スコット・ウェーバー(Scott Weber)(米)


ワンポイント:「iThenticate」の2011年度「盗用」ランキングの第3位

【概略】
無題スコット・ウェーバー(Scott J.M. Weber、写真出典)は、米国・ピッツバーグ大学看護学大学院(University of Pittsburgh School of Nursing)・助教授で、医師ではない。専門は看護学だった。

2009年(推定)、大学の研究公正官に手紙で盗用があると通報された。

2011年10月7日、研究公正局はウェーバーをクロと発表した。研究ネカトは、ねつ造、改ざんもあるが、盗用が中心である。

「iThenticate」の2011年度「盗用」ランキングの第3位である(Best of 2011 Plagiarism Events)。

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  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:米国・ボストン大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1956年頃。仮に、1956年1月1日とする
  • 現在の年齢:61 (+1)歳
  • 分野:看護学
  • 最初の不正論文発表:1995年(39歳)
  • 発覚年:2009年(53歳)
  • 発覚時地位:ピッツバーグ大学看護学大学院・助教授
  • 発覚:研究室外からの通報
  • 調査:①ピッツバーグ大学看護学大学院・調査委員会。②研究公正局。~2011年10月7日
  • 不正:盗用、ねつ造、改ざん
  • 不正論文数:撤回論文は5報
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 結末:辞職(解雇?)

【経歴と経過】

  • 生年月日:1956年頃。仮に、1956年1月1日とする
  • xxxx年(xx歳):米国・ボストン大学(Boston University)で修士号と研究博士号(PhD)取得。専攻は教育心理学
  • xxxx年(xx歳):米国・ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)で修士号取得。専攻は看護学
  • xxxx年(xx歳):米国・デュケイン大学(Duquesne University)・助教授
  • 1995年頃(39歳頃):同・健康管理システム学科・学科長補佐(assistant chairman of Department of Health Management Systems)
  • 1995年(39歳頃)または2003年(47歳):ピッツバーグ大学看護学大学院(University of Pittsburgh School of Nursing)・助教授
  • 2007年(51歳):ピッツバーグ大学国民健康大学院(Graduate School of Public Health’s Department of Behavioral and Community Health)・助教授
  • 2011年(55歳):不正研究が発覚する
  • 2011年(55歳):ピッツバーグ大学看護学大学院を辞職(解雇?)
  • 20xx年(xx歳):ウォールデン大学(Walden University)・教員
  • 20xx年(xx歳):ウォールデン大学を辞職(解雇?)

【不正発覚の経緯と内容】

★概要51andFwvCdL__SX341_BO1,204,203,200_

学術出版倫理の日本の第一人者である山崎茂明・教授の2015年の著書『科学論文のミスコンダクト』がウェーバー事件を解説している。その日本語解説を最初に引用しよう。Scott Weber 1――――――――

★最初からはじめよう

2009年(推定)、学術誌(Journal of Child and Adolescent Psychiatric Nursing)のCM201010110110069H3エリザベス・ポスター(Elizabeth Poster、写真出典)編集長は、ウェーバーの盗用を指摘したメールを受け取った。それで、盗用検索ソフトの「iThenticate」で調査すると、3論文に盗用が見つかった。後日、3論文を撤回した。

ポスター編集長は、ピッツバーグ大学看護学大学院の研究公正官に連絡した。大学は調査に入り、かつ、研究公正局も関与することになった。

2011年10月7日、研究公正局はウェーバーをクロと判定した報告書を発表した(【主要情報源】①)。

結局、ねつ造、改ざんも見つかったが、2011年10月7日、研究公正局の報告(【主要情報源】①)に示された「論文2報、研究費申請書2書類」の盗用だけを以下にリストする。

(1)2004年の別人の論文の文章を90%以上盗用して投稿。
(2)1993年の別人の論文の文章を66%以上盗用して投稿。
(3)1993年の別人の論文の文章を引用せずに、相当量を逐語的に(copying substantial word- for-word portions of the text)、研究費申請書2書類で盗用

★盗用の具体例:(1)2004年の別人の論文の文章を90%以上盗用して投稿。

Mufson, L., Dorta, K.P., Wickramaratne, P., Nomura, Y., Olfson, M., Weissman, M.M. 「A randomized effectiveness trial of interpersonal psychotherapy for depressed adolescents」、Arch Gen Psychiatry 61(6):577-84, 2004 June

上記の他人の論文を90%以上も盗用して、

「A randomized effectiveness trial of psychiatric-mental health nurse practitioner-administered interpersonal psychotherapy for sexual minority adolescents with depression in primary care clinics」

のタイトルで、Journal of the American Academy of Nurse Practitioners (JAANP) に投稿した。

★盗用の具体例:(2)1993年の別人の論文の文章を66%以上盗用して投稿。

Cho, M.J., Mościcki, E.K., Narrow, W.E., Rae, D.S., Locke, B.Z., Regier, D.A. 「Concordance between two measures of depression in the Hispanic Health and Nutrition Examination Survey.」、Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 28(4):156-63, 1993 August

上記の他人の論文を66%以上も盗用して、

「Assessing the diagnostic predictive power of a screening tool for depression: Concordance between the CES-D and DIS in the Parent Identity Survey」

のタイトルで、Journal of GLBT Family Studiesに投稿した。

★盗用の具体例:(3)1993年の別人の論文の文章を引用せずに、相当量を逐語的に(copying substantial word- for-word portions of the text)、研究費申請書2書類で盗用

研究費申請書なので、アクセス不可。省略。

★他の盗用の具体例

2011年11月7日のデブラ・エルドレイ(Debra Erdley)の「TribLIVE」記事から抜粋しよう(【主要情報源】③)。

rider-PatCristデュケイン大学でウェーバーの同僚だったパトリシア・クリスト教授(Patricia Crist、写真出典)が昔の話をしてくれた。

1995年、ウェーバー助教授がデュケイン大学を辞めてピッツバーグ大学看護学大学院に移って間もなく、1994年のパトリシア・クリストの論文をウェーバーが盗用して1995年の「Journal of the American Health Information Management Association」誌に投稿したのが発覚したのである。

当時、ウェーバーは盗用がばれて、デュケイン大学から懲戒処分を受けたのに、それから16年後に同じような盗用事件を起こして解雇されている。ウェーバーは研究規範のなんたるかを学ばなかったのでしょうかね。また、ピッツバーグ大学看護学大学院はウェーバーを雇用するとき、盗用の前科を知らなかったのでしょうかねえ。

パトリシア・クリストの1994年論文を以下に示す。着色部分が次のウェーバーの論文原稿と同じ。
Responses to the high costs of education, coupled with the extremely high demand for occupational therapists, have produced a financial opportunity for students and a recruitment strategy for employers that is referred to as the preemployment agreement. Employers are increasingly more willing to invest up front in future practitioners to ensure that clinical positions are filled and service provision available. Preemployment agreements have become a means for students to complete training that might have been financially impossible otherwise.

ウェーバーの1995年論文原稿
Responses to the high cost of education, coupled with the high demand for health information management professionals, have produced a financial opportunity for students and a recruitment strategy for employers that is referred to as a preemployment agreement. Employers are increasingly more willing to invest upfront in future practitioners to ensure that administrative positions are filled and service is provided. Preemployment agreements in HIM are becoming a means for students to complete training that might otherwise be financially impossible.

【論文数と撤回論文】

2015年11月4日、パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、スコット・ウェーバー(Scott Weber)の論文を「Scott Weber [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2015年までの14年間の79論文がヒットした。2015年の論文は別人のだろう。

所属をUniversity of Pittsburghと指定し、「(Scott Weber [Author]) AND University of Pittsburgh[Affiliation]」で検索した。2003- 2010年の8年間の29論文がヒットした。

2015年11月4日現在、2007-2010年の5論文が2011年6月~8月に撤回されている。全部単著である。

  1. Nursing care of families with parents who are lesbian, gay, bisexual, or transgender.
    Weber S.
    J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2010 Feb;23(1):11-6. doi: 10.1111/j.1744-6171.2009.00211.x. Review.
    Retraction in: J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2011 Aug;24(3):196.
  2. Results of psychometric testing of the RADS-2 with school-based adolescents seeking assistance for sexual orientation and gender identity concerns. Part 2: Research brief.
    Weber S.
    J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2009 Aug;22(3):126-31. doi: 10.1111/j.1744-6171.2009.00187.x.
    Retraction in: J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2011 Aug;24(3):196.
  3. Depressive illness in teens and preteens and effectiveness of the RADS-2 as a first-stage assessment. Part 1: Descriptive paper.
    Weber S.
    J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2009 Aug;22(3):120-5. doi: 10.1111/j.1744-6171.2009.00185.x. Review.
    Retraction in: J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2011 Aug;24(3):196.
  4. Treatment of trauma- and abuse-related dissociative symptom disorders in children and adolescents.
    Weber S.
    J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2009 Feb;22(1):2-6. doi: 10.1111/j.1744-6171.2008.00163.x. Review.
    Retraction in: J Child Adolesc Psychiatr Nurs. 2011 Aug;24(3):197.
  5. Critical care nurse practitioners and clinical nurse specialists interface patterns with computer-based decision support systems.
    Weber S.
    J Am Acad Nurse Pract. 2007 Nov;19(11):580-90. Review.
    Retraction in: J Am Acad Nurse Pract. 2011 Jun;23(6):331.

【白楽の感想】

《1》盗用5論文は全部単著

研究ネカト事件としては平凡な事件である。撤回論文は5報だが、5報全部単著である。現代では単著論文は要注意かもしれない。

《2》研究ネカト前科者は大学教員不適格者

1995年の盗用が発覚し、懲戒解雇(?)など、つらい思いをしたのに、スコット・ウェーバー(Scott Weber)は、その後、何度も盗用をしてしまう。発覚しても研究界から追放されなかったので、甘く見たのだろうか?

日本では研究ネカト前科者を大学教員から排除する思想がないので、大学は自分の大学教員に研究ネカト前科者がいるのを承知し、許容している。従って、研究ネカト前科者の大学教員が日本には多数いる。しかし、米国では研究ネカト前科者は大学教員不適格者なので、基本的に、いない。

日本も、研究ネカト前科者は大学教員不適格者とすべきでしょう。

研究ネカト前科者を前科者と知らずに(ですよね)、教員に採用したピッツバーグ大学も困ったものです。

【主要情報源】
① 2011年10月7日、研究公正局の報告:
NOT-OD-12-002: Findings of Research Misconduct
② 「論文撤回監視(Retraction Watch)」記事群:You searched for Scott Weber – Retraction Watch at Retraction Watch
③ 2011年11月7日のデブラ・エルドレイ(Debra Erdley)の「TribLIVE」記事:Repeat of plagiarism shocks professor | TribLIVE#axzz3q8NoHLSK#axzz3q8NoHLSK#axzz3q8NoHLSK
④ 2011年10月6日の「UPI.com」記事:Professor given sanctions for plagiarism – UPI.com
⑤  2014年、山崎 茂明、「連載 論文発表の倫理 看護分野の撤回論文から見たミスコンダクト」、あいみっく、Vol.35(No.4)、93-95.
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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