スレシュ・ラダクリシュナン(Suresh Radhakrishnan) (米)

ワンポイント:インド出身の米国研究者が9年間の13論文を撤回(多分、データねつ造・改ざん)

アーユルヴェーダ:インドの伝統的医学。出典https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/bb/Nagarjuna.gif

【概略】
スレシュ・ラダクリシュナン(Suresh Radhakrishnan、本人写真未発見)は、米国・メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)・助教授で、医師ではない。専門は免疫学だった。

2010年(40歳?)、ボスが告発し、メイヨー・クリニックがねつ造・改ざんと判定した。2002~2010年の9年間の13(~17)論文が撤回された。

2015年12月13日現在、「論文撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文数は13報で、撤回論文ランキングの第28位である(研究者の事件ランキング)。The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch at Retraction Watch

mayo-clinic-v4米国・メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 研究博士号(PhD)取得:インドの国立免疫研究所
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1970年1月1日とする。
  • 現在の年齢:47 歳?
  • 分野:免疫学
  • 最初の不正論文発表:2002年(32歳?)
  • 発覚年:2010年(40歳?)
  • 発覚時地位:メイヨー・クリニック・助教授
  • 発覚:ボス
  • 調査:①メイヨー・クリニック・調査委員会
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:「論文撤回監視(Retraction Watch)」は撤回論文数を13報としている
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:解雇

【経歴と経過】
主な出典:Suresh Radhakrishnan’s Online Resume

  • 生年月日:不明。仮に1970年1月1日とする。インドで生まれる
  • 1992年(22歳?):インドのマドラス・ベタリナリー大学(Madras Veterinary College)を卒業。獣医学士
  • 1994年(24歳?):インドの獣医学研究所(Indian Veterinary Research Institute, Bareilly, India)で獣医学修士号取得
  • 2000年(30歳?):インドの国立免疫研究所(National Institute of Immunology, New Delhi, India)で研究博士号(PhD)取得
  • 2001年4月(31歳?):米国・メイヨー・クリニックのポスドク(Senior Research Associate)。後に助教授
  • 2010年(40歳?):不正研究が発覚する
  • 2010年5月(40歳?):メイヨー・クリニックから解雇

【不正発覚の経緯と内容】

larry-pease-103087842001年4月、スレシュ・ラダクリシュナン(Suresh Radhakrishnan)はメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)のラリー・ピーズ(Larry Pease、写真出典)研究室で研究を始めた。

2002年、ラダクリシュナンは、患者の血清中の抗体が、免疫系の樹状細胞(dendritic cells)の機能を刺激し免疫系を高めることを見つけた。抗体は、ヒトのIgM 抗体で、sHIgM12 (またはB7-DCXAb)と命名した。

Dendritic_cell1つの樹状細胞(dendritic cells)。写真:Wikipedia, under creative commons.

この抗体sHIgM12 は樹状細胞表面のB7-DCに結合し、結合した樹状細胞はT細胞(免疫細胞)を活性化した。

この発見で、ピーズ研究室は、このIgM 抗体で癌ワクチンを開発する研究を研究室の主要なテーマに切り替えた。

2010年、ところが、事件に発展した。

BobN_400x400メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)広報官のロバート・ネリス(Robert Nellis、写真出典)によると、以下のようだ。

2010年、9年間もの間、このIgM 抗体で免疫系を活性化する研究成果をあげ、臨床試験を開始するまでに研究が育った。しかし最近、それまでピーズ研究室が発表した論文を、ピーズ研究室の別の研究員が再現できなくなった。

ピーズは自分で調べた。そして、研究員のスレシュ・ラダクリシュナン(Suresh Radhakrishnan)が研究ネカトをしていると確信した。それで、メイヨー・クリニック当局に告発した。

メイヨー・クリニックは調査の結果、スレシュ・ラダクリシュナンに不正があったと結論した。研究所はラダクリシュナンを解雇した。

研究室は再現できないすべての論文を撤回するとした。

臨床試験も中止になった。Monoclonal Antibody Therapy in Treating Patients With Stage IV Melanoma – Full Text View – ClinicalTrials.gov

ラダクリシュナンは、「自分はデータねつ造・改ざんをしていない」と否定している。非難されるような不正をしていないと主張している。

2010年7月14日、ラダクリシュナン自身が「The Scientist」誌に寄稿している。実験が再現できなくなったのは確かだが、自分がデータねつ造・改ざんしたのではない。研究チームが過去の実験をどうして再現できないのか、IgM 抗体の活性がどうして失われたのかわからないが、「生物学では実験が再現できない理由は複数ある」。考えられる理由の1つは、抗体産生細胞が変異したのではないかと述べている(Opinion: Erase science’s blacklist | The Scientist Magazine®)。

【論文数と撤回論文】

2015年12月13日、パブメドパブメド(PubMed)で、スレシュ・ラダクリシュナン(Suresh Radhakrishnan)の論文を「Suresh Radhakrishnan[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2010年の9年間の24論文がヒットした。

「Radhakrishnan S[Author]」で検索すると、1953~2015年の445論文がヒットした。

2015年12月13日現在、撤回論文を「Radhakrishnan S[Author] +retract*」で検索すると、2002~2010年の13論文がヒットした。全部、ラリー・ピーズ(Larry Pease)が最終著者になっている。

【白楽の感想】

《1》本人が「The Scientist」誌で説明

事件が公表された約2か月後(2010年7月14日)、ラダクリシュナン自身が、「The Scientist」誌で状況を説明している点は興味深い(【主要情報源】③)。

執筆する本人も興味深いが、執筆させる「The Scientist」誌もなかなかエライ。そして、そこに読者からのたくさんのコメントが付いている。そのコメントのいくつかにラダクリシュナン自身が、返事を書いている。

このシステムは、新しい動きとして興味深い。

【主要情報源】
① 2010年5月25日のアラ・カツネルソン(Alla Katsnelson)の「ネイチャー」記事:Promising therapy scuttled by alleged misconduct : News blog
② 2010年5月26日のジェフ・アキスト(Jef Akst)の記事:Mayo Clinic Admits Years Of Fraudulent Research
③ 2010年7月14日、ラダクリシュナン本人の「The Scientist」記事: Opinion: Erase science’s blacklist | The Scientist Magazine®
④ 2010年5月19日、「Medical Writing, Editing & Grantsmanship」記事:More Retractions, More Misconduct
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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