard Borison)とブルース・ダイアモンド(Bruce Diamond)の2人はジョージア医科大学 (Medical College of Georgia)・教授で、統合失調症薬の臨床試験で多数の製薬会社と結託して製薬会社に都合のいい医療データをねつ造した。

その悪事で 巨額の富を得て贅沢に暮らしていた。

医者の本来の仕事は、患者の病苦を取り除く予防・診断・治療である。

患者を食い物にして、私利私欲を追求する医者は、「医者の掟」違反である。最低というか、医者に該当しない。

ボリソン/ダイアモンド事件では、ボリソンが先導し、ダイアモンドが共犯なのだが、どうして、ボリソンはそのような思考になったのだろうか?

ボリソンはシカゴ医科大学(Chicago Medical School)で医師免許を取得した。

1994年(24歳?)に最初の論文出版したが、その時の所属はシカゴ医科大学で、論文の最後著者は、薬理学のヘクター・サベリ教授(Hector C. Sabelli、写真出典同)である。

サベリ教授はブラジルで大学教育を受けてから渡米した人で、この人の医者の職業観がカネ儲けだったのだろうか?

どのような職業でも言えることだが、特に、医者は、若い時に「医者とはどうあるべきか?」という倫理観をシッカリ確立しないと、患者を食い物にしてカネ儲けに走るボリソンのような医者ができてしまう気がする。

《2》医師の過尊重 

ボリソン/ダイアモンド事件のようにカネ儲けに走る医者の事件は、日本でも昔からたくさんある。

そして、現在もあちこちにあり過ぎて、多くの日本人は「そういうものだ」と受け入れてしまっている。それをいいことに、日本の医学界も政府も改善しない。つまり、国民のための医療になっていない面が日常的にある。

例えば、今でこそ改善されたが、「3時間待って3分診療」などとついこの間まで言われていた。これは、カネ儲け優先とは違うが、患者軽視の例である。

医師が過剰に尊重され、収入も高い職業となったのは、ある意味、日本社会にとっては不幸である。

医業は創造的な仕事ではない。ルーチンをこなす修理工の仕事である。ルーチンをこなす仕事に優秀な才能を注ぐ社会は適材「不」適所で、もったいない。

創造的な才能は、創造的な才能を必要とするコンピューターソフトの開発、人類に有用な発明・発見、社会原理の解明、芸術などに使ってもらいたい。

医師の収入が高いからこうなってしまった。一方、創造的な仕事をする人の収入が不当に低い。

例えば、創造的な才能が必要な研究職の収入が不当に低い。

博士号取得には医師免許取得より年数・経費・才能・努力が必要なのに、博士号取得者は医師ほど高給ではないため、博士号取得者より医師の方が尊重される社会になってしまった。

昔はそうではなかった。「末は博士か大臣か」で、「博士」は偉く、「大臣」と同等だった。

現在は「末は博士か博士は末か」。かつてこのタイトルで文章を書いたなあ。

リチャード・ボリソン(Richard Borison) – Drug Money, 48 hours, July 31, 2000。出典のスライド18番目

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 1997年4月1日の記者名不記載の「Psychiatric Times」記事:Ex-Profs Charged in Psych Department Research Scam
② 1997年9月21日のタラ・マイヤー(Tara Meyer)記者の「Los Angeles Times」記事:Two Accused of Medical School Fraud – Los Angeles Times保存版
③ 2000年7月31日の記者名不記載の「CBS News」記事:Drug Money – CBS News
④ 2003年9月30日の食品医薬品局:Federal Register :: Richard L. Borison; Debarment Order
⑤ 2016年7月11日の記者名不記載の「CCHR International」記事:Mental Health Watchdog Calls for Risperdal-Psychiatric Researchers to Be Held Accountable for Downplaying Risks – CCHR International
⑥ 2022年10月29日の記者名不記載の「ALLIANCE FOR HUMAN RESEARCH PROTECTION」記事:Scientific Fraud: Eric Poehlman / Richard Borison – Alliance for Human Research Protection
⑦ 1998年11月17日のロバート・ウィテカー(Robert Whitaker)記者の「Boston Globe」記事: Boston Globe Online / Doing harm: Research on the mentally ill保存版別の保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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