2.盗用


この文章は、「盗用 – Wikipedia」を大幅に利用している。

「盗用」は、小説、短歌など文芸作品、ジャーナリズムでの「盗作」「剽窃」と別物と考える。ここでは、「盗作」「剽窃」を対象としない。

【盗用の概略】
盗用(とうよう、英: Plagiarism)は、3つの「不正研究(research misconduct)」の内の1つである。大学教員、研究者・技術者、高校生・学部生・大学院生が「してはいけない」致命的行為である。なお、他の2つは、「ねつ造(fabrication)」と「改ざん(falsification)」である。

【盗用は犯罪ではない】
参議院文教科学委員会調査室の平田容章が述べるように、「盗用」は、通常、法が禁じる犯罪には該当しない。「著作権及び著作者人格権」を侵害するなど顕著な場合のみ法に抵触する(かもしれない程度である)。

  • 著作権及び著作者人格権を侵害した場合、著作権法上の差止請求、損害賠償請求、名誉回復等に必要な措置の請求を受け、罰則を科される可能性がある。
  • ただし著作権法の保護の対象は「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条)であるため、他の研究者等の研究成果やアイデアに基づく記述が論文にあったとしても、他者の著作物と同一又は実質的に同一の表現である、又は翻案であると認められない限り、著作権及び著作者人格権の侵害にはならない。— 平田容章[

法が禁じていないので、各機関が規則・規範・方針として制定している。

なお、特許権意匠著作権など知的財産権を侵害する盗用は、「法・条例違反」であり、ここでは論じない。

【科学・技術・学術での盗用】
科学・技術・学術での盗用は、学界の不祥事英語) (Academic dishonesty)の1つである。科学・技術・学術に関して発表・提出した文書(学術出版、論文、書籍、特許、口頭発表、研究費申請書、人事書類、レポートなど)に、他人のデータ、図、表、画像、文章、研究結果、コンピュータ・ソースコードなどを、あたかも自分の研究成果として得たかのように利用することが「盗用」である。

「他人のデータ・・・」と書いたが、「自分のデータ・・・」を再使用しても「盗用」と認定される場合もある。後で論じる(予定)。

上記のように定義したが、現実の線引きは曖昧で、妥当性の判断・判定は揺れ、「盗用」と断定するのは至難である。

とはいえ、科学・技術・学術に関するすべての人(大学教員、研究者、技術者など)が「してはいけない」致命的行為である。分野は理系に限定されず、法学、文学などから体育、芸術などすべての分野の大学教員、研究者、技術者が「してはいけない」ことになっている。

【教育の場での盗用】
教育の場での盗用は、高校生・学部生・大学院生が、授業で提出するレポート、公的文書(奨学金申請書・入学願書・就職用書類など)などが対象である。また、学部生の卒業論文、大学院生の修士論文・博士論文、学部生・大学院生の研究レポート・学会発表・学術論文などの研究関連文書が対象である。

これらの文書に、他人の文章、データ、図、表、画像、研究結果、コンピュータ・ソースコードなどを、あたかも自分が書いた・作った・得たかのように使うことが「盗用」である。

但し、学生実験などの共同作業で、チーム内の他人が共同作業として得たデータ、図、表、画像、研究結果、コンピュータ・ソースコードなどを自分(のチーム)の成果としてレポートに使用するのは「盗用」にあたらない。

教育の場での盗用は、米国ではカンニングと並ぶ重大な学則違反で、高校生・学部生・大学院生が大きな盗用をすれば、ほぼ退学処分になる。

日本では、学部生・大学院生が研究成果を外部に発表する研究関連文書(研究レポート・学会発表・学術論文)は問題視されたが、学内提出レポートや卒業論文レベルだと、従来、問題視されなかった。高校ではまったく問題視されなかった。

教育の場での盗用は、カンニングと同レベルの「してはいけない」行為だが、日本の高校・大学は「盗用」を充分検討してこなかったので、学則で禁止していた高校・大学は少なかった。従って、「してはいけない」規則として高校生・学部生・大学院生に教育と注意を十分には喚起してこなかった。しかし、最近、学則で禁止する事項として取り上げられ、「けん責」、「停学」、「退学」処分されるようになった。

【引用すれば盗用ではない】
日本の著作権法では、科学・技術・学術に関して発表・提出した文書に、引用すれば、他人の著作物を利用できる。科学・技術・学術での規則・規範・方針としても、引用すれば利用してよいことになっている。

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。・・・・・・著作権法 | 公益社団法人著作権情報センター

ただ、どういうわけか、マスメディアでは「無断引用」という撞着語法(どうちゃくごほう)を使う悪弊がいまだにある。科学・技術・学術に関して発表・提出した文書に他人の著作物を利用する場合、「本人に断って」引用することはあり得ない。ほぼ、100%、“無断引用”だが、引用すれば「無断」ではない。グーグルで検索すると「無断引用」という用語の使用をやめるべきと指摘されている(例1例2例3、・・・・・・)。

【コンピュータが盗用を一変】
科学・技術・学術での盗用は、昔から問題視されていたが、最近、「盗用」が“脚光”を浴びるようになったのは、どうしてか?

1つは、「1‐1‐3.日本版・研究公正局の設置」で述べたように、1980年代に確立した米国の研究者倫理システムを、2006年頃からようやく日本が導入し始めたことがある。

もっと大きな変化は、コンピュータの普及である。

文書のコピー・アンド・ペーストが容易にできるようになり、自分で文章を書かず、図表を作らず、データを得ず、他人の文章・図表・データをコピー・アンド・ペーストして、自分のレポートや論文を作成・提出する高校生・学部生・大学院生が増えてきたことがある。これでは、教育が成り立たない。対策を立てはじめた。

さらには、レポート代行業者(例1例2例3)が出現し、学部生・大学院生の代わりにレポート・論文の作成(指導、協力という名目)を有料で請け負う業者が繁盛してきた。これは、教育の破壊につながるので、文部科学省は調査し、(悪質)業者を排除すべきである。

そして、もう1つ、無料・有料の盗用検出ソフトが現れ、科学・技術・学術での文書の盗用を容易に検出できるようになったことがある。このソフトを使い、他人の文章を盗用した論文を告発し騒ぐようになったのだ。

【文献】
1.平田容章:「研究活動にかかわる不正行為」、立法と調査、10 No.261、112-121(2006)