ジェイコブ・ハンナ(Jacob Hanna)(イスラエル)


ワンポイント:公式調査はないが、幹細胞分野の高被引用論文研究者の疑念

【概略】
jacobジェイコブ・ハンナ (Jacob Hanna、写真出典)は、イスラエルのワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)・上級研究員・助教授・医師で、専門は細胞生物学(幹細胞)である。

500回以上引用された論文が6報もあり、うち1報は1,000回以上引用されている。幹細胞分野の超優秀研究者である。

2014年11月(34歳?)、ハンナが第1著者の「2004年のJ Clin Invest.論文」に疑念が、パブピアで指摘された。その後、上記の「2004年のJ Clin Invest.論文」を含め2003~21015年の21論文に疑念が指摘されている。

2015年12月13日現在、ワイツマン科学研究所が調査しているかどうか不明。

Weizmann_Institute_of_Science40イスラエルのワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)。写真(by Yoav Dothan)出典

  • 国:イスラエル
  • 成長国:イスラエル
  • 研究博士号(PhD)取得:ヘブライ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とする
  • 現在の年齢:37歳?
  • 分野:幹細胞
  • 最初の疑念論文発表:2003年(23歳?)
  • 発覚年:2014年(34歳?)
  • 発覚時地位:ワイツマン科学研究所・上級研究員、助教授
  • 発覚:パブピアが指摘
  • 調査:①ワイツマン科学研究所・調査委員会(調査していると推定)
  • 不正:ねつ造・改ざん(推定)
  • 不正論文数:撤回論文数は1報。10論文に13個の訂正
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:在職。無処分

Dr-Jacob-Hanna-3-Rappaport-award-2013-500x332

【経歴と経過】
主な出典(PDF)。

  • 生年月日:不明。仮に1980年1月1日とする
  • 1998-2001年(18-21歳?):イスラエルのヘブライ大学(The Hebrew University of Jerusalem)。専攻:医学
  • 2001-2007年(21-27歳?):イスラエルのヘブライ大学(The Hebrew University of Jerusalem)。医師免許。研究博士号(PhD)取得。オファー・マンデルボイム教授(Ofer Mandelboim)。免疫学
  • 2007-2011年(27-31歳?):米国・マサチューセッツ工科大学(MIT)のホワイトヘッド研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)・ポスドク。Prof. Rudolf Jaenisch
  • 2011年3月-2015年現在(31-35歳?):イスラエルのワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science )・生化学部・分子遺伝学・上級研究員。AKA助教授、研究室主宰(Principal Investigator)
  • 2014年11月(34歳?):論文疑念が指摘された
  • 2015年4月(35歳?):論文1報を撤回

【研究内容】

【動画】
2009年9月16日、ハンナの研究の講演:「Dr. Jacob Hanna – YouTube。Understanding Disease Development with Embryonic Stem Cells」(英語)16分35秒。
American Committee For The Weizmann Institute Of Science Inc が2011/01/25 に公開

2013年10月18日の神無・久(かんな・きゅう)さんの記事から冒頭部分を以下に引用した(出典:iPS細胞形成率100%って・・・煽り過ぎでしょHannaさん – サイエンスあれこれ)。

1か月ほど前に天下のNature誌に掲載された、イスラエル・ワイズマン研究所のJacob Hanna氏率いる研究チームの論文は衝撃的でした。何せこれまで1%以下と言われていたiPS細胞の形成率を一挙に100%にしたというのですから。でもよくよく読んでみると・・・?ちょっとこれは一般の人には誤解を与えやすい表現だなと思ったので、ちょっとこの場を借りて、コメントします。

Hanna氏らが発見した方法というのは、山中先生がiPS細胞の誘導に必要な遺伝子として発見した4つの遺伝子(Oct4, Sox2, Klf4, Myc:山中4因子)に加え、同時にMbd3と呼ばれる遺伝子の働きを抑えるというものでした。確かに、この方法でほぼ100%の細胞がiPS細胞になります。ただしこれは、彼らの用いた実験条件下ではという制限付きなのです。

以下続く

【不正発覚の経緯と内容】

★最初の疑念:「2004年のJ Clin Invest.論文」

2014年11月、パブピアでハンナが第1著者の「2004年のJ Clin Invest.論文」に疑念が指摘された(PubPeer – Novel APC-like properties of human NK cells directly regulate T cell activation)。

【図1】
図1では、2014年11月16日、Peer 1氏が、以下のバンドは3列を切り貼りしたと指摘している( November 16th, 2014 12:03pm UTC )。(出典:https://pubpeer.com/publications/B95F9F21D5DC27314A68202E1E01E5http://pubpeer.com/imgs/5o5kNGo.png
5o5kNGo

【図3】
図3では、2014年11月10日、Peer 1氏が、以下のフローサイトメトリーのチャートでは同じ画像を再使用したと指摘している( November 10th, 2014 8:39pm UTC )。(出典:https://pubpeer.com/publications/B95F9F21D5DC27314A68202E1E01E5https://pubpeer.com/imgs/V2vCLRp.png
V2vCLRp

「2004年のJ Clin Invest.論文」の他の図についても疑念が指摘された。

2015年4月、ハンナは、パブピアでコメントしたが、結局、上記の「2004年のJ Clin Invest.論文」を撤回した。

★他の20論文

2015年12月現在、パブピアでハンナの疑念論文を検索すると、上記の「2004年のJ Clin Invest.論文」を含め2003~21015年の21論文がヒットした。 PubPeer – Results for Jacob Hanna

最古の論文は「2003年のBlood論文」でハンナが第1著者である。PubPeer – CXCL12 expression by invasive trophoblasts induces the specific migration of CD16- human natural killer cells

論文は撤回していないが、10論文に13個の訂正を行っている。

【論文数と撤回論文】

2015年12月13日、パブメド(PubMed)で、ジェイコブ・ハンナ (Jacob Hanna)の論文を「Jacob Hanna [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2015年の14年間の64論文がヒットした。

ofer大学院指導教授のオファー・マンデルボイム(Ofer Mandelboim、写真出典)との共著論文が22報あり、2002~2013年の10年間の最初の16論文はマンデルボイムと全部共著である。

2015年12月13日現在、2004年の1論文が2015年に撤回されている。

【白楽の感想】

《1》根っからのズルのようだ

thumbs_OHD_1574_resizeデータがねつ造・改ざんでなければ、かなりズボラである。しかし、単にズボラな性格なら、研究成果は出ないし論文も書けない。

500回以上引用された論文が6報というから、頭脳明晰で、研究の狙いが素晴らしく、論文の書き方が上手い。さらに、人に好かれる人柄なのだろう。

となれば、明晰な頭脳を使って、普通の研究者や論文審査員には見破れないように、ねつ造・改ざんをしたのだろう。

thumbs_OHD_1519_resizeそれにしても、撤回論文は「2004年のJ Clin Invest.論文」(ハンナが第1著者)で24歳の大学院生の時に一流誌に出版している。

その前年の「2003年のBlood論文」にも疑念が指摘されている。その論文は、ハンナが第1著者の最初の論文である。

ハンナの最初に出版した論文は22歳の「2002年のJ Clin Invest.」だから、その論文では第1著者ではないが、超優秀だったのだろう。

しかし、研究キャリアのほぼ最初から「ずるい」やり方を身に着けたようだ。指導教授のオファー・マンデルボイム(Ofer Mandelboim)に大きな問題があったと思われる。

《2》大事件?

thumbs_IMG_3490パブピアは、2003~2015年の21論文のデータに疑念を指摘している。不正疑惑論文を発表している期間が13年間と長いので、指摘された論文数も多い。クロとなると、抱えている研究室員も多く、大スキャンダルになりそうだ。
Restaurant_Nov2013

【主要情報源】
① 「論文撤回監視(Retraction Watch)」のハンナの記事群:You searched for Jacob Hanna – Retraction Watch at Retraction Watch
② 「パブピア(PubPeer)」のハンナの記事群:PubPeer – Results for Jacob Hanna
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です