ケイ・デイヴィス(Kay Davies)(英)

/2026年10月3日(土)掲載/

英国の分子生物学者でオックスフォード大学名誉教授のケイ・デイヴィス(Kay Davies、当時60代後半から70代)の複数の研究論文が、画像重複などのデータ改ざん疑惑がPubPeer等で指摘された。さらに、彼女が学術誌『Human Molecular Genetics』の編集長として、他の研究者の研究不正疑惑を隠蔽・擁護した疑いも持たれている。オックスフォード大学は予備調査を行なったが、「研究不正の証拠はない」として不問に付し、本格的な調査をしなかった。現時点で撤回論文数は0本である。

〈AI使用:記事はGeminiを使用し、白楽が画像添付と校閲(加筆・訂正)をした。ただ、Geminiの記述に間違いがあり、白楽にも間違いがあり、訂正したが、まだ、間違いはある(多分)〉

1. 【導入】

ケイ・デイヴィス(Kay Davies、Kay E. Davies、Dame Kay Davies、写真出典)は、英国の分子遺伝学および神経科学の権威で、オックスフォード大学の教授やウェルカム・トラストの副議長などの要職を歴任した高名な女性研究者である。

しかし、彼女の複数の論文に、ウェスタンブロットや組織画像の使い回し、不自然な画像操作(改ざんの疑い)が指摘されている。

また、自身が編集長を務める学術誌で、他者の不正データを見逃し、告発者を無視して不正を実質的に隠蔽・擁護したという疑惑も加わり、「Photoshop Empire(フォトショップ帝国)の指揮官」と比喩されるなど、学術界のガバナンスと研究公正の観点から激しい批判を浴びた。

2. 【学歴・職歴・研究不正歴】

  • 1951年4月1日(0歳):英国・スタッフォードシャーにて出生。

【学歴】

  • 1973年(22歳推定):オックスフォード大学サマーヴィル・カレッジ(Somerville College, Oxford)にて、化学の学士号(BA)を最優秀(First Class Honors)で取得。

  • 1976年(25歳推定):オックスフォード大学(University of Oxford)にて、生物化学の博士号(DPhil)を取得。

【職歴】

  • 1976年〜1977年(25〜26歳推定):フランス・パリのジャック・モノー研究所(Institut Jacques Monod)にて博士研究員(ポストドクター)。

  • 1977年〜1979年(26〜28歳推定):イタリア・ナポリの国際遺伝学・生物物理学研究所(IGBP)にて博士研究員。

  • 1979年〜1984年(28〜33歳推定):英国・ロンドン大学セント・メアリーズ病院医学校(St Mary’s Hospital Medical School)の生物化学部門にて研究員。

  • 1984年〜1995年(33〜44歳推定):オックスフォード大学ジョン・ラドクリフ病院の分子医学研究所(IMM)にて、MRC(医学研究評議会)シニア臨床科学者および研究グループリーダーを務める。

  • 1995年〜1998年(44〜47歳推定):ロンドン大学インペリアル・カレッジ(Imperial College London)にて、分子遺伝学の教授(Chair)に就任。

  • 1998年(47歳推定):オックスフォード大学に復帰し、人類遺伝学の教授(Dr Lee’s Professor of Anatomy)に就任。

  • 1999年〜2011年(48〜60歳推定):オックスフォード大学の解剖学・遺伝学・免疫学部門(のちのDPAG)の部門長(Department Head)を歴任。

  • 2008年〜2017年(57〜66歳推定):世界最大規模の研究助成団体「ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)」の理事(Governor)を務め、2013年からは副議長(Deputy Chair)を兼任。

  • 2012年(61歳推定):オックスフォード大学・MRC機能ゲノミクスユニット(Functional Genomics Unit)のディレクターに就任。

  • 2019年(68歳推定):ウェルカム・トラストの理事会から完全に退任。
  • 2021年(70歳推定):オックスフォード大学・名誉教授(Emeritus Professor)となる。

【研究不正歴】

  • 2008年(57歳推定):自身が編集長を務める学術誌『Human Molecular Genetics』(HMG)において、アンドレア・バラビオ(Andrea Ballabio)らのデータ操作論文を擁護・掲載した疑い。

  • 2011年(60歳推定):カトリン・メドラーらの不正が疑われる論文について、HMG誌編集長として撤回を拒否し、データを「問題ない」と判断。

カトリン・メドラー(Kathrin Maedler)(ドイツ)

  • 2018年(67歳推定):デイヴィス自身の研究室から発表された『Kennedy et al. 2018』の論文に、筋肉繊維画像の重複利用がPubPeer等で指摘される。

  • 2019年(68歳推定):ウェルカム・トラストの理事会から完全に退任。同年10月、ネカトハンターのレオニッド・シュナイダーが彼女の画像操作と隠蔽疑惑を包括的に告発。オックスフォード大学側は「調査の必要なし」として幕引きを図る。

  • 2020年(69歳推定):OUP(オックスフォード大学出版局)およびデイヴィスが、別の告発(ボローニャ大学関連のHMG誌掲載論文)に対しても、生データを確認したとして事実上の隠蔽処理を行なったことが露呈。

3. 【発覚・調査の経緯】

《1》研究人生

  • 生まれ育った国:英国(イギリス)

  • 学位取得の大学:オックスフォード大学(University of Oxford)

  • 研究上の功績:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の世界的権威で、研究功績は以下のように要約できる。

    • 診断法の開発と遺伝子マッピング:1980年代前半、DMDの保因者診断や胎児診断を可能にする最初のDNAマーカー(分子標識)を開発し、原因遺伝子のマッピングに多大な貢献をした。

    • ユートロフィン(Utrophin)の発見と治療への応用:DMDで欠損している「ジストロフィン」と酷似した機能を持つ代替タンパク質「ユートロフィン」を発見した。このユートロフィンを活性化させることで、ジストロフィンの欠損を補うという革新的な治療アプローチ(アップレギュレーション戦略)を提唱・先導した。

  • 獲得研究費の総額:数百万ポンド(数億円)以上(MRC、ウェルカム・トラスト等から巨額の資金を獲得しているが、具体的な生涯総額の明細は公表されていない)。

  • 受賞した賞:大英帝国勲章(DBE、Dame Commander)、王立協会フェロー(FRS)、医学アカデミーフェロー(FMedSci)など多数。

  • 不正時の所属と地位:オックスフォード大学(University of Oxford)教授、『Human Molecular Genetics』誌・共同編集長、ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)副議長(2017年まで)。

  • 不正発覚時の所属と地位:オックスフォード大学・名誉教授(Dr Lee’s Professor of Anatomy名誉職)。

《2》研究不正発覚と調査

  • いつ、誰が、どのように不正を見つけたか:

  • 2013年、「PubPeer」で問題点が指摘されたのが最初だと思われる。2017年頃から、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)や、研究不正追及ウェブサイト「PubPeer」の匿名ユーザーらによって、デイヴィスが共著者となっている複数の論文の画像(ウェスタンブロットのバンドや顕微鏡写真)に、回転・反転を伴う不自然な重複(コピペ)があることが見出された。

  • 大学は調査したか?:

    オックスフォード大学の事務局長(Registrar)であるジリアン・エイトケン(Gillian Aitken、写真出典)宛てに告発が行なわれ、大学の「研究における学問的誠実性に関する行動規範」に基づいて予備的なレビューが実施された。

  • 調査の結論:

    大学側は、デイヴィスが連絡著者(corresponding author)ではない古い論文であることや、他の研究者からの助言を盾に「デイヴィス教授に研究不正の証拠は認められない」と結論づけ、本格的な本調査へ移行することを拒否した。

  • 大学の処分:

    大学による不正の認定がなされなかったため、大学からの処分は行なわれていない。

  • 調査報告書を公表したか。公表した場合のサイト:

    公式な調査報告書は作成・公表されていない。大学から告発者への書簡による回答のみであり、大学公式ウェブサイト上での公開特設ページ等は存在しない。

《3》研究不正の具体的内容

指摘された主な問題論文は以下の通りである。

  • 論文1:Kennedy et al., Human Molecular Genetics (2018)

    • 具体的内容:筋肉組織の画像において、異なるマウス由来とされるデータ間で、酷似した筋肉繊維のパターンが繰り返し使用されている(画像の使い回し・重複)ことが指摘された。これに対しデイヴィスは「偶然の一致である」という極めて不自然な弁明をした。

      以下の図2Dは画像の使い回し・重複。画像出典:https://pubpeer.com/publications/810F30FE8E08713ADAEC6B9BC1650F

      デイヴィスが「偶然の一致である」というので、「偶然」はあり得ないと以下、Actinopolyspora biskrensisがさらに指摘した。

  • 論文2:デイヴィスの論文ではない。自身が編集長を務める『Human Molecular Genetics』 誌に掲載されたアンドレア・バラビオ(Andrea Ballabio)らの2008年の論文。

    • 具体的内容:放射性物質を用いた結合アッセイの画像やRT-PCRのゲル画像において、Photoshopを用いてバンドが引き伸ばされたり、コントラストが調整された上で複製(コピー&ペースト)された痕跡が指摘された。しかし、デイヴィスは編集長権限でこれらの「生データを確認し問題なかった」として、撤回を退けた。

      以下の図 5の赤枠のバンドと青枠のバンドはコピー&ペーストされたもの。画像出典:https://pubpeer.com/publications/F9A8EDECC3725C150BCB3661991FB9

      以下の図2Aの赤枠のバンドは赤枠で示したように切断されていて、バンドはコピー&ペーストされたもの。画像出典:https://pubpeer.com/publications/F9A8EDECC3725C150BCB3661991FB9

4. 出版論文数・撤回論文数・疑惑論文数

  • 出版論文数:約190報(PubMed登録ベース)。

  • 撤回論文数:1論文。「撤回監視(Retraction Watch)」で検索すると、「2022年のJournal of Clinical Virology 」論文が懸念表明、その後、2025年5月15日に撤回された。

  • 疑惑論文数:「パブピア(PubPeer)」では、1998~2022年(47~71歳)の22論文にコメントがあった。

5. 【提言】

    1. ジャーナル編集長の利益相反および身内擁護の排除:

      自身の研究室の論文や親しい共同研究者の論文が自誌に投稿された際、またはそこに疑義が生じた際は、編集長自身が審査や最終判断に一切関与できないような、厳格なファイアウォール(相互遮断体制)を学術誌の運営体制に組み込むべきである。

    1. 大学から独立した外部調査機関の設置:

      オックスフォード大学のような有力大学が、自校の著名なスター科学者(Dameの称号を持つ者など)を保護するために予備調査で疑惑を揉み消す悪弊を断つ必要がある。

      大学のガバナンスから完全に独立して強制調査権を持つ第三者機関を設立し、外部の目で透明性のある精査を行なうべきである。

    1. 研究不正を防を防ぐ方法:

      今回の事件を防ぐには、オックスフォード大学出版局(OUP)および学術誌の発行母体が、告発があった段階で編集長(デイヴィス)個人の「生データを確認したから調査を終了する」という密室的な判断に依拠するのを止め、第三者の画像解析専門家(Elisabeth Bik氏らのような専門家)に画像のデジタル検証を委託し、その結果を公開することを義務付けるべきだ。

6. 【白楽の感想】

★脇道

デイヴィス事件の内容とは関係ない話です。

この頃、白楽記事を書くのにAIを使用している。便利である。それに、多分、従来の白楽記事より正確だと思う。

今回はGemini使用だが、Anthropic Claudeの方を多用している。

ケイ・デイヴィス(Kay Davies、写真出典)

7. 【主要情報源】