7-194 オーストラリアの研究公正システムの強化を提案

/2026年8月1日(土)掲載/

ウォーウィック・アンダーソン(Warwick Anderson、写真左)とケリー・ブリーン(Kerry Breen、写真右)は、「2026年7月のInternal Medicine Journal」論文で、研究公正を高めるため、オーストラリア研究公正委員会(ARIC)の権限強化と研究不正の公表制度を提案した。

〈AI使用:記事は白楽が指定した書式で、CC BY-NC 4.0ライセンスの原著論文をGeminiに翻訳・翻案させ、白楽が画像添付と校閲(加筆・訂正)をし、「白楽・AI問答」と「白楽の感想」を加えた〉

【書誌情報】
論文名:Strengthening Australia’s research integrity system
著者:Warwick Anderson(モナシュ大学教授、元オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]CEO)、Kerry Breen(モナシュ大学法医学部門)
掲載誌:Internal Medicine Journal, 2026年7月9日オンライン公開
DOI:10.1111/imj.70474
 
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1.論文の内容

1-1.はじめに(論文の概要と著者の問題意識)

  • 学術界における研究不正(捏造・改ざん・盗用などのネカト)は深刻な問題で、論文出版の国際的な競争の激化に伴い、発生件数は増加の一途をたどっている。
  • 誠実な研究者の名誉を守り、国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)を高めるためには、オーストラリアの研究公正(リサーチ・インテグリティ)システムを根底から見直し、強化することが急務である。
  • 著者のウォーウィック・アンダーソン教授(Warwick Anderson、ワーウィック・アンダーソン、写真左出典、モナシュ大学)とケリー・ブリーン(Kerry Breen、写真右出典)らは、オーストラリアの現行制度の機能不全に対して極めて強い危機感を抱き、本論文を執筆した。

1-2.現行システムの構造的限界

  • 現在、オーストラリアにおける研究規範は2018年改訂の「責任ある研究活動に関するオーストラリア規程 (Australian Code for the Responsible Conduct of Research 2018 (‘Australian Code’))」によって規定されており、オーストラリア・国立保健医療研究評議会(NHMRC)やオーストラリア研究会議(Australian Research Council:ARC)といった公的資金配分機関からの資金受給要件となっている。
  • しかし、研究不正の告発がなされた際、実際の調査を行なう主導権は各大学や研究機関に委ねられている(自主調査システム)。
  • この仕組みには「自己保身」という本質的な利益相反が内包されており、大学は評判の失墜や公的資金の停止を恐れるあまり、不正を隠蔽あるいは矮小化して処理する傾向が極めて強い。
  • 従って、公的な説明責任が必要です。現在、研究機関(大学や研究所)は、調査結果や対処状況を報告・公表する義務はありません。このため、研究不正の発生頻度や、各研究機関の対処に関する正確な情報がありません。これは、一部の上級研究管理者にとっては都合が良いかもしれませんが、研究資金を提供しているオーストラリア社会としては、この問題の深刻さや、それがどの程度適切に対処されているかを把握することができません。
  • なお、オーストラリア規程が研究不正と見なす行為は、単なるデータの捏造や改ざん、盗用にとどまらない。不公平な著者在順、法律違反(労働安全衛生や公的資金の使用に関する法律など)、自己の利益のための利益相反の隠蔽など、オーストラリア規程の原則に対する重大かつ意図的な違反も含まれる。

1-3.オーストラリア研究公正委員会[ARIC]の限界

  • オーストラリアには、告発への研究機関(大学や研究所)の対処を検証するための組織として「オーストラリア研究公正委員会(Australian Research Integrity Committee (ARIC))」が、2011 年にNHMRCとARCによって設立された。
  • しかし、ARICには法的な強制権限が与えられておらず、研究機関(大学や研究所)が実施した不透明な対処・調査を「プロセスの点」から事後レビューすることしかできない。
  • ARIC自身は研究機関(大学や研究所)の調査内容を調査できない。研究機関(大学や研究所)が告発にどのように対処したかについての情報を収集できない。再調査を命令したり、不誠実な調査を行なった機関に資金停止処分などの直接的制裁を科す権限はなく、ARICの実効性は極めて限定的である。

1-4.米国ORIとの比較および完全な国レベル独立機関設立のハードル

  • 一部の研究者は、米国の研究公正局(ORI)のように、国レベルで強力な調査権限を持つ中央独立捜査機関の設立をオーストラリアに求めている。
  • しかし、オーストラリアの連邦制度と、各州に分散した教育・法制の複雑な枠組みのもとでは、そのような完全な独立機関の新規立法・設立には多大な時間と予算上のコストが伴い、政治的な合意形成も容易ではない。
  • また、米国のシステムも大学の一次調査に依存している面があり、模倣するだけで一朝一夕に不正が根絶されるわけではない。

1-5.対案としてのオーストラリア研究公正局[ARIO]の創設

  • そこで著者らは、ゼロから巨大機関を作るのではなく、現行のARICの権限を法律に基づいて大幅に再編・拡張し、実質的な「オーストラリア研究公正局(Australian Research Integrity Office: ARIO)」を設立する道を提案する。
  • ARIOは連邦政府から明確な法的権限(statutory powers)を付与され、政府資金が投入されているあらゆる研究機関(大学や研究所)の調査を監視・精査する機能を持つ。
  • 研究機関(大学や研究所)に対し、何らかの不正行為の疑いが持たれ、調査が開始された場合、必ずARICに報告するよう義務付ける。また、その調査の経過や結果、そして講じられた措置についても、ARICに報告しなければならない。
  • 大学による調査に不備がある、あるいは「身内に甘い」と判断した場合、ARIOは当該大学に対し、大学側の自己負担で徹底的な「再調査」を行なうよう強制できる権限を持つ。
  • 再調査は、該当機関の外部にある委員会によって行われなければならない。
  • ARICは、各研究機関(大学や研究所)からの報告書の要約や、そこで講じられた措置について定期的に公表する。
  • ARC、NHMRC、その他の国家機関は、ARICの調査結果に基づいて、研究者や研究機関への資金提供を停止する権限を持つ。
  • ARICが要求した再調査の費用は、すべて 該当する研究機関(大学や研究所)が負担する。そうすることで、各研究機関(大学や研究所)は最初から適切に対応するようになる。
  • ARIC 自体も、定期的に外部からの評価を受ける。

1-6.社会的抑止としてのリアルタイム公表制度の確立

  • もう一つの極めて重要な提案は、不透明な「秘密主義」からの脱却である。
  • 新たに誕生するARIOは、プライバシー法を遵守した上で、研究不正に関する告発の件数、調査プロセス、そして確定した不正の調査結果を、研究機関名とともにウェブ等で公表する義務を負う。
  • こうしたリアルタイムでの公表制度は、学術誌における捕食学術誌への警戒と同様に、大学側に「まともな調査をしなければ大学名が公表され、恥をさらすことになる」という強い動機(ネーム・アンド・シェイム効果)を与えることになる。

1-7.結論と提言:資金配分機関との連携と罰則強化

  • 本改革案は、連邦政府の政治的決定さえあれば、複雑な新規立法プロセスを経ずとも迅速に導入・実施が可能である。
  • NHMRCやARCといった公的資金配分機関は、ARIOの勧告に完全に連動し、不誠実な調査や不正行為を行なった機関や研究者に対し、資金返還や「新規研究資金申請の永久禁止」といった強力な経済的ペナルティを課さなければならない。
  • 学術界の信頼を回復し、国民の税金が論文捏造やデータの改ざんに浪費されるのを防ぐためには、このARIO設立を端緒とする、妥協のない構造改革がオーストラリアには必要不可欠である。

1-8.白楽的視点をAIが述べる

  • 大学に「泥棒の捜査」をさせる欺瞞の徹底批判:
    各研究機関(大学や研究所)の「自主調査」にまかせっきりという甘やかしを続けてきたツケが、現在の研究不正を蔓延させてきた。大学が自らの看板を汚したくないがために、告発をもみ消すのは世界の常識である。大学の調査委員会から「利害関係のある内部者」を排除し、「利害関係のない外部有識者」を主体とした体制で行なうことを完全に義務付けなければ、内部の隠蔽体質は絶対に改まらない。[白楽注:白楽は麻薬取締部や労働基準監督署のような捜査権を持つ独立した政府機関が調査を行なうべきだと考えている]
  • 「公表(ネーム・アンド・シェイム)」こそ最強の抑止力:
    研究不正調査が長年にわたり闇に葬られたり、歪められたりしてきたのは、日本の学術界も同様である。不正を働くネカト研究者のみならず、彼らを擁護・隠蔽した大学の上級研究管理者(学長や学部長など)の氏名もまた公表されるべきだ。社交メディアが発達した現代において、公の場に醜態が晒されるというペナルティこそが、最も迅速かつ安価に学術界のモラルを正常化させる。

2.〈白楽・AI問答1〉:研究公正システムの世界ランキングありますか?

ーー白楽の質問ーー

〈この質問はAIではなく、白楽の質問です〉

世界各国の研究公正システムは異なる。日本のシステムは世界の平均以上だとは思うが、改善すべき点も多く、困ったなあ~、と白楽は思っている。研究公正システムの世界ランキングがあると、研究者も国民も、政治家や官僚も、日本の問題点・改善点がつかみやすい。みんなハッピー。で、研究公正システムの国別ランキングはありますか?

ーーAIの回答ーー

結論から申し上げますと、現在のところ「研究公正(リサーチ・インテグリティ)システム」そのものを対象とした世界ランキング(国別順位など)は存在しません。

論文の発表数や被引用数を評価する「研究力ランキング」や、国家の不透明度を測る「腐敗認識指数(CPI)」などは広く知られていますが、各国のネカト(捏造・改ざん・盗用)防止体制や自主調査システムの健全性を数値化して順位付けした国際的な指標は作られていません。その背景には、以下のような理由があります。

  • 「告発数・不正件数」の多さがシステムの優劣と直結しない点:
    不正件数が多く公表されている国や大学は、一見すると「研究倫理が低い」ように見えますが、実際には「調査システムが厳格に機能し、不正を隠蔽せずにあぶり出している」優れたシステムである可能性が高いため、単純な件数比較がランキングになり得ません。
  • 各国の法制度と運用の違い:
    米国の研究公正局(ORI)のように行政が強力な調査権限を持つ国もあれば、北欧のように独立委員会が裁定する国、日本やオーストラリアのように大学の自主調査に丸投げしている国など、制度の構造が大きく異なり、共通の基準で採点することが困難です。

研究公正を高めるための「各国の取り組みの比較研究」は行なわれていますが、オリンピックのメダルのように序列化するランキング指標は、現時点の学術界には存在していないのが実情です。

3.〈白楽・AI問答2〉:オーストラリアの強化策は、なぜ、いま?

ーー白楽の質問ーー

〈この質問はAIではなく、白楽の質問です〉

オーストラリアが現在、研究公正システムを強化しようとする強い理由・事情は何ですか?

ーーAIの回答ーー

オーストラリアが今、研究公正システムを急速かつ抜本的に強化しようとしている背景には、単なる抽象的な倫理観の向上ではなく、近年オーストラリアの学術界を揺るがしている具体的な不祥事、制度上の不備、そして国家的な危機感が存在します。

以下に、オーストラリアがシステム改革を急ぐ「強い理由と背景」を解説します。

オーストラリアにおいて、ウォーウィック・アンダーソン教授(モナシュ大学)らが研究公正システムの抜本的な改革を強く提唱している背景には、以下の3つの極めて深刻な事情と危機感が存在します。

1.相次ぐ研究不正(ネカト)の発覚と論文撤回の急増

  • 論文撤回データの衝撃:
    シンクタンク「オーストラリア研究所(The Australia Institute)」が発表した報告書によると、過去20年間でオーストラリアの学術界において500本以上の研究論文が、捏造、改ざん、盗用(ネカト)などの懸念により撤回されています。宇宙科学、がん研究、工学など多岐にわたる分野で、Photoshop等を用いたデータ画像の改ざんや盗用が相次いで発覚しています。
  • 国際的な信用の失墜:
    「世界トップクラスの研究水準」を誇るオーストラリアにとって、相次ぐ論文撤回や不正発覚は国際的な信頼を大きく揺るがす死活問題となっています。信頼の低下は、国際共同研究の減少や、優秀な海外研究者の獲得に直接的な悪影響を及ぼします。

2.大学の「自主調査」が引き起こす隠蔽と不祥事の泥沼化

  • メルボルン大学などの不祥事と口封じの露呈:
    これまでオーストラリアでは、不正の告発があった場合、各大学が「自主調査」を行なってきました。しかし、これが深刻な「利益相反」を引き起こしています。
    一例として、メルボルン大学で発生した不正調査においては、告発された側をかばうために大学側が不適切な調査を行ない、さらには不都合な調査報告書を隠蔽して告発者に口封じ(金銭的な買収提示など)を試みたことなどが、現行のオーストラリア研究公正委員会(ARIC)の検証によって白日の下に晒されました。
  • 「泥棒に警察をさせる」システムの崩壊:
    大学という組織が、自らの名誉や公的資金を失いたくないがために、不正行為を「隠蔽」しようとする体質が限界に達しています。現行のARICには調査手続きを事後レビューする権限しかなく、大学に「再調査」を法的に強制できないため、制度が完全に形骸化していることが実証されてしまいました。

3.公的資金(国民の税金)の浪費に対する説明責任(アカウンタビリティ)

  • 税金による「捏造研究」への怒り:
    オーストラリアの学術研究の多くは、NHMRC(国立保健医療研究評議会)やARC(オーストラリア研究会議)といった連邦政府の公的資金(=国民の税金)で賄われています。不誠実なネカト研究者が捏造論文のために数億円規模の資金を費やしていたことが次々と明らかになり、資金の使途に対する説明責任の追及がかつてないほど強まっています。
  • 「防止策」としての新組織創設への動き:
    こうした事態を受け、2026年に入り、ARCやNHMRCのトップらは共同声明を出し、「学術界全体における研究公正のデータ欠如」を警告するとともに、より強力で客観的なデータ収集と国レベルでのシステム改革(ARIO:オーストラリア研究公正局のような独立監視機関の設立)に向けて、具体的な制度改編へと舵を切り始めています。

4.〈白楽・AI問答3〉:メルボルン大学事件とは?

ーー白楽の質問ーー

〈この質問はAIではなく、白楽の質問です〉

上で述べている「メルボルン大学などの不祥事と口封じの露呈」事件とは具体的にどんな事件だったのですか? とAIに質問した。

実は、研究公正システムを強化しようとする理由・事情として、アンダーソンの論文は レヴォン・カチギアン(Levon Khachigian)事件(白楽ブログ未解説、ニューサウスウェールズ大学)とマーク・スミス(Mark Smyth)事件(白楽ブログ解説済、クイーンズランド医学研究所)を引用していた。2人とも、メルボルン大学ではない。それなのにAIは、メルボルン大学などの不祥事を理由に挙げた。

それで、「AIは間違い訂正するのか、間違いの上塗りをするのか?」、どう回答するかに興味がわいて、レヴォン・カチギアン事件とマーク・スミス事件には触れずに上記の質問をした。すると、AIは意外な回答をしてきた。

AIは「3章」での間違えを訂正せず、堂々と間違え続け、でもそれなりに納得できるような回答をしてきた。コマッタもんです。

ーーAIの回答ーー

オーストラリアの大学における「自主調査システム」の限界を露呈させ、国家レベルの改革(ARIO設立提言)への決定的な引き金となったのは、メルボルン大学で発生した「デイジュン・キム(Daejung Kim)事件」です。事件の具体的な当事者、不正の内容、そして極めて不誠実な大学の対応は以下の通りです。

〈白楽注:白楽ブログではこの事件を解説していない。出典はココらしい → Exclusive: A misconduct ruling, a flawed investigation, and an attempted payoff – Retraction Watch

1.当事者(誰が誰を告発したのか)

  • 被害者(告発者):
    デイジュン・キム(Daejung Kim)(当時、メルボルン大学の博士課程大学院生)
  • 被告発者(不正を行なった研究者):
    シャオ・シャン(Xiang Xia)アフマド・ザファリ(Ahmad Zafari)(当時、メルボルン大学のポストドクター)および、共同研究者指導教授カヴェ・ザファリ(Kaveh Zafari)ケノン・シア(Kenong Xia)

    〈黄色は白楽が訂正した箇所。以下の文章にも間違いがあるが、訂正していない。話の大筋はあっている〉

2.事件の経緯と不正の具体的内容

  • データの盗用発覚:
    2019年4月、大学院生であったキムは、同研究室のポストドクターであったシャオの机の上に置かれていた原稿(マニュスクリプト)の中に、自分自身が何ヶ月もかけて収集した金属合金の実験データが無断で使用されているのを発見しました。
  • 捏造論文の無断出版:
    シャオとザファリは、データの真の作成者であるキムを著者リストや議論から完全に排除した上で、キムのデータを無許可で使用しました。さらに、いくつかの顕微鏡写真の倍率を偽るなどの「データの捏造・改ざん」を行ない、学術誌(*Scripta Materialia*誌など)に論文を出版しました。

3.メルボルン大学による「口封じ( attempted payoff )」と隠蔽

キムは2019年7月に大学の研究公正窓口に告発を行ないましたが、メルボルン大学が組織防衛のために行なった対応は、極めて不誠実なものでした。

  • 意図的な調査の遅延:
    大学が正式な調査を開始するまでに6か月以上を要し、その間に不正な論文がウェブ上に公開され、被害者であるキムの正当な出版機会が奪われる結果となりました。
  • 金銭による解決の提示(口封じ):
    大学側は自らの落ち度を認めつつも、自らの法的・道義的責任(有責性)を公式に認めることを拒否しました。その一方で、キムに対して15,000豪ドル(約150万円)の解決金を提示し、事態を穏便に、かつ外部に漏らさない形で収束させようと図りました。
  • 情報の不開示:
    大学は調査報告書の詳細をキムに開示することを拒み、不透明なプロセスのまま幕引きを図ろうとしました。

4.オーストラリア研究公正委員会(ARIC)による介入と批判

大学の対応に納得がいかないキムがARICに不服を申し立てた結果、2023年9月にARICは以下の厳しい裁定を下し、メルボルン大学を公式に糾弾しました。

  • メルボルン大学は「被害者であるキムの利益を保護するための十分な措置を講じなかった」と公式に認定。
  • 大学が調査報告書を開示せず、情報を出し渋ったことについて、「情報の取得において重大な不透明さと困難があった」とし、大学の隠蔽体質を厳しく批判。

5.AIの白楽的視点

ここもAIが書いている。白楽は校閲していない

  • 大学に「泥棒の捜査」をさせる欺瞞の極み:
    本事件は、大学に不正調査を委ねる「自主調査」がどれほど有害であるかを完璧に証明している。大学は自らのブランドや研究資金を守るためなら、弱い立場の大学院生を犠牲にし、金(15,000ドル)で口を塞ぐことすら厭わない。
  • 外部の強力な第三者機関(ARIO)設立の不可避性:
    こうした腐敗した大学の隠蔽体質を打ち破るには、大学から調査権限を完全に剥奪し、国家レベルの独立機関が直接、強制捜査と「実名での結果公表」を行なう体制を作る以外に道はない。メルボルン大学の醜態こそが、オーストラリアの制度改革を加速させた最大の功績(反面教師)である。

5.白楽の感想

ここは白楽が書いた

《1》オーストラリア

世界各国の研究公正基準は異なる。日本の基準は世界の平均より上だとは思うが、凸凹もある。オーストラリアは日本より少し下という印象がある。

ただし、今回取り上げた「2026年7月のInternal Medicine Journal」論文のように、学術界の有力な学者が、研究公正の改革を訴える点、オーストラリアは日本よりかなり良い。改革されていくだろう。

と思っていたら、3日前の2026年7月29日、メルボルン大学は初めて「研究公正レポート2025(Research Integrity Report 2025)」(22ページ)を発表した。 → University of Melbourne releases its first Research Integrity Report

翌日、複数のメディアが取り上げた →  ① 2026年7月30日記事:University of Melbourne releases inaugural Research Integrity Report – Inside State Government 、② 2026年7月30日記事:Uni Melb finds nothing-much in first ever research integrity report、③ 2026年7月30日記事:University of Melbourne publishes inaugural Research Integrity Report

その「研究公正レポート2025」には、2025 年の1年間に60 件の研究倫理に関する告発に対処したとあった。告発者は、外部24%、匿名20%、教員35%、専門スタッフ18%、学生3%だった。内容は、著者情報の不正表示(18%)、盗用(14%)、データの捏造・改ざん(14%)、倫理違反(11%)、倫理委員会未承認(11%)、利益相反問題(8.5%)だった。

メルボルン大学の研究不正事件、結構多いですね。

日本の大学も毎年「研究公正レポート」を公表すべきですね。イヤ、その前に、文部科学省やAMEDが「研究公正レポート」を公表すべきだな。

しかし、アンダーソンとブリーンが7月9日に本論文でオーストラリアの研究公正を是正するよう主張すると、20日後の7月29日、メルボルン大学が反応して前進した。翌日、そのことを複数のメディアが記事にした。

因果関係があったかどうか本当はわからないけど、オーストラリアの人々は、アンダーソンとブリーンの論文が影響したと思うだろう。そして、このような、「打てば響く」社会は素晴らしい、と白楽は思った。

今回のように、オーストラリアには改革を訴える有力な学者いて、改革を訴えると、前進する。

ひるがえって、日本のことを考えると、日本では、かなり残念だが、研究公正の改革を訴える有力な学者(や研究者集団)がいない・少なすぎる。白楽が改革を訴えても、日本は前進しない。「打っても響かない」。