2026年6月30日(火)掲載
2人はナイジェリア出身の多数論文撤回者で、2026年、ルイは撤回論文数が40論文になり、「撤回論文数」世界ランキングの第21位(番号は24番)にランクされた。それで記事にした。ベンジャミンは「撤回論文数」世界ランキングにランクされていないが、ルイの40撤回論文のうちの20論文の共著者だった。ルイはカラバル大学・教員(?)、かつ、英国のリーズ大学・博士院生である。ベンジャミンはナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)で学士号を取得し、現在は同大学・研究助手。2024年、ルイの論文の異常が学術誌に通報された。2021~2024年の計40論文が、2024~2026年に撤回された。撤回理由はさまざまで、捏造・改ざん、論文工場、査読偽装、過剰自己引用などだ。なお、「パブピア(PubPeer)」にルイの139論文が疑惑視されているので、今後、撤回論文数は増えると思われる。カラバル大学がネカト調査をした(している)形跡はなく、2人は大学から処分されていない。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想(含・AI川柳)
9.主要情報源
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●1.【概略】
ヒトラー・ルイ(Hitler Louis、Louis Hitler Muzong ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-0286-2865、写真出典)は、ナイジェリアのカラバル大学・教員(?)、かつ、英国のリーズ大学・博士院生である。専門はコンピューター化学。
2024年4月10日(33歳?)、論文が初めて撤回された。
その後、撤回が続き、2026年(35歳?)、ルイは40論文が撤回され、「撤回論文数」世界ランキングの第21位(番号は24番)にランクされた。 → 「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理
イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin、写真出典)は「撤回論文数」世界ランキングにランクされていないが、ルイの40撤回論文のうちの20論文の共著者である。ルイを主役とすると、ベンジャミンは準主役と思えるので、白楽ブログではベンジャミンを少しだけ登場させた。
なお、ベンジャミンは、2025年1月、英国のポーツマス大学(University of Portsmouth)で生物学およびバイオテクノロジーの修士号を取得したが、その前にナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)で学士号を取得し、現在はカラバル大学・研究助手である。
つまり、ベンジャミンはヒトラー・ルイと同じ大学の同僚で仲間である。
この件で、2人は大学から処分された形跡がない。所属大学がネカト調査をした(している)形跡もない。
カラバル大学(University of Calabar)。写真出典
【ヒトラー・ルイ(Hitler Louis)】
- 国:ナイジェリア
- 成長国:ナイジェリア
- 医師免許(MD)取得:なし
- 修士号取得:中国の中国科学院
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1991年1月1日、ナイジェリア生まれとする。2013年に学士号を取得した時を22歳とした
- 現在の年齢:35歳?
- 分野:コンピューター化学
- 不正疑惑論文発表:2019~2026年(28~35歳?)の7年間
- 不正疑惑論文発表時の地位:カラバル大学・教員補助、同・教員(?)、リーズ大学・博士院生
- 発覚年:2024年(33歳?)
- 発覚時地位:カラバル大学・教員(?)、リーズ大学・博士院生
- ステップ1(発覚):第一次追及者の詳細不明。学術誌に通報
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②カラバル大学とリーズ大学は調査していない(推定)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない(推定)
- 大学の透明性:調査していない(推定)(✖)
- 不正:捏造・改ざん、論文工場、査読偽装、過剰自己引用
- 不正論文数:40論文撤回(撤回監視データベースでは39論文撤回)、2019~2026年の139論文が疑惑
- 時期:研究キャリアの初期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 対処問題:大学怠慢、学術誌怠慢
- 特徴:多数論文撤回者で「撤回論文数」世界ランキングの第27位(番号は29番)
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
【ヒトラー・ルイ(Hitler Louis)】主な出典:①:Virtual Winter School on Computational Chemistry – Africa Calling – Speakers、②:hitler-louis-linkedin-profile、③: hitler-louis-linkedin-profile。3者に不一致な箇所はあるが・・・。
- 生年月日:不明。仮に1991年1月1日、ナイジェリア生まれとする。2013年に学士号を取得した時を22歳とした
- 2013年(22歳?):ナイジェリアの連邦工科大学(Federal University of Technology)で学士号取得:工業化学
- 2016年(25歳?):ナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)・教員補助(Graduate Assistant)
- 2019年(28歳?):中国の中国科学院(University of Chinese Academy of Sciences)で修士号取得:理学
- 2019~2026年(28~35歳?):この7年間の139論文が「パブピア(PubPeer)」で疑惑視
- 2020年5月5日(29歳?):ナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)・計算科学グループ設立(準教授になった?)
- 2023年3月(32歳?):英国のリーズ大学(University of Leeds)・博士院生:コンピューター化学。2027年10月終了予定
- 2024年4月10日(33歳?):論文が初めて撤回された
- 2024~2026年(33~35歳?):計40論文(撤回監視データベースでは39論文)が撤回され、2026年に「撤回論文数」世界ランキングの第21位(番号は24番)にランクされた。
- 2026年6月29日(35歳?)現在:英国のリーズ大学(University of Leeds)・博士院生、ナイジェリアのカラバル大学・教員(?)を維持(推定)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
ヒトラー・ルイ(Hitler Louis、写真出典)はナイジェリアに生まれ育ち、ナイジェリアの連邦工科大学(Federal University of Technology)で学士号を取得した。
ナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)・教員になったが、2020年5月5日(29歳?)にカラバル大学・計算科学グループを創設した(準教授になったと思われる)。
2023年3月(32歳?)、カラバル大学に在職したまま(推定)、英国のリーズ大学(University of Leeds)・博士院生になった。2027年10月に院生を終了予定だそうだ。
表はパブメドでヒットした論文数だが、表に示すように、2021年に10報、2022年に18報と急速に増えている。
表に示したように、カラバル大学・計算科学グループを創設した頃から、ヒトラー・ルイは急速に、論文を多数出版し始めた。
「撤回監視(Retraction Watch)」記事によると、2022年だけで、Scopusでヒットする40報の論文を発表していた。2019~2022年の4年間のScopusによる出版論文数を基準に、ヒトラー・ルイはナイジェリアで85番目に優れた科学者としてランクされた。
★発覚とその後
ヒトラー・ルイ(Hitler Louis)の40論文(撤回監視データベースでは39論文)が撤回されたが、うち、少なくとも20論文はエルゼビア社(Elsevier)の学術誌に掲載された論文だった。エルゼビア社の広報担当者によると、ルイの論文に問題があると、外部から通報があったとのことだ(通報者の素性不記載)。
2024年4月10日(33歳?)、ヒトラー・ルイの「2022年7月のThe Journal of Physical Chemistry B」論文が最初に撤回された。
「The Journal of Physical Chemistry B」は「アメリカ化学会(ACS)」が発行する学術誌なので、通報者はヒトラー・ルイの問題論文をエルゼビア社以外にも通報したと思われる。
撤回公告によると、撤回理由は、カルボプラチンの分子式C6H12N2O4Ptの代わりに、水素原子が2つ少ないC6H10N2O4Ptを使って計算したため、正しい計算ができていなかった、だった。
この撤回理由には研究不正の臭いはない。
しかし、その後、ヒトラー・ルイの2021~2024年の38論文が、2024~2026年に撤回された。
最新の撤回は2026年3月20日だが、「パブピア(PubPeer)」でヒトラー・ルイの139論文にコメントがあるから、今後、撤回論文は増える可能性が高い。
問題のある論文のほとんどは、エルゼビア社(Elsevier)やRoyal Society of Chemistryの学術誌に掲載された論文である。
それらの、撤回通知によると、撤回理由は、異なる化学システムを表しているはずのグラフが実際には同じだったり、原稿の提出から出版までの間に自己引用が繰り返されたり、査読プロセスに問題があったり、化学分析において根本的な誤りがあったなど、さまざまだ。
ヒトラー・ルイは「撤回監視(Retraction Watch)」の問い合わせに無回答だが、不正行為が発覚したことを承知している。
そして、「論文で述べたる研究は、リーズ大学とは無関係です」とか「所属情報は誤って記載された」とか「所属からリーズ大学を削除するよう要請」など、英国のリーズ大学との関係を否定している。これは、リーズ大学は悪くないと、リーズ大学を守る意図の発言だと思われる。
とはいえ、削除された以下のLinkedInプロフィールでは、ヒトラー・ルイはリーズ大学の院生とある(出典:「撤回監視(Retraction Watch)」記事)。

一方、リーズ大学は、ヒトラー・ルイが実際に在籍しているのかという「撤回監視(Retraction Watch)」の問い合わせに無回答だった。
★イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)
イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin、写真出典)は「撤回論文数」世界ランキングにランクされていないが、ルイの40撤回論文のうちの20論文の共著者だった。ルイを主役とすると、ベンジャミンは準主役となる。
ナイジェリアで生まれ・育ったベンジャミンの経歴を「Innocent Benjamin (MRSC., MNSM., MACS) | LinkedIn」を参考に以下に概略する。
- 2016~2021年:ナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)で学士号取得:微生物学
- 2021年~現:ナイジェリアのカラバル大学(University of Calabar)・研究助手
- 2024年1月~2025年1月:英国のポーツマス大学(University of Portsmouth)で修士号取得:生物学およびバイオテクノロジー
- 2025年1月~現在:英国のトリテック・コンサルティング社(Tritek Consulting Limited)のプロジェクトマネージャー兼ビジネスアナリスト
なお、ベンジャミンは、画像の重複使用について、「それは主に図表の表現や解釈に関するもので、計算データの捏造ではない」と、不正を軽視する発言をしている。
●【研究不正の具体例】
撤回されたネカト論文が40論文(撤回監視データベースでは39論文)ある。
上述したように、撤回理由はさまざまで、異なる化学システムを表しているはずのグラフが実際には同じだったり、原稿の提出から出版までの間に自己引用が繰り返されたり、査読プロセスに問題があったり、化学分析において根本的な誤りがあったなどだ。
最も多いのは、画像の重複使用で、1つの論文内だけでなく、複数の論文にわたって重複使用されていた。
また、少なくとも8報の撤回論文では不正引用をしていた。例えば、投稿から掲載されるまでの間に、著者たちは28件の引用を追加した。撤回通知には、「追加した引用は論文のテーマとは無関係で、著者自身の利益のため」だとある。
別の「Heliyon」誌の論文では、投稿から掲載されるまでの間に、ルイの自己引用数を7件から38件に増やし、ベンジャミンの引用を2件から9件に増やした。
また、別の論文では、ルイの自己引用数を1件から14件に、ベンジャミンの引用を2件から11件に増やした。
編集者が、なぜこれらの参考文献が挙げたのか説明を求めても、ルイらは満足のいく回答をしてこなかった。
さらに、別の「Heliyon」誌の論文では、編集過程で著者名を大幅に変更した。原稿の提出から出版までの間に、5人の著者を追加し、1人の著者を除外した。しかし、追加した著者が実際に著者として適任かどうかについては、何の説明も根拠も示さなかった。 → 撤回公告
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。
★スコーパス(Scopus)
2026年6月29日現在、スコーパス(Scopus)で、ヒトラー・ルイ(Hitler Louis、Louis Hitler Muzong)の論文を「Hitler Louis」で検索した。378論文がヒットした。
★パブメド(PubMed)
2026年5月4日に調べた時、パブメド(PubMed)で、ヒトラー・ルイ(Hitler Louis、Louis Hitler Muzong)の論文を「Hitler Louis[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2020~2026年の7年間の83論文(2026年 6月29日現在は85論文)がヒットした。なお、「化学」分野の研究者の論文をパブメド(PubMed)で検索しても、全部はヒットしないだろう。
2023年に34報も出版していた。
83論文のうち2022~2026年の5年間の28論文はイノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)と共著だった。
★撤回監視データベース
2026年6月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでヒトラー・ルイ(Hitler Louis、Louis Hitler Muzong)を「Hitler Louis」で検索すると、2021~2024年の1論文が訂正、39論文が、2024~2026年に撤回されていた。
イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)は20論文が撤回されていた。すべて、ヒトラー・ルイと共著の論文だった
★パブピア(PubPeer)
2026年6月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ヒトラー・ルイ(Hitler Louis、Louis Hitler Muzong)の論文のコメントを「authors:”Hitler Louis”」で検索すると、2019~2026年の139論文にコメントがあった。
イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)は、2022~2024年の53論文にコメントがあった。
数論文調べただけだが、ベンジャミンの所属はカラバル大学と記載されていた。
●7.【白楽の感想】
《1》AI川柳 サンプル
- 校正で ドンと加えた わが論文
(査読が終わった後の「校正段階」で、自分たちの引用を数件から数十件へ激増させる悪質な手口) - 盛りに盛り 自己引用で 得る名声
(投稿から掲載までの間に不自然に増えた引用数。数字で飾り立てた名声) - あら不思議 受理の直後に 増える著者
(掲載決定後に突然共著者を5人も追加し、逆に1人を削除した。著者「枠」売買という疑惑)
《2》「撤回論文数」世界ランキング
「パブピア(PubPeer)」でヒトラー・ルイ(Hitler Louis、写真出典)の139論文が疑惑視されている。現在の撤回論文数は40報だが、今後、この数値はもっと増えるだろう。
139論文は「撤回論文数」世界ランキングの3位相当だが、一般的に、不正論文と通報しても、論文撤回しない学術誌が数割ある。従って、3位どころか、10位以内(58撤回論文)に入る可能性は低い。
多くの人が思うほど学術誌は公正ではない。どちらかと言うと、イヤイヤ、どちらかとも言わなくても、学術誌の研究公正活動は低調である。掲載している論文が不正と指摘されても、なかなか撤回しない。コマッタもんである。
国際機関は、このズサンな学術誌とその編集長を懲罰すべきである。撤回しないのは、学術公害で汚物・ゴミを放置しているのと同じである。懲罰しないと、事態は改善しないだろう。
もっとも、現状のままで懲罰を科せば、編集長を務める有力教授が大幅に足らなくなるだろう。
学術出版の仕組みを変える必要がある。
《3》研究不正を防ぐ方法
ヒトラー・ルイ(Hitler Louis)とイノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)の研究不正を防ぐには、どうすればよかったか?
また、今後、同じような研究不正を起こさせないためにはどうすべきか?
ヒトラー・ルイ(Hitler Louis)とイノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)は、ナイジェリアでは、かなり恵まれた立場の研究者だと思われる。
普通に、まじめに研究していれば、2人とも、カネ・権力・地位・名誉と尊敬を得られる立場になっただろう。
どうして、研究不正に手を染めたのか?
これが、全くわからない。
公表されている事件の内容からは、不正に至った状況は全く不明である。それで、研究不正を防ぐ方法はわからない。
毎度のことだが、事件をニュース記事にする時、事件を防ぐ視点からの記述が欲しい。
ただ、イノセント・ベンジャミン(Innocent Benjamin)は、弁解なのか、本気でそう思っているのか不明だが、研究公正を軽視する発言をしている。ナイジェリアからでも英国からでも、そのままの意識で論文を発表し続けると、いずれ研究不正で排除されるだろう。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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●9.【主要情報源】
① 2026年2月24日のロリ・ユムシャジェキアン(Lori Youmshajekian)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Chemist nears three dozen retractions for image duplication, self-citation and more – Retraction Watch